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とある3年4組の卑怯者

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50 親子(たいせつなひと)

 
前書き
 犬の散歩をするみぎわと西村たかしに出会った藤木と永沢。たかしの飼い犬・タロの親犬の飼い主の家に行くことを約束するのだった・・・!!

 珍しくリリィも笹山さんも出番無し・・・。 

 
 学校で藤木と永沢はたかしに声をかけられた。
「藤木君、永沢君。お母さんと相談したところ、明日学校から帰った後、タロのお母さんに会いに行くことにしたんだ。予定は大丈夫かい?」
「うん、いいよ!」
 藤木は承諾した。
 一方、みぎわは花輪に迫っていた。
「花輪くう~ん、明日西村君の家に行くんだけどお~、一緒に行きましょうよお~」
「So・・・Sorry,Baby,明日は僕は別の用事が入っていて行けないのさ・・・」
「あらあ~残念・・・」
 みぎわは落ち込んでしまった。

 放課後、藤木は自宅に戻るとランドセルを置き、たかしの家へと向かった。たかしは既に飼い犬のタロを連れており、出かける支度は整っていた。たかしの母とまる子もその場にいた。
「やあ、西村君、さくら」
 そして藤木はたかしの母にも「こんにちは」と挨拶した。
 そして、みぎわと永沢もやって来た。みぎわはアマリリスも連れてきていた。タロとアマリリスはお互い「ワン!」と挨拶しながら近づいた。

「よし、そろったね。それじゃあ、行こうか!」
 こうして一行は西村家を出てタロの親犬がいる家へと向かった。
 
 歩きながら、タロとアマリリスは仲良く歩いていた。まる子がそれを見る。
「タロとアマリリスって仲いいねえ。知らなかったよ」
「私達も驚いたわ。ねえ、西村君?」
「そうだね」
「たかし君、みぎわさんとこの際いい友達になれるんじゃない?」
「ちょっと、さくらさん・・・!私には花輪クンという人がいるのよ!」
 みぎわは恥ずかしくなって言った。
「いや、そういう意味じゃなくて・・・」
 まる子はどう釈明すべきか苦労した。

 15分ほど歩くと、一軒の家に着いた。
「ここだよ」
 たかしが到着したことを伝えると、インターホンを鳴らす。そして、一人のおばさんが現れた。
「おばさん、こんにちは!今日は友達も連れてきたんだ!」
「あら、たかし君、そうなの?皆さん、こんにちは」
「こんにちは!」
 皆もおばさんに挨拶する。
「ワン、ワン!」
 1匹の立派な犬も出迎えた。おそらくたかしが言うタロの母親の犬だろう。タロも反応する。
「ワン!」
「はは!タロ、お母さんと会えて嬉しくなってるよ!」
 たかしがこの光景をみて微笑ましく思った。その時、タロがアマリリスを呼ぶように吠える。
「ワン、ワン!」
 アマリリスが「クウン?」と返答した。そして、タロとその母親の元へ行こうとする。
「みぎわさん、きっとタロはお母さんにアマリリスを紹介したいんだよ」
 たかしがみぎわに言った。
「そうみたいね。アマリリス。タロのお母さんに挨拶するのよ」
「ワン!」
 みぎわはアマリリスの縄を首輪から外してタロとその母親の元へ行かせた。
(タロのお母さんはタロと会えて相当喜んでいるな。親子っていうのはそれだけ大切なものなんだ・・・)
 藤木はタロとその親犬を見て親子の大切さを改めて知らされたように感じた。そしてタロとアマリリスの方を見る。
(それにみぎわの犬のアマリリスもタロと仲が良さそうにしている・・・。まるで親友のような大切な友達のように・・・)
 その時、藤木は永沢から声をかけられる。
「藤木君、君もしかしてタロがお母さん犬と会えて感動的に思っているんじゃないのかい?」
「いや、その・・・」
 藤木は返答に詰まった。
「藤木君、永沢君、おばさんが中に入ってお茶にしようと言っているよ~。入ろうよ!」
 たかしが藤木と永沢を呼んだ。
「あ、うん・・・」
 藤木と永沢はおばさんの家に入った。

 おばさんの家では紅茶とクッキーをご馳走になった。
「たかし君はお友達がこんなにいて学校生活が楽しいでしょ?」
「うん、これもおばさんからタロを貰ったおかげなんだ」
 たかしの母がやや感傷的になって付け加えようとする。
「おかげでこの子もいじめられなくなりましたし、学校には遅刻しなくなりましたし、こんなに友達ができて、子犬を貰ってよかったと思います・・・」
 藤木はたかしの母が泣きそうに見えていた。
(西村君のお母さん、西村君を心配していたんだな・・・。そうだよな、いじめられると知ると哀しくなるよな・・・。僕だって皆から卑怯って言われて、父さんも母さんも心配しているもんな・・・)
 藤木は親は子を心配することがどれだけ痛々しいものかを感じることができた。藤木は自分の両親がどうして息子が卑怯になったのか、そしてそれはどちらからの遺伝なのか原因の擦りつけあいの喧嘩をしていたことを思い出した。そのくらい己の卑怯を心配しているからこそ大切なのではないかと藤木は両親の存在の有難みをこの場で感じていた。
「藤木君、何ボーっとしているんだい?」
 永沢に声をかけられて藤木は我に返った。
「あ、いや、何でもないさ!!」
 
 こうして皆は帰ることになった。皆はおばさんに「さようなら!」と挨拶した。みぎわがアマリリスを、たかしがタロを呼び、二匹はタロの母親と別れた。タロもその母親も寂しい表情をしていた。
「大丈夫だよ、タロ。また会いに行くからさ」
 たかしがそういうとタロは「ワン!」と返事した。帰る途中、たかしの母が皆に礼をする。
「皆さん、本当にありがとうございました。これからもウチのたかしと仲良くしてください・・・」
「はい、こちらこそありがとうございました」
 まる子も礼で返した。
「皆、来てくれてありがとう」
 たかしも皆に礼をした。
「西村君、こっちこそありがとう。ウチのアマリリスもアナタのタロと仲良くなったし、また一緒に散歩できるといいわね」
「うん、楽しみだね」
「そうだ、今度は花輪クンも入れて散歩したいわねえ~、花輪クンもミス・ビクトリアって犬がいるのよ~」
「はは、それは楽しみだね・・・」
 たかしもみぎわの花輪好きに少々引きながらも、いい考えだと同感していた。
 帰る道がそれぞれバラバラとなっていく。一人になった藤木はたかしの犬・タロとその親犬、そしてみぎわの犬・アマリリスのことを思い出していた。
(タロとタロのお母さんってお互い思いやりがあってどっちにとっても大切な存在だったんだな・・・。タロはアマリリスと仲良くなってお互い大切な親友のようになっていたしな・・・)
 そして藤木は自分が好きな女子二人は自分を大切に思ってくれているのか気になった。
(僕にとってはリリィも笹山さんも大切な存在なんだ。会えなくなると寂しいさ・・・。でも二人は僕と会えなくなるとどう思うんだろう・・・?)
 その事は藤木には想像できぬ事であった。 
 

 
後書き
次回:「大阪」
 城ヶ崎が全国ピアノコンクールに出場することになった。藤木達は彼女の応援のためにコンクール開催の地・大阪に向かう・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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