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楽園の御業を使う者

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CAST22

 
前書き
水波ちゃんは白夜と同学年です。
四葉の力で捩じ込みました。
学習については例の洗脳装置でって事で。 

 
6月中旬

「起立!気をつけ!礼!」

今日は達也が日直を務め、軍隊仕込みの号令で放課後となった。

「あーばよー!」

しかし!俺はそんな事よりも逃げねばならない!

「達也様!白夜様を取り押さえてください!」

「わかっている!」

くそっ! 裏切るのか達也!

だが!

「ハーッハッハァ!捕まる訳なかろう!」

机やクラスメイトを盾にして達也の猛攻を避ける。

やっと教室のドアまでたどり着き、このまま逃走しようとした時。

ガシィ! と後ろ襟を掴まれ、持上げられた。

どうやらドアの外側の脇に居たようだ。

「白夜、諦めなさい」

「げっ!エリカ…」

「さぁ、捕まえましたよ白夜様。
大人しく七草家主催のパーティーに出席為さってください!」

そう!俺は今日七草家の主催するパーティーに出席しなきゃいけないんだ!

それが"普通"のパーティーなら構わない。

だけどねぇ!

「いーやーだー!なんで女装して行かなきゃいけないんだよぉ!」

招待状に"ドレス着用で"とあり、更には真夜さんが悪ノリしたのか質葉極夜名義でドレスが送り付けられる始末。

「エリカ様、そのまま白夜様を車まで御願いします」

「わかってるわよ」

「おいエリカ!離せ!」

「嫌よ。
水波ちゃん、白夜の写真頼むわよ」

「はい、エリカ様」

くそっ…!

「達也ー!助けろー!」

「すまないが学級日誌を書いているのでな」

昼休みには書き終わってただろうが!

「深雪さーん!」

「え、あ、えーっと…」

「深雪はこの後習い事が有るからな」

その誤魔化しは効かんぞ!

「活け花は明日だろうが!」

「ふむ、貴様が深雪の予定を把握している件について話を聞かせてもらおうか」

達也からプレッシャーが放たれる。

周りのクラスメイトが少し怯えていた。

気絶しない辺り、教室の中だという事を一応考えてはいるようである。

「テメーらの母親のガーディアンから散々聴かされたっつーの!」

正確には俺にではなく水波への伝言を預かった時の話だ。

というのも水波は本来深雪さんのガーディアン候補だったらしい。

その関係で水波は時折深雪さんに付く事がある。

「そうか」

………………

「そうかじゃねーよ!助けろください!」

「断る。極夜様から言い付けられているからな」

「味方が居ねぇ…!?」













つー訳でパーティー会場に放り出された。

幸い立食パーティーなので壁際に居れば大丈夫かな…?

壁際に向かいつつチラリと中央を見ると著名人や親魔法師派議員などが集まっていた。

面倒だなぁ…等と思っていると…

ヒョイっ

「およ?」

誰かに持上げられた。

その直後に抱きしめられ、背中にふにふにした物が当たる。

「やっぱりかわいいわ~。
女装して来るよう言ったのは正解ね」

振り向かず後ろを視ると、ルべライトの瞳とふわふわしたロングヘアの女が小悪魔的な笑みを浮かべていた。

間違いなく七草真由美本人である。

しかし待って欲しい。

今この女は何と言った?

「おのれ七草真由美!
お前が仕組んだのか!?」

ジタバタしてみたが、全く無意味だった。

あれ、なんかデジャヴ…

「そうよ。貴方宛ての招待状を書いたのも私よ」

こんのアマぁ…!

「ふーざーけーるーなー!
かりにも十師族だろうが!
そんなふざけた事していいのかよ!」

「御父様の許可は取ったわよ?」

「タヌキめ…」

真夜さんが言っていたのはこういう事か…

そう言えば真夜さんと七草家現当主って元婚約者だったっけ?

