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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第17話 探索、洞窟の砂浜!美食屋ココの悲しき過去

side:小猫


 ココさんの家を後にした私たちは洞窟の砂浜の入り口に来ています。いよいよグルメ食材の捕獲が本格的に始まりそうです。


「全く……うちの食材をほとんど平らげたと思った途端に出発とは。相変わらずせっかちな奴だ」
「思い立ったら吉日!その日以降は全て凶日だぜ、ココ兄!」


 あまり乗り気ではないココさんとは逆にイッセー先輩は張り切っています。ココさんが乗り気じゃないのは死相とやらが原因なのでしょうか?


「それにしてもこの辺りに人が沢山いるのは何故かしら?」
「美食屋にしては殺気だってますね」


 部長と祐斗先輩は洞窟の砂浜の入り口周りにいる人たちを見て怪訝そうな表情を浮かべています。


「あいつらは殺し屋や盗賊だ。大方捕獲したフグ鯨を奪う為にああやって待ち構えてるんだ」
「こ、殺し屋さんですか……イッセーさん、私怖いです……」
「大丈夫だ。あの程度の奴らに遅れは取らんさ」
(……ほぼ全員に死相が見えるな。僕やイッセーが手をかけるとは思えない……それだけの奴が中にいるのか?)


 アーシアさんが殺し屋と聞いて怯えますがイッセー先輩から食材を奪えるなんて到底思えません。それよりもココさんが何か警戒するような表情を浮かべているのが気になりました。


「うおおおおぉぉぉっ!!!帰るぞーーーーっ!!!」
「えー!?ゾンゲ様、フグ鯨は!?」
「もう止めだ、止め!!もうキモいこの洞窟!!」


 洞窟の砂浜の入り口から大きな声を上げながら誰かがこちらに走ってきました。ってあの人は……


「---っ……に、逃げ切れたようだな……ん?あ!てめぇらは!?」
「何だ、誰かと思ったらさっきのおっさんじゃねえか。たしかサ〇ゼリアだったっけ?」
「誰だソレ!?ゾンゲだよゾンゲ!美食屋ゾンゲ様だ!なんか美味そうな名前だな!?」


 先輩、それはとあるレストランの名前ですよ……


「もしかしてフグ鯨を捕獲できたのか?」
「ん!?あ…ああ……そーだなァ、捕獲する直前まで行ったんだが……」
((嘘ついてるーーーっ!))
「ほ、ほらあれだ!簡単に捕獲出来たらつまらねえだろう!俺様はRPGとかもやりこんでからクリアするタイプだしな!ラスボスとかもサブイベントとか最強装備をそろえてからとかやってからじゃねえともったいねぇだろ?」
「まあ確かに俺もトロフィーとか全部取りたい派だしな……」


 ゾンゲの滅茶苦茶な言い訳にイッセー先輩は信じ込んでしまいました。先輩って意外と天然なんでしょうか?


「さてと、俺たちもいい加減に出発するとするか!じゃあな、ゾンビ!」
「だからゾンゲ様だって言ってるだろうが!!」


 叫ぶゾンゲを後にした私たちは洞窟の砂浜内部に入りました。中はとても広いですが暗い暗黒の世界が広がっていました。


「真っ暗ね……私たち悪魔は暗闇でもよく見えるけどそれでも見づらいと感じるなんてよっぽどの暗さなのね」
「ええ、注意しないといけませんわね」


 私たち悪魔は暗闇でもよく見える目なんですがそれでも注意して進まなくてはいけない程の暗さです。


「アーシアはライトを付けて俺の傍にいるんだ。離れるなよ?」
「はい、お願いしますイッセーさん」


 イッセー先輩はアーシアさんと手を繋いでいくようです。羨ましいですが流石に自嘲しないと……


「僕が先導しよう。皆は離れないようについてきてくれ」


 ココさんはそう言うと先に奥に向かっていきました。こんな暗いのに大丈夫でしょうか?


(暗闇は好都合だな……人は視覚からほとんどの情報を得る。悪魔は分からないが少なくとも慎重な行動をとるはずだ……)
「先輩!ここにキノコが生えてますよ!」
「あーーーっ!『ポキポキキノコ』じゃねえか!」
(ってもう勝手な行動しとるーーーっ!?)


 ココさんが大きなお口をあけて驚いてますが何かあったんでしょうか?私はポキポキキノコを食べながらそんなことを考えてました。



ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


 私たちは洞窟の砂浜を進んでいますが急斜面だったり急に通路が狭くなったりとする道に悪戦苦闘しています。ただでさえ視界が悪いのにこれじゃあ上手く進めません。


「グルメ食材を取るのって本当に大変なのね……正直舐めていたかもしれないわ」
「でもココさんは人間なのによくこんな暗闇をスイスイ進めるね」


 私たち悪魔でも見づらいこの暗闇をココさんはまるで気にもせずに進んでいます。


「ココ兄は目がいいんだ、とは言っても視力じゃないぞ。ココ兄の目は普通の人間が見える可視光線の波長を大きく超える電磁波まで捕えることができるんだ。錐体細胞の種類と視細胞の数が多い為赤外線から弱い紫外線まで見えるらしい。ココ兄からすればこの暗黒の世界も真昼間のように見えてるだろうぜ」


 む、難しい言葉が多くて内容はよく分かりませんがとにかくココさんの視覚は凄まじく凄い事だけが分かりました。先輩の嗅覚もそうですがもしかして四天王という方々は五感のどれかが驚異的に凄い方々なのでしょうか?


