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星河の覇皇

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第六十五部第三章 連合の元首その十五

「そもそも低所得者というが」
「連合ではですね」
「例えスラム街にいても」
「仕事はありますし」
 それが低賃金の仕事でも最低賃金法も定められているのだ。
「普通に生活も送れます」
「それにスラム街自体が少ないです」
 あるにはあってもだ、尚連合ではスラム街とは二十世紀のアメリカの様なものではなくだ。低所得者層の集まる場所でしかない。ゲットーでもないのだ。
 しかもだ、豊かになればだ。
「収入があれば出られますし」
「少しいい仕事に就ければ」
「開拓地に行けばです」
「それで、ですね」
「広い家も仕事も提供されます」
「何時でも出られますし」
「そうした場所ですから」
 委員達も言うのだった。
「スラムといいましても」
「また違いますね」
 地球にあった頃のスラムとも他の国のスラムともだ。
「すぐに出られる場所です」
「中間層も非常に多いですし」
「その中間層の底上げ」
「それが重要ですね」
「富裕層はさらに豊かになってもらってだ」
 持っている者達はというのだ。
「そのうえでだ」
「所謂貧困層は、ですね」
「底上げして中間層に入れていく」
「そうしていくべきですね」
「連合のこれまでの政策通り」
「そうしなければな」
 キロモトはどうしてもと話した。
「やはり低所得層はないに限る」
「出来る限り少なくですね」
「少数であるべきですね」
 委員達も話す。
「様々な理由で低所得層は存在しますが」
「この連合にも」
「差別や貧困のない社会」
 あえてだ、キロモトはこう言ってみせた。
「理想であるがな」
「共産主義ですね」
 委員の一人は連合では最早完全に否定されている、全体主義として歴史の中の汚物とされている死相をあえて出した。
「それは」
「共産主義、あれは」
「はい、その実は」
「全体主義だ、正体はジャコバン派だ」
「宗教を否定し計画経済を万能としていますが」
「宗教は人に必要だしな」
 それにとだ、キロモトは共産主義について話した。
「そしてだ」
「はい、そして」
「計画経済というが」
「全てを国家が管理する経済は」
「経済は生物だ」
「生物は完全に管理出来ないですから」
「成功する筈がない」
 こう看破するのだった。
「それ以上にだ、単一政党ではな」
「その政党が絶対のものとなり」
「頂点にいる国家元首は現人神となってしまう」
「独裁者ですね」
「そうなってしまう、そして粛清等が行われる」
「いいことなぞありません」
「そして共産党員を頂点とした階級社会が出来る」
 独裁者という絶対者がいるからだ、社会にヒエラルキーが出来てしまうのだ。階級を否定している筈の共産主義の中で。
「一党独裁、国家が全てを担う社会の歪が出てだ」
「最後には破綻する」
「それが共産主義だ」
「だからですね」
「共産主義は空論だ」
 これはキロモトの考えではなく連合全体の考えだ、最早共産主義は人類が高度化していく社会の中で生み出した異端になっているのだ。 
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