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マルクス通りにはならない

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第三章

「革命だ粛清だっていう共産主義の方が」
「かなり好戦的よね」
「実際ソ連満州に攻め込んだな」
「前川このことについて何も言わないけれど」
「バルト三国にもフィンランドにも攻め込んで」
「ハンガリーとかチェコスロバキアとか」
 彼等も新聞を読んで知っていた、ソ連は建国以来様々な軍事行動を起こしてきた国だということを。
「何処が平和勢力だ」
「アメリカ以上に戦争起こしてないか?」
「世界に革命輸出しようとしてるし」
「かなり好戦的な国だぞ」
「全然平和勢力じゃないでしょ」
「ここもおかしいぞ」
 彼等は口々に言った、社会人になって同窓会を開いた時に同窓会の場になっている居酒屋で焼き鳥やビールを楽しみつつ話している。
「それで共産主義国家になったら」
「平和どころか」
「粛清粛清また粛清で」
「しかも独裁者も出てな」
「スターリンってあれ何?」
 この独裁者の名前も出た。
「何かまた評価よくなってるけれど」
「何百万、いや何千万も粛清したとか」
「日本もそうならない?」
 共産主義になればというのだ。
「スターリンみたいなの出て」
「絶対にそうなるだろ」
「労働者と農民の楽園にならずに」
「独裁者の国になるでしょ」
「間違いなく」
「北朝鮮もおかしいし」
 彼等はここである噂をひそひそと話した、当時都市伝説の様に囁かれだしていたことである。
「あの国日本に工作員送ってるって?」
「ああ、それ俺も聞いたぞ」
「私もよ」
「それで人攫ってるって」
「北朝鮮の工作に利用してるって」
「新潟とか鳥取で」
「そうしてるらしいよな」
「秘密警察とか」
 今度はこの話が出た。
「KGBとか」
「あれ酷いらしいな」
「政府をちょっとでも批判したら出て来て」
「強制収容所送りっていうし」
「そんなの日本にいたら怖いぞ」
「ソ連みたいになったら」
「共産主義国家になったら」
 革命が起こったうえでだ。
「会社の社長とか坊さんとか皆殺されて」
「昔庄屋さんだった人も」
「政治家もどれだけ殺されるか」
「皇室も危ないわよ」
「それで俺達も」
 政府に反対的だとみなされればというのだ。
「終わりだぞ」
「酷い国になるぞ」
「そんな国になってたまるか」
「しかも実際はマルクスとは全然違うし」
 彼の言う独占資本はないというのだ。
「現実は違う」
「マルクス通りになるか」
「そしてなってたまるか」
「現実は違うのよ」
「前川の言うのとは」
 前川は最初から呼ぶつもりもなかった、彼等のクラスの担任ではなかったからだがそもそも皆から嫌われていたからだ。そのしつこい主張故に。
 彼等は社会に出てそうしたことがわかった、そのうえで働き家庭を得て子供達を育てているうちに。
 世界は動いた、彼等が学生時代憎たらしいまでに強かった巨人は素晴らしいことに弱くなり。
 そしてだ、共産主義もだ。
 ゴルバチョフが登場し世界は一変し共産主義の実態もわかった。共産圏全体の状況までもが。 
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