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ハイスクールD×D 聖なる槍と霊滅の刃

作者:紅夜空
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第一部 出会い
  流浪の二人 ~夏の出来事~

高く低く、刃鳴りが響きわたる。
二度、三度と互いを削り合うように得物同士が衝突し、火花を散らす。
間髪入れずに襲ってきた突きを得物でいなし、体捌きで躱し、反撃する。
舞踏に似た、しかし油断すれば即座に体を切り裂かれるような立ち合い。

―――ああ、楽しい。

本人も気づかぬほどに小さく笑みを浮かべる。気を抜けば即座に大事に繋がるようなこの緊張感が心地いい。
目の前の彼は間違いなく強敵だ。一瞬でも油断をすればその瞬間自分は敗北するだろう。
連続して突き出される穂先を体を揺らして避け、手にした得物を薙ぐ。
唯一勝る機動力を駆使し、様々な角度から剣戟を叩き込む。彼は時に穂先で、時に柄を使ってその斬撃をいなし、弾き、反撃の突きを放つ。
弧を描いた刃が受け止められ、お返しとばかりに刃をはじいて穂先が旋回し喉笛を狙う。
強烈な突きを体を反らして間半髪で躱し、地面を転がって距離を取る。
その瞬間、莫大な波動が少女を襲った。


放った聖なる波動が、ガラスのような硬質の音を立てて粉砕される。

―――やはり、強いな。

止めを刺すつもりで放った波動を一瞬でかき消される。いったい、彼女の中の『(万霊殺し)』とやらはどれほどのスペックを秘めているのか。
悪魔の扱う魔力だけでなく、聖槍の聖なるオーラすらも無力化するほどの異質な力。実に興味をかき立てられる。
一切の手加減なく放った連続突きを、僅かに体を揺らすだけの最小の体捌きで避けられる。
躱しながら反撃の刃を叩き込んでくる彼女。その体から発される濃密な殺気は、絶対に立ち会いで発するものではない。
最小の動きで刃を受け止め、槍身を使って刃を受け流し、走り回る彼女を捉える為に突きを繰り出す。
手の中で器用に槍を回転させ、下から切り上げを放つ。その刃をなんと彼女は踏みつける。
振り上げられる勢いを利用して、小柄な体が宙を舞う。豊かな黒髪が風に靡き、刹那それに目を奪われる
空中で一回転する彼女と一瞬目が合う。その口元は、抑えられない喜悦に歪んでいる。
振り下ろされた刃を咄嗟に受け止める。自分の顔の前で噛み合う二つの刃が発する火花が瞳を灼く。
突き放した小さな体が体勢を立て直す前に突きを放つが、飛び退いた彼女にギリギリで避けられる。
今度こそすばやく体勢を立て直した彼女の体が、弾ける。弓から放たれた矢のような勢いの疾走に蒼いオーラが追従する。
迎撃の波動をいくつも放つが、刃に触れた波動はことごとく砕かれ霧散する。
フェイントも織り交ぜたテクニカルな戦闘をしばし続ける。閃く刃の輝きと、衝突時の火花が空間を妖しく彩る。

――――――『ここだ!』

二人の想いが重なる。互いに全霊を尽くしたテクニックの応酬。そこに生じたわずかな隙。
彼女もそれを察したのだろう。瞳を見ればわかる、ここで勝負を賭ける気なのだと。
そこに、今現在出せる全力の一撃をねじ込む―――!
その結果は……



「……」

「……」

曹操の聖槍が四織の心臓を正確に捉え、その体の寸前で止まり
四織の刀が曹操の頸動脈を切り裂く数ミリ前で止められている。
双方とも相手の急所に武器を向けたままの状態で、微動だにしない。
どちらからともなく、小さな吐息が零れる。それを合図に、互いに武器を下ろす。

「…引き分けだな」

「そうだね」



朝の手合わせ(と言う名の鍛錬)を終え、手早く朝食を摂る。
基本的にあてもなく旅をしているので、街に泊まることもあれば今日のように野宿をすることもある。
野宿をするときには近隣に魔物がいないとも限らないので、交代制でどちらかが見張りに立っている。
と言っても、曹操以外の気配がある程度近くに寄った瞬間四織は目を覚ますわけだが、用心に越したことはないということで。
朝食を食べ終わり、荷物の確認を行って今日は山へと分け入る。なんでも曹操曰くそこそこの霊山であるらしく、土地に根付く魔物の類がいても不思議はないという。

「…その割にはあっさり登れるけど」

「それは君が山歩きに慣れすぎているせいだ」

一緒に旅をし始めて分かったが、四織は基本的にサバイバル技術も一通り身に着けている。
本人曰く、泊りがけの仕事の時は野宿だったから自然と身についたとのことではあったが、それにしたってたくましすぎるというかなんというか。
ちなみに山歩きに関しては昔は修行の一環でやっていたらしい。
そんなこんなで霊山を踏破していく二人。道中襲ってくる弱い魔物を退けながら時には助け合って登り終え…

