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バースディ

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第六章

「あの、これが」
「そうだ、プレゼントの一つさ」
「そうですか」
「これを予約していたんだよ」
 そうだったというのだ。
「気に入ってくれたかい?」
「はい」
 目を輝かせてだ、沙織は浩輔に答えた。
「有り難うございます」
「好きなだけ食べてくれよ、あとな」
「あと?」
「これな」
 浩輔は今度は赤、青、黄色のそれぞれの色で可愛く包装された箱を三つ出した、そのうえで沙織にまた言った。
「プレゼントだよ」
「その三つの箱が」
「好きなの選びな」
 その三つの箱のうちからというのだ。
「熊のぬいぐるみに武者小路実篤の小説にAKBのベスト盤だよ」
「その三つですか」
「沙織ちゃん全部好きだよな」
「はい」
 本当にとだ、沙織も答えた。
「どれも」
「そうだよな、どれか一つにって思ったけれど」
「それがですか」
「ああ、絞れなくてな」
 一つにはというのだ。
「三つ全部にしたんだよ」
「そしてこの三つからですか」
「好きなの選びな」
 沙織に微笑んで話した。
「赤がぬいぐるみ、青が小説、黄色がCDだよ」
「それぞれですね」
「入ってるさ」
「そうですか、それじゃあ」
 一呼吸置いてからだ、浩輔は沙織に話した。
「全部、いいですか?」
「全部?」
「どれも好きでしかも浩輔さんが私に買ってくれたものですから」
 だからだというのだ。
「出来れば」
「それでか」
「三つ共って思ったんですが」
「そうなんだな、じゃあな」
 その話を聞いてだ、浩輔は微笑んで沙織に答えた。
「全部な」
「くれるんですか」
「沙織ちゃんが欲しいんならな」
 優しい微笑みでの言葉だった。
「どうぞだよ」
「有り難うございます、あと」
「あと?」
「ケーキ二人で食べましょう」 
 彼のもう一つのプレゼントの話もした。
「そちらも」
「ケーキもか」
「はい、一緒に」
「そうか、じゃあな」
「全部食べましょう」
「そうしような、しかし」
「しかし?」
 沙織は浩輔の今の言葉に問い返した。
「と、いいますと」
「ああ、沙織ちゃん今度は全部だったんだな」
「プレゼントですか」
「ピザやパスタは謙虚でか」
「浩輔さんの気持ちって思いますと」
 沙織は顔を赤くさせて浩輔に答えた。
「どうしても」
「それでか」
「はい、ですから」
「成程な、俺プレゼントしてよかったよ」
 浩輔はこれまでよりも深い笑みになって沙織に言った。
「そして今日のことも忘れないさ」
「それはどうしてですか?」
「いいもの見られて感じられたかだよ」
 だからだというのだ。
「忘れないさ、沙織ちゃんをこのお店に案内してプレゼントしてよかったよ」
「そうなんですね」
「じゃあまた来年も」
「こうしてですか」
「プレゼントしていいか?」
「宜しくお願いします」
 沙織は浩輔に清らかな笑みで応えた、そしてだった。
 二人でケーキも楽しんだ、そのうえで二人で幸せを語り合った。それは一体どういったものであるのかを。


バースディ   完


              2017・6・17 
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