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衛宮士郎の新たなる道

作者:昼猫
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第13話 色情魔

 
前書き
 働き方改革はどこ行ったかと言う仕事の忙しさの為、Fgoの節分イベントも24階までしか進められなかったです。
 まあ、年度末何で仕方ないですがort 

 
 士郎が屋上から去った時、それらのやりとりを窃視していた少女たちがいた。
 1人は言わずと知れた武神、川神百代である。

 「あの色狂いめ~!」

 百代は怒っていた。士郎と言う名の理不尽さに。

 「私だけじゃ無く、誰にでもあんな言葉使ってるのか!」

 百代の言葉の意味するところは半月前程、自分に告げた言葉だ。

 『俺は何時だってお前の事を大切だって思ってる!』

 この言葉を受けた百代は恥ずかしかったが、後々に無意識的に嬉しく感じていた。
 本当のところは、ある友人として(ワード)が抜けてたんだが。
 兎も角、なのに士郎と来れば、別の女性にも似たような言葉を使っていることに憤慨しているのだ。

 今日の夕方、ほぼ八つ当たり的に、外部からの義経への挑戦者が少し地獄を見る羽目になりそうだ。

 それともう1人窃視していたのは、屋上の給水タンク近くで寝ていた男子生徒をそれなりに揶揄ってから偶然目撃する事になった、士郎の探していた不審人物?の燕だ。

 「・・・・・・・・・」

 今回も妬んでいた。何より羨ましく思っている様だ。

 (押し倒される勢いで、私も士郎にあんなこと言われたい――――いや、やっぱり押し倒されたい!)

 あそこにいたのが何故自分では無かったのだろうと、心底嘆いている様だ。

 「それにしても、何なのかなこの感覚?」

 原因不明な違和感に気持ち悪さを感じながらも名も知らぬ泥棒猫候補が屋上から出ていくまで視線で追っていくが、

 「アレ?」

 自分の心の中のブラックリストに乗せようと記憶しようとしていたのだが、

 「さっきまで見てたはずの顔が思い出せない・・・・・・アレ?そもそも女だったっけ?」

 最上旭の真骨頂、熏柴韋威胴丸は旭自身が技を解除するか、その技の効果を見破ったモノ以外惑わされる。
 如何に百代を倒せる可能性がある燕と言えど、初見で見破れる筈も無かった。


 -Interlude-


 気配を消しながら移動する者――――実のところは燕なのだが、それを校則を守りながらの捜索中の士郎だったが、

 「・・・・・・・・・」

 突然闘気を当てられて足を止めた。しかも自分だけに。
 闘気の発生源は一階からだったので、窓から飛び降りると言う手段で到着、そして探す手間が省ける様に近くに闘気を当てて来た本人のヒューム・ヘルシングと九鬼紋白、それに初めて見る黒髪短髪のメイドと金髪ツインテールのメイドもどきもいた。

 「何か御用ですか?一年S組ヒューム・ヘルシング君?」
 「「ッ!?」」

 メイドの2人が息をのむ。
 士郎の発言は明らかな挑発である。人を威圧で呼び出すと言う手を使ったちょっとした仕返しの様なモノだが、

 「クク、少々用がありまして。ですがお呼び出てしてすみませんでした、3年S組衛宮士郎先輩?」

 当人は気にするどころか、士郎からの意外な言葉が楽しかった様で悪乗りして返した。
 しかし士郎も負けじとやり返す。

 「いや、誰にでも失敗はある事だから、次からは気を付けてくれ給え。新入生君」
 「クク、承知しました。先輩」

 ヒュームに対して士郎も不敵な笑みを続けるが、それを他の3人が息をのんでいるので、自分から折れて3人の内の1人の紋白に向く。

 「それで、話とは?」
 「何故我からの話だとお分かりに?」
 「いや、ヒューム卿が個人の諸事情なら一人で来る筈だし、何より君と共にこの場に居るのはそれしか考えられないじゃないか」

 それもそうかと、納得する紋白。

 「では改めて、昨夕は危ない所を助けて頂き、誠に感謝しておりまする」
 「いや、俺が勝手にやった事だし、そこまで大げさに感謝しなくていいぞ?それにすでに英雄からもお礼の言葉を昨夜電話で貰ってたからな」
 「いえ、既に義経達からもお礼を言われたとの事では無いですか。なら我からもと言う事なのです。此度の事でクラウディオの命も助けて頂いた御恩、何時か必ずや返します故!」
 「何時かと言わず、出来れば今返してほしい」
 「と、言うと?」
 「今朝の通学中、何所からか百代に対して強い殺意を送っていた奴がいたようなんだ、それも遠くから」

 ――――川神百代に強い殺意?

 「後もう一つ、あくまで私見だが、如何やら完全に気配を殺しきれてないまま学園内を回っている人物が1人いるんだが、それの捜索を手伝ってくれ」

 ――――気配をほぼ消しながら学園内を回っている?

