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狭い世界

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第四章

「何処も素晴らしくて美味しくてまた来たいと思いました」
「それはよかった、北海道が気に入ったんだね」
「とても。ただ」
「ただ?」
「これはですね」
 学は親父に深く考える顔で話した。
「北海道以外でもですね」
「そうだよ」
 こう言うのだった、親父も。
「それはな」
「九州でも何処でも」
「やっぱり旅はな」
「何かを見られるんですね」
 学も尋ねた、ラーメンを食べつつ。
「いつもとは別のものが」
「そうだよ、だからな」
 親父は学に明るい笑顔で話した。
「旅ってのはいいものなんだよ」
「そういうことですね」
「まあ俺はこの店の親父だからな」
 親父は笑って自分のことも話した。
「だからな」
「それで、ですか」
「ああ、旅は行けないけれどな」
「ここでラーメン作らないといけないからですね」
「そうなんだよ、兄ちゃんみたいな観光客もよく来るけれどな」
「ラーメンを食べにですね」
「ここのな」
 この店、そして札幌のラーメンをというのだ。
「いつもラーメンを作って腕も磨いてるぜ」
「この美味しさをですね」
「そうさ、美味いかい?」
「はい、とても」
 実際にとだ、学はそのラーメンを食べつつ親父に答えた。ラーメンの量はもうかなり減ってしまっている。
「美味しいです」
「それは何よりだ、日本のあちこちにな」
「こうしてですね」
「美味いラーメンもあるだろうしな」
「こうしたことも楽しむことですね」
「それも旅の醍醐味だよ」
 まさにというのだ、学は親父のその話を聞いてそうしてだった。
 北海道の旅を続けた、十勝では牧場に行き稚内では海も見た。そうした場所でも美味いものも食べていた。
 そして家に戻ってだ、両親にこう言った。
「趣味が出来たよ」
「おお、そうか」
「そうなったの」
「うん、また旅行に行くよ」
 こう言うのだった。
「またね」
「そう、旅行に行ってそしてなのね」
「それが大好きになったからね」
 それでとだ、母にも話した。
「だからね」
「また北海道に行くの?」
「北海道以外の場所にも行くよ」
 こう母に返した、それも満面の笑みで。
「そうするよ」
「そう、他の場所にもなの」
「色々な場所を見て食べて楽しくて」
 学は明るい笑顔のまま母、そして父に話していった。
「広かったからね」
「広かったか」
「うん、旅行に出たらね」 
 そうだったとだ、今度は父に話した。 
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