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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第六章 Perfect Breaker
  Adam/正体




今までのあらすじ

アーカイヴ内での戦い。
そこに巣食う八つ足の怪物を撃破して、解放に成功するショウたち三人。

いずれ、現実世界に帰還することができるだろう。



そのころ、蒔風はセルトマンを追い詰めていた。

無尽蔵とも思える魔力許容量。
いくら傷つけようとも回復する、脅威の再生力。

人である以上、自分には勝てないと豪語する彼のその源。


遡ること、数十分―――――――




------------------------------------------------------------



「行くぞ!!」

『オゥ!!』

一号の号令とともに、ライダーたちとアリスが駆けて再生怪人へと向かっていく。
七体の怪人がそれぞれ二、三人のライダーたちを相手にする中、蒔風は脇目も振らずにセルトマンへとまっすぐに駆けていった。


「セルトマンッッ!!」

「ヲットォ!!」

駆け、跳ね、振り下ろした獅子天麟の一撃を、バックステップで回避していくセルトマン。

そして回避からの蹴り。
セルトマンの脚撃が獅子天麟の側面に命中し、大きく大剣をぶれさせる。


「フシッ!!」

「ヅっ」

大剣を手放さない蒔風に、いいから放せよと言わんばかりに更なる蹴りが大剣にぶち込まれる。
その連続して放たれた重い一撃に手がしびれ、蒔風が思わず大剣を放してしまう。

両腕を引かれたように上半身がよろめいた蒔風。
その蒔風の顔面に向け、掌を突き出して笑うセルトマン。


「ンなろ!」

それを、足の力を抜いて回避する。
ガクンと身体が落ち、反対の足で地面を踏んで重心を移動、再び上体を跳ねあげさせて攻撃を放つ。


「ウがっ!?」

「このままァ――――!!!」

突き出したセルトマンの肩を朱雀槍で貫き、強引に持ち上げてから地面に叩き付ける。

背中を強打し、肺から空気が吐き出されるセルトマン。
その一瞬で、全身が硬直し身動きが取れなくなり

「攻撃の意味がなくなるってだけで、効果は十分にあるからな!!」

叫び、セルトマンに跨って白虎釵を握る蒔風。
両手のそれを、セルトマンの腹部へと、穴をあけてやろうと振り下ろした。


「ンガァッッ!!」

が、無理やり動くセルトマンの蹴りが背に当たって前につんのめる蒔風。

一方セルトマンは、地面から朱雀槍を引き抜いて立ち上がる。
さらに肩からそれを引き抜いて放り投げ、痛みに抑えながらもそれを回復させた。


「ひっでぇ。滅多打ちかよ」

「それくらい甘んじて受けろ!!」

「なぁなぁ、こんなん意味ないぜ?」

蒔風が次に取り出した玄武盾と青龍刀の猛攻を受けながらも、そんな軽快な口調で語るセルトマン。


「まさか、回復に限度があるとか思ってんじゃないのか?残念ながらそりゃハズレだよ」

「知ってる」

「あ?」

セルトマンの笑い顔が引きつる。

こいつは知っているといった。
その推測がハズレだということを。

だったら、こいつがやっていることは一体なんだ?
まさか、まさか本当に気付いて――――――


「お前ら行けぇッ!!」

「なにっ!?」

対して効果のない猛攻の中で思考に囚われたセルトマンの意識を、蒔風の叫びが強引に引き戻す。

マズイ、と直感的に察したセルトマンが、蒔風の攻撃を大きく回避して距離をとり、その声のかけられた方向へと視線を向けると、そこにいたのは


「今こそリベンジだ!!」

「へへ、あの時みたいにはいかないよっ!!」

先ほど弾かれ、又は放られた獅子たちが、一斉にセルトマンへと切りかかっていっていた。


獅子、天馬、麒麟の西洋剣の乱舞を回避していくセルトマン。
だがその隙間を縫うように、一筋の刃がセルトマンの眉間へと襲い掛かる。


「チッッ!!」

「ダメですか・・・!!」

その隙間を縫ってきたのは、朱雀槍。

朱雀の握るそれを回避は無理だとして握りしめて勢いを止め、引っ張り込んで肘を顔面にぶち当てる。
さらにはセルトマンによって朱雀が引き摺り出されたために、獅子、天馬、麒麟の三人の陣形が崩れてばらけてしまった。


