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とある3年4組の卑怯者

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59 球技大会

 
前書き
 今回からはスポーツがテーマで、私はスポーツ関係になると熱くなりやすいため、もしかしたら大長編になるかもしれません・・・。最初は運動会にしようと思ったのですが、どの種目にどの学年が参加するか考えるのが大変だったので、球技大会にしました。
  

 
 朝の学級会で丸尾とみぎわが前に出ていた。丸尾が皆の前で話す。
「えー、球技大会についてですが、昨日各クラスの学級委員、そして先生方と話し合いましたところ、男子はサッカー、女子はバレーボールを行うことになりました!是非頑張りましょう!」
 皆は「はい!」と返事をした。

 球技大会でクラスは盛り上がっていた。大野と杉山、そしてサッカー好きの長谷川ケン太が燃えていた。
「サッカーなら燃えてきたな!」
 大野が興奮して言った。
「うん、俺も自分の実力を発揮したいよ!」
 ケン太も楽しみにしていった。
「よし、ケン太、お前もサッカー部の意地を見せてやれ!」
 杉山が言った。
 
 一方、藤木はサッカーをやる事になり、自分が活躍できるか心配だった。
「藤木君、君自信ないのかい?」
 隣の席の永沢が聞いてきた。
「あ、いや、まさか、そんなことないさ!」
 藤木があわてて誤魔化した。
「藤木君」
 その時、逆隣の席のリリィが藤木に話しかけた。
「リ、リリィ、何だい?」
「私も不安だけど、練習すればきっとできるわよ。頑張ろうね」
「あ、うん、ありがとう、僕、頑張るよ!」
 藤木はリリィに励まされてやる気を起こした。その時、永沢はリリィに優しくされないと明るくなれない藤木に呆れていた。その後、藤木とリリィは1限が音楽の授業のため、音楽の教科書とリコーダーを取り出す準備をしていた。
「ねえ、藤木君、日本ではアメリカにならって『サッカー』っていうのね」
「え、どういうことだい?」
「イギリスでは『サッカー』って言わないの。皆『フットボール』っていうのよ」
「へえ、国によって呼び名が違うんだね」
 藤木にとっては、イギリスの文化をまた知った瞬間だった。歩いて行く途中、愚痴を言いながら、歩いている男子生徒がいた。まともに授業を受けることができない、2組の堀内竜一だった。
「ああ、なんだよ、野球がよかった、野球がよかった、野球がよかった!!」
 藤木は堀内の文句を聞いて軽蔑する。やがて、堀内の姿が二人から遠ざかると、藤木は文句を言った。
「ふん、なんだよ。そんなに野球がいいなら、どっかの少年野球チームに入ってろ!」
「野球ね・・・。アジアとかアメリカで人気の競技(スポーツ)ね。日本にも結構好きな人多いのね。日本じゃナガシマとかノムラって人が活躍しているって聞いたことがあるわ」
「うん、そうだよ。ちなみに浜崎君は大洋の山下選手のファンなんだ」
「へえ、イギリスでは板球(クリケット)っていう野球に似た競技(スポーツ)があるの。パパが好きで、イギリスにいた頃私もメイベルと観に行ったことあるわ」
「へえ、面白そうだね」
「藤木君にも見せたいわね」
 リリィと藤木は談笑しながら音楽室へ歩いていった。

 音楽の授業後、藤木は大野に呼び止められた。
「おい、藤木」
「大野君、何だい?」
「お前、放課後、空いているか?」
「うん」
「ならサッカーの練習しようぜ!みんなも参加するからさ!」
「う、うん、そうだね・・・」
「お前、もしかして、自信ないのか?」
「うん・・・」
「大丈夫だって、練習すりゃ上手くなるさ!」
「そうだね・・・」
(よし、頑張るぞ!こんな事で逃げちゃ卑怯だ!)
 藤木は練習で己を鍛錬することを誓った。その後、大野と杉山、そしてケン太はクラス中の男子に放課後練習を催促していた。
「それじゃあ、校庭に集合な!」

 リリィはまる子、たまえ、とし子と共に教室へと戻るところだった。
排球(バレーボール)って日本はソビエトと並ぶ強豪なのね」
「そうなんだ。よく知ってるね」
 とし子がリリィの知識に驚いた。
「ママから聞いたことがあってね・・・。五輪(オリンピック)でも日本とソビエトが優勝を争っているって」
「へえ~」
「よし、じゃあ、バレーの強豪国としてアタシ達も勝ちまくろう~!!」
「ちょっと、まるちゃん・・・」
 たまえはまる子の楽観的なテンションにやや引いた。その時、後ろから怒ったような声が聞こえた。
「ちょっと、アンタ達・・・!」
 四人は振り返ると、掃除係の前田ひろみだった。
「どうしたの?前田さん」
「今日から放課後、バレーの練習やるから来て頂戴!絶対だよ!!」
「あ、わかったよ・・・」
 四人は反対することができずに承諾した。