「む、皆止まってくれ」


 先導していたココさんが止まれという合図をされたので皆が立ち止まりました。


「どうかしたんですか、ココさん?」
「静かに……よーく目を凝らして下を見てごらん」
「下ですか?」


 どうやら先は大きな段差になっておりその下になにかいるみたいです。そういえばさっきからガサガサと音がしますがそれが関係してるのでしょうか?


「……!?ッな、何あれ!?」


 部長が何かを捕らえたようです。ようやく目が慣れてきたのか下にいる何かが見えてきました……って何ですかあれは!?下にはゴキブリのような昆虫が大量に潜んでいました!


「あれは『サソリゴキブリ』!!ここはあいつらの巣か!?」


 サソリゴキブリという生物なんですか?女の子には受け入れがたい生物です。


「きゃぁぁぁ!?」


 その時でした、私達以外の悲鳴が聞こえたと思ったら何かがサソリゴキブリの巣に落ちていきました。


「あれは他の美食屋か!?不味いな、ほっといたら数秒で骨にされちまうぞ!」
「なら早く助けないと!」


 私は急いで巣の中に落ちた美食屋の人を助けに行こうとしましたが先輩に止められました。


「待て小猫ちゃん!サソリゴキブリは猛毒を持っている、悪魔の君でも危険な毒だ!」
「じゃあどうするんですか!」


 こうしている間にもサソリゴキブリが落ちた人を襲おうとしています。


「皆、下がっていて。ここは僕が行こう」


 ココさんはそう言うと巣の中に向かって飛び込みました。


「ココさん!?危険ですわ!」
「止めるんだ、ココさん!」


 朱乃先輩や祐斗先輩も止めようとしましたが間に合いませんでした。このままじゃココさんまで……!


 でも私たちの心配は憂鬱に終わりました。何故ならサソリゴキブリはココさんを襲うどころか一斉にココさんを避けるように逃げていったからです。


「ど、どうなってるの……?」


 部長が困惑したようにそう言いますがオカルト研究部の全員が驚いています。何に驚いたかというとサソリゴキブリがココさんを避けたからではなくココさんの体のほとんどが紫色に変色していたからです。


「大丈夫かい?」
「あ、はい……ありがとうございます」
「怪我はないようだね。よし、皆も降りてきてくれ。今のうちにここを通り抜けよう」


 私たちは困惑しながらもココさんの指示に従い無事にサソリゴキブリの巣を抜ける事が出来ました。


ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー


「うっそ―――――っ!?美食屋ココ!?まさかこんな所で四天王の一人に会えるなんて!これは滅茶苦茶美味しいニュースになりそうね!」
「クルッポー!」


 何とココさんが助けたのはティナさんでした。でもどうしてティナさんがここにいるんでしょうか?


「おいティナ。お前なんでこんな所にいるんだよ」
「それが聞いてよイッセー。私、フグ鯨の映像を取るために美食屋を雇ってここに来たんだけど速攻で裏切られて猛獣の囮にされたの!それで死に物狂いで逃げてたら穴に落ちちゃってあそこに出たわけなの」
「運がいいのか悪いのか……その行動力だけは本当に凄いな」


 前も危険な場所に来ていたしティナさんって結構アグレッシブな人なんですね。


「イッセー、この人は知り合いなの?」
「初めまして、私グルメリポーターのティナと申します。っていうかイッセー、誰よこの美少女は?もしかしてイッセーの彼女かしら?」
「俺の仲間だよ。こっちからリアスさん、朱乃さん、そして祐斗だ」


 簡単な自己紹介を済ませた後ティナさんも一緒に先に進むことになりました。
 本当は危ないからやめておいた方がいいと私は行ったんですが、今から入り口に戻るのも面倒だし本人が覚悟して来てるならいいだろうとイッセー先輩が言い、ココさんも渋々それに同意しました。


「あの、ココさん?」
「うん?何だい小猫ちゃん?」
「その、さっきの姿は一体何だったんでしょうか?」


 さっきの紫色になった現象がふと気になったのでココさんに質問してみましたがココさんは少し嫌な事を思い出したような苦い表情をされました。イッセー先輩も何か言いにくそうな様子でしたがもしかして地雷を踏んでしまったのでしょうか?