だがその天馬の背を蹴って、セルトマンへと突っ込んでいく影が一つ。

「やっほう!!」

「ガキかよッ!!」

白虎釵をくるくると回しながら、セルトマンの胸元を狙って襲い掛かる白虎。
そこに体勢を整えた獅子、天馬、麒麟が三方から突き刺そうと剣の切っ先を突き出してくる。

さらには頭上から一輪挿しにしようと飛び掛かる朱雀まで現れ


「邪魔だ」

セルトマンの魔力放出で、五人がまとめて吹き飛んだ。

全身を殴打され、大地に突っ込む五人。
拡散しているとは思えないほどの高威力の魔力放出に、顔をしかめて倒れていく。


だが、彼らを吹き飛ばしてなおセルトマンの魔力放出は止まらない。
なぜならば、その中で耐えているものがいるからだ。

「玄武か――――!!」

「一度受けた攻撃で、再び倒れるわけにはいかぬのじゃよ!!」

玄武盾を肩と肘で支えるように構える玄武は、確かに魔力放出に耐えていた。
しかし、このような高密度の攻撃を食らい続けていては、いくら玄武とはいえ砕けてしまうだろう。


「それでいいのか?玄武。そんなんじゃぁ後ろのご主人様が攻められないぜ!!」

セルトマンは気づいている。
玄武自身と、自らの魔力放出のせいでよく見えないが、玄武の背後に誰かがいる。

おそらく、彼を盾として蒔風がそこに潜んでいるのだろう。
だから、全方位への魔力放出を止めなていないのだ。他への逃げ道を与えない為に。


「そのままじゃ砕けるだけだぜ?何の意味もなく終わっちまうぞ!!」

「儂はただ、耐えるのみじゃよ!!」

ビシィ!!という亀裂音。
玄武盾に、ついにヒビが入ったのだ。

耳障りに近い音だが、今に限ってはセルトマンにとって、それは何ら不愉快なものではない。


「じゃあ一気に・・・終わらせてやるァ!!」


ドゥッッ!!と、セルトマンの叫びに呼応して放出される魔力での物理攻撃。

瞬間、ガクンッと身体が傾く。
簡単な話、玄武がいなくなったのだ。

ストッパーがなくなれば、そうなるのは当然だ。


人神体を解除し、武器形態へと戻った玄武盾。
それを掴み、バリアの中を突き進んで来ようとする人影。

「やはりそこにいたか!!」

勝った!!と、セルトマンが全方位に向けていたエネルギーを一方向へと束ねる。
一瞬腕にたまったそれは、砲撃ほどの太さにまで圧縮されて一気に押し出されていく。


「吹っ飛べ!!!」

「・・・・」

放たれる魔力砲撃。

だが


「それは・・・・できません」

ザシュッッ!!!と

雷を纏った青龍刀が、その魔力砲撃を切り裂いた。
振り上げられた青龍刀を握るのは、他でもない青龍本人。

その光景に、唖然とするセルトマン。


「バカな―――――」

脳内でページを開く。
これはアーカイヴに記されていた戦いだ。

そこには確かに、蒔風がいたはずだ――――――!!!


「これでいいでしょうか・・・・主」

「おう。十分だ」


驚愕するセルトマンの背後から、青龍に応える声がした。
肩越しに後ろ足元を見るセルトマン。そこには、居合の姿勢で刀を構える蒔風の姿が


「ギャァッ!!」

「――――っと!!」

そこからは一瞬だった。

刀を振り抜き、セルトマンの悲鳴。
痛みに伴い、自然と上半身が反り返る。

だがギラリと眼光が蒔風を睨みつけ、蹴りでの反撃をするセルトマン。
しかし蒔風はそれをバックステップと後転で退き、回避して距離をとる。



「みんなご苦労」

その一言とともに、周囲に転がる七獣たちが剣となって鞘に収まっていく。
そして、刀に付着したものに手を当てて確認した。


それは、泥だった。
なんの比喩表現も一切なく、本当の意味で泥であった。

多少の血がこびりついたそれを手に取り、確かめるように擦る蒔風。

それを見て、セルトマンが苦虫を噛み潰した顔で問う。



「何故だ・・・・なぜわかった!!!」

そう。
それは正しい答えだったのだ。

だが、なぜわかったというのか。
教えられでもしない限り、この謎に思い至るなんてことは絶対にありえない。

思いついたくらいで至れるほど、そんなヒントは与えていないはずだ―――――!!


