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衛宮士郎の新たなる道

作者:昼猫
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第12話 忍び寄る殺意

 
前書き
 なかなか進まないなー(棒読み) 

 
 衛宮士郎。
 私は彼に救われた。
 私は彼に希望を見た。
 私は誰よりも彼を求めた。
 なのに・・・・・・なのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのになのに。
 ――――なんの権利があって彼の横に立つのか、あの“泥棒猫”共はッッ・・・・・・!!!


 -Interlude-


 百代は久しぶりに風間ファミリーの皆と登校中だ。
 変態の橋付近で待っていた川神院への挑戦者も瞬殺し、変わらず絶好調の様だ。
 そこへ、徒歩(・・)の義経と弁慶が現れた。
 この決定も義経が武士道プランの筆頭として弱みをみせぬ様にと提案し、マープルもそれを許可した。
 とは言え勿論、見えない位置からの護衛の従者部隊は増員済みだ。
 そこへ、

 「いっただきぃいいいいいいいいぃいい
 「フッ!」
 「ガフッ!?」

 バイクに乗ったひったくりが義経のカバンを盗み取ろと近づいてきた所で、隙だと思われたところが逆に罠だと気づかずに無様に見事に嵌った。
 昨夕あんな襲撃事件があった義経は、同じ校舎の下で学ぶ学友達と和やかな挨拶はしても、周囲の警戒を怠ってはいなかった。
 今の義経に、少々腕が立つ程度の盗人のひったくりが成功する余地がある筈も無い。
 ちなみにバイクはすかさず弁慶が止めた。主従による良いコンビネーションだ。
 もう一つちなみにこれは一応のテストだった。
 あの盗人が義経のカバンを盗み取ろうと言う計画を、義経が登校の決意を伝えた後にマープルの耳に入ったのだが、敢えて泳がせた。
 これで不甲斐無くカバンを取られるようであれば、まだ立ち直れていないと判断して、強制的に今日一日は極東本部の自室に籠らせようと考えていたのだ。
 それを映像越しで見ていたマープルは、

 「如何やら杞憂の様で何よりだ・・・・・・む」

 そこへ、映像越しから衛宮士郎一行が現れた事に気付く。
 士郎とシーマの2人が現れてから直に、義経と弁慶が周囲に怪しまれないように自然を装いながら近づいて、小声でお礼を言っている。
 昨日の件の襲撃者たちの素性と標的については、一部の者にしか公開されていないので、怪しまれないように行動するのは仕方がない事なのだ。
 その当人達――――士郎達が百代たちに接触して来たかと言えば簡単だ。

 「ほら百代」
 「なんだ?」
 「弁当だよ。金欠のお前が昼無しになったら、また誰かに驕らせるか借りるだろう?」
 「むぅ」

 百代は唸りながら士郎の手作り弁当を受け取る。
 それを下心を持って、京が軽くクリティカルさせる。

 「本当は逆なんだろうけど、まるで愛妻弁当だね。この場合愛夫弁当なのかな?」
 「なっ!?何言ってるんだ京!」

 京の言葉に頬を赤らめながら気恥ずかしそうに、だが何処か僅かに嬉しそうにしながらも反論する百代。
 それを自分の主と同じような反応する事に、武神は衛宮先輩が好きなんだな~と、考える弁慶。
 結構お似合いでは?と考えながら、京から士郎の料理の腕は相当なものと聞いているので、後学のためにも少し味見してみたいと考えているまゆっち。
 ケッ!と僻んでるガクトに、何を考えているか読み取らせない様に鉄壁の笑顔を続けるレオ。
 自分の男に弁当を作らせるなんてまだまだだな~と、百代を蔑む事で自分の方が御似合いだと内心で考えているリザ。
 そして、クリティカルさせた張本人たる京はさぞ満足そうに不敵な笑みを浮かべて――――いなかった。寧ろ不満そうでもあった。

 「・・・・・・・・・」

 いや、最初は不敵な笑みを崩さず満足していたのだが、その下心である動機――――大和の恋の強豪ライバルになるであろう百代を士郎とくっ付けさせようと言うモノだが、その大和自身が士郎と百代を見ながら複雑そうな顔をしていれば、それを見れば不満になっても仕方がない事だ。
 だがまだ、不満――――否、不愉快すぎて殺意を持っている者がいた。

 「っ!?」
 「如何した?」

 周囲を少し見渡してから、

 「今誰かに殺気をぶつけられたんだ」
 「誰に?」
 「分からないんだよ」

 その正体は遠く離れたビルの上で望遠鏡――――否、スナイパーライフルとおぼしき形の何かで窃視していた松永燕だった。
 引き金に添えている手の方は、怒気を膨らませているあまりに先程から狙撃してもおかしくないほど先程から掠めていて、口からは歯ぎしりまで聞こえる。

