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IS~夢を追い求める者~

作者:かやちゃ
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最終章:夢を追い続けて
  第63話「いざ、決戦の時」

 
前書き
―――始めようか!一世一代の大勝負を!!


再び時間は飛んで決戦へ。
ぶっちゃけ合間合間の描写ができないです。(´・ω・`)
知識がもっと豊富であれば、まだ描く事は出来たんですけどね……。
 

 





       =out side=







「……そうか、来たか」

「ちょっと遅かったねー」

「まぁ、これくらいは待たないとな」

 とある島の基地で、桜と束は接近する存在に気づいた。

「……皆さん…?」

「ユーリちゃんは奥の部屋にいておくように。もし、危険が迫れば脱出ボタンを押せばいいよ」

「……行くんですね?」

「ああ。……決着の時だ。これで、事態は収束する」

 ユーリに背を向けて部屋を出る桜から、大きな覚悟が感じられていた。
 “事態は収束する”。それは、まるで自分がどうなるかを予期しているようで…。

「………」

「案ずる事はないよ。……きっと、皆で幸せになれる未来を掴んでくれる」

「……束さん達自身では、掴まないのですか……」

「私達は……ちょっと手遅れだしね。いつもいつも自分一人で何とかしようとしてたんだ。偶には、他力本願になるよ」

 そういって、束も部屋から出ていく。

「……もう、いつも自分勝手なんですから……」

 残されたユーリは、そう呟いて言われた通りの部屋に向かった。
 一粒、頬を伝った水滴を床に落として。















「………」

 一方、秋十達は、かねてより予定していた方法で島に上陸していた。
 武装は持ち運べる最低限。後は全て自身の身一つで作戦を遂行せねばならない。

「隠密行動はほとんど意味を為さないと思え。どうせ、あいつらにはバレているだろうからな」

「……分かってる」

 千冬に改めて言われるが、それは百も承知の事だった。
 元より、相手には天才が二人もいる。
 こうやって侵入経路があるのも、態とだろうと言うのが全員の意見だ。

「(基本は武力による制圧。だからISは使う事ができない。己の身体能力を駆使しなければならない……か)」

 制圧に来ている面子は、以前元IS学園に集まった者+腕利きの武装集団だ。
 大きな組織すら制圧し得る戦力でこの場に来ている。
 しかし、それは桜たちがゴーレムなどを繰り出した場合はほとんど意味を成さない。
 ISに大きく劣ると言えど、ゴーレムは生身では到底太刀打ちできないからだ。
 対抗できるとしたら、人の領域を踏み外しているレベルでなければならない。

「(尤も、それは向こうも同じはずだ)」

 ISの意志は、例え相手が生みの親でも貫く。
 いくら桜や束と言えど、ISを武力として扱う事はできない。
 そして、ゴーレムと言う破壊力の高いロボットを使えば、基地が壊れてしまう。
 束達の基地は地下にも展開しているため、生き埋めになる可能性も高い。

【……よく来たな】

「「「っ!!」」」

「落ち着け、立体映像だ」

 基地の入り口を見つけた所で、入り口に桜たちの立体映像が現れる。

【来るとは分かっていたが……さて、制圧できるかな?】

【当然だけどこっちも抵抗させてもらうよ。……まぁ、ゴーレムとかは使わないから安心しなよ。さすがに使うと私達はともかく一部の人達は生き埋めになっちゃうからねー】

「そうか、それを聞いて少し安心したぞ」

 桜たちの言葉を、千冬は予想していた。
 だから、本来なら少なすぎると思える戦力で制圧に向かったのだ。

【それと、既に知っているよ。……もうすぐISで宇宙開発が決行されるらしいな】

「………」

【ようやくだよ。……ようやく、本来の役目を果たせる】

 ISは宇宙開発のためのパワードスーツだった。
 開発から何年も経って、ようやく本来の用途で扱われ出したのだ。

【このタイミングで来たと言うのは……】

「……ケジメを付けるためでもあり、お前たちを連れ戻すためでもある」

【……だろうね】

 千冬の返答を予想していたように、束は頷いた。

「……よく言う。こうなるように誘導していただろう」

【まぁ、そうなんだけどね】

【だが、結果はお前たち次第だ】

 まるで直接見ているかのように、桜は秋十達を一瞥し……。

【さぁ、始めようか!一世一代の大勝負を!!】

「っ!!全員、入り口まで走れぇ!!」

 桜がそう宣言した瞬間、大量の機関銃が基地の外壁から展開される。
 それを見た千冬は即座に指示を出し、全員が駆ける。

 そして、機関銃から一斉に弾が発射された。

「くっ……!」

「まだ来るよ!」

 入口がある窪んでいる場所に逃げ込む千冬達。
 だが、そこも安全ではなく、新たに機関銃が展開される。
 ちなみに、そこまで行けなかった者は木を盾にして何とか凌いでいた