「これだよ」

その答えに、蒔風は先ほど拾った書類の一枚を投げつける。
風に乗ってセルトマンのもとに届いたそれが、足元に落ちる。


「な・・・に・・・・!?」

「確か、アーカイヴのラストだと俺はお前と一緒に消えたんだったよな」

「そんな・・・ことが・・・・」

「ああ、今ならわかる。俺がいったい何をしたのかがな」


そこの書類は、一つの報告書。
ただし、興味本位で少し調べた程度のもの。つまりは「EARTH」の公式書類ではない。

そこには、答えのヒントがあった。

書かれている、内容は



「数か月前、日本で見つかった最古の壁画。そこにあった「EARTH」マーク」

蒔風の言葉と書類の文字が、ぐるぐるとセルトマンの頭の中を回っていく。
そのセルトマンに、問答無用で言葉を投げつける。


「壁画に描かれているのは、片方がもう片方の人間の胸元から何かを抉りだしている図だ」

抉り出したほうの人間が掲げているのは、一本の棒。
だが、今ならばこれが肋骨を表しているのだと容易に推測できる。


「そう。お前の謎を解くカギは、とっくの昔に俺の手元にあった」

蒔風が切り裂いたのは、セルトマンの右胸。
正確には、肋骨部分である。

そこにあったのは、なぜか泥だった。


「肋骨、泥。何かあればなと思って斬ってみたが、まさかこんな結果が出てくるとはな」

その二つのキーワード。
さらに、セルトマンの言葉。

「「人間である限り俺を殺せない」だったか?そりゃそうだ。お前は最古の人間とリンクしているんだからな」


神は―――――

五日を掛けて世界を創られ

そして、七日目に休む前に

最後に

「六日目のうちに作られた人間。天地創造において、最初の人類とされているアダム。お前はそいつとリンクしているな?」


セルトマンは答えない。
口を閉ざすばかりである。





アーヴ家の家系図は、遡れる限り数万年前までわかっている。
ただし人類史学者の間では、それが伝説のたぐいであることは証明済みだった。

当然だ。
この星は神の手ではなく、ビッグバンや宇宙の瓦礫を元に出来上がり、生命は神の意志でではなく、太陽との位置関係によって誕生しているのだから。

つまり、天地創造はあくまでも創作上の伝説なのだ。
科学がその伝説を殺した。


だが、そうだとして

ではサルから人類へと進化したとき、一番最初に「人間」として立ち上がった者は、必ず存在する。
ならば、それはアダムと呼ぶべき存在ではないのか。

一哺乳類であった生命体が、人間という種族へと最初に進化した個体は、確実に存在するのだ。
そしてセルトマンは、その流れの最先端に位置する人間だったのだ。


「お前の根源は「流転と循環」だったか。そんな奴がこんな礼装身に着けてたらそりゃ最強だ」

これはセルトマンだけが使える礼装だ。
「アダム」と言えるような存在から血を引く「流転と循環を根源とするセルトマン」が、「世界最古の地層」から掘り出した土で作られた「肋骨」を埋め込むからこそ発動する。


「お前がいくら魔力を使っても、魔力回路が壊れないわけだ」

彼は最新にして最古の存在だ。
それらすべてに負荷を分担すれば、どのようなことも可能だろう。


「お前をいくら傷つけても、そりゃお前は回復・・・っつか再生するわな」

魔術世界おいて、古きモノのほうが力を持つ。
ならば、人類の中で最古であるこの男を傷つけることなど無意味なのだろう。


「しかもお前聖書の内容まで礼装に組み込んでるよな?」

世界最古の殺人は、アダムの息子が弟を殺したものだといわれている。

つまり、アダムは殺されることなく寿命で老いて死んだのだ。
そして仮に殺せるとしても、兄弟程の近しい、もしくは同等程度の存在でなければ彼の命は奪えない、ということだ。



