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遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
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―OVERLAP―

『準備はいいか、遊矢』

「バッチリだ」

 どこかから聞こえてくる三沢の声に相槌を打つと、周りの風景を改めて見渡した。そこには辺り一面に海と天空が広がっており、人工島に設えられた巨大な塔の頂点だった。そこはかつてあったバトルシティの決勝の地であり、どう見ても先までいた三沢の研究室ではない。

『外部からも問題はない。ARデュエルシミュレーターを起動する』

 何故なら俺が見ている光景は現実世界の風景ではなく、新たなデュエルディスクによって生み出された拡張現実――いわゆるAR空間と呼ばれるものだからだ。現実を空想によって拡張することで、あたかも異なる世界に見えるようにする技術は、海馬コーポレーションの新たなデュエルのための一端だった。

「デュエルシミュレーター、か……」

 そうして今回の俺の仕事は、新たなデュエルディスクとAR空間、さらにデュエルシミュレーターのテストである。今までのまさしくコンピュータといったものではなく、拡張現実にしか出来ないデュエルシミュレーターということだが……

『デュエルシミュレーター、起動!』

 外部からシステムの操作とチェックを行う三沢の声に反応するかのように、闘技場の相対する側へと新たな人影が現れていた。それは拡張現実で生み出されたものと分かっていても人間にしか見えず、いや、それ以上に――見覚えがあった。炎を思わせる金色のメッシュが入った黒髪に、学生服をマントのように羽織っていて、今では見られなくなった旧型のデュエルディスクをつけていた。

「さあ……ゲームの時間だ」

 不遜な物言いに比例するような、自信に満ちた揺るがない瞳。その姿を知らないものはデュエリストの中ではいないだろう――何故なら、彼はそのデュエリストたちにとって頂点に立った男なのだから。

「武藤……遊戯……!?」

「どうした? デュエルする前から腰が引けてるようじゃ、ハッキリ言ってオレには勝てないぜ!」

 デュエルキングが当時のままの姿でそこにはあった。拡張現実によって生み出されたものだと頭では分かっていても、その圧倒的な威圧感に尻込みしてしまうこちらの様子に、デュエルキングは嘆息しながらそう語っていて。そうした態度に先のカイバーマンの時も同様のことを言われたと思い返し、俺の身体もピシリと止まると、新型デュエルを剣のように相手へと構えてみせる。

「……誰がだ」

「……OK、相手してやるぜ。お前の持てる全ての戦術でかかってきな!」

 ……そんなこちらの殺気に、デュエルキングも何とか俺を相対する敵だと見なしてくれたらしい。ベルトに備え付けられたホルダーからデッキをセットし、旧型デュエルディスクが変形することでデュエルの準備が完了する。元よりこちらはデュエルするために来たのだと、もう準備は万端だと示してみせて。

「オレはその先を行くぜ!」

「いや、楽しんで勝たせてもらう!」

『デュエル!』

遊戯 LP4,000
遊矢 LP4,000

「オレの先攻」

 先攻はデュエルキング。彼が王だった時代にはまだ先攻によるドローは可能だったはずだが、もちろんその辺りは調整済みとでも言うべきか。

「オレは《マジシャンズ・ロッド》を召喚し、効果を発動! デッキから黒魔術師のサポートカードを手札に加える」

 そうして召喚された黒魔術師の杖だったが、アレはバトルシティにおけるデュエルキングのデッキには投入されていなかったカードと、アカデミア本校に展示されていたものを思い返す。ルールだけでなくデッキもアップグレードされているらしく、旧型なのは外見だけかと気を引きしめる。

「さらに装備魔法《ワンダー・ワンド》。このカードと装備モンスターを墓地に送ることで、カードを二枚ドロー! ……さあ行くぜ! オレは《融合》を発動!」

 黒魔術師のサポートカードを手札に加える、という役目を果たした《マジシャンズ・ロッド》は《ワンダー・ワンド》とともに墓地に送られ、二枚のドローとして変換される。そうして補充した手札で発動される《融合》だが、デュエルキングが手始めに召喚する融合モンスターと言えば。

「《有翼幻獣キマイラ》を召喚! カードを一枚伏せ、ターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー!」

 よって相手のフィールドには、切り込み隊長たる《有翼幻獣キマイラ》とリバースカードが一枚。アレが《マジシャンズ・ロッド》によってサーチされた黒魔術師のサポートカードならば、直接は《有翼幻獣キマイラ》をサポートするカードではないということだが。

「俺は《マックス・ウォリアー》を召喚!」

 ……何にせよ、まだ相手は様子見をしている段階ということだ。ならばこちらとしては、様子見などと驕ってみせるなと示す必要がある。

「《マックス・ウォリアー》で《有翼幻獣キマイラ》に攻撃!」

「だがキマイラの方が攻撃力は上!」

「いいや、マックス・ウォリアーの攻撃力は、相手へと攻撃する時に400ポイントアップする! スイフト・ラッシュ!」

遊戯LP4,000→3,900

 こちらのデッキの切り込み隊長として対抗した訳ではないだろうが、マックス・ウォリアーの怒濤の突きは一瞬にしてキマイラを破壊してみせた。そうすることによって、お前が様子見で出したモンスターなど、下級モンスターだけで倒せるのだと無言で威圧する。

「《マックス・ウォリアー》は相手モンスターを戦闘で破壊した時、攻撃力、守備力は半分になる」

「《有翼幻獣キマイラ》は戦闘破壊された時、墓地から融合素材を一体だけ特殊召喚する。来い、《幻獣王ガゼル!》」

「カードを二枚伏せて、ターンエンド」

「オレのターン、ドロー!」

 そんなこちらの威圧が相手に伝わったかは分からないが、心なしかデュエルキングがピクリと反応する。お互いに戦闘終了後の処理を完了させるとともに、カードを二枚伏せてターンは相手へと移っていく。

「オレは永続魔法《黒の魔導陣》を発動! デッキトップを三枚めくり、その中に《ブラック・マジシャン》、もしくはそのサポートカードがあれば手札に加える!」

 フィールドに現れた魔導陣に浮かぶ三枚のカード。その中に存在した一枚のカードがデュエルキングの手の内に納められ、ニヤリと笑いながらこちらへと示してみせて。まさか、とこちらが思うよりも早く、伏せられていた一枚のカードが発動される。

「リバースカード、《マジシャンズ・ナビゲート》! 手札とデッキから黒魔術師を特殊召喚する! 現れろ、最上級魔術師とその弟子よ!」

 フィールドに集結する二体の黒魔術師。デュエルキングの代名詞とも言える《ブラック・マジシャン》と《ブラック・マジシャン・ガール》の二体の登場に震える間もなく、発動していた《黒の魔導陣》が再び光を発していた。

「そして《黒の魔導陣》の効果。《ブラック・マジシャン》が特殊召喚された時、相手のカードを一枚除外する! 魔導波!」

「くっ……チェーンしてリバースカード《トゥルース・リインフォース》! デッキからレベル2以下の戦士族モンスターを特殊召喚する! 現れろ、《マッシブ・ウォリアー》!」

 《黒の魔導陣》から力を得た《ブラック・マジシャン》の一撃は、攻撃力が半分となった《マックス・ウォリアー》ではなく、伏せられていたリバースカードを標的とする。幸いに狙われたカードはフリーチェーンの罠カード《トゥルース・リインフォース》であり、デッキから《マッシブ・ウォリアー》が特殊召喚される。