 「士郎からの手作り弁当ねぇ~?本当に、何所まで調子づけば気が住むのかしらあの女・・・・・・!」

 燕から百代に送られるのは明確な殺意。好きな男といちゃつける状況に居る事への妬みである。
 そこへ、実の父親の松永久信から連絡が入った。

 「もしもしおとん?何か用?」
 『大した用じゃないんだけど、未完成のまま放っておいたスナイパーライフルを息抜きに弄ろうとしたんだけど、いくら探しても無いだけど引っ越しの際に廃棄しちゃった?』
 「うんん、今私が使ってる」
 『・・・・・・・・・え?』

 久信の記憶では、転入前日に学園見学をしに行くために朝一から出かけていた筈だ。

 『使ってるって、アレはまだ未完せ』
 「急遽必要になったから、昨日の朝から私好みに魔改造(完成)させたの♪」
 『・・・・・・最後の方がおかしく聞こえた気がするけど、それは取りあえず良いとして。一体何に使ってるの?』
 「そんな恥ずかしいこと聞かないでよ、おとん。士郎に関わる事に決まってるじゃない♡」

 あまりに蕩け切った娘の声音と言葉に久信は一昨日の夜の事を思い出す。
 帰って来た燕は言ったのだ。
 かつて自分を虐めから助けてくれて、道筋を示してくれた同い年とは到底思えない大人びた少年との再会(覗き見)を果たした事を。
 しかし、彼の隣には女――――川神百代がいた事も話す。
 そしたら、

 『え?何それ?僕の大事な大事な愛娘の燕ちゃんを惚れさせておいて、数年後に別の女を作ってるとか。僕がミサゴを手に入れるのにどれだけ拝み倒して泣き落としを使った末だと思ってるんだろう?なのにソイツ、二股掛けた上にどっちも美少女とか、例え国が少子化対策として一夫多妻制を許しても、モテナイ男代表として絶対に許されない所業だよね?ソレで燕ちゃん。もう、死刑にしていいって事だよね?』

 そう言ったら、口元は笑みのままなのに、瞳の中からは前向きな感情が消失し、おおよそ決して父親を見るような目では無く、

 『何言ってるのおとん?悪いのは士郎じゃなくて、誑かした川神百代(泥棒猫)の方に決まってるじゃない?なのに士郎を死刑とか、おとんが大した事出来るとは思えないけど、もし士郎に何かあったら、おとんでも容赦しないよ?』
 『はい、すいません!つい調子乗ってしまいました!ちょっと、可愛い娘を持って行かれる父親の心境とかやってみたかっただけなんです!!』

 身の毛がよだち、必死に平謝りした事まで思い出した。
 だがあの時、確かに士郎に怒りを向けて無かった筈なのに、これは如何いう事だろうか?

 『聞きたいんだけど、彼が如何かしたの?』
 「今も士郎の横に、泥棒猫がいるのよ。それに後ろにもハーウェイ家次期当主の護衛の女まで色目送ってるんだけど、あの2人もう撃ち殺しちゃっていいよね?」
 『ちょっと!?待った待った!燕ちゃん!それ、そんなに銃殺できる銃弾なんて作った憶えないよ!?そもそもそれ性能的にはガスガンですらないし!!』
 「大丈夫だよ、心配しないでおとん。銃刀法違反で捕まったりしないギリギリで改造はやめたから」
 『ほって、そう言う問題じゃ無く!』
 「でも私の気を籠めればあら不思議、人ひとり余裕で撃ち殺せるスナイパーライフルに大変身なの♪」
 『だから待って、押さえて!自分を落ち着かせるんだ!』

 しかし燕は聞く耳を持たない。
 声音は素晴らしいぐらいに落ち着いているのに、スコープを除いている本人の瞳には嫉妬と憎悪に染まっていた。

 「私はこれ以上なく冷静だよおとん。ここに配置取前に、ちゃんと九鬼従者部隊の警備場所は調べたし、理由は知らないけど増員分の居場所も確認した。何より、おとんの技術をチャッカリちょろまかして、上空から見つからない為のステルス機能付きのテントだって張ってるんだよ?」
 『準備周到過ぎない!?』
 「そりゃ、証拠を残さない事も考えての事だからね。硝煙反応も出ないし、今私黒づくめに覆面体勢だから大丈夫心配しないで」
 『そこを心配してるのではなくて!?』
 「もう何なのおとん?私今すぐ撃ちたいんだけど?」
 『そもそも何でまた銃殺しようとするの!?スポンサー様の説得にも応じたんじゃなかったの?』

