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とある3年4組の卑怯者

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48 送別

 
前書き
 隣町の暴れん坊と遭遇してしまった藤木達。彼らの悪行を食い止めるための戦いが始まるが、苦戦してしまう!! 

 
 藤木は花輪を縄跳び用の縄で叩きつける暴れん坊の親分・山口のぼるに近づいた。
「やめろ・・・!」
 藤木は痛みでよろけながら歩いた。そして渾身の力で暴れん坊に飛び掛かる。しかし、簡単によけられて藤木は無様に地面に着地した。はま時やブー太郎たちも子分の一人に対峙している所で手出しできる場面ではない。
(もうだめか・・・!)
 藤木は絶望に陥った。しかし、花輪は何とか縄を手に取り、暴れん坊にキックをかました。その蹴りが股間に当たり、山口は痛みでうずくまった。花輪は縄を取ってその場に投げ捨てる。
「ふう、ちょっと怯んでしまったよ、baby」
「このヤロウ・・・!何がベイビーだア!オイ、オメエら、コイツにかかれエ!!」
 山口は子分に集団で花輪に襲い掛かるように促した。
「そ、そーはさせねー!」
 はまじとブー太郎が必死で子分の一人にしがみつき、動きを封じようとした。
「このっ!放せ!!」
 子分の一人ははまじとブー太郎を振り払おうとした。他の子分に対して藤木が足に絡みつく。
「そうはさせるか・・・!」
「邪魔すんじゃねえ!この!」
 子分は足にしがみつく藤木を蹴って払おうとした。しかし、藤木は簡単に離れようとはしない。そして、ズボンの裾を掴んでズボンをずり落とさせた。
「ふざけんじゃねえ、この変態!!」
 子分は藤木の顔面を殴った。藤木は鼻をぶつけられ、手で鼻を抑える。幸い鼻血は出なかったが、藤木は痛みで片手を抑え、振り払われた。はまじもブー太郎も殴り飛ばされてしまい、山根は胃腸の痛みで動けず、山田も簡単に撥ね退けられる。永沢は動くことすらできなかった。暴れん坊の集団は花輪に近づく。花輪も少し落ち着きを失ってしまった。
(やれ、懲りないな・・・)
 武道を習っている花輪なら対処できなくもないが、縄で叩かれたダメージ
もあり、やや疲れが見えた。その時・・・。
「坊ちゃま!皆様!!大丈夫ですか!?貴方達は一体何をやっておいでですか!?」
 ヒデじいが飛び込んできた。花輪の母も来た。
「カズちゃん!!大丈夫!?」
「Mama・・・ヒデじい・・・」
「坊ちゃまが喧嘩なんて・・・」
「やめなさい、貴方達!私の子に何するの!?」
 花輪の母が怒りの形相を見せた。
「チッ、大人を召喚しやがったか・・・」
 親分・山口は厄介事になったと思った。
「お、おばさん!花輪は悪くありません!!こいつらが公園を占領して遊んでいた子供達を追い出したのがわりーんです!!」
 はまじが花輪の母に必死で訴えた。
「う、うるせえ!!」
 子分の一人がはまじの顔を蹴る。
「そこの貴方、蹴る必要などないでしょうが?」
 ヒデじいがはまじを蹴った子分を睨みつけた。
「ウ、大人だからって、調子に乗るなよ・・・!」
「じゃあ、貴方達は真面目な事やっているとでも言いたいの!?弱いものいじめしかしていないように見えるけど!!」
 花輪の母が言う。
「貴方達のお父さんやお母さんに言った方がいいかしら?電話するから番号教えなさい!」
「ウ、く、くそ、覚えてろ!オマエら、今度はこれで済むと思うなよ!」
 山口は皆にそう吐いて子分を連れてその場を逃げるように走り去っていった。こうして(いくさ)は終戦した。
「カズちゃん、大丈夫!?」
「だ、大丈夫だよ、mama」
「貴方達も大丈夫?」
 花輪の母は息子のみならず、皆を心配した。
「オ、オイラはだ、だいじょうぶだけど、みんな・・・」
 山田が涙目になって言った。リリィも藤木も体中あちこち殴られ蹴られたためあちこちに痣ができていた。はまじやブー太郎は顔が変形したかのように殴られ蹴られたところが腫れあがっていた。山根は胃腸の痛みで硬直したままで、永沢は比較的軽傷だった。
 藤木はリリィに無様なところを見せて情けなく思っていた。以前彼女が笹山と共に上級生の女子に絡まれた時、助けに行こうとして、結局自分も一緒にやられてしまい、その後、まる子の姉とその友達の助けがあって問題は終結できたものの、自力でリリィと笹山を守れず、自分がみっともなく思った。二人は助けに入った藤木には謝意を表していたものの、もっと強くなりたいと思っていた。あの時と同じで好きな女子(リリィ)の前で恥をかいてしまい、これではリリィは自分に失望して嫌いになるのではないかと藤木は落ち込んだ。
 先ほど暴れん坊たちにいじめられていた男子二人が近づき、礼を言う。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん達、そしておばさん、おじいさん、ありがとうございます・・・」
「大丈夫さ、君達も傷を負っているけど大丈夫かい」
 花輪は笑顔で男子たちに言った。
「うん、家で消毒してもらうよ、さようなら」
 二人の男子は花輪達に敬意を表して帰った。
 その時、まる子たちが駆け付けた。
「ハア、ハア・・・」
「Kazu!Are you OK!?(カズ、大丈夫かい!?)」
「Y,year・・・.I’m OK.(ああ、大丈夫さ)」
 マークが花輪を心配した。そしてみぎわも勢いよく近づく。
「花輪くう~ん、可愛そうね、私のダーリンにこんなひどい目に遭わせて!!」
「もういいよ、baby・・・」
 みぎわの必要以上の気遣いに花輪は苦笑した。
「リリィ!?」
 メイベルはリリィを呼んだ。
「大丈夫よ・・・、藤木君が私を守ろうとしてくれたから・・・、ね?藤木君?」
「いや、僕じゃないよ、花輪クンが助けたんだよ・・・」
「でも、真っ先に私を助けようとしたのは藤木君じゃない・・・」
「そうだけど・・・」
 メイベルは藤木の方を向く。
「アノ、私の友達を助けてくれて、アリガトウ・・・」
「え?あ、うん・・・」
 藤木はメイベルに礼を言われて少し照れた。
「怪我をしているようね。ヒデじい、怪我をしている子たちを車に乗せて!」
「畏まりました、奥様」
 ヒデじいは負傷した藤木、リリィ、はまじ、ブー太郎の4人を車に乗せた。山根は胃腸の痛みは引いたようで、山田や永沢、花輪は軽傷のため、まる子達に支えられながら歩いた。

