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アイディアマン

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第四章

「やっぱりメインじゃないから」
「無理ね」
「今回はね」
 そうなるというのだ。
「どうにも」
「難しいわね」
「甘いものね」
 香耶は新しい缶を開いた、プシュッという音が心地よい。
「むしろ」
「けれど香耶ちゃんそれで」
「チキングリルでね」
「あれはないわよ」
「そうよね、今思うと」
 香耶自身も言う。
「ないわ」
「そうでしょ、けれど甘いものは」
「それ自体はっていうのね」
「ファミレス的にはいいわよ」
 こう香耶に言うのだった、美海も新しい缶の栓を外している。
「それはね」
「苺とかクリームは」
「ええ、甘いものはね」
「そうなのね」
「そう、それとね」
 さらに言う美海だった、その開けたチューハイを飲みつつ。
「安くてしかも大人も子供も食べる」
「そうしたものね」
「かつお店の看板になる」
「そうした条件を満たすものね」
「要点をまとめるとね」
 今回店長に言われたことはだ。
「そうなるわ」
「難しい条件ね」
「店長も無茶言うわ」
「あの人こうして時々無茶言うのよね」
「そこが困るのよね」
 ここで上司への愚痴も出て来た、勤め人独特の話だ。
「どうにも」
「そうそう、どうにもね」
「そこがね」
「私達も苦労するわ」
「本当にね」
 二人で飲みつつ苦笑いで話してだ、そのうえで。
 二人で肴にしている豆腐を出した、スーパーで安かったのでこの日の肴は豆腐がメインなのだ。
 そしてだ、その豆腐を食べていてだった。
 美海はふと閃いた顔になってだ、すぐに香耶に言った。
「今思ったけれど」
「何?」
「いや、お豆腐どう?」
 こう言ったのだった。
「お豆腐のお菓子もあるわよね」
「ええ、最近出てるわね」
「美味しいし癖もないし」
「大人も子供も食べて」
「しかも安い」
「尚且つ栄養満点」
「これいけるかも」
 二人共表情が変わっていた、明るいものに。
 それでだ、二人で冷奴を食べつつ話をした。
「このまま出してもいいし」
「ステーキにしてもデザートにしても」
「これいいわね」
「そうね、お豆腐ね」
「豆腐料理出していきましょう」
「アレンジして」
 二人で話してだ、そしてだった。
 店長に自分達が考えた豆腐料理を出してみた、店長の山野辺典子はそのレシピを読んで思わず唸った。
「まさかね」
「お豆腐とはですか」
「思いませんでしたか」
「とてもね」
 実際にという返事だった、店内で二人に言った。
「いや、お肉とかって思ってたのよ」
「そうだったんですか」
「お肉ですか」
「あとデザートにしても」
 そちらも考えたがだとだ、ショートヘアで穏やかな目元の顔で言うのだった。背は一五四位でやや小柄だ。
「苺とかパイナップルとか」
「オーソドックスですか」
「そういうのだってですか」
「思ってたのよ」
 そうだったというのだ。 
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