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変わる顔

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第五章

「知ってるのよ」
「探偵長から教えられたのよ」
「そうした毒もあるってね」
「まさか今使う人がいるとは思わなかったわ」
「実際に造る人もね」 
 二人は自分達が追い詰めた西脇をさらに追い詰めにかかった。
「実際に造られるかどうかも知らなかった」
「けれど話を聞いてわかったわ」
 老人、つまり西脇の雇い主からだ。
「カンタレラを造っていたって」
「そしてそれを使っていたって」
「殺した理由は快楽殺人」
「特に怨恨はないわね」
「そうして人を殺して楽しんでいた」
「動機はそれね」
 西脇のそれも話した。
「多分元々命を奪うことが好きだったのね」
「その対象が人に移った」
「そしてカンタレラを造って殺していた」
「違うかしら」
「うう・・・・・・」
 西脇が逃げられなくなり進退窮まった顔になったところでだった。
 警官達は前に出てだ、その西脇に言った。
「詳しいお話を聞かせてくれますか」
「署内で」
「重要参考人として」
「是非同行願います」
 西脇は二人を憎しみに満ちた目で見た、だが二人は強い目で見返すだけだった。これで二人の仕事は一段落した。
 取り調べが終わってからだ、老人は事務所に来て二人に話した。
「お二人のお話した通りでした」
「カンタレラを使ってですね」
「快楽殺人を繰り返していましたね」
「はい、実際にです」
 西脇、彼女はというのだ。
「そうしていました」
「私達の推理通りに」
「そうしていましたね」
「驚いたことは」
 西脇が犯人だったこと以外にというのだ。
「まさかああして毒を自分で調合していたとは」
「あの毒は伝説的な毒でして」
 未夢が話した。
「ボルジア家で使われていた毒です」
「あのルネサンスの時のですね」
「このことはもうお話していますが」
「政敵を暗殺する為にですね」
「使っていまして」
 それでというのだ。
「西脇さんはお肉屋さんに特別にですね」
「逆さ吊りにして撲殺した豚の肝臓を仕入れていました」
 肉屋に注文してだ。
「そして山登りの時に」
「ハンミョウを捕って」
「粉にしていました」 
 自ら、というのだ。
「確かにこうして調合すれば」
「購入して怪しまれることもないですね」
「しかもまずない毒なので」
 砒素等と違ってだ。
「具体的にどういった毒かもわかりにくい」
「実際カンタレラは使われたのかわかりにくかったそうです」
「急に死んだりゆっくり死んだりして」
「そうした厄介な毒なんですよ」
 梓希が話した、このことについて。
「本当に」
「何かとですね」
「はい、僕達もまさかと思っていましたが」
「それでもですね」
「その毒で殺していたんです」
「ただ殺したいから、調べていきますと」
 警察の調査によってだ。
「彼女の周りでは昔から生きものが急に死ぬことが多かったそうです」
「毒を使って」
「その時は普通に猫いらずとかを使っていた様ですが」
「殺す対象が人間に向かう様になって」
「あの毒を使うことを思いついたみたいです」
 カンタレラ、それをというのだ。
「どうやら」
「おそらくそうでしょうね」
 梓希もそうだろうとだ、老人に答えた。
「動物相手なら警察も大がかりに捜査しないですが」
「事故かも知れないですし」
「ましてそれが無関係な場所で起こっているのなら」
 傍目で見て西脇は通行人に過ぎない状況ならというのだ。 
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