 藤木達4人は花輪家のお手伝い達に手当てをしてもらっていた。
「まったく、懲りねー奴らだな!」
「ホントムカつくブー!」
 はまじとブー太郎はイラついていた。花輪の母達が戻ってきた。
「皆、もう大丈夫かい?」
 花輪が聞いた。リリィが答える。
「ええ、大丈夫よ」
「それじゃあ、マークも僕のmamaもそろそろ帰る時が来てしまってね、みんなで見送りに行こうじゃないか?リリィクン、メイベルクンも帰るんだろ?」
「エエ、そうよ」
「ヒデじい、皆の荷物を車で駅まで送ってくれるかい?」
「畏まりました、坊ちゃま」
 ヒデじいはマークと花輪の母の、そしてヒロオカ家の荷物を車に入れて、出発した。
「それじゃあ、僕たちは電車で静岡駅に行こうか、mama、いいよね?」
「ええ、いいわよ」
 
 こうして一同は歩いて駅へ向かった。メイベルがリリィに聞く。
「リリィ、藤木君って人貴方が好きなの?」
「う・・・、実はそうなの・・・、良く分かったわね」
「ダッテ、あの時、彼あなたを助けようとしたから、もしかしてって思ってね」
 藤木もその話を聞いてドキッとした。
「うん、その通りさ・・・」
 藤木は恥ずかしがりながら言った。
「フフッ、いいカップルになれるわね・・・」
「ちょっと、メイベル!」
 リリィが恥ずかしがる。
「リリィは嫌なの?」
「う・・・、嫌じゃないけど・・・」
 リリィは藤木をやや意識してしまった。
(リリィ、もしかして僕の事を・・・)
「藤木君、君まさかリリィに期待しているんじゃないのかい?」
 永沢が不意に聞いてきた。
「いや、そんなことないさ!!」
 藤木は慌てて誤魔化した。
「藤木君」
 藤木はメイベルに話しかけられた。
「何だい?」
「リリィとの仲、応援してるわ。今度私がまた日本に来たときスケートに行こう・・・」
「うん、いいよ」
 藤木はメイベルとまた会う日を楽しみにした。

 静岡駅に着き、一同は花輪の母やマーク、そしてメイベルの家族が乗る新幹線を待っていた。
「カズちゃん・・・、また帰ってくるときは手紙出すからね・・・」
「うん・・・、mama・・・」
 花輪は母親と別れることを寂しがっていた。マークは皆と握手をしていた。
「マーク、また会おうね!」
「OK!OK!Mata yoroshiku!!」
「マークう~、私にも握手を・・・」
「OK!OK!」
 マークはリリィにも握手した。リリィも英語で返す。
「Thank you Mark!It was very pleasant!(ありがとう、マーク!とっても楽しかったわ!)」
「Me too,Lily!(僕もだよ!リリィ!)」
 マークは藤木にも握手した。
「楽しかったよ、マーク」
「Me too!Hahaha!」
 そしてメイベルも皆と握手した。
「アリガトウ、皆さん、また日本に来れたらいいなと思います」
「おー、待ってるぜ!」
 東京行きの新幹線がやって来た。花輪の母、マーク、メイベルとその両親が列車に乗りこんだ。
「皆さん、またね」
「Good bye!」
「サヨウナラ!」
 列車のドアが閉まり、発車する。皆は手を振った。
「それじゃあ、皆帰ろうか・・・」
 花輪はそう言ってホームを後にした。皆が付いて行く。その途中、山根が藤木に話しかける。
「藤木君、君今日はリリィを助けようと頑張っていたね。今日の君は全然卑怯じゃなかったよ」
「ありがとう、山根君・・・」
 藤木は山根に礼を言うと共に自分でリリィを守れるくらい強くなりたいと思った。 
 

 
後書き
次回:「愛犬」
 みぎわは愛犬・アマリリスと散歩をしていた。その途中で、自分と同じく犬の散歩をしているクラスメイトの男子と遭遇する・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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