「世界がごっちゃになってるからややこしいがな。お前は「根源」という魔術系統と「聖書」という魔術系統の二つを織り交ぜた複合魔術師ということだろ」

この世界には、様々な法則が飛び交っている。

魔術と一言にいっても、様々なものがある。
わかりやすく世界名でいうなれば「Fate」をはじめ「とある魔術の禁書目録」や「11eyes」等といったものだろう。

この男は、それらの内いくつかを織り交ぜることで、この境地にたどり着いたのである。



「一族ぐるみで封印指定なはずだ。なんぜその血筋そのものが、なんだからな」

「・・・・」

「アーヴ・セルトマン。つまりお前の正体は「最古の人類とリンクした最新の人類」ってことだな?」

「・・・・・・だからどうした?」


蒔風の一方的な言葉に、一切口を挟まなかったセルトマン。
その彼が、結論付けた蒔風に吐き捨てる。


「だからどうした!!今更わかってももう遅い。俺の目的はあとちょいとで達成される!!」

脇腹の傷も治ったのか、指の隙間をあけて、嘲笑するように叫ぶセルトマン。



そうだ。
セルトマンの正体がわかったところで、勝てないことがわかっただけ。

肋骨をどうにかすれば弱体化するのだろうが、彼はそこを必死になって守るだろう。


「ショウも翼刀も唯子も死んで、残るはなんだ?ん?そんな戦力で、俺に勝てると思ってんのか!!!」

「叫ぶなよ、セルトマン。焦りが見えてるぜ?」

以前優位なはずのセルトマン。
だがしかし、彼の顔にははっきりと焦燥が見えて取れる。


「アーカイヴ通りにいかなかったのか?しょうがないさ。この世界はすでに介入を受けている」

「介入だと?」

「「奴」の時に俺が各世界に手を出した時のように、この世界にはすでに手が加えられている、ってことだ」

「は、そんなことが・・・・!!!」

「ん?どうした?」


蒔風の言葉に反論しようとするセルトマン。

まだ修正可能だとでも思っていたのか、アーカイヴを覗き込む。
だが、見る見るうちにその顔は青ざめていく。


「バカな・・・よ、読めない。読めない!!未来の情報が・・・・現時点までの原典しか見れないだと!?」

狼狽するセルトマンに、そうだろうなと腕を組む蒔風。
何かを知ってる風なこの男に、セルトマンが怒りの形相で叫んだ。



「き、貴様!!何か知っているな。何を知っているんだ。何がわかっているんだ!!!」

「俺は知らん。過去に何があったのかも、お前が見た原点に何があったのかも。だが、いえることはただ一つ」

「なに・・・・」

「最初から、決まった未来なんてなかったってことだ」

「ここまで・・・・ここまでアーカイヴの通りにしてきたというのに・・・・なぜだ・・・!!!」

「まぁまぁ。お前さんが慌てるから、こっちは冷静になれたよ。ショウのこととか」

焦りに拍車を掛け、狼狽していくセルトマン。
その彼に、蒔風がなだめるように声をかけた。

セルトマンはやかましいといった視線で睨みつけるも、蒔風は笑みを浮かべて、講義するかのように語りだした。


「魔導八天がな?アリスのところに行ってないんだよ」

世界四剣には、それに対となる剣が存在する。
だが、どちらにも優劣はないのに片方に「反」がつくのはなぜか。


単純な話、反四剣は四剣所有者に応じて所有者を選ぶからだ。
中にはセイバーのような特殊な例もあるが、基本的にはそれに近い存在に与えられる。

蒔風とショウ
翼刀と唯子

ならば、ショウが死んだら魔導八天は誰の手に?


