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必死の努力

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第六章

「逃げてね」
「またホームレス?」
「そうなったみたいよ」
「あの人も厄介ね」
「お父さん怒ってね」 
 兄弟であるがだ。
「家に入れないって言ってるわ」
「そうなのね」
「もうね」
 それこそと言うのだった、母にしても。
「あの人何もしないでしょ」
「本当にね」
「それでいて図々しいし偉そうにするから」
「そうよね」
「お母さんもそうするつもりだから」
「もうお家には入れないのね」
「そうするわ、本当に何も出来ない人だし」
 完全に呆れた口調でだ、寅美は望に話していく。
「何もしなくて」
「何の努力もしない人ね」
「本当にそうした人だから」
「昔からって聞いたけれど」
 父である秀太郎からだ。
「勉強もスポーツも家事もお仕事も」
「そう、本当に何もしない人でね」
「ああなったのね」
「そうよ、何も残してないしね」 
 やはり何もしていないからだ。
「そう思うとやっぱりね」
「人間努力しないと」
「何でもね」
「叔父さんみたいになるのね」
「何も出来なくなるし何も残せないのよ」
「それじゃあ意味ないわね」
 生れてこの世に出たそれがとだ、望は思った。
「あの人お料理も何も出来ないのよね」
「そうよ、だから奥さんにも逃げられたのよ」
「お仕事も出来なくて」
「そうした努力もしないから」
 つまりあらゆることに努力をしない人間だったのだ。
「それじゃあ果てはね」
「ああなるのね」
「だからわかるわね」
「人間何でも努力しないと」
「そう、何かになれないし残せないのよ」
 そうなってしまうとだ、寅美は望に話した。
「だからいいわね、望ちゃんもね」
「ええ、何かしら何にでもね」
「努力してね」
「結局はそれが人生ってことね」
「何でも努力しないとね」
「何にもなれないのね」
「そういうことよ」
 まさにというのだ。
「だから注意してね」
「そうね、正直うざったくなる時もあるけれど」
「そうした時は休んでいいけれど」
「努力はアしていかないとってことね」
「そういうことよ、いいわね」
「ええ、じゃあ今から勉強するわ」 
 受験、進路を見据えてというのだ。
「またね」
「そうしなさい、大学に進みたくて資格とか就職も考えるのなら」
「努力するわ」
 そちらもとだ、望はそのメイクしている顔で母に応えた。努力して自分に合う様にしているロリータのそれで。そちらも努力が出て奇麗で可愛くなっていた。


必死の努力   完


                   2017・5・19 
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