 この事に燕は一拍置いてから、

 「だって視たの」
 『何を?』
 「あの日の夜、何故か胸騒ぎして、おとんの入浴中に出かけて行ったら、案の定近くに士郎の御屋敷があったんだけど――――その日おとん、何時入浴したか覚えてる?」
 『ん~10時くらいだったかな?そう言えば上がった時に燕ちゃんいなかったけど、それが?』
 「そんな時間なのに、士郎の家から出てきたのよあの女が・・・!それにその後もビルの上から少し覗き見してたけど、リザ(護衛の女)は廊下で士郎の腕に絡めて抱きついたりしてたのッ・・・!!」

 如何やら百代たちの殺意がそれで再燃した様だ。
 リザは兎も角百代がそんな時間まで居たのは、魔術回路の運用方法――――つまり魔術の修練だ。
 魔術の修練は周囲の家が一般人ばかりの場合、夜に行うのが定石だが、百代のコンディションへの懸念もあって、これでも早い時間帯の方だ。
 勿論そんな事は知らない燕にとっては、忌々しく妬ましい。恋い焦がれる身としてはその感情も仕方ないと言えるかもしれない。
 だがしかし、

 『だからってそれはやりすぎだよ!』
 「でも・・・」
 『でもじゃない。いい燕ちゃん、スポンサー様が求めているのは武神の敗北であって殺害じゃないでしょ!?』
 「それは・・・・・・そうだけど」
 『なら依頼主様のニーズに合う仕事をしなきゃ駄目でしょう?それで武神の事は一応調べたんでしょう?弱点とか判明したの?』
 「あの泥棒猫の最大の弱点は多分、少し前までは舎弟の直江大和君の筈だったとプロファイリングしたけど、今は士郎だと思う。だからこそ私は」
 『なら話は簡単じゃない。士郎君を奪い返して、精神的にショックを受けた武神を物理的に敗北させる攻撃をお見舞いしちゃえばいいじゃない?』

 違う?と聞かれた事で漸く我に還った燕。

 「そっか、アリガトおとん!それに心配掛けちゃってごめんなさい」
 『いいのいいの、いざという時は助け合うのが家族ってもんだしね。僕も燕ちゃんには散々苦労掛けていた訳だし』
 「それはそうだね~」
 『そこは否定してよ~』

 漸く普通の親子らしい会話に戻る2人。






 「それじゃあ、一発撃ってから撤収するね?」
 『ちょっと!?』

 そんな本気か冗談か区別もつかない言葉で電話を終えた松永親子だった。


 -Interlude-


 昼休み。士郎は屋上に来ていた。今朝の百代への殺意を向けたものが気になるのと、もう一つの理由から議会の議長を務めているクラスメイトの最上旭と2人きりで。

 「昨日は御苦労様だったわね士郎」
 「そちらこそ、まだ残っていた在校生徒達に決して1人で帰宅しないように義務付けたり、各所の連絡お疲れ。相当な指揮能力だったと、教師である先生方も舌を巻いてたと聞いたぞ?」
 「お褒めに与り光栄ね。けどあの後、貴方の屋上からの監視と護衛に比べたら如何って事は無いわよ。神弓さん?」
 「それ、やめてくれ」
 「あら?気に入ってるんじゃないの?」
 「判ってて揶揄ってッるだろ、またっく・・・」

 それで世間話を終えて本題に入る。

 「それで、こんな人気のない所に私を呼び出して、どんなふうに押し倒す気なの?」
 「・・・・・・何の話だ?」
 「違うの?」
 「当たり前だろ!」
 「だって士郎ってば『2人だけで大事な話があるから、昼空けておいてくれないか?』って、私の両肩を掴んで真剣な表情で迫って来たじゃない。だからこそ私はてっきり愛でも囁かれるのだと思ってちょっと覚悟して来たのだけど、なんだか肩透かし過ぎてホント貴方は罪作りよね?」
 「言葉は選んだつもりだったんだがな・・・」
 「アレで?客観的に見れば、如何考えても愛の告白かプロポーズだったわよ?」

 如何やら今日も何時もの士郎、全開のようだ。

 「本当に覚悟したんだから、今後はより言葉を選んで気をつけなきゃ駄目よ?」
 「・・・・・・すまん」

 士郎の微妙な態度に嘆息する旭。

 「それで私に聞きたい事って?」
 「ああ、実は朝――――こんな事があったんだ」

 あらましを説明する士郎。それを全部聞き終えてから旭は、

 「――――それで如何して私が呼び出されたのかしら?」
 「百代に殺意を飛ばした相手がいるであろう周辺を気配で探っても大しておかしなことは感じられなかった」
 「それで?」
 「恐らくは随分な慎重さを持っている奴だ。そして強い」
 「で?」
 「明日3-Fに転校生が来るらしいな。誰かは聞いても応えてくれる先生方1人もいなかったが。更にその転校生に直前の前日に学園内の見学を許可していると。そして気配を消しているが僅かに漏れているせいでばれているが、大した速度と足運び」
 「つまり士郎の予想で、全て同一人物の仕業だろうから素性を教えてくれと?」