「それは!」

「させんぞ!」

 しかし、その機関銃は即座に反応したシャルロットとラウラの銃で撃ち抜かれる。
 ちなみにこの銃、殺傷能力はだいぶ落とされており、人を殺す程の威力はない。
 それでも機関銃の機能を壊す事はできたようだ。

「鈴!マドカ!セシリア!」

「ええ!」

「了解!」

「狙い撃ちますわ!」

 続けざまに秋十、鈴、マドカ、セシリアで外壁の機関銃を撃ち落としていく。
 駆けこめなかった者も隙を見て銃を撃ち、無力化させる。

「突入!」

 ラウラが爆弾を使って扉を破壊する。
 同時に残りの人員も入り口に駆け付け、一気に中へと入っていく。
 もちろん、罠を警戒して時間差で突入している。







「っ………!ここは…!」

 しばらく基地内部を進む秋十達。
 すると、少し広い空間に出た。

「……いかにもって感じだね…」

「今までは小さめの機械だった。……けど、ここで広くなったという事は…」

 各国から集まった精鋭の傭兵などは、途中で遭遇した機械兵器を相手にするために少しずつ別行動するようになっていた。
 既に全ての傭兵達は基地の各地に散らばった状態となっていた。

「来るとしたら、ゴーレムか……」





「元亡国企業、とでも言いたげね?」

「っ……!」

 楯無の呟きに答えるように、奥から声が響いてくる。
 その聞き覚えのある声に、マドカが反応する。

「…スコール…」

「数年ぶりね、M」

「…敢えてそっちで呼ぶんだね。以前は名前で呼ぶようになったのに」

「なんとなくよ」

 マドカの言葉に妖艶に微笑みながらスコールは言う。
 そして、その後ろから何人かが出てくる。

「……彼女達は…」

「…オータムと、ジェイルさんの娘たち……」

「おまけにゴーレムも……ね」

 ゴーレムを二機従えたオータム。
 それと、ジェイルの娘であるドゥーエ、トーレ、クアットロが立ちふさがる。

「……ここを決戦の場にでもするつもりかしら?」

「貴女達にとってはそうかもね。……でも」

「秋十、ブリュンヒルデ、あいつの妹。……お前らは先に行け」

「何……?」

 オータムの、先を譲る発言に眉を顰める千冬。

「あいつらからのお達しだ。……オレたちはここでお前らを足止めする。決戦は一部の奴らだけで行うってな」

「なるほどね……」

 互いに動きに警戒しながら、会話を続ける。

「……どうする千冬姉。罠か?」

「……どの道、進むしかあるまい。どっちを選ぶかなど、あいつらにはお見通しだ」

「どっちも想定してそうだしな」

 それならば、言われた通りに進もうと、秋十達は駆けだす。

「おっと、当然だが、他の連中は通さないぜ?」

「っ……足止め、と言ったわね。……そう、そう言う事……。態々、そちら側で舞台を用意していたって訳…!」

「あらあら、バレたわね。……いえ、あからさまだったのだけど」

 一連の行動及び、情報。それらを思い返して楯無は確信を得る。

「……世界を敵に回したのも、彼が勝つ事に賭けたから……ね」

「ご明察。さぁ、丸く収めたいなら、存分に足止めされてくださいな?」

「………」

「…どういう、事なの?」

 自分たちが攻め入っても無意味。
 秋十が勝つ事に意味がある。だからこそ、ここで足止めされるのが正解なのだ。
 しかし、詳しい事がわからない簪はどう言う事か尋ねる。

「……世界中を敵に回し、脅迫染みた声明を出す事で、ISの扱い、世界中の風潮を変える。そして、ISを本来の宇宙開発に仕向けた……ここまではこの場にいる全員が知っているわよね?」

