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狭い世界

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第五章

「そうだったから」
「そうだったんだな。まあお父さんもな」
「漫画家だけれどたまに外に出るよね」
「取材も兼ねて旅行にな」
「広い世界を見る為にだね」
「いや、気分転換だよ」
 父の場合はというのだ。
「それでだよ」
「お父さんはそうなんだ」
「そこは違うけれどな、それでもな」
「旅行はだね」
「お父さんも楽しんでる、だから御前が旅行を好きになったのもな」
 趣味、それになったこともというのだ。
「いいことだ」
「そう、じゃあ大学に入っても」
 それからのこともだ、学は話した。
「医学部だし勉強のこともあるけれど」
「旅行もなのね」
「楽しんでいくんだな」
「うん、旅行の費用も稼いで」
 アルバイトのことを言うのも忘れない。
「そうしてね」
「あちこち旅行するの」
「そうしていくんだな」
「机の前だけなんて本当に狭いから」
 受験のことも話した。
「だからね」
「そう、その考えよ」
「本当に勉強だけとか世界が狭過ぎるからな」
「そうした趣味を楽しむことも大事よ」
「人間にとってはな」
「そうだね、そのことがわかったし」 
 だからと言うのだった。
「どんどん旅行に行くよ」
「よし、じゃあ今日は御前が買って送ってきたお土産を食うか」
 父は息子に笑顔でこう応えた。
「そうするか」
「じゃあジンギスカン鍋だね」
「それだ、羊を焼いて食おうな」
「あれ美味しいね」
 学もジンギスカン鍋についてにこやかな顔で言う、
「札幌で食べたけれど」
「そうだろ、だから今夜はな」
「ジンギスカン鍋ね」
「よく羊肉買って送ってくれたわ」
 母もにこにことして言う。
「これも旅行の楽しみ方よ」
「帰ってからもだね」
「そう、楽しめるのよ」
 こう息子に言ってだ、この夜は実際にジンギスカン鍋となった。学はこのことも楽しみまた旅行に行こうと決意した。広い世界を見て食べて楽しむ為に。


狭い世界   完


                   2017・9・13 
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