 そこである1人だけ心当たりに思いついた紋白は、

 「あっ」
 「・・・・・・・・・なるほど、理由は存じませんが九鬼の関係者なんですね?」

 紋白の僅かな動揺から、士郎は察して理解した様だ。

 「あ、いや」
 「分かりました。そう言う事でしたら捜索止めましょう」
 「だから」
 「ですが、殺意を送るのは頂けないので、その人物に注意勧告を頼めるか?」

 否定しようとしてるのに確信的に告げてくる士郎に、紋白は此処には居ない当人に向けて溜息を吐く。

 「――――分かりました。我の方から言っておきます」
 「宜しくお願いする。――――ところで、先程から如何して敬語なんだい?」
 「そ、それは勿論、先輩に対して当然の反応」
 「いや、俺以外の誰かに敬語を使うとしたら、身内ぐらいなんじゃないか?」
 「うぐっ、そ、それは・・・」

 またも似たように告げられた言葉に詰まる紋白。

 「本当に先輩後輩関係を重視した上での対応ならいいが、藤村組への警戒ならば兎も角、引け目とかならよろしくないな。寧ろ、これからの為にも対等である事を示さないと誤解されかねないぞ?」
 「むむ・・・」
 「だからと言う訳が全てでは無いが、俺くらいなら呼び捨てにしてもかまわないぞ?英雄も呼び捨てだからな」
 「兄上が・・・・・・」

 暫し考えて、

 「ならば、お言葉に甘えるとする。これからは士郎と呼ばせてもらうぞ!」
 「ああ、構わない。寧ろ、その様に臆面もない笑顔で言うのは俺としても嬉しい。女の子には笑顔が一番だ」

 そのまま自然と紋白の頭の上に手を乗せて撫でる。

 「ふにゅ~・・・・・・・・・って、何をするか!?」

 紋白は本音とは裏腹に、気恥ずかしさに駆られて士郎の手を払いのける。

 「あっ、悪い。つい何時も百代とか小雪とか――――明日香とかマニーシャとか茜とかアンジャルとか蕾とかドーとか綾とかアイーダとかアグネスとかアンナとか桜子とかアンジェリナとかイリーラとか琴音とかヴィオラとか愛紗とかヴィクトリアとかウェンディとか清香とかエイミーとか綺瑠とかエステルとか香代とかエトーレとかエマとかエミリアとかエリンとか花音とかエレオノーラとかオードリーとか桜子とかオクタヴィアとか真登香とかに、つい癖でやってしまうんだ」
 「「「・・・・・・・・・え?」」」

 士郎の口から出た女性の名前の多さに、メイド2人に紋白は驚きを隠せずにいる。
 だがしかし、

 「あとは――――千晶とかアイナとか香織とか鈴玉(リンユー)とか美穂とかイマンとか千羽とかクロエとか薫子とかアヴァとか涼風とかテオとかジョティスとか亞夢(ヤーモン)とかライラとか燕とかマルティナとかオファリスとか紅花(ホンファ)とかリリーとかスーとかダリアとかリザとかゾーイとかソーシャイとか璃々とかアウラとか尚美とか――――」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 あまりの女性の多さに、ヒュームは呆れを通り越して感心している。
 だがそれも不思議な事は無い。
 士郎は以前は、本気で正義の味方になろうと目指して愚直に努力し続けた者だ。
 そして今は手が届くなら誰であろうと救う事を誓っている男だ。
 であれば、外国に諸事情で行った時、困っている人あらば助ける。窮地に瀕している人あらば助ける。追い詰められている人あらば助ける。男女問わずに。
 こんな事を続けていれば、知り合いが増えてもおかしくは無い。
 それに全員とはいかないが、特に女性陣はその後にまだ落ち込んでいたら慰められるを繰り返していたら、悉く誑かして行っただけである。
 つまり外国でも何時も通り衛宮士郎をしていたのだ。

 「――――アリサとかムンメイとか花芽智とかガブリエルとかシャロンとか悠里とかアミーとk」
 「もういいっ!!どんだけいるんだ!」

 あまりの事に、ついステイシーは声を荒げて制止した。


 「あっ、すいません。つい思い返して記憶遡ってました」
 「・・・・・・」

 衛宮士郎は女誑しである――――と言う情報は既に知っていたが、此処までとは思いもしなかったので、先程まで何を話していたのか忘れるほどのインパクトだった。
 それに対して、面白そうにヒュームが聞く。

 「参考までに聞きたいんだが、まだいるのか?」
 「ヒューム!?」
 「え、はい。今挙げた女性陣の名前はごくごく一部ですが何か?」
 「士郎!?」

 これ以上はその話題から離れたかったのに、未だ続いて行く紋白が悲鳴を上げる様に叫ぶが、聞き入れてもらえず、さらにヒュームは大胆に攻める。

 「確認を取るが、全員と肉体関係まで及んでいるのか?」
 「そんなわけないでしょ!?」

 それだけの数の女性を誑かしといて、それはそれで不謹慎な気もするが思うが、

 「挨拶程度で頬にキスされる程度ですよ・・・!」
 ((この(男・人)・・・!))
 「まあ、流石にエレナの挨拶には戸惑ったことは否定できませんが・・・」
 「ん?」
 「いや、ディープキスされたんですよ。再開直後に」
 「「「!?!?!!?」」」