 4組の男子達は練習のために校庭に出たが、既にグラウンドは1組に使用されていた。
「くそ、しょうがねえな。相談してみるか」
 大野と杉山は練習中の1組達を呼んだ。
「お~い!」
「どうしたんだい?」
 1組の生徒の本郷翼(ほんごうつばさ)が応答する。
「俺たちも使いたいんだけど、いいか?」
「そうか、使いたいのか、別の公園とかはダメなのかい?」
「ああ、クラスの皆と校庭でやるって約束したんだ」
「それなら仕方ないな。5組や公園でやるって言ってたけど、よし、半分に分けて使おう!皆、いいかい?」
 本郷は他の皆にも呼び掛けた。
(ワリ)いな、サンキュー!」
「いやいや、いいんだよ!お互い敵同士になるけどよろしくな!」
「ああ!!」
 こうしてグラウンドの半分を使えることになった。
「1組の本郷君か・・・」
 ケン太が呟いた。
「ケン太、どうしたんだ?」
 杉山が気になって聞いた。
「今大野君が話していた本郷君は俺と同じサッカー部で、あいつも凄いサッカーが得意で、学級委員もやっているんだ!それに1組は本郷君の他にも、野球、バスケ、ハンドボール、柔道、テニスとか何かしらのスポーツに取り組んでいる生徒が男女問わず多いんだ。つまり、1組はスポーツが万能な人が沢山いるんだ!」
「え、じゃあ、1組は強敵じゃねえか!!」
「うん!1組に勝つためにはこっちも練習しないとね!!」
 その話を聞いていた藤木はへこたれてしまった。
「うう、怖いな・・・。僕やっていけるかな?」
「僕も胃腸が少し痛くなってきたよ・・・」
 山根も1組の手強さに怖気づいた。

 4組の女子は体育館の裏で集まっていた。
「こんな狭いところでやるの?」
 まる子が前田に苦言した。
「仕方ないでしょ!?体育館は他のクラスが使ってるんだし、何か文句ある!?」
「いや、その・・・」
 前田は周りを見回してイライラしていた。その場には笹山、城ヶ崎、みぎわ、そしてクラスメイトの沢井や小長谷の姿がないのだ。
「みぎわさん達はどうしたのよ!?」
「そんなこと言われても・・・」
 たまえはどう返答すればいいのか困った。
「遅いわね!呼んでくる!!」
 前田が教室へと向かう途中、昇降口の付近で笹山ら五人が帰ろうとしているのが見えた。前田は約束を破られたと思い、怒鳴りつける。
「ちょっと、アンタ達!!なにサボろうとしてんのよ!!ふざけないでよ!!」
「だって私と笹山さんはピアノのお稽古があるから出られないのよっ!!」
 城ヶ崎が反抗した。
「それに私はバレエのレッスンがあるのよ!」
 みぎわも反抗した。
「私は習字があるし・・・」
 沢井が気を落とすように言った。
「私はそろばん教室が・・・」
 小長谷も理由を言った。
「何ですって!!?アンタ達、そんなにやる気ないの!?」
 前田の侮蔑ともいえる発言に対して五人は前田を睨みつける。
「何よっ!別にやる気がないわけじゃないわよっ!人の用事ぐらい仕方ないでしょっ!?明日参加するから別にいいじゃないっ!!」
「そうよ!前田さん、いい加減な事言わないで!!」
 城ヶ崎とみぎわは前田に怒鳴り返した。
「行きましょう、みんな!!」
 みぎわは笹山達に帰宅を促し、帰ってしまった。
「なによ、もう・・・!!」
 前田は涙目になった。そしてその場で泣いてしまった。

「前田さんったら、理由も聞かずに来てって言って来てホントに困るわっ!」
 城ヶ崎は前田を批判していた。
「うん・・・」
 笹山が(うなず)いた。そしてちらっとグラウンドでサッカーをやっている男子達の姿が目に入った。
(藤木君、頑張ってね・・・) 
 

 
後書き
次回:「蹴球(サッカー)
 サッカーの練習を始めた男子達。藤木は身長の高さを買われてゴールキーパーを担うことになるが、失敗を重ねてしまい・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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