「あら?御父様は太ってないわよ?」

「あんたも十分タヌキだな…」

「失礼ね」

「女狐だの雌猫だの雌犬だの言われるよりはマシだろーが」

ぶっちゃけ言ってやりたい。

「初対面で私にそんな事言ったのは貴方くらいよ」

「言われて当然だろ」

くそー…

俺の腰を通ってヘソの辺りで七草真由美の手が組まれ、俺は人形のように抱かれている。

ドレス越しに華奢な腕を感じる。

うん。いまコルセットとか着けてないんだよね。

この格好をしてコルセットが不要というのがさらに沈む。

「摩利が言ってたよりも気さくなのね」

「摩利?渡辺嬢か?」

なぜ、渡辺嬢の話が? と思ったが原作では仲のいい二人だったと思い出す。

もう十数年も前の事だ。

抜け落ちている原作知識も少なくはない。

「ええ。摩利からは"悪魔のような男"と聞いていたのだけれど…」

心当たりが有りすぎる故に悪魔という呼び名に納得できてしまう。

俺が中二に上がったと同時に、千葉本家道場に推薦されたのが渡辺嬢だ。

どうやら一高に上がったと同時にこちらへ来たらしく、腕もまぁまぁだった。

そう"まぁまぁ"である。

地元では負け無しだったらしいが、本家道場ではよくて中位だ。

エリカと俺でボコボコにして泣かせてしまったのがつい最近…

で、だ…

「そう言えば渡辺嬢から恋愛相談されなかったか?」

「え?されたわよ。
いきなり話が飛ぶのね…」

「いや、渡辺嬢が俺らを悪魔呼ばわりするようになった件のあとに彼女を慰めたのがウチの兄でな。
どうも両者共に気があるらしい」

最近、道場で渡辺嬢と修兄が一緒にいるのを見かけるのだ。

『こころ』の『K』じゃないんだからさっさと決めろと言いたい。

俺としては女の影が無く、家族内でもホモ疑惑が出ていた修兄にそういう話が有るのは嬉しいのだ。

「あら?……まぁ、でも、いいこと聞いたわ」

ニィと悪い笑みを浮かべる七草真由美。

「ああ、彼女を存分にからかうといいさ」

そして次はお前をからかってやろう。

「七草嬢。飴食べるか?」

「ぷふふ…似合ってないわよ?」

バッグから飴を取り出す。

チリチリと包み紙を開け…

「はい。アーン」

と後ろに差し出す。

「あら?本当にくれるのね。
では頂こうかしら」

七草真由美が口を開けた中に飴を放り込み、隙をついて腕の中から抜け出す。

「じっくり味わうといいぞ」

「?」

さて、そろそろ口に入れて十秒か…

"正体を判らなくする程度の能力"

"無意識を操る程度の能力"

認識阻害術式…キャスト。

硬化魔法…キャスト。

俺と七草真由美だけが世界に取り残された。

そして硬化魔法をかけた対象は……

「~~!~~~!」

目の前で涙目になり無言かつ直立不動で悶えている七草真由美だ。

「カプサイシン濃縮キャンディの味はどうだ?」

"純化する程度の能力"でカプサイシンを純化(濃縮)したエキスをしこんである。

流石に純結晶まで濃縮してはいない…というかそんな物を食べさせたら最悪死に至る。

まぁ、三日ほど味覚が死ぬくらいの辛さではあるがね。

"心を読む程度の能力"

ふむふむ、悪魔だって?

「渡辺嬢から散々聞いたんだろ?」

知らないわよ拘束を解きなさいだって?

「認識阻害かけてるから周りからはアンタが悶えている姿は見えてないぜ。
まぁ、今すぐにでも両方解除してもいいが?」

ごめんなさいもうしません?

「えー?どうしようかなー?」

なんでもしますだって?

って言ってから後悔するなよ。

いやいや、別にエロい御願いはしないよ。

……………魅力的ではあるけども。

「それにしても、キャンディで七草の魔法師をノックアウトできるとは…
いつか十文字克斗にでも試すか…」

ふむ、そろそろ限界かな?

「フィニート」

呪文よ終われ、と口に出すと彼女の拘束のみが解かれた。

認識阻害はそのままだ。

彼女は走って会場から出ていった。

恐らく控え室かトイレに駆け込んだのだろう。

さーてと…じゃぁ折角だから料理でも食うか…

端の方にあるテーブルに向かい、料理を皿に取る。

「和洋中色々あるな…」

それじゃこのローストビーフを貰おうかね。

トングを握って皿にローストビーフ皿に盛った瞬間…

カチュゥン!

「…………………………」

皿が吹き飛んでカランと音を発てた。

そして会場の扉から黒服の連中が雪崩れ込んで来た。

その手にはハイパワーライフル…

「我々はー!神の使徒であるー!
悪魔の技である魔法を使う者をー!
粛清するー!」

等と意味不明の事を叫びながら…

だが、問題はソコじゃねぇ…

「俺のローストビーフ返しやがれクソがぁっ!」
 
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