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必死の努力

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第三章

「結局はね」
「努力してるから」
「望の言う通りね」
「人間ってあれなの?」 
 望はぼやく調子でこうも言った。
「生きて何かをしたいならね」
「その何かに向けて努力しないといけない」
「痩せるにしても大学に行くにしても」
「どうしてもね」
「しないといけないわね」
「動くことね」
「何につけても」 
 こう二人で話した、そしてだった。
 望は実際に勉強の方も頑張った、高等部からエスカレーター式で大学に進めるがそれでもそれなりの成績が必要でそちらも頑張った、そしてスタイルや体重を維持しつつだ。
 成績も維持していたがここでさらにだった、頑張らないといけないことを見付けてしまった。
 望の兄である悠一が家でファッション雑誌を読みつつたまたまテレビで野球を観ていた彼女にこう言ったのだ。色黒で一重の鋭い目に厚めの唇とワイルドな感じの黒髪を持っている。背は一七五程でジーンズがよく似合っている。
「最近女の子もあれらしいな」
「あれって何よ」
「ファッション変わったらしいな」
「流行が?」
「そうらしいな」
「今度の流行何よ」
「ロリータらしいぞ」
 その雑誌を読みつつの言葉だ、読みつつもテレビで野球の試合の状況をチェックしている。
「それが流行ってるらしいな」
「ゴスロリじゃなくて」
「そっちだよ」
 ロリータの方だというのだ。
「俺もよく知らないけれど違うんだよな」
「ええ、またね」
 実際にとだ、望はテレビで巨人がまた阪神に打たれたことに喜びつつ兄に応えた。
「そうよ」
「それで最近はな」
「ロリータの方が流行ってるのね」
「そう書いてあるな」
「ロリータねえ」
 その言葉を聞いてだ、望は考える顔になって呟く様に言った。
「そういえば服持ってたしアクセサリーも」
「何だよ、ロリータになるのか?」
「だってね」 
「流行だからか」
「合わせないとね」
 自分の好き嫌いもあるが、というのだ。
「ファッションは駄目だから」
「それでか」
「そう、メイクとか変えるわ」
「女の子って大変だな」
「まあね、そういうの気にしない娘もいるけれど」
「御前は違うんだな」
「どうしてもね」
 望が言う普通の女の子としてだ。
「そこは合わせるから」
「ロリータになるか」
「最近ズボンよく穿いてたけれど」
 外出の時にだ。
「それも変えるわ」
「ロリータはスカートか」
「そう、だからね」
 そうしたものだからだというのだ。
「変えるわ」
「そうか、じゃあそっちもか」
「頑張るわ」
 こう兄に答えた。
「というか合わせないとね」
「流行にはか」
「ちゃんとしないとダサいとか言われるから」 
 だからだというのだ。
「やるわよ、そっちもね」
「そっちもか、やれやれだな」
 ここでだ、悠一は詠むのを小説に変えた。大学の講義のテキストである欧州経済の歴史の本だ。
 その本を読みつつだ、こう妹に言った。 
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