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高校生にして父親

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第二章

「奥さん幾つなんだ?」
「三吉が十八歳なのはわかったけれど」
「俺達と同じ年齢だって」
「学校から結婚許してもらっていて」
「籍も入れてることは」
「それはいいにしても」
「奥さんは何歳なんだ?」
「十八や」
 三吉は自分の妻の年齢も話した。
「わしと同じ歳や」
「ってことは俺達と同じか」
「そうよね」
「同じ歳同士で結婚してか」
「一緒になってるの」
「そや、かみさんも高校生や」
 このことも自分と同じだというのだ。
「現役のな」
「高校生で結婚して子供いるとか」
「それも凄いな」
「女の子って大変なのよ」
 クラスメイトの中の女子達がここでこう言った。
「結婚したらね」
「お母さんが言ってたわよ、育児は戦争だって」
「女の人の方がずっと大変なのよ」
「母親はね」
「ましてや高校生だと」
 高校生で結婚して子供もいればというのだ。
「もうね」
「育児と学業の両立で大変よ」
「学校行って子供育ててって」
「どれだけ大変か」
「女房には世話かけてるわ」
 実際にとだ、三吉はその老けた顔で腕を組んで言った。
「ほんまに」
「そうよ、高校生でお母さんなのよ」
「それもお子さん二人って」
「どれだけ大変か」
「想像も出来ないわ」
「そう思うわ、わしも」
 三吉自身もというのだ。
「よお出来てる、子供育てて料理も洗濯も掃除もしてるしな」
「完全に所帯だな」
「奥さんも大変だな」
「まして三吉戦士だしな」
「戦うことも多いしな」
「そやから余計にや」
 また言う三吉だった。
「女房には頭が上がらんわ」
「奥さん大事にしろよ」
「聞いてるだけで大変なのがわかるし」
「だからな」
「奥さん泣かせる様なことはするなよ」
「絶対に」
「わかってる、ちなみに付き合ったのは二年の時からでな」
 高校二年生、十七の時だというのだ。
「籍入れたんが六月三日、わしの誕生日にや」
「十八になったその日にか」
「婚姻届け出したんだな」
「それで奥さんと一緒に住む様になった」
「そうなんだな」
「そや、それで子供は双子でな」 
 子供達の話もするのだった。
「七月生まれや」
「結婚してから生まれたんだな」
「その前にもあったけれど」
「しかしな」
「何ていうか」
「結構以上に凄い人生だな」
「そうか?普通やろ」
 三吉はクラスメイト達の今の言葉にはこう返した。
「それは」
「いや、普通じゃないからな」
「高校生で奥さんいて子供いるとか」
「家庭持ってるとか」
「普通じゃないわよ」
「そうか、わしは普通やと思ってた」
 クラスメイト達の返事には意外だと内心思った。
「それはちゃうか」
「違うからな」
「大阪二十六戦士である以上に凄いかも知れないぞ」
「高校生でお父さんって」
「普通はないからな」
「そうなんやな、まあ今日も学校が終わったら部活にも出て」
 将棋部だ、勝負師とまで言われこれまで無敗を誇り五段にもなっている。
「何もなかったらな」
「戦いとか救助がないとか」
「家に帰って」
「奥さんとお子さん達との時間を過ごす」
「そうするんやな」
「そうするわ」 
 実際にとだ、こう言ってだった。
 三吉は今度は自分から家族の話をしていった、その顔は詰め理が似合わない完全に夫であり父親のものだった。


高校生にして父親   完


                  2018・1・26 
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