「バトル! 《幻獣王ガゼル》、《ブラック・マジシャン・ガール》! 《マッシブ・ウォリアー》を破壊せよ!」

「っ……!」

 《マッシブ・ウォリアー》には一度だけ戦闘では破壊されない効果があるものの、《幻獣王ガゼル》と《ブラック・マジシャン・ガール》の連携により、そんな効果などないかのように破壊されてしまい。そうしてお互いのフィールドに残り対峙するのは、かの《ブラック・マジシャン》と《マックス・ウォリアー》。

「さらに《ブラック・マジシャン》で《マックス・ウォリアー》に攻撃! 黒・魔・導!」

「伏せてあった《ガード・ブロック》を発動! 戦闘ダメージを0にしカードを一枚ドローする!」

 《マックス・ウォリアー》の半減した攻撃力をカバーするために伏せていた《ガード・ブロック》が幸いし、何とか《ブラック・マジシャン》たちからのダメージを防ぐことに成功する。こちらのフィールドはがら空きになってしまったが。

「……だが、こいつはどうかな? メインフェイズ2、オレは三体のモンスターをリリースし――」

 ――しかして魔術師たちの攻撃までが様子見だったかのように、三体のモンスターがリリースされていく。通常は必要な素材は二体のはずだが、そんなルール程度を越えていく――そんなモンスターは、まさしく神と呼ばれるモンスターだ。天が雷雲によって支配されていき、そこから真紅の巨大な龍の顎が姿を見せる。

「天空の神! 《オシリスの天空竜》を召喚する!」

「オシリス……!?」

『馬鹿な!? デュエルシミュレーターには神のカードなど搭載されていないぞ!』

 もはやこの世から失われたはずの神の存在に対して、外部からシステムを見守ってくれている三沢からも驚愕の声が響き渡る。デュエルシミュレーターには搭載されていないカードの存在、明らかに異常事態でしかなかったが……

「……三沢。このままやらせてくれ」

『遊矢、気持ちは分かるが、だが……』

「この場所で神と戦えるなんて、何だろうと逃すつもりはない!」

 かのバトルシティ決勝の地。そこに残された王の記憶などとオカルトな話だろうと何だろうと、今、この時しか出来ない経験だ。譲るつもりも逃すつもりはないと三沢に語ると、外部からは諦めたような嘆息が聞こえてきた。

『……危険があればすぐ中止する』

「ああ!」

「話は終わったか? オレはさらに《闇の量産工場》を発動。カードを一枚伏せ、ターンを終了するぜ」

「……俺のターン、ドロー!」

 外部にいる三沢との会話も把握していることといい、もはや目の前の敵をただのデュエルシミュレーターなどとは思わない。《オシリスの天空竜》を従えるその姿は、ありし日のデュエルキングに他ならない。

「俺は《マジカル・ペンデュラム・ボックス》を発動! カードを二枚ドローし、ペンデュラムモンスターでなければ墓地に送る……《音響戦士ギータス》を手札に加え、カードを一枚墓地に送る」

 誰にも知れ渡っている伝説から、神のカードたちの効果は把握しているつもりだ。《オシリスの天空竜》の効果は、自らの手札によって攻撃力は決定するというもので、相手の手札の数は《闇の量産工場》によって手札に加えた二枚のみ。よって現在の攻撃力は2000。

「俺のフィールドにモンスターがいない時、《レベル・ウォリアー》はレベル4として特殊召喚できる!」

 ただし第二の効果として、攻撃表示で召喚したモンスターに2000ポイントのダメージを与える召雷弾が存在し、実質的には攻撃力は4000といってよい。守備表示で特殊召喚した《レベル・ウォリアー》のようにすればまだ生き延びていられるが、守備を固めては《オシリスの天空竜》の攻撃力は際限なく上昇する。

「さらにペンデュラムゾーンに《音響戦士ギータス》をセットし、効果を発動! 手札を一枚捨てることで、デッキから《音響戦士ピアーノ》を特殊召喚する!」

 相手が神だろうと攻めるしかない。先程《マジカル・ペンデュラム・ボックス》でドローした《音響戦士ギータス》の効果により、音響戦士の一種たる《音響戦士ピアーノ》を守備表示で特殊召喚したことで、何とかシンクロ召喚の準備を整える。

「レベル4となった《レベル・ウォリアー》に、レベル3の《音響戦士ピアーノ》をチューニング!」

 しかも攻めるだけではなく、オシリスを圧倒的に越える攻撃力で攻める必要がある。その理由は、相手フィールドに伏せられたリバースカード――ともすれば、オシリスの攻撃力を下げるだけの一手にもかかわらず、わざわざ伏せたのだから何かがある。

「集いし願いが新たに輝く星となる。光さす道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《パワー・ツール・ドラゴン》!」

 ならば、呼び出すのはこのモンスターしかいまい。とはいえ神をも倒せるカードだとシンクロ召喚されたものの、《パワー・ツール・ドラゴン》は召雷弾を恐れて守備表示での召喚になったが。

「《パワー・ツール・ドラゴン》の効果を発動! デッキから一枚、装備魔法カードを手札に加える!」

「右のカードだ」

「……なら《パワー・ツール・ドラゴン》に、《パイル・アーム》を装備し、効果を発動! 《パイル・アーム》は装備モンスターの攻撃力を500ポイントアップさせ、相手の魔法・罠カードを一枚破壊する!」

 そうして《パワー・ツール・ドラゴン》の効果により、相手にランダムで選ばせたカードを手札に加え、そのまま装備することで準備は着々と進んでいく。これから《オシリスの天空竜》を破壊する前祝いだとばかりに、まずは《パイル・アーム》が装備された際に発動する効果により、永続魔法《黒の魔導陣》が破壊される。

「……ならば《アームズ・ホール》を発動! 通常召喚を封じデッキトップを墓地に送ることで、装備魔法をデッキからサーチする! 俺は《デーモンの斧》を手札に加え、さらに装備!」

「いくら装備カードで強化しようが、攻めないなら勝ちはないぜ!」

「わかってるさ。墓地から《ADチェンジャー》の効果を発動! 《パワー・ツール・ドラゴン》の表示形式を変更する!」

 《音響戦士ギータス》の効果のコストに墓地に送っていた《ADチェンジャー》が効果を発動し、自身を除外することでフィールドのモンスターの表示形式を変更する。もちろん対象はオシリス――などではなく、攻撃表示での召喚と特殊召喚が発動のトリガーのため、守備表示で召雷弾を免れていた《パワー・ツール・ドラゴン》。

「バトル!」

 それが今、《デーモンの斧》と《パイル・アーム》の力を得て、攻撃力は3800のモンスターとして、攻撃表示となった。

「《パワー・ツール・ドラゴン》で《オシリスの天空竜》に攻撃! クラフティ・ブレイク!」

「リバースカード、オープン! 《永遠の魂》! 一ターンに一度、デッキから指定された魔法カードを手札に加えることが出来る!」

 発動したリバースカードはそのまま石板となると、新たなカードを一枚出現させると、そのまま手札へと加えられていく。よってオシリスの攻撃力は3000となるが、パワー・ツール・ドラゴンの攻撃力はさらに上の3800。相討ちに固執しすぎた結果とも言うが、オシリスの攻撃を避けたパワー・ツール・ドラゴンは、そのままパイルバンカーの一撃を叩き込んだ。

「…………」

「オシリス撃破……ターンエンドだ!」

遊戯LP3,900→3,100

 遂に破壊される神の一角。パワー・ツール・ドラゴンの装備したパイルバンカーに破壊され、大地に倒れ伏すオシリスとともに、俺はターンを終了する。これでこちらのフィールドは《パイル・アーム》に《デーモンの斧》を装備した《パワー・ツール・ドラゴン》と、ペンデュラムゾーンの《音響戦士ギータス》。