 旭の問いに士郎は首を左右に振って違うと否定する。

 「俺が言いたいのは、もしものために警戒態勢を敷くためにビデオカメラの設置を議会で検討してくれないかと言う事だ」
 「なるほど、確かにこの学園は警備の面で機器に頼りすぎない所があるから、今後の為にもいい提案ね」
 「それじゃあ、頼んだぞ」

 もう用は済んだのか階段に向かおうとする士郎に、旭が疑問を呈する。

 「あら?もういいの?つれない(ひと)ね。今なら誰もいないし、私を押し倒せるわよ?」
 「・・・・・・・・・前々から思ってたが、最上はそんな感じで俺を誘って来るけど、実は俺のこと好きなのはそっちの方なんじゃないか?」

 何時も揶揄う様に煽ってくるので、ちょっとした反撃のつもりで言ったのだが、

 「ええ、好きよ。愛してるわ。今すぐ野性的に襲われたいくらいに」
 「え゛!?」

 あまりに衝撃的かつ予想外すぎる言葉に、士郎は固まって、何と返答すれば困っている様だ。
 だがそんな反応に対して旭は追撃する。
 じりじりと距離を詰め、壁際に追い込んでから人差し指で士郎の胸を弄ぶように突き、耳元で蕩けるように囁く。

 「ねぇ――――私に・・・どんなことしたい?今すぐ――――士郎が私を貰ってくれるなら、好きなだけ玩具にしてくれていいのよ?士郎が望むなら何所であろうと好きにしていいのよ?」
 「あ・・・・・・ぐ・・・」

 あまりに面白い反応、それがつい可笑しかった様で遂に此処でネタバレ。

 「ウフフ、冗談よ。ホント、貴方ってばこの手の事で揶揄いやすいわよね」

 瞬時に蠱惑的で艶やかな笑みから、普通の何時もの旭に戻る。
 あまりに一瞬で身を翻す様な変わりように、深い溜息をついてから本当に疲れた顔をする士郎。

 「その手の冗談は、本当に勘弁してくれ」
 「ごめんなさいね。貴方も反撃のつもりだったんでしょうけど、その辺学習して行かないと、何時か悪い女に騙されちゃうわよ?士郎ってば、脇が甘そうだから」
 「・・・・・・助言感謝する。けどな」
 「え?」

 先ほど言った様に学習能力が無いのか、またも再び旭の両肩を掴みながら真剣な表情で迫る士郎。

 「以前から感じてたが、最上は自分を大切にしなさすぎだ。もっと大事にすべきだ!」
 「・・・・・・・・・」

 一切偽りのない琥珀色の瞳、本気で自分を心配している表情、何より両肩を掴む手には真剣さを感じ取らせる力強さがあった。だが、

 「士郎、ちょっと痛いわ」
 「あっ、悪い」
 「もう大丈夫よ。それよりも、さっき言ったばかりでしょ?これじゃあ、私の方が本気になっちゃうじゃない?」
 「だけど俺は、ホントに・・・・・・」
 「ハイハイ、分かってるわ。士郎が本気で私を心配してくれてるのは十分伝わった。けどね、私は十分自分の身を大切にしてるから平気よ」
 「・・・・・・つまり余計な世話だった訳だな」

 お節介だと言う事にすまなさそうにする士郎だったが、

 「そんな事ないわよ」
 「最上?」
 「士郎の本気は十分伝わったわ。それこそ私に“約束の人”がいなかったら心底惚れても良かったくらいには」
 「光栄ではあるけど、約束の人って事は許嫁か。なら俺の心配は杞憂だったって事か」
 「そう言う事。でも繰り返すけど、本気で心配してくれたことは素直に嬉しかったわ」
 「如何いたしまして。――――じゃあ、俺は探しに言って来る」
 「ええ、いってらっしゃい」

 士郎を見送った旭は何処か寂しそうな笑顔だった。
 そんな2人を、四つの目が見ていた事も知らずに。 
 

 
後書き
 マジ恋世界のこの一週間を大切にしたいので、此処を乗り切ればイベントの間あいだは今までより早くなるとは思います(更新が早くなるとは言ってない。したいけど出来ない) 
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