「…なんだか賑やかだね」

現在は町にたどり着いていた。時刻はそろそろ夕方、陽が沈もうと言う時分に差し掛かっている。
だというのに出歩いている人の数は多い。何人か着飾っている人もいて華やかな様相を呈している。

「…どうやら、今日はこの町で祭があるらしい」

「? 祭って?」

聞いたことのない言葉にキョトンと首を傾げる。

「…そうか。監禁されていた君はそもそも知らないか」

ふむと考え込む曹操。ちらっと四織のほうに視線を向けてみれば、興味深そうな視線を行きかう人々に向けている。

「………せっかくの機会だ。気になるなら、自分の目で見てくるといい」

とりあえず今日の宿は確保したので、少しくらいなら祭を見物させてもいいだろうと判断した曹操。
コクコクと頷く四織を残して踵を返そうとした曹操。あとで迎えに来ればいいかと思ったのだが、その服を引っ張る感触が。
何かあったのだろうかと振り返ると、無表情なのに随分と感情を映す瞳が自分を見つめている。

「―――曹操も、一緒にまわって教えてほしい」



結局、腕まで捕えられた曹操が根負けし四織と一緒に祭を見て回ることになったのだが…
初めて「祭」というものを体験する四織にとっては、この場所は未知のものが多すぎた。
興味のある物を見つけると、半ば曹操を引きずってでも近くで見たがる。曹操にとってはいい迷惑である。その分、密着状態という特典(?)もあるわけだが。

「……あれ、何?」

「綿あめだ」

「…美味しいの?」

「知らないな。が、甘いらしい」

そう答えるとジーと曹操に視線を向ける四織。
その視線に気が付いた曹操が、大きく嘆息して離れて行った。

「ほら」

買ってきた綿あめを手渡してやる曹操。
四織はしばらく不思議そうに観察した後、ぱくりと食べる。

「……ふわふわ。あと、甘くて、おいしい」

「そうか」

満足そうな様子を見届けて歩き出そうとする曹操。その眼前に……

「はい、曹操も」

綿あめが付きつけられた。隣に視線を向ければ持っているものを突き出している少女がいて。

「俺は別に食べたいわけではないが」

「美味しいよ?だから曹操も」

「…………ああ、分かった分かった」

別に食べたいわけでもなく、しかも彼女が口を付けたところだ。
しかしこのまま食べなければ彼女は動かないだろうと思い至った曹操。観念して素直に食べる。
それを見た四織は満足そうに残りを食べだしたが……

(……俺は、何をしてるんだろうか………いや、待てそれ以前にこれ……考えるな、考えるんじゃない俺!こいつにそう言う意図はない……っ!)

それについていく曹操は平然とした風を装っていたが、内心大荒れだったのは本人だけの秘密である。
そんな早々に気が付かないまま、綿あめを頬張りながら上機嫌で祭を見ている四織。
ふと、その瞳に鮮やかな色が映った。


あらかた散策し終え、祭の会場を歩きながら今晩確保した宿に向かう。
宿へと向かう途中にも屋台が立ち並び、様々なものが売られているのが見え、祭の熱気がここまで伝わってくる。
途中で食糧も買い込み、飲み物を調達してきた曹操だが、ふと先ほどまで感じていた腕の重みがなくなっているのに気が付く。

「……どこに行った?」

流石にこんなにぎやかな場所で誘拐するようなことはしないだろう。だが万が一ということがある。
周囲を見渡し姿を探すがそれらしき姿はない。

「…世話の焼ける」

足早に元来た道を戻る。彼女の姿はわりにすぐに見つかった。
屋台の一つの前で、しゃがみ込んで何かを見ている。

「――何を見ているんだ?」

「あ、曹操……これ」

四織が指差したのは――――――風車だった。
色鮮やかに並んだそれらが、からからと風に従って揺れる。目の前で店主らしき男が息を吹いて回しているのにちらっと視線を投げている。
無表情で見つめている四織。その横顔から感情を窺い知ることはできない。
だが、曹操が後ろに立っても一向に離れる気配のない姿から嫌でもわかる。

「そんなに欲しいのか?」

「………」

予想通りコクリと頷いた四織が視線をこちらに向ける。
―――表情は無表情なのに、目だけはとても饒舌だった

「……しょうがないな」

色鮮やかの風車の中から四織が指差したものを買い、渡してやる。

「……ふ~っ」

カラカラと小さく音がする。
隣を見ると小さく微笑んでいる四織の顔がある。

「(……まあ、悪くはないか)」

彼女が満足そうなら、それでいいだろう。
カラカラと微かに鳴る風車の音を聞きながら、曹操も小さな笑みを浮かべた。
 
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