「オレのターン……オシリスを倒すとはな、褒めてやるぜ。なら次だ! 魔法カード《真実の名》を発動!」

 対する相手のフィールドは、石板となったまま不気味な沈黙を保つ永続罠カード《永遠の魂》。さらに手札も《ブラック・マジシャン》に《幻獣王ガゼル》、《永遠の魂》でサーチした黒魔術師のサポートカードに、ドローする未知のカードとまで分かっているが、早速その未知のカード――通常魔法《真実の名》が発動する。

「このカードの発動時、デッキトップのカードを当てることで、そのカードを手札に加える」

「デッキトップのカード……?」

「《裁きの天秤》。ドロー!」

 そんなものが分かるはずがないというこちらの疑問をものともせず、宣言通りに通常罠カード《裁きの天秤》をドローしてみせる。

 問題は、ドローした《裁きの天秤》とともに現れた、相手の背後に立つ巨大な威圧感だ。

「そしてこのカードの発動に成功した時、デッキから神属性モンスターを特殊召喚する! 我が最強のしもべ三幻神! その一つの名は《オベリスクの巨神兵》!」

 ――そうして、その威圧感の正体はすぐに明らかとなった。大地を砕きながら現れる破壊神に、とても立っていられずに膝をつく。こちらを見下すどころか視界にも入っていないだろう巨神兵に、パワー・ツール・ドラゴンも必死で立ち向かおうとしたものの、その前に一体の黒魔術師が現れていたのが、何とか立ち上がっていた俺にも見えていた。

「そして《永遠の魂》のもう一つの効果。手札から《ブラック・マジシャン》を特殊召喚する!」

「っ……!?」

「さらに《幻獣王ガゼル》を召喚し、魔法カード《黒・魔・導》を発動! ブラック・マジシャンがフィールドにいる時、相手の魔法・罠カードを全て破壊する!」

 自らが擁しているのは神だけではないと示すように、残る二体のモンスターも手札から召喚されるとともに、先のターンで《永遠の魂》にサーチされていたサポートカード《黒・魔・導》が発動する。パワー・ツール・ドラゴンの前に現れた《ブラック・マジシャン》が魔力を放つと、装備されていた《デーモンの斧》に《パイル・アーム》、そしてペンデュラムゾーンにいた《音響戦士ギータス》までもが破壊されてしまう。

「バトルフェイズに入り、もう一度だマハード! 追撃の――魔連弾!」

 そして装備魔法が全て破壊されて丸裸となった《パワー・ツール・ドラゴン》へ、やはり《ブラック・マジシャン》からさらなる追撃が放たれる。先の《黒・魔・導》よりは抑えめながらも連射できる魔力弾がパワー・ツール・ドラゴンを襲うが、それらは全て突如として現れた盾を持つ戦士に防がれていく。

「墓地から《シールド・ウォリアー》を除外することで、この戦闘で《パワー・ツール・ドラゴン》は破壊されない!」

「ならばオベリスク! パワー・ツール・ドラゴンに攻撃せよ、ゴッドハンド・クラッシャー!」

「ぐああああ!」

遊矢LP4,000→3,900→2,200

 ブラック・マジシャンの一撃は《シールド・ウォリアー》の効果でどうにか防いだものの、その後のオベリスクの一撃はどうしようもないものだった。一瞬にしてシールド・ウォリアーもろともパワー・ツール・ドラゴンは破壊され、こちらのライフも半分へと減じさせられてしまう。

「さらに《幻獣王ガゼル》でダイレクトアタック!」

「くっ……!」

遊矢LP2,200→700

「カードを一枚伏せ、ターンを終了する。そしてターン終了時、オベリスクは墓地へ送られる」

「……俺のターン、ドロー!」

 そうして《パワー・ツール・ドラゴン》を失い守りががら空きとなった俺に痛烈な一撃が加えられ、残るライフも風前の灯と化した。不幸中の幸いは魔法カードで呼び出した神はフィールドに留まれず、墓地へと送られるということか。再び大地を鳴らしながら消えていくオベリスクを見ながら、俺は負けじとカードをドローする。

「俺は《チューニング・サポーター》を召喚し、魔法カード《機械複製術》を発動! さらに二体、デッキから特殊召喚する!」

 まずは《チューニング・サポーター》を召喚しつつ、《機械複製術》でさらに二体をデッキから特殊召喚しながらも、相手のフィールドを観察する。確かにオベリスクの一撃は驚異的だったものの、すでにオベリスクもオシリスも相手フィールドには存在せず、残るは《ブラック・マジシャン》に《幻獣王ガゼル》といった通常モンスターと伏せられた《裁きの天秤》のみ。

「そして手札の《ワンショット・ブースター》と墓地の《ブンボーグ001》はそれぞれ、通常召喚に成功したターンと機械族モンスターが二体同時に特殊召喚された時、特殊召喚できる!」

 これは《裁きの天秤》に臆することなく攻めるチャンスだ。《アームズ・ホール》で墓地に送られていた《ブンボーグ001》が、手札に眠っていた《ワンショット・ブースター》が、《チューニング・サポーター》と《機械複製術》に連鎖反応を起こし、墓地と手札から自身の効果で特殊召喚される。これでチューナーと非チューナーが揃うどころか、自分フィールドを一瞬にして埋めて見せたが、まだシンクロ召喚は行わない。

「俺に出来る全ての戦術を、お望み通りに見せてやる! 現れろ、光差すサーキット!」

 全ての戦術を持ってかかってこい――デュエルが始まる前に相手がそう語ったことに返答すると、フィールドには俺の呼びかけに応えてサーキットが現れる。とはいえその回路には何も接続されておらず、光を失っている状態だったが。

「アローヘッド確認。召喚条件は、チューナーモンスターを含むモンスター二体! サーキットコンバイン!」

 そのサーキットに描かれている召喚条件に適したモンスター、今ならば《ワンショット・ブースター》と《ブンボーグ001》を接続することで、サーキットは光を放ちながら動き出していく。そして新たなモンスターが、サーキットの輝きに導かれ降臨する。

「リンク召喚! 光差す者たちへの道標となれ! 《水晶機巧-ハリファイバー》!」

 ガラス繊維で機械の身体を被った人形のリンクモンスターの登場に、相手はピクリと身体を反応させたのみだった。相手にとってはルールから未知のモンスターであるはずだが、同じことが言えるシンクロ召喚にも反応がなかったあたり、どうやらこちらのカードは全て把握されているらしい。

「ハリファイバーの効果! このカードがリンク召喚に成功した時、デッキからレベル3以下のチューナーモンスターを特殊召喚できる! 《クリア・エフェクター》を特殊召喚し、三体のモンスターでチューニング!」

 そうしてリンク召喚の素材となった《ブンボーグ001》の代わりのように、当のハリファイバーからチューナーモンスターが呼び出され、再びフィールドにチューナーと非チューナーが揃うこととなり、間髪いれずにシンクロ召喚へと繋ぐ。三体のモンスターが光とともに消えていき、ハリファイバーによって増加したエクストラモンスターゾーンへと、新たなモンスターの形となって集まっていく。