「……うん」

 察しが良ければ誰でもわかる事だ。
 だが、その続きは……束と桜の本当の思惑は誰も知らなかった。

「…けど、世界的に指名手配されてしまったら、例えISが宇宙開発に使われるようになっても、彼らの望みは叶わない」

「……ISに乗って、宇宙に飛び立つ事…だね」

「指名手配されてるもの。彼らならその上で飛び立つ事は可能としているけど……それでは意味がないんでしょう?」

「…うん。結局は、それは“縛られている”立場だ。……自由に羽ばたく事を夢見たあの人達にとって、それでは意味がない」

 楯無の確認の問いに、シャルロットが答える。

「だから、“捕まらなければならない”。世界的指名手配と言う立場から降りなければならない。……そのために、ここを用意した」

「逃げ回るだけなら、あの人達ならいくらでもできる。それなのに、態々基地を作ったのはそう言う事だね」

「……でも、それと足止めのなんの関係が?」

 今いる場所を舞台として用意したのは理解できた。
 しかし、それでは足止めをする大した理由にはならないと、簪は聞き返す。

「…ここからは、彼らの単純で些細な希望よ。……多勢にでも、追いすがる才能持ちでもない。……凡人である秋十君と全力で戦って、その上で打ち負かして欲しいって言うね」

 それは、この場において自分勝手と言える願い。
 だけど、子供っぽさの残る二人であるならばおかしくはないと、楯無は思っていた。

「さすがは更識家当主。その通りよ」

「変に難しく考えてたのが馬鹿らしいわね。…まさか、そんな些細な“我儘”のために私達を足止めしただなんて」

 “秋十と全身全霊で戦う”且つ“秋十に敗北する”。
 …その二つを狙って、三人以外を足止めしたのだ。

「千冬さんと箒ちゃんを行かせたのは……二人にふさわしい相手が別にいるから…って所かしら?」

「……束さんと、私の両親だね」

「正解!…さて、答え合わせも済んだ所だし……」

 スコールの言葉と共に、後ろに控えていたゴーレム二機の目の部分が赤く光る。
 ……それが、開戦の合図だった。

「マドカァァアアア!!」

「っ、オータム!」

 ブレードを構えたオータムが、一気にマドカに襲い掛かる。
 すぐさまマドカも応戦し、ブレード同士がぶつかり合う。

「ちょうど良かった!てめぇとは決着を付けたかったからなぁ!」

「それはこっちのセリフだよオータム!」

 一瞬、突然の戦闘開始に戸惑ったラウラと簪だが、すぐに動き出す。
 持っていた銃を構え、ゴーレムに狙いを定める。

「ゴーレムは私達がなんとかする!」

「お姉ちゃん…!」

「……と、言う事らしいわよ」

「まぁ、妥当じゃないかしら?」

 楯無とスコールが対峙する。

「……残りは、あたし達って訳ね」

「……ふふ…」

 鈴、シャルロット、セシリアは、残ったドゥーエ達と対峙する。

「…シャル、あたしが前に出るわ。援護お願い。セシリア!後方支援は任せたわ!」

「了解!」

「任せましたわ!」

 鈴が前に出て、セシリアが後ろに下がる。
 シャルロットはいつでも援護ができるように銃を構えた。

「はっ!ISを使わない元代表候補生の身で何ができる!」

「っ!」

 そんな鈴へ、トーレが迫る。
 援護をしようとした他二人にも、ドゥーエとクアットロが牽制する。

「っ、セシリアまでには辿り着かせないよ!セシリア!」

「ええ!間合いは詰めさせませんわ!」

「あらあら~、なかなかやるじゃない」

「そのロボット……!ここまでにあったのと同タイプ…!」

 次々と出てくるロボット…通称ガジェットドローンがクアットロから繰り出され、シャルロットの銃撃がせめぎ合う。しかし、それだけではドゥーエを抑えられないため、セシリアが上手く間合いを開けながら援護射撃を繰り返す。

「そらそらそらぁ!そのちみっこい体でどこまでできるんだぁ!?」

「っ、ちみっこいは余計よ!くっ…!」

 拮抗する二人とは別に、鈴は苦戦していた。
 トーレは格闘技を嗜んでおり、組手の相手として桜がいたのでその強さは一般人を凌駕する。だからこそ、鈴が相手するには荷が重い。

