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同じこと

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第一章

           同じこと
 いきなりだ、佐山賢章は妻の天にこんなことを言われた。
「今度の連休交代してみない?」
「交代?」
「そう、交代しましょう」
 こう言われたのだった。
「夫婦の役割をね」
「それどういうことだよ」
「だから言ったままよ」
 天の言葉は素気なかった。
「私が草むしりやらやってね」
「僕が料理とか掃除とか」
「お洗濯をね」 
 そうした家事をというのだ。
「やってみましょう」
「何でまた」
「思いついたからよ」
 また素っ気ない返事だった。
「あなた家事してくれてるけれど」
「まあね」 
 賢章もそれは認めた、彼は仕事だけで家事は何もしない夫ではない。天も仕事を持っているので共働きだ。尚賢章の仕事はドラッグストアのチェーン店の副店長でえ天は母親のアクセサリーショップの手伝いだ。それで家事も分担してやっているのだ。賢章は背は一七〇程で黒髪を七三に分けている。海苔の様に太い眉と奥二重の目に厚い唇と細面の顔ですらりとした身体だ。天は長い黒髪に黒目がちのやや吊ったアーモンド形の目とはっきりした眉を持っている。整った形の唇と面長の顔で色は白い。二人共今は家の中なのでラフな格好だ。
「それは」
「だからよ」
「今度は連休はなんだ」
「家事を交代しましょう」
「思い付きでだね」
「思ったけれどどう?」
「まあ別に」 
 特に深く考えることなくだ、賢章は天に答えた。
「いいかな」
「それじゃあね」
「うん、僕は料理を作って家の中の掃除と洗濯してね」
「私が草むしりとか力仕事をして」
「そうしてね」
「やってみましょう」
「それじゃあね」
 賢章も頷いた、彼は深く考えることなくそれもいいかと思ってそれで答えた。そしてだった。
 その連休だ、朝起きるとだ。
 天は布団を干してだ、草むしりや力仕事をした。そして賢章は掃除から洗濯をしてその洗濯ものを干してだ。
 食べものを買いに買いものに行こうとしたが。
 ここでだ、天が草むしりの途中で言ってきた。ジーンズにシャツそれに麦わら帽子という恰好だ。
「お買いもの行くのよね」
「うん」
 その通りだとだ、彼は妻に答えた。
「そうだよ」
「それだったね」
「だったら?」
「運転私がするから」
「あっ、車の運転はね」
「いつもあなたがしてるから」
 だからだというのだ。
「それが交代になるでしょ」
「だからだね」
「車の運転はね」
「今度は君がだね」
「するから」
 それでというのだ。
「ちょっと待ってね」
「うん、それじゃあ」
 こうしてだ、天が買いものに行く車を運転してだった。賢章は行きつけのスーパーで二人で買いものをしたが。
 妻は夫にだ、笑顔で答えた。
「何作るの?」
「今日の晩御飯だね」
「ええ、何を作るの?」
「カレーライスにするよ」
「カレーにするの」
「そう、料理は結婚してからしてなかったけれど」 
 それまでは自炊していたのだ、大学時代から一人暮らしだったのだ。 
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