「集いし星雨よ、魂の星翼となりて世界を巡れ! シンクロ召喚! 《スターダスト・チャージ・ウォリアー》!」

 収束した閃光はいつしか戦士となり、《スターダスト・チャージ・ウォリアー》として新生する。さらに《スターダスト・チャージ・ウォリアー》はシンクロ召喚に成功した時、《チューニング・サポーター》と《クリア・エフェクター》はシンクロ素材となった時、それぞれカードを一枚ドロー出来る効果がある。よって四枚のカードをドローすると、そのうちの一枚が旋風とともにフィールドへ躍り出た。

「手札の《スカウティング・ウォリアー》は、効果で手札に加えられた時、このモンスターを特殊召喚する! さらに《ワン・フォー・ワン》を発動し、手札を一枚捨ててデッキから《音響戦士ベーシス》を特殊召喚し、墓地の《音響戦士ピアーノ》を除外する!」

 このターンでトドメを刺さんとすべく、《スカウティング・ウォリアー》の特殊召喚からまだ止まることはない。まずは手札を一枚墓地に送ることで、デッキからレベル1モンスターを呼び出す《音響戦士ベーシス》を特殊召喚すると、他のモンスターとチューニング……することはなく、音響戦士たちの共通効果によって墓地から《音響戦士ピアーノ》を除外する。

「そして墓地の《音響戦士サイザス》を除外することで、除外ゾーンから《音響戦士ピアーノ》を特殊召喚! レベル1の《チューニング・サポーター》に、レベル3の《音響戦士ピアーノ》をチューニング!」

 そんな自発的に除外された《音響戦士ピアーノ》は、魔法カード《ワン・フォー・ワン》の効果で墓地に送っていた《音響戦士サイザス》の、自身を除外することで除外ゾーンの音響戦士を特殊召喚する効果により、再びフィールドへ帰還する。もちろんその役割はシンクロ召喚であり、残っていた《チューニング・サポーター》とチューニングされていく。

「集いし願いが、勝利を掴む腕となる。光差す道となれ! シンクロ召喚! 《アームズ・エイド》! 《スターダスト・チャージ・ウォリアー》に装備!」

 先にシンクロ召喚されるは、シンクロモンスターでありながらも機械戦士たちの補助兵装たるモンスター《アームズ・エイド》。その名の通りすぐさま《スターダスト・チャージ・ウォリアー》に装備されたため、《水晶機巧-ハリファイバー》のリンクマーカーが空くと、残る《スカウティング・ウォリアー》に《音響戦士ベーシス》もチューニングされていた。

「集いし勇気が、仲間を護る思いとなる。光差す道となれ! 現れろ! 傷だらけの戦士、《スカー・ウォリアー》!」

 そうして最後にシンクロ召喚されたのは、傷だらけの機械戦士。シンクロ素材とするべく特殊召喚していたモンスターは全てフィールドからいなくなり、残るは敵と対峙するためのモンスターのみ。

「……最後に《シンクロ・グリード》を発動。シンクロモンスターがフィールドに三体存在するとき、カードを二枚ドロー出来る。そして装備魔法《魔導師の力》をハリファイバーに装備し、カードを一枚伏せてバトル!」

 長い下準備がようやく功を労して。こちらのフィールドには《アームズ・エイド》が装備された《スターダスト・チャージ・ウォリアー》に、《魔導師の力》が装備された《水晶機巧-ハリファイバー》に《スカー・ウォリアー》と、《魔導師の力》の火力を上昇させるためのリバースカードが一枚。

「《スターダスト・チャージ・ウォリアー》で、《ブラック・マジシャン》を攻撃! パワーギア・クラッシャー!」

 《スターダスト・チャージ・ウォリアー》の攻撃力は、《アームズ・エイド》を装備したことで3000。さらに破壊した時に相手モンスターの攻撃力分のダメージを与える効果を持ち、右腕に装備された鍵爪が《ブラック・マジシャン》を襲う。

「墓地から《マジシャンズ・ナビゲート》の効果を発動! このカードを除外することで、相手の表側表示の魔法カードの効果を無効にする!」

「何!?」

 ただし鍵爪が届くより早く、ブラック・マジシャンの一撃が《スターダスト・チャージ・ウォリアー》に炸裂する。それは墓地から発動した《マジシャンズ・ナビゲート》の効果が備わっており、《アームズ・エイド》の攻撃力を上昇させる効果が無効になった今、《スターダスト・チャージ・ウォリアー》の攻撃力は2000と《ブラック・マジシャン》より下。

「反撃だ、ブラック・マジシャン!」

「くっ……まだだ! 手札から速攻魔法《移り気な仕立て屋》を発動! ハリファイバーに装備された《魔導師の力》を、《スターダスト・チャージ・ウォリアー》へと再装備する!」

 《ブラック・マジシャン》にあわや迎撃されようとしたところで、手札からの速攻魔法の発動が間に合った。ハリファイバーへと装備されていた《魔導師の力》は《スターダスト・チャージ・ウォリアー》へと装備され、その効果で攻撃力は再び3500ポイントとなって、しまっていた槍を黒魔術師へと向ける。

「スターダスト・クラッシャー!」

「ぐっ……!」

遊戯LP3,100→2,100

「さらに《スカー・ウォリアー》で《幻獣王ガゼル》を攻撃! ブレイブ・ダガー!」

遊戯LP2,100→1,500

 《マジシャンズ・ナビゲート》というイレギュラーはあったものの、イレギュラーにはこちらも《移り気な仕立て屋》というイレギュラーで対応することで、どうにか事なきを得て。さらに残っていた《幻獣王ガゼル》も《スカー・ウォリアー》が破壊し、残るライフポイントは謀ったようにハリファイバーの攻撃力と同じ1500。

「終わりだ! 俺はハリファイバーで――」

「そいつはどうかな!」

 ハリファイバーによるダイレクトアタックでトドメ。そうとだけ考えていた俺の前に、どうしてか先に破壊したばかりの黒魔術師が笑っていた。

「どうして《ブラック・マジシャン》が……!?」

「永続罠《永遠の魂》の効果で墓地から《ブラック・マジシャン》を特殊召喚させてもらった。この石板とオレの命がある限り、《ブラック・マジシャン》は不滅!」

 《永遠の魂》という名前の通りに、常に傍らには《ブラック・マジシャン》の姿があった。相手ターンだろうと墓地だろうと関係ない、その姿に俺はハリファイバーの攻撃を諦めてしまう。

「どうした? オレはまだ生き残っているぜ」

「……ターンエンドだ」

「おっと。お前のエンドフェイズ、伏せていた《裁きの天秤》を発動させてもらうぜ。カードドロー!」

 お互いのフィールドのカードの数の差だけ、カードをドローすることが出来る一発逆転の罠カード。それは《真実の名》で告げられたことで分かっていたが、トドメを刺さんとその存在を無視していた。こちらのフィールドのカードは六枚、あちらのカードは手札も合わせて三枚のため、通常のドローも加えて四枚のカードが手札に加えられる。

「オレのターン! 魔法カード《馬の骨の対価》を発動し、《ブラック・マジシャン》をコストに二枚ドロー! さらに《永遠の魂》により《千本ナイフ》を手札に加え、《手札抹殺》を発動!」

 《裁きの天秤》に《馬の骨の対価》で手札を補充した後に、《手札抹殺》によって大幅な手札交換を果たしてみせる。そうして選ばれる一枚のカードは――

「神よ! モンスターの力を吸収せよ! オレは貴様のモンスターを三体リリースし、《ラーの翼神竜-球体形》を召喚する!」

「なっ――」

 《水晶機巧-ハリファイバー》、《スターダスト・チャージ・ウォリアー》、《スカー・ウォリアー》の三体の力を吸収し、俺のフィールドに神は現れる。とはいえ俺に神のカードを扱う資格などあるわけもなく、太陽神はまるで動くことはない。