 さらなる内容に驚愕する3人。

 「いやー、アレには参りました。流石に俺も赤面したんですが、エレナにとってそれが挨拶だって言うんですから仕方ないですよね?」
 「そんなわけあるかーーーー!!?」

 あまりの事にステイシーは、矢張り叫ばずにはいられなかった様だ。


 -Interlude-


 これ以上士郎と一緒に居ては紋様に悪影響が出ると判断されたので、あの会談は一先ずお開きになった。
 ただ今は、この場に残っているのはヒュームと士郎だけである。

 「それで、用件はなんでしょう?紋白やメイドさんたちに聞かせるわけにはいかない内容なんですよね?」
 「紋様とステイシーとリー(赤子共)は自主的に退出しただけだがな?」
 「あれ?ヒューム卿が促したのではないんですか?」
 「・・・・・・・・・小僧。お前に忠告する義務なぞ俺には無いが、今のうちに自分の本性(性質)を自覚しなければ、後々になって苦労するのは貴様自身だぞ」
 「何か師匠にも言われた事がありますけど、如何いう意味なんですか?」
 「・・・・・・自分で気づかなければ意味が無いとも言われなかったか?」

 思い出したように士郎は、ハッとする。

 「それも言われました」
 「ならばその通りだ。早くしなければ手遅れになるやもしれん」
 「・・・・・・・・・」

 そうは言われては考えていかなければならないと自覚する士郎。

 「・・・・・・そう言えば、話はそれだけですか?」
 「そんな訳が無かろう。サーヴァント、セイバーのマスター」
 「直球ですね。ルーラーの未熟なマスターの保護者殿?」

 いきなりのヒュームの先制に含みを入れて返す士郎。

 「フン、微塵も動揺せんか。それにしても素直に認めたな」
 「認めるも何もルーラーから既に来ているのでしょう?ならばこれ以上は無理に隠し立てしてもメリットはありませんから」
 「ほぉ、ならば聞かせてもらおうか。あのセイバーの真名を」
 「教えられるわけがないでしょう」

 士郎は、セイバーに諸事情がある事を微塵も感じさせぬ様に間髪入れずに答えた。

 「此方のルーラーの真名を把握しているにも拘らず、貴様側だけが一方的に知り得ているなど到底看過出来る状況では無いのだがな」
 「それはそちらの都合でしょう?それに確かに裏の世界の関係で協力していく約束はしましたが、それとこれは別問題なはずです。――――九鬼財閥は、もし仮に別の企業と業務提携した場合、自分達の内情や極秘のプロジェクトまで曝け出すんですか?」

 そう言う事は貴方は強いろうとしているんですと付け足して。
 それに対してヒュームは怒りでは無く、面白そうな笑みを浮かべるだけ。
 そこで漸く気付く。

 「俺を試しましたね」
 「クク、一応の確認のためにな。幾ら戦闘に特化したタイプの魔術使いを欲しているとはいえ、それがもし戦況も見極められないアホならば、九鬼財閥全体を守る為にも慎重に動く検討材料にせねばならんだろう?」
 「食えない人だ」
 「褒めても何も出んぞ?」
 「褒めてません」

 変わらずに凶悪な笑みを絶やさないヒューム。

 「とは言え、探りくらいは勝手にやらせてもらうぞ?」
 「ええ、お好きに」

 寧ろ自分達とは違うアプローチでシーマの真名に繋がるヒントが発見できるかもしれないと、密かに期待する。

 「ところで休み時間も後5分少々で終わりますが、用件が御済みでしたら教室に戻らせてもらいますが?」
 「・・・・・・・・・」

 返答は無く、真面目そうな表情に変えて、何故か士郎を値踏みするように見て来る。
 この表情と眼には覚えのある士郎。
 士郎の強さに興味を示しつつ、戦いたがっていた頃の百代そっくりだった。

 「・・・・・・もしかして、今後の連携のためにも俺と一戦交えろと?」
 「――――まあ、そう言う事だ」

 何故か歯切れの悪い態度だが、事実に士郎は溜息をつく。

 「バトルジャンキーはこれだから・・・」
 「おい、俺はあの百代(赤子)程節操なしでは無いぞ」
 「似たようなものでしょう?――――それで、もう時間も無いですし今すぐでは無いのでしょう?」
 「勿論だが、日時は貴様が決めてくれて構わない。無理強いを強いている自覚位はあるからな」

 珍しく自戒すると言うヒュームの弁。
 しかし、

 「単に無理を通して、解決したばかりの藤村組との軋轢を再開させたくないだけでしょうに」
 「チッ」

 図星だったらしい。

 「まあ、それでも日時を決めて良いのでしたら後日連絡します。俺も暇があまり無いモノで」
 「分かった」

 士郎は失策を犯した。気付けなかった。
 『俺と一戦交える』と言う言葉を士郎自身で言うのではなく、ヒュームに言わせるべきだったと後日盛大に後悔する羽目になるのだった。

 そして放課後、大和から紋白の企画した義経達の誕生日である明後日に向けた歓迎会の為、料理部と同じように料理を依頼されるのだった。 
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