「あ、もしかして言いにくい事ですか?すみません、私ってば軽率な事を……」
「いや、もう見られているし隠す事でもないさ。さっきのあれは毒を出していたんだ」
「毒……ですか?」
「そう、僕は体内に毒を持ってるのさ。僕たち美食屋の多くは毒を持つ生物に対抗するためにあらかじめ人工的に免疫を作ることがあるんだ。自然界にある毒草や毒を持った虫、それらの毒を微量ずつ定期的に体内に入れる事によって人工的に免疫を作るんだ」


 なるほど、あらかじめ毒に対する免疫を作ることによって毒が効かないようにしているんですね。


「だが自然界に存在する毒の種類は数百とも数千とも言われている。全ての毒に対しての抗体を作るのは実質不可能……俺で大体70種類だがココ兄は500種類の抗体を持っている。美食屋でもトップの数だ」


 500種類ですか!?そんなにも抗体を持ってるなんて凄いです!


「はは……僕は常人では耐えられない量の毒に耐えられる体を持っていた。でも余りにも短期間に多くの毒を注入した結果僕の体内で毒が混ざり合い新たな毒が生まれてしまった。さながら僕は毒人間ってところか……全く品のない存在さ……さあおしゃべりはここまでにして先を目指そう。洞窟の砂浜はまだ先だ」


 ココさんは自虐するように笑って一人で歩いていってしまいました。その背中は何だか悲しそうに見えました。


「ココさん、何だか寂しそうです……」
「……多くの科学者やIGOの医療班などがココ兄の血液から新たな血清を精製しようと追いかけまわしたこともあったしココ兄本人が第一級の危険生物として隔離されそうにもなったことがあるんだ。美食屋を離れたのもそういったしがらみから抜け出したかったんだろう」


 危険生物だなんて……まだ出会って少ししかたっていませんが私はココさんは危険だなんて思いません。先導しているときによく危ない場所を注意をしてくれたりさっきだって何も言わずにティナさんを助けてました。先輩と同じでとっても優しい人だって思います。きっと皆そう思っています。


「私はココさんが怖いなんて思いません」
「わ、私もココさんはいい人だって思います!」
「ふふっ、私も同意見ですわ」
「イッセー君のお兄さんが怖い人な訳がないよ」
「ええ、皆そう思ってるわ」
「私も今日初めて四天王ココにあったけどやっぱり噂なんてアテにならないわね。真実は自分の目で見なくちゃ」


 やっぱり皆も私と同じように思ってくれています。


「……そうだな、俺だってそう思うさ。ココ兄は自慢の兄貴だから……皆ありがとうな、皆ならきっとココ兄も本当の意味で心を開いてくれるはずだ。やっぱり皆は最高の仲間だよ」
「イッセー先輩……」


 イッセー先輩も嬉しそうに笑ってくれた。ココさんにも笑ってほしいです。だから私たちの素直な気持ちをココさんに伝えます。


「行きましょうアーシアさん!」
「はい、小猫ちゃん!!」


 私とアーシアさんは走って先に歩いていったココさんに向かってダイブしました。


「なっ!?一体どうしたんだ二人とも!?」
「えへへ、何でもないです」
「それよりもココさん、イッセーさんの小さい頃ってどんな感じだったんですか?私知りたいです!」
「あ、それは私も知りたいです!どうなんですか、ココさん?」


 グイグイとココさんに引っ付いて怖くないよってアピールする私たち。ココさんは動揺してるけどもっともっと仲良くならないと!


「き、君たち離れるんだ!僕には毒が……!」
「毒なんて皆持ってますよ。私も小さい頃は毒舌でしたし」
「ココさん、『水清ければ魚棲まず』です。人間毒があったほうが好まれますよ」
「き、君たち……」


 ココさんの気持ちは私も分かります。私も部長達に出会うまでは辛い思いをいっぱいしてきました。でも今は辛いことがあっても仲間が支えてくれます。だから私たちもココさんを支えます!


「はっはっは!ココ兄モテモテだな!」
「ココさん、私にもイッセー君や貴方の事を教えてくれませんか?」
「僕も知りたいです、ココさん」
「ふふっ、皆仲良しね」


 ココさん、私たちはもう既に仲間じゃないですか!頼りないかも知れないけど私たちの前では本当の自分を出してほしいです。



「……(この子たちに恐怖心は無いのか……?いやこれはこの子たちの純粋な優しさか……イッセーが気に入った理由が分かったよ)……ありがとう、皆」
「えへへ、どういたしまして」


 さあ、皆でフグ鯨をゲットしに行きましょう!!


 
 

 
後書き
やあ皆、ココだ。イッセーの仲間たちは本当にいい子たちばかりだ、出来れば死なせたくないがどうやら油断のならない相手が出てきたらしい。次回第18話『激突!デビル大蛇!唸れ5連釘パンチ!!』で会おう。奴の毒と僕の毒…どちらが有害か勝負してやる…!! 
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