「防戦一方じゃないか!」

「……すぅー……」

 堪らず後ろに下がった鈴に、トーレが追い打ちをかける。
 拳が繰り出される瞬間、鈴は呼吸を整え…。

「ふっ!」

「っ!?」

 その拳を、叩き落すように逸らした。

「ちっ、今のは…!」

「ふぅー……!」

 警戒度が跳ね上がり、今度はトーレが後ろに下がる。

「……八極拳か!」

「…ご名答。生憎、身軽と言っても身体能力は並外れてないのよ。だから、“技”を鍛えたの。……元々、護身用だったけど、嘗めて貰っちゃ困るわ…!」

「……ハッ!面白い!」

 そして再び、二人はぶつかり合う。













「……始まったか…!」

「……!」

 後ろから聞こえてくる銃声を聞きながら、秋十達は駆ける。

「箒!振り向く必要はない!」

「っ……!」

「真剣勝負とは言え、生死を賭けた戦いじゃない。……何よりも、あいつらが負ける訳がない」

「……そうだな…」

 後方を気にする箒だったが、秋十の言葉に再び前を見る。

「……実際の所、戦力差は大丈夫なのか?」

「ゴーレム以外は最大戦力のはず。ジェイルさんは根っからの研究者だから隠れてモニタリングしているだけだし、ウーノさんもその補佐や妹さんたちの補助以外は何もしない。……唯一、ゴーレムの数だけは分からないけど……」

「……外か」

 秋十達以外…つまり他の場所で援軍などを相手にしているのだろうと、千冬は言う。

「多分。で、その上で考えると……ちょうど拮抗していると思う。ここ数年で皆も色々成長したし、少なくとも早々に負けるなんてありえないはずだ」

 元より、倒して終わりと言う目的で来ていないため、そこは心配していない。
 そのため、秋十は後腐れなく皆に戦闘を任せる事ができた。

「……エーベルヴァインはどうなんだ?」

「……ユーリは桜さんが待機させていると思う。千冬姉も保護が目的だと言っていただろ?いくらユーリが桜さんに協力しようとしても、他ならぬ桜さん達がそれを止めているはずだ」

「……なるほどな……」

 駆け続ける三人は、一つの扉に行き着く。
 すると、そこで……。

「お前たちは、先に行け」

「え、千冬姉!?」

「何を……」

 千冬は扉に背を向ける形で立ち止まり、二人に先行を促す。

「……何、順番が回ってきただけだ」

「……そう言う事か。箒、行くぞ」

「し、しかし……」

「千冬姉には千冬姉の戦いがあるって事だ!行くぞ!」

 箒の手を引き、秋十は扉の先へと入っていった。

「……出てこい」

「…つれないわね」

「実の親に命令形で言うなんてなぁ」

 残った千冬の前に降り立つように、四季と春華が現れる。

「私達を置いて行った親など、それで充分だ。第一に、私は二人を親とは認めん」

「……面と向かって言われると辛いわね」

「でもまぁ、そこに因縁はあろうと、この戦いにおいては……」

「っ!」

 四季の言葉の途中で千冬は察知し、飛び退く。
 寸前までいた場所に、非殺傷加工されている銃弾が当たる。

「…関係ないだろ?」

「そうね」

「っ………!」

 さらに、避けた所へ四季が切り込んでくる。
 何とか千冬はブレードでそれを防ぐ。

「…さて、親子喧嘩の続きと行こうか」

「っ……ぬかせ!!」

     ギィイイイイン!!

 ここに、史上最大の親子喧嘩が、再開された。













「……一直線。まるで、このために作ったかのような構造だな」

「事実、そうなんだろう」

 後ろから聞こえる音を気にしながらも、最深部へと駆けていく秋十と箒。

「…いかにもって扉だな」

 辿り着いた所には、今までの自動開閉の扉と違った、仰々しいものだった。
 左右に開くタイプで、ご丁寧に手動のためのドアノブもあった。

「この先に……いるのか?」

「……さぁな」

 意を決して、扉を開ける。

「…暗いぞ?」

「……そうだな」

 部屋の中は、薄暗かった。
 扉の外からの光がなければ、何も見えなかった所だろう。

     ギィイイ…バタン!