「魔法カード《所有者の刻印》を発動! モンスターはその本来の所有者の元に戻り、ラーは戦闘モードへと変形する! 現れろ、太陽神!」

 それを示すように相手のフィールドに戻った太陽神は本来の姿を取り戻し、攻撃力4000を誇る《ラーの翼神竜》となると、周囲の空も雷雲から 蒼穹へと変わっていく。こちらのモンスターの力を得た太陽神の咆哮が響き渡り、守ってくれるモンスターがいない俺の身体に直接ぶつけられた。

「バトル! 《ラーの翼神竜》で攻撃! ゴッド・ブレイズ・キャノン!」

「……手札から《速攻のかかし》を捨てることで、バトルフェイズを終了させる!」

 ……ただ、不幸中の幸いとでも言うべきか、発動された《手札抹殺》によって、バトルフェイズを終了する《速攻のかかし》を引き当てていた。太陽神からの一撃を何とか防いでみせると、墓地に送られていく《速攻のかかし》に心中で感謝するとともに、伏せられたリバースカードを発動する。

「なら伏せていた《ペンデュラム・スイッチ》を発動! エクストラデッキの《音響戦士ギータス》を、ペンデュラムゾーンに置く!」

「それでラーを倒せるか、見せてみな! ターンエンドだ!」

「俺のターン、ドロー! 《貪欲な壺》、そして《マジック・プランター》を発動し、《ペンデュラム・スイッチ》を墓地に送り四枚ドロー! さらに《音響戦士マイクス》をペンデュラムゾーンにセッティング!」

 こちらのターンに移るなり、《手札抹殺》で手札の交換をしたのは相手だけではないとばかりに、永続罠と墓地のモンスター五枚をデッキに戻すことをコストに二枚の手札補充カードを発動する。さらに永続罠カード《ペンデュラム・スイッチ》の効果により、《黒・魔・導》によってエクストラデッキへと送られていた《音響戦士ギータス》を再利用し、手札から発動した《音響戦士マイクス》とともにペンデュラムスケールを生成。ある召喚方法の証したる魔方陣が空中に浮かんでいく。

「ペンデュラム召喚! 現れろ、俺のモンスターたち!」

 そうしてペンデュラム召喚されたのは、《ドドドウォリアー》に《貪欲な壺》でデッキに戻していた《クリア・エフェクター》。二体でレベル8のシンクロ召喚も可能だが、ひとまずはシンクロ召喚をする気はない。

「さらに《音響戦士ギータス》の効果! 手札を一枚捨てることでデッキから《音響戦士ドラムス》を特殊召喚し、墓地に送られた《リジェネ・ウォリアー》は自身の効果で蘇生される! チューニング!」

 さらにペンデュラム召喚だけではなく、ペンデュラム効果によってデッキから特殊召喚された《音響戦士ドラムス》と、効果で墓地に送られた時に自己再生する効果を持つ《リジェネ・ウォリアー》がフィールドに現れるとともに、《クリア・エフェクター》と《リジェネ・ウォリアー》がチューニングされる。合計レベルは6であり、再び閃光が戦士の形となって顕現する。

「シンクロ召喚! 《スターダスト・チャージ・ウォリアー》! 続いて《ドドドウォリアー》とオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 《スターダスト・チャージ・ウォリアー》のシンクロ召喚とともに、《クリア・エフェクター》のシンクロ素材となった際の効果に加えて、二枚のカードをドローする。そしてフィールドにペンデュラム召喚されていた《ドドドウォリアー》とともに、シンクロ召喚からエクシーズ召喚へと繋がっていく。二体のモンスターが地上に現れた時空の穴に吸い込まれていき、新たなモンスターとして新生し力を貸す。

「集いし魂よ、熱き一撃となりて敵を貫け! エクシーズ召喚! 《ガントレット・シューター》!」

 右腕に腕甲とともに砲台を装備したエクシーズモンスターが召喚され、相手があの《ラーの翼神竜》だろうと砲の狙いを引き絞る。まるでそれが自らの役割だと分かっているかのような動作に応えて、太陽神と対峙しながら効果の発動を命じた。

「《ガントレット・シューター》の効果発動! エクシーズ素材を一つ取り除き、相手モンスターを一体破壊する! スターダスト・クラッシャー!」

 周囲を浮かんでいた光球が《ガントレット・シューター》の砲身に装填されていき、《スターダスト・チャージ・ウォリアー》の力を借りた砲弾が、飛翔する太陽神へと放たれた。まるで本当にスターダスト・チャージ・ウォリアーが乗り移ったように、砲弾は誘導し太陽神の中心を穿ち抜き――《ラーの翼神竜》は、新たな形態となっていた。

「《ラーの翼神竜》は墓地に送られた時、不死鳥となって甦る!」

「……だが、《ガントレット・シューター》の効果はまだ残ってる! ドドドアックス!」

「炎の鎧にそんな物は通用しない……」

「くっ……なら、ドラムスがいることで墓地のピアーノを除外し、再び現れろ! 光差すサーキット!」

 文字通りに不死鳥と化した太陽神の前に、《ドドドウォリアー》の力を借りた《ガントレット・シューター》の効果は、炎の鎧によって無駄に終わってしまう。攻撃力も4000と《ガントレット・シューター》では太刀打ち出来ず、不死鳥とこちらのフィールドを遮るように、回路が繋がっていないサーキットが現れる。

「《音響戦士ドラムス》と《ガントレット・シューター》をリンクマーカーにセット! リンク召喚! 《水晶機巧-ハリファイバー》! 効果発動!」

 《クリア・エフェクター》に《スターダスト・チャージ・ウォリアー》とともに《貪欲な壺》なデッキで戻した《水晶機巧-ハリファイバー》の効果により、デッキからレベル3以下のチューナーモンスター《チューン・ウォリアー》を特殊召喚する。ペンデュラム、シンクロ、エクシーズ、そしてリンク召喚と繋げては来たが、不死鳥を倒す手段はない。

「魔法カード《蜘蛛の糸》を発動! 相手が前のターンに発動したカードを手札に加え、発動出来る! 俺が発動するのは、《馬の骨の対価》! 《チューン・ウォリアー》をコストに二枚ドロー……カードを一枚伏せ、ターンエンドだ」

「エンドフェイズ、不死鳥は再び墓地へと舞い戻るが、球体形となって特殊召喚される」

「こっちもエンドフェイズに《音響戦士マイクス》の効果。除外された音響戦士、ピアーノを手札に加える」

 最後に《蜘蛛の糸》で奪った《馬の骨の対価》によって、デッキから特殊召喚した《チューン・ウォリアー》をコストに二枚ドローし、カードを一枚伏せてターンを終了すると、お互いにエンドフェイズ時に発動する効果を処理していく。これで俺のフィールドは《水晶機巧-ハリファイバー》にペンデュラム音響戦士が二対に、リバースカードが一枚に残るライフポイントは700で相手ターンを迎えることとなった。

「オレのターン、ドロー! 《永遠の魂》の効果で《ブラック・マジシャン》を特殊召喚する!」

 対する相手のフィールドは、不死鳥から球体となった太陽神に蘇生された《ブラック・マジシャン》、永続罠カード《永遠の魂》に二枚のリバースカードで、残るライフポイントは1500。リンクモンスターはその特性上、守備表示が存在しないため、《ブラック・マジシャン》でハリファイバーを攻撃するだけで俺のライフは尽きるのだが、それは先の《ラーの翼神竜-球体形》の時も同様だ。