「今の世界でそれを手にできるのはアリスくらいだ。だが、あいつはそれを手にしていない」

つまり、その所有者はまだ死んではいないということだ。

そしてこの男は、蒔風ショウという男が、自分だけ生き残って翼刀や唯子を死なせるような男ではないと信じているのだ。


「だから、あいつが生きている以上は翼刀たちも生きているってこと」

「なんだと・・・・そんな推論、的外れだ!!」

「たった今、アーカイヴだって的を外した。もう逆に何が当たってもおかしくないだろ」

「・・・・む」

蒔風の言葉に一瞬反論しようとするセルトマン。
だが、顎に手を当て一考すると、スゥッと今までの焦りが引いて行くのを見て取れた。

目を閉じ、落ち着かせているのだろうか。
そっと瞼を開き、一息吐いて

「正しいよ」

そう、告げた。


「お前の推測は正しい。今しがた、アーカイヴ防衛プログラムが破壊されたようだ」

セルトマンのが正しいのならば、それはアーカイヴの開放を意味している。

何故だ、等と聞く必要なない。
蒔風には、その原因がわかっている。

「あいつら・・・やっぱ生きてたか」

にやりと、思わず口角が上がる。

みんなが帰ってくると思うと、さらに頬が思わずゆるむというものだ。


「じゃあお前勝ち目ないじゃん。さすがに全員で攻めれば、お前の肋骨くらいは砕けるぜ?なぁ?」

パチン、と
蒔風が何かを感じ取って指を鳴らす。

世界の外に流れる彼らの力を感じ取り、こちらから誘導するように翼力を発した。


すると、蒔風の左右の時空が歪み始めた。

じわじわと歪むそれは徐々に大きくなり、そして一気に穴が開き


「戻った!?」

「おっとと!!」

「ふっ、と」


翼刀、唯子、そしてショウの順に、この世界に三人が帰還してきた。
アーカイヴから放り出され、世界の狭間を漂っていたのだろう。

そしてその三人に、蒔風が飛び掛かった。

「お前らぁ!!!」

ガバリと襲い掛かるように飛び掛かる蒔風。
三人の首に腕を回し、ギッチリと締め付けて抱き寄せて、よかったよかったと何度も頷いては締めていく。


「最初はお前ら死んだかと思って俺ほんとにやばかったんだからな!!!」

「死ぬかバカ」

「そっすよ!!俺らまだまだ死ねません!!」


笑顔を取り戻し、セルトマンへと向き直る。
そして、剣の切っ先を向けて堂々と居直った。


「アーヴ・セルトマン。複数世界における破壊活動及び世界破壊未遂の罪で」

「ジャッジメントだ」

「デカレン?」

「デカレン」


蒔風の言葉にショウが続き、翼刀が懐かしーとぼやく。



流れは自分たちにある。
そう信じてやまない表情だ。

確かに、そうだろう。



アーカイヴは解放され、仲間はじきに帰ってくる。
セルトマンの弱点も判明し、肋骨さえ抉れば一気に勝利だ。


だが、それでもこの男は自分の勝利を諦めてはいなかった。



「それは気が早くないか?」

セルトマンの表情から焦燥が消えていた。
余裕ぶった態度はなくなったが、その顔に先ほどの焦りはもはや微塵も残っていない。


「アーカイヴがなくとも、もうこの段階までくれば俺の勝利は揺るがない」

「そうかよ。おいお前ら、あいつの弱点は肋骨だ。右胸ねらえ」

「遅かったんだよ。お前ら「EARTH」は」



アーカイヴがあるから最終的な勝利は確実。

そんな甘えがあったことを、セルトマンは認める。
その余裕が、今のこの状況を作り出しているのだ。


だが反面、この状況をセルトマンは認める。
これでこそ、自分が乗り越えると豪語していた人物たちだ。

それにそもそも、自分の目的は「王」の召喚。
そして、そいつに打ち勝つこと。


「お前らを乗り越えられないんなら、「王」に挑むのも元々無謀だったってことだ」

「・・・・何を言ってんだ?」

「故にこの程度の状況、大したことではないってことだ!!!」


襲い掛かる、最新最古の人間。


謎は解けた。
対策もわかった。


では、勝利あるのみなのか?








正確には、ここからが正念場である、だ。




to be continued
 
 

 
後書き

わかりにくいセルトマンの正体判明!!


細かく(くどく)説明してみましょう。


セルトマンは「最初の人類」と呼ばれる存在の末裔です。
この場合は「サルから最初に人間に進化した個体」をさしています。

唯子
「じゃあ人類はみんなその人から?」

聖書ではそうなってますが、ここでは「最初に人間になったサル」ということなので、彼から遅れて人間になった存在もいます。
その集団の中で、彼は一番最初だったということです。


その「最初の人類」という存在を創世期に記されている「アダム」という最初の人間と結びつけます。
どちらも最初の人類、という存在なので、関連付けは容易でしょう。

そしてそれを自分とリンクさせることで、セルトマンは「最新最古の人類」となろうとしたのです。


そのために必要だったのが「泥の肋骨」です。
創世期では、アダムの肋骨の一つを抜き取り、泥で作った人形にそれを入れると女「イブ」が誕生した、とされています。

つまり「泥の肋骨」それ一つで、雌雄同体という完全な個体を示してるのです。

翼刀
「それを埋め込むことで、より完全になろうとしたんすね・・・あれ、じゃあセルトマンって男?女?」

「泥」もただの土からではなく、世界最古の地層から掘り出された土で作られたものです。
この礼装の系統は「Fate」系統の礼装ですね。


セルトマンの根源「流転と循環」がこれらに作用し、彼は半永久機関として完成したのです。
無限ループって怖くね?


唯子
「完全な人間、ってこういうことかぁ・・・・」


自らの根源を利用して、血筋と聖書を結び付け、礼装で繋ぎ止めることで完成する。
そんな男なら、確かにアーカイヴ接続も可能でしょうね。


さて、セルトマンの謎もわかったことでフィナーレに向かって突き進みますよ!!

セルトマンが召喚しようとしている「王」とは何なのか。
本来のアーカイヴに書かれていた「結末」の詳しい内容は!?

第六章も、そろそろ最後!!


蒔風
「次回。追い詰められたセルトマン」

セルトマン
「さぁて・・・どうかな?」

ではまた次回

 
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