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高校生にして父親

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第一章

               高校生にして父親
 大阪二十六戦士の一人浪速三吉は高校生である、だが顔はかなり老けていてしかもだった。
 妻がいる、そして娘が二人いる。それでクラスメイト達はある時彼に怪訝な顔で尋ねたのだった。
「三吉御前奥さんいるよな」
「ええ女房やで」
 三吉はその質問にダンディな笑みで応えた。
「わしには過ぎたな」
「そうだよな、お子さんもいるよな」
「二人な、娘が」 
 三吉は自分から話した。
「どっちも可愛いわ」
「だよな、ただな」
「ただ。何や?」
「御前高校生だろ」
 クラスメイトの一人がこのことを指摘した。
「俺達と同じ」
「そや、高校三年生や」
「それで結婚して子供もいるってな」
 それがというのだ。
「ちょっと以上にないだろ」
「顔が老けてるとか着物好きとかはいいにして」
「結婚して子供もいるとかな」
「高校生でか?」
「それでもか」
 クラスメイト達は彼に怪訝な顔で言うのだった。
「所帯持ちってな」
「普通ないだろ」
「結婚って十八歳からだろ」
「それでもいいのかよ」
「結婚していても」
「御前本当は幾つなんだ?」
 このことも質問された。
「一体」
「十八じゃないんじゃないのか?」
「何年か留年してないか?実は」
「それで結婚してお子さんもいるの?」
「そうじゃないのか?」
「十八やで」 
 あっさりとだ、三吉はクラスメイト達に答えた。
「わしはな」
「本当にそうなのか?」
「六月三日生まれのな」
 三吉は自分の学生証を見せた、そこにははっきりと生年月日が書かれていた。それを見ると確かにだった。
「十八歳か」
「本当にそうだったのか」
「リアル十八歳か」
「まあ顔は置いておいてな」
 五十位に見える、詰襟姿が致命的に似合っていない。
「それでもな」
「十八歳で奥さんいてお子さんもいる」
「やっぱりないだろ」
「ちゃんと学校には許可得てるで」
 結婚のことはとだ、三吉はクラスメイト達に話した。
「もうな」
「そっちはクリアーしてるか」
「そうやねんな」
「もう既に」
「問題なしか」
「そや、それで婚姻届も出してる」
 籍も入れているというのだ。
「そやからな」
「問題なしか」
「学校とか法律のことは」
「だからそうした面では問題ないか?」
「そうなる?」
「ああ、ほんまにな」
 まさにというのだった。
「学校には感謝してるわ、結婚して家持ってもええってな」
「それはいいけれどな」
「退学とかにならなかったのは」
「それはな」
「よかったけれど」
「しかし」
 それでもとだ、まだ言うクラスメイト達だった。 
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