「伏せていた《転生の予言》を発動! 墓地のカードをデッキに戻し、球体形は自身をリリースすることで、デッキから《ラーの翼神竜》を特殊召喚する! 再び起動せよ、ラーの翼神竜!」

 ならば相手も分かっている、こちらが狙っているハリファイバーの効果を。その証拠に《ブラック・マジシャン》でただ攻撃してくることはなく、再び球体形から太陽神を戦闘モードへと変形させていく。そして太陽神がフィールドに現れるとともに、こちらのフィールドにも新たなドラゴンが現れていた。

「《水晶機巧-ハリファイバー》のもう一つの効果! 相手ターンにこのカードをリリースすることで、エクストラデッキからシンクロチューナーをシンクロ召喚する! 来てくれ――《ライフ・ストリーム・ドラゴン》!」

遊矢LP700→4,000

 《水晶機巧-ハリファイバー》の効果によって、太陽神から俺を守るように《ライフ・ストリーム・ドラゴン》が出現する。さらにシンクロ召喚扱いの特殊召喚のため、ライフポイントを4000へと回復する効果も発動し、太陽神の攻撃を耐え抜かんと待ち構える。

「速攻魔法《黒魔術師の継承》を発動! 墓地の魔法カードを二枚除外することで、《ブラック・マジシャン》のサポートカードを手札に加え、発動する! 《黒・魔・導》!」

「やられてばかりじゃない! 《奇跡の発掘》は破壊された時、墓地の同名カードの数だけドローできる!」

「そして《ラーの翼神竜》の効果! 1000ポイントのライフを払うことで、相手モンスターを一体破壊する!」

遊戯LP1,500→500

 そんなこちらの意思に応じるように、苛烈な攻めがこちらへと叩き込まれる。墓地から手札に加えられた《黒・魔・導》によって、ペンデュラムカードと伏せていた《奇跡の発掘》は破壊され、《奇跡の発掘》によるドロー効果など関係ないとばかりにさらに太陽神の一撃が《ライフ・ストリーム・ドラゴン》へと炸裂する。もはや《速攻のかかし》を使ってしまった今、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》を破壊されるのは俺の敗北と同義。

「墓地から《スキル・プリズナー》の効果を発動! このカードを除外することで、このターン、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》はモンスター効果を受けない!」

「なら直接破壊させてもらうぜ! 《ブラック・マジシャン》で攻撃!」

「《ライフ・ストリーム・ドラゴン》の効果発動! 墓地から装備魔法を除外することで、あらゆる破壊を無効にする!」

 皮肉にも相手の《手札抹殺》で墓地に送られていた《スキル・プリズナー》によってラーの一撃をかわし、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》は自身の効果によって《ブラック・マジシャン》の攻撃から身を防ぐ。守備表示のためにもちろんダメージはないが、黒魔術師に続いて太陽神が飛翔する。

「ラーの翼神竜で攻撃! ゴッド・ブレイズ・キャノン!」

「まだだ! 《ライフ・ストリーム・ドラゴン》は自身の効果で破壊を無効にする!」

「ああ、まだだぜ! リバースカード、オープン! 《神秘の中華鍋》を発動! 地から蘇りし天を舞え! 炎を纏う不死鳥となりて!」

遊戯LP500→4,500

 更なるラーからの追撃も墓地から《パイル・アーム》を除外することで防いでみせたが、太陽神は不死鳥と形態を変え、バトルフェイズ中の特殊召喚のためにさらに攻撃を仕掛けてくる。それでも《スキル・プリズナー》によってモンスター効果を受けない以上、戦闘破壊しか《ライフ・ストリーム・ドラゴン》を止める術はないが、まだ墓地に身代わりとなる装備カードは残っている。

「ラーよ、竜を焼き尽くせ! ゴッドフェニックス!」

「だが、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》の効果――」

「――それはどうかな」

 不死鳥の舞う炎の奥から垣間見えた不敵な笑み。その笑みが示すように発動して墓地に送られたはずの《魔導師の力》は墓地のどこにもなく、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》は不死鳥と化した《ラーの翼神竜》に飲み込まれていく。

「《転生の予言》……ライフ・ストリーム・ドラゴン!」

 その答えは、このターン始めに発動されていた罠カード《転生の予言》。お互いの墓地から二枚までのカードをデッキに戻すあのカードによって、自身の《ラーの翼神竜》とともに俺の墓地から《魔導師の力》をデッキに戻していたのだ。よって破壊耐性を十全に活かせなかった《ライフ・ストリーム・ドラゴン》は、不死鳥によって燃え尽きてしまう。

「エンドフェイズ、ラーは再び墓地へと舞い戻る。ターンエンドだ」

「……俺のターン、ドロー! カードを一枚セットし、魔法カード《 ブラスティング・ヴェイン》を発動! セットカードを破壊して二枚ドロー!」

 それでも《ライフ・ストリーム・ドラゴン》のおかげで、俺のライフポイントは十全なまま残っている。戦闘が終わり、あちらのフィールドは《ブラック・マジシャン》と力を失った《ラーの翼神竜-球体形》に、永続罠《永遠の魂》となって。太陽神の猛攻にこちらのフィールドはがら空きとなってしまったが、そのフィールドには旋風が巻き起こる。

「破壊されたカードは《リミッター・ブレイク》! このカードが破壊された時、デッキ・手札・墓地のいずれから《スピード・ウォリアー》を特殊召喚する! 来い、マイフェイバリットカード!」

 《ライフ・ストリーム・ドラゴン》が命がけで繋いでくれたフィールドに、《リミッター・ブレイク》を介しながらもマイフェイバリットカードが現れ、俺の傍らに立ちながらも黒魔術師と太陽神に対峙する。

「さらに装備魔法《継承の印》を発動! 墓地に三体揃ったモンスターのうち一体を、このカードを装備することで蘇生する! 蘇れ、《チューニング・サポーター》!」

 だが《スピード・ウォリアー》が敵と対峙するのはまだ先だ。まずは装備魔法《継承の印》で墓地の《チューニング・サポーター》を特殊召喚すると、その特殊召喚に反応して手札からの速攻魔法を発動する。

「速攻魔法《地獄の暴走召喚》を発動し、デッキからさらに二枚の《チューニング・サポーター》を特殊召喚することで、墓地から《ブンボーグ001》が蘇生する! 四体のモンスターでチューニング!」

 攻撃力1500以下の《チューニング・サポーター》が特殊召喚されたことで、さらに二体の同名モンスターを特殊召喚する《地獄の暴走召喚》が発動し、同時に二体の機械族モンスターが特殊召喚されたことで《ブンボーグ001》は蘇生する。その連鎖は四体のシンクロ召喚にまで繋げられ、閃光とともに鋼鉄の咆哮が木霊する。

「《パワー・ツール・ドラゴン》をシンクロ召喚し、効果発動!」

「……左のカードだ」

「……さらに――」

 シンクロ素材となった《チューニング・サポーター》の効果によって三枚のカードをドローし、《パワー・ツール・ドラゴン》の効果でさらに装備魔法カードが手札に加えられる。それでも《手札断殺》によってさらに手札を交換し、ようやく待ち望んでいたそのカードを掴むと。

「……俺は、《ヘルモスの爪》を発動! モンスター一体と融合し、モンスターの装備カードとなる! 《パワー・ツール・ドラゴン》と融合!」

 ――モンスターと融合し装備カードとする魔法カード《ヘルモスの爪》。対象は機械族である《パワー・ツール・ドラゴン》であり、《パワー・ツール・ドラゴン》の装備がフィールドに残る《スピード・ウォリアー》に移し変えられていく。