「っ…!」

「全く見えない……扉も開かない…か」

 すると、勝手に扉が閉まり、閉じ込められた状態になる。
 何かの演出か?と秋十が思った矢先に……。

「3D投影型の松明……おまけに、和風の部屋……」

「まさか…」

 火事や酸欠を考慮した光源と、基地にそぐわない和風の雰囲気。
 そして、突然展開される陰陽玉模様の魔法陣のようなもの。

「……よく来たね。箒ちゃん、あっ君」

「やはり、姉さん…!」

「まさか、この演出のためだけに…」

 魔法陣の光が治まると、そこには和装の束が立っていた。
 ちなみに、メカニックな兎耳も和風チックになっていた。人工的なのは変わりないが。

「ふふん!その通り!いいでしょ?この最終決戦風の部屋は!」

「和風なのは…今の箒に合わせてか…」

「っ……」

 そう。箒の今の服装は、動きやすい和装だった。
 篠ノ之流次期当主として鍛え直した際の結果との事だが……それは余談である。

「SFチック、ファンタジー風とかを見せてきた束さんも、日本人だからねぇ。箒ちゃんの事も考えて、こうしてみたんだー」

「そのため、だけに…っ!」

 あっけらかんと言う束に、箒は呆れが極まり震える。

「…最終決戦だからこその特別衣装。その方が面白いでしょ?」

「こんな時まで、ふざけると言うのですか…!姉さん!」

「ふざけてなんかいないよー。……最後の戦いなんだから」

「っ……!」

 その瞬間、束から強い剣気が発せられる。
 天才故にいつもふざけていた束が、真面目に“戦闘”を始めるのだ。

「箒ちゃん……ううん、篠ノ之流次期当主、篠ノ之箒。剣を構えて」

「っ……姉さん…!」

「決着ぐらいは、真面目にやるよ」

 剣を構えた箒に、束は苦笑い気味にそういう。

「……あっ君は、あっ君で決着を着けてきなよ」

     バン!

「……えっ?」

「秋十!?」

「また古典的なぁぁぁぁぁ………!?」

 床が開き、秋十はツッコミを入れながらも落ちていった。

「あっ君が辿り着く先は、天才と凡才が決着を着けるにふさわしい場所。…安心して。怪我をしないように落としたから」

「……桜さんか」

「その通り。……じゃあ、私達は、初めての姉妹喧嘩でもしようか!」

「姉さん……!!」

 いつも通りのような、ふざけた口調。
 しかし、箒にはもう“ふざけている”と思う事は出来なかった。
 発せられる剣気が、束が本気だと語っていたからだ。















「ぁぁぁぁぁぁあああああああっ!?」

 一方、落とされた秋十は、まるで滑るように下へと移動していた。
 明らかに移動のための落とし穴だった事に、秋十はそこで気づく。

「っ!」

 光が見え、秋十は体勢を整える。
 若干投げ出される形で滑ってきた穴から出た秋十は上手く着地する。

「……ここは……」

 そこは、何もない場所だった。
 ドーム状に展開されたその空間は、ただ広いだけで、何もない。
 白い床と、空を映しだす天井があるだけの空間だった。
 通ってきた穴も閉じられており、そこはあまりにも殺風景だった。

「………桜さん」

「…この時を、待ちくたびれたよ」

 そして、その中心に、桜は立っていた。
 静かに立つ桜は、それでいて容易に近づけない程の“気”を放っていた。

「……今更聞く事はないだろう?」

「…はい。…俺は、貴方を止めるだけです」

「……いいだろう」

 格納領域から、桜は一振りのブレードを取り出す。
 その瞬間、重圧が秋十に襲い掛かった。

「っ…!!(これほど、とは…!剣を抜いただけで…!)」

「……」

 だが、秋十もそれで屈する程、もう弱くはない。
 同じくブレードを構えて、桜を見据える。

「……一つ、聞こう」

「…なんでしょうか?」

「秋十君、君の望みは何だい?」

「望み……」

「そう。望みだ。俺達のように宇宙を目指すのか、それとも……」

 問われ、秋十は一考する。
 ……そして、数年前に自覚した望みを、今度は漠然とではなく、はっきりと言う。

「俺は、ただ自由に羽ばたきたい。誰に縛られる事もなく、才能にさえ縛られる事もなく。ただ自由に、どこまでも羽ばたきたい」

「……そうか」

 それは、傲慢とも言える望みだろう。
 だが、ただ“自由でありたい”と願う秋十には、そんなの関係なかった。

「なら、夢を追いかけるISを以って、それを為してみろ!」

「っ……!」

 “ISを以って”と言うが、桜はそのままブレードを構えたままだ。
 まずは様子見と言う事なのだろう。
 そして、それを感じ取った秋十もまた、まだISは展開しなかった。













   ―――………決戦が、始まる。













 
 

 
後書き
弾、数馬、蘭は実働部隊に参加してません。さすがに身のこなしが良い訳でもないので。ただ、ISを使う前提なら三人も突入します。
正直、三人にISを与えた意味がこの展開ではほとんどないですが、飽くまで束達のお礼として与えられたので、使わなくてもいいという事で……。(ぶっちゃけ作者が活かしきれてないだけ)

途中出てきた小さめの機械と言うのは、リリなののガジェットです。突入前でもあったように、ゴーレムだと生き埋めになりかねないので、桜たちも小型の機械を使いました。 
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