「融合召喚! 《ビックバン・ドラゴン・ブロー》!」

 《スピード・ウォリアー》に《パワー・ツール・ドラゴン》の爪が、翼が、装甲が、尻尾が、それぞれ融合していくが、何より目を引くのは腕にグローブのように装備されたパワー・ツール・ドラゴンの頭部。《ビックバン・ドラゴン・ブロー》という名前の通りに竜の顎をその身に宿した《スピード・ウォリアー》は、神を打倒すべく俺から離れていく。

「《音響戦士ピアーノ》を召喚し、《ビックバン・ドラゴン・ブロー》の効果を発動! 俺のモンスターを一体リリースすることで、相手モンスターを全て破壊し、その攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 先のターンに《音響戦士マイクス》のペンデュラム効果で手札に戻っていた《音響戦士ピアーノ》をコストに、《ビックバン・ドラゴン・ブロー》の効果を発動すれば、スピード・ウォリアーの腕に装備された竜の顎が開く。今まで無敵を誇っていた《ラーの翼神竜》だが、今は力を失った球体形と、神を倒すチャンスは今しかない。パワー・ツール・ドラゴンを模した《ビックバン・ドラゴン・ブロー》から放たれた業火は、神を含む相手のフィールドを焼き尽くしていく。

「言ったはずだぜ! 《永遠の魂》とオレのライフがある限り、《ブラック・マジシャン》は不滅だってな!」

「ならラーだけでも破壊させてもらう!」

 ただし狙いの一つだった《ブラック・マジシャン》には、石板と化した《永遠の魂》によって防がれてしまうが、球体形だったラーはなす術なく業火に巻き込まれていく。とはいえその攻撃力は0のために、《ビックバン・ドラゴン・ブロー》の追加バーンダメージは与えられずにいたが、それでもとにかく太陽神の破壊には成功する。

「さらに装備魔法《月鏡の盾》を装備し、バトル! 《スピード・ウォリアー》で《ブラック・マジシャン》に攻撃する! ソニック・エッジ!」

「だが《ブラック・マジシャン》の攻撃力は2500!」

「ああ! 《月鏡の盾》を装備したモンスターが相手モンスターと戦闘する時、相手の攻撃力に100ポイント加えた数値になるがな!」

 《パワー・ツール・ドラゴン》の効果によってサーチされていた装備魔法《月鏡の盾》が、《ビックバン・ドラゴン・ブロー》を装備していない方の腕に装備され、《スピード・ウォリアー》と《ブラック・マジシャン》が対峙する。先手を取ったブラック・マジシャンが魔力弾を連射するが、それらは全て《月鏡の盾》に弾かれていき、パワー・ツール・ドラゴンの装甲を纏った蹴りがブラック・マジシャンに炸裂する。

「っ……だが《ブラック・マジシャン》は、《永遠の魂》の効果により再びフィールドに戻る!」

遊戯LP4,500→4,400

「……メインフェイズ2、装備魔法《スピリット・バーナー》を《スピード・ウォリアー》に装備し、その効果により装備モンスターを守備表示とする」

 とはいえ破壊したところでダメージは僅かに100ポイントであり、しかも永続罠《永遠の魂》によってすぐさま主人の傍らに立つ黒魔術師の姿を見ると、とても戦闘破壊したとは思えなかった。やはりあの石板、《永遠の魂》が攻略の鍵となるか。

「カードを一枚伏せ、ターンエンド」

「オレのターン、ドロー!」

 これまでお互いに主力から切り札クラスのモンスターまでをぶつけ合ってきて、どちらもが理解していたことが一つある。こちらで言えば《ライフ・ストリーム・ドラゴン》、あちらで言えば三幻神まで使い潰したこのデュエル、もはや決着が近いと。故に戦闘においては無敵となる《月鏡の盾》を装備してなお、表示形式を守備表示とする装備魔法《スピリット・バーナー》をも出し惜しみせずに装備する。

「オレは魔法カード《騎士の称号》を発動! 《ブラック・マジシャン》をリリースすることで、デッキから《ブラック・マジシャンズ・ナイト》を特殊召喚する!」

 残る相手の手札は三枚、そのうちの一枚が発動すると、《ブラック・マジシャン》がその名の通りに《騎士の称号》を得て、杖は剣に服は鎧へと変わっていく。そのままこちらのフィールドへと向かって来て、杖の代わりとなる長剣をスピード・ウォリアーへと振りかぶった。

「《ブラック・マジシャンズ・ナイト》が特殊召喚に成功した時、相手のカードを一枚破壊する!」

「手札から《エフェクト・ヴェーラー》を捨てることで、その効果を無効にする!」

 《スピード・ウォリアー》を切り裂かんと襲いかかった長剣は、突如として現れた《エフェクト・ヴェーラー》の羽衣によって絡み取られ、武器を失った《ブラック・マジシャンズ・ナイト》は相手フィールドへと後退する。フィールドから《エフェクト・ヴェーラー》が消えるとともに、その長剣は《ブラック・マジシャンズ・ナイト》の手に戻るが、効果を失ったことには変わりはない。

「止められたか……ならば! オレに力を! 《レジェンド・オブ・ハート》! 戦士族モンスターと、2000のライフポイントを生け贄に捧げ、伝説の騎士たちを特殊召喚する!」

遊戯LP4,400→2,400

 魔法カード《レジェンド・オブ・ハート》。その強大なコストに2000ポイントのライフと、戦士族となった《ブラック・マジシャンズ・ナイト》がリリースされると、代わりに墓地から現れた三枚の魔法カードと、さらにそこからは三体の竜が出現すると、それらの竜が閃光とともに新たな姿を獲得していく。

「伝説の騎士! ティマイオス! クリティウス! ヘルモス!」

「ヘルモス……!?」

 その伝説の騎士たちの一角の名には聞き覚えがあったが、そんなことを気にしている場合ではない。フィールドに揃えられた三体の騎士は、今まで戦ってきた三幻神と勝るとも劣らないオーラを放っており、まさに竜騎士といった風貌でこちらに剣を構えているのだから。

「見せてやるぜ……オレの勝利へのラストアタックを! 伝説の騎士の効果を発動! このカードが特殊召喚された時、相手の魔法・罠カードを除外する!」

「ッ!?」

 三体の竜騎士が持つ剣から放たれたカマイタチに、俺のフィールドを守っていた三枚の装備魔法が全て除外される。《ビックバン・ドラゴン・ブロー》、《月鏡の盾》、《スピリット・バーナー》、それらを全て失った《スピード・ウォリアー》は、丸裸で伝説の騎士の前に立たされていた。

「バトル! ティマイオスでスピード・ウォリアーに攻撃! ジャスティス・ソード!」

「リバースカード、オープン! 《機械仕掛けのマジックミラー》!」

 三騎士の攻撃を防ぐ手段は今の俺には存在しない。しかして最後の最後まで残されたそのリバースカードは、相手の墓地から魔法カードを発動することが出来る効果を持つ。

「……悪いが、伝説の騎士を止められるカードは、オレのデッキにも一握りだけだぜ」

「いや……2000のライフポイントと、戦士族一体を生け贄に捧げる、だったな?」

 フィールドに現れるマジックミラーには、相手の墓地の魔法カードが浮かび上がっては消えていくが、確かにそう都合よく相手の墓地に起死回生の一手があるわけもない。それでも俺が選択し、マジックミラーに浮かぶ魔法カードはただ一つ。

「俺が選ぶカードは、《レジェンド・オブ・ハート》!」

遊矢LP4,000→2,000

 ライフコスト2000は《ライフ・ストリーム・ドラゴン》の効果のおかげで、戦士族モンスターはフィールドにマイフェイバリットモンスターがおり、俺の墓地には魔法カード《ヘルモスの爪》が存在している。罠カード《機械仕掛けのマジックミラー》の発動条件は全て満たしており、つい先程に相手のフィールドへ起こったことのように、今までは力の一端である爪しか見せなかった伝説の竜が、《スピード・ウォリアー》とともに飛翔する。

「新たな力を掴め! スピード・ウォリアー――いや、《伝説の騎士 ヘルモス》!」

 俺の渇いた叫びに応えるかのように、《スピード・ウォリアー》と《伝説の竜 ヘルモス》が一つとなっていく。真紅の鎧を着込み剣を持った《スピード・ウォリアー》は、伝説の騎士の一角としてフィールドに再臨する。ただし相手のフィールドにいる伝説の騎士は三体に対し、こちらはヘルモス一体――なれど、遂に敵へ致命の一撃を放つ時が来た。

「《伝説の騎士 ヘルモス》の効果! このモンスターが特殊召喚に成功した時、相手の魔法・罠カードを除外する! 俺が除外するのは、永続罠カード《永遠の魂》だ!」

 ここまで戦ってきた長いデュエルの果てに、ようやく訪れた一瞬の、それもヘルモスというイレギュラーにのみしか突けない隙。ヘルモスの剣戟から放たれた衝撃波は、三体の伝説の騎士を通りすぎて《永遠の魂》へと迎い、ずっと発動されていた石板を遂に砕く。すると現世に現界する力を失ったかのように、伝説の騎士たちはフィールドから消えていく。

「……《永遠の魂》がフィールドを放れた時、俺のモンスターは全て破壊される」

 この石板とオレの命がある限り――と、わざとらしく相手から与えられていたヒント。そのヒントに違わず《永遠の魂》を失った伝説の騎士はフィールドを離れていくが、砕けた石板から影のように新たなモンスターの姿が見える。

「魔法・罠カードの効果が発動された時、《マジシャン・オブ・ブラック・イリュージョン》は手札から特殊召喚できる! 《ライフ・ストリーム・ドラゴン》に攻撃!」

 影のような、というのはあながち間違いではなかったのか、《ブラック・マジシャン》の影のようなモンスター。バトルフェイズによる特殊召喚のため、まだバトルは続けられるものの、その攻撃力は《ブラック・マジシャン》のステータスを反対にした2100。

「墓地から《スキル・サクセサー》を発動! 攻撃力を800ポイントアップし、《マジシャン・オブ・ブラック・イリュージョン》がいる時に魔法・罠カードが発動した時、墓地から《ブラック・マジシャン》を特殊召喚できる!」

 狙いは墓地からの《スキル・サクセサー》の発動とともに、《マジシャン・オブ・ブラック・イリュージョン》の攻撃力を《伝説の騎士 ヘルモス》より上げるとともに、その効果によって《ブラック・マジシャン》が特殊召喚される。これで《伝説の騎士 ヘルモス》を破壊し、《ブラック・マジシャン》のダイレクトアタックを決めればこちらの負けではあるが。

「悪いが――俺にはもう、見えている! 《伝説の騎士 ヘルモス》が攻撃対象になった時、墓地のモンスターの効果を吸収する! イクイップ・アーマード!」

遊矢LP2,000→1,900

 《伝説の騎士 ヘルモス》の第二の効果。《ライフ・ストリーム・ドラゴン》の効果を吸収し、墓地の《継承の印》を除外することで破壊を免れる。そうしてバトルフェイズは終了し、《マジシャン・オブ・ブラック・イリュージョン》の攻撃力は元々のものになりながら、相手のフィールドへ戻っていく。

「……ターンエンド」

「俺のターン、ドロー! 《スピード・ウォリアー》を召喚!」

 相手のフィールドには二体の黒魔術師。どちらも《伝説の騎士 ヘルモス》には劣るステータスで、リバースカードも存在しない。それでも相手にはもはやターンを渡してはならないと、けたたましく直感を鳴らす警鐘に従って、二体目の《スピード・ウォリアー》を召喚し、さらにもう一枚の魔法カードを発動する。

「《ミラクルシンクロフュージョン》を発動! 墓地の《ライフ・ストリーム・ドラゴン》と《スピード・ウォリアー》の力を一つに! 《波動竜騎士 ドラゴエクィテス!》 ――バトル!」

 降臨する切り札とともに三体のモンスターが黒魔術師たちと対峙しあい、後はもう殴るだけだとばかりに攻撃宣言を行う。

「ヘルモス! ドラゴエクィテス! 黒魔術師たちを破壊せよ!」

遊戯LP2,400→1,000

 伝説の騎士と波動竜騎士のニ柱により、遂に王座を守る二対の玉座は破られたことで、王に至る道を阻むものはもう存在しない。息をつかせる暇を与えるなと、二体のモンスターの間をすり抜け《スピード・ウォリアー》が疾走する。

「《スピード・ウォリアー》は召喚したターンのみ、攻撃力は倍となる! ダイレクトアタックだ!」

 自身の効果によって相手のライフポイントを越え、マイフェイバリットモンスターは王に肉薄する。後はもう――届け、届け、と祈るしかない。

「ソニック・エッジ!」

「…………」

 ――王は敗北の瞬間まで何も語ることはなかった。ただ、どこか優しげな表情で微笑んでいたのみで。

デュエルシミュレーターLP1,000→0

「……ハァ…………」

「大丈夫か!」

 ARデュエルシミュレーターの電源が落ちるとともに、場所はバトルシティの決勝の場となった決闘塔ではなく、データを取るための機材が置かれた三沢の研究室へと戻っていく。デュエル後の疲れについつい尻餅をついて座り込んでしまうと、隣の部屋から様子をチェックしていた三沢が血相を変えて駆け込んでくる。

「ああ、大丈夫だ……疲れただけ」

「ならいいが……相手が相手だったからな」

「いや……やっぱり相手は、ただのデュエルシミュレーターだったよ」

 三沢に手を借りながら立ち上がると、今しがたまで激闘を繰り広げていた、仮初めのデュエルキングを想う。プログラムを越えて神のカードまでも現出させてみせた敵だったが、決してアレはデュエルキングなどではなかったと。例えるならば半身がないような、そんな言い様のない違和感を感じざるを得なかった。

「でもそれは、俺にも【機械戦士】にも、まだまだ先があるってことだろ?」

「デュエルはまだまだ進化する、か……どう思う、遊矢?」

「どう思うも何も――」

 今回テストしたARデュエルやデュエルシミュレーターのように、デュエル自体が進化することもあれば、その度に俺も機械戦士たちも進化していく。例えばリンク召喚もその一例であり、三沢もそう連想したのか、答えが分かりきった問いを投げかけてくる。デュエルディスクに差し込まれたままの機械戦士デッキをチラリと見ながら、愚問だとばかりにニヤリと三沢へ言葉を返す。

「――楽しんで勝ってやるに決まってるさ」

 
 

 
後書き
 彼はデュエルキングではない(腹パン)。具体的に言うと映画最初のアレ。ちなみに神のカードや名もなき竜は全てOCG効果ですが、原作効果ですとオシリスの時点で召雷弾に詰みます。

 ついでに当然のようにリンク召喚を使ってますが、まあそこら辺は適当に。ハリファイバーやばい(遺言) 
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