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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第六章 Perfect Breaker
  Riders/疾風



今までのあらすじ

セルトマンの計画も、ついに最終段階に入る。


封印されるアーカイヴ
消えていく仲間
吹き飛んだ者たち

次々と消えていくメンバーの中、この世界に残った蒔風とアリス。

その前に、セルトマンの放つ13の怪物たち。
13にして一つの脅威として生み出された怪物を、同時に打ち倒すすべを今の蒔風たちは持ちえない。


終わりが近づいていた。

勝敗が天秤の形をしているのなら、もはやそれは動かない。
セルトマン側が傾いて、蒔風たちが浮き上っている。

彼らの皿には、これ以上乗せるだけの要因がない。
増援がない。仲間はいない。

天秤をセルトマンから傾けるだけのものを、持ちえない。



今は――――まだ



------------------------------------------------------------



「アリーース!!」

「ッ!!」

蒔風の叫びとともに、アリスが飛び退いて回避する。
飛来してきた蒔風の炎弾が、その先の魔化魍三体に命中してその身を焦がす。

だが直撃だからとして、もはや蒔風の攻撃は魔化魍を吹き飛ばすだけの威力を持ち合わせていなかった。

燃え移り、炎を上げ。しかしすぐには倒れず、段々と形を崩していく魔化魍ども。


(倒れるまでの時間稼ぎだ。で、倒れると同時に残りを片付ける――――)

炎に焼かれるそいつらを無視して、目で合図を送って各自数体ずつを打ち砕く。


アリスも蒔風も徒手空拳だ。
体力の温存のためか、十五天帝も顕現させられていない。



そうしながら、二人は敵に致命傷にはなりつつも、即死ではない傷を与えていた。
アリスがマジュウの腹部を蹴り抜き、蒔風が魔化魍の内臓を抉る。


そうして、最後の一体にアリスの手が伸びると

「くっ」

そのアリスに、最後のマジュウが抵抗をしてきた。
力が強いだけあって、多少手こずる。


そうしているうちに、最初の一体が焼け落ちて崩壊。別の地点で13体目として復活していた。


「くそ!!」

その一体に向けて蒔風が炎弾を放つが、全力で放ったそれは魔化魍のみを焼こうとも、即座に落命させるものではなく。
そうしているうちに、ほかの数体から復活してすぐに13体がそろってしまった。



「畜生・・・・」

「まだです・・・まだ!!」

この十三体を突破しなければ、セルトマンには届かない。
それを知ってか、それともアーカイヴに従ってか、セルトマンは下がったところから眺めているだけで手を出してすら来ない。


もはやそれだけの価値はないと思われているのか。しかし、それが彼らにとっては好都合だった。


『今ならまだセルトマンは胡坐をかいてやがる・・・・今のうちにこいつらを倒して、あいつをどうにかしないと』

『封印で済まされているにしても、あまりに長いと消滅してしまいます。しかも、彼にそれ任意で出来ないという保証も・・・・』


動きながら、体力を消耗しながら、二人が念話を用いて論じていた。


だが、この十三体との戦いのうちにアリスも蒔風も消耗している。
蒔風に至っては、まともな回復もできていない状況だ。


『主・・・・我らを・・・・!!』

『そうすればさ、あいつらなんて瞬殺じゃん!!』

『できると思ってんのか』


脳内で、青龍と白虎が提案してくる。
だが、それを否定したのは蒔風ではなく天馬だった。


『俺たちは舜の召喚時コンディションの影響を受ける』

『たとえ五体満足でも、体力や攻撃、防御の最高値は著しく劣るでしょう』

『そうなれば敗北は必至。青龍、それがわからぬ主ではあるまい』

『ですが・・・・このままでは・・・・』


「お前らの力はいずれ必要になる」

本来鞘がある脇腹あたりをさすり、蒔風が呟く。
そう、いま出してはならないのだ。どれだけの苦境にあろうとも。

それでは、本当に手がなくなってしまう。
今必要なのは、彼らではない。



「この世界の結合速度は増している」

この世界になって、世界密度が増し
さらに赤銅大戦の名残でいくつかの世界が急速に結合されてきた。

この戦いの中で、フォーゼが結合されたのがいい例だ。


ならば、こうしているうちに新たな世界が結合される可能性もある。


『それが勝機・・・・ですか・・・・』

青龍の問いに、しかし蒔風は答えられなかった。



イエスとは言えない。
到底言えるはずもない。

なぜなら、新しく結合した世界ということは、蒔風の知らない世界だという可能性が大きいからだ。
世界結合の際の違和感はともかく、初対面の人間である蒔風の味方をしてくれる、というのは都合がよすぎる。


そもそも、セルトマンが「あいつが悪者だ」とこちらを指させばそれすらわからない。


確かに、勝機ではあるのだろう。
この状況が動かなければ、蒔風たちはこのまま敗北の道を進むことになるのだから。

しかし、本当に勝機なのか。
そう問われて、頷けるほどのものではない。


『ですがそうはいっても・・・・!!!』

『そうだ。この状況のままでは、俺たちは負ける』

十三体との戦いは、勝機があってのものではない。
すでにいくつもの方法を試したが、絶対的に体力が足りない。

あれだけ戦い抜き、回復したとはいえもう限界だ。
皆がいれば開翼しての収束もできたのだろうが、その皆もいなければ蒔風の回復手段はゼロだ。


つまり、彼らには敗北しか残っていないのだ。
どうなるであれ、この状況が動かない、限りは。


「あーあ、必死だねぇ」

それを眺めて、セルトマンは笑う。
アーカイヴに記された空白は気になるが、そこで終わりとも書かれていない。


自分は蒔風と相打ちになるであろう場面まで行き、そこでその蒔風のとる何らかの手段から逃れればいいだけなのだ。
仮にその結果どのような傷を負おうとも、蒔風の手による攻撃では自分は滅ぼせないし、いくらボロボロになろうとも誰も自分の命は摘み取れない。

蒔風が消えたのち、ゆっくりと、もう一度、実行してやればいいだけだ。



セルトマンは笑う。
嘲りではなく、冷笑でもなく、見え透いている結果が故に頬の緩みが生まれる。

アーカイヴは絶対だ。
この世界にいる限り、この情報ほど確実なものはない。書いてないことも多々あるものの、ここにそうだと記されている以上、絶対にそれ以上のことは起こらない。


「いわゆる第一章での蒔風のように、乱入者がいるのであれば話は別だが―――――」

それもないだろう。
なぜならば、それがあるのならばこのアーカイヴにはそれすら記される。

つまり、セルトマンの勝利は最初から決まっていたのだ。



完全が何体打ち破られようとも
サーヴァントが何体消滅しようと
セルトマン自身がどれだけ追い詰められようとも

最後には彼が勝つことは約束されていたのだ。

そう、この戦いはそういう戦いだった。
最初からそうだった。


「勝ち目があるとか、勝因だとかそういうのを言ってるのが滑稽でならないね。この戦いはそんなことを言ってるうちじゃ勝てない」

十三体を相手に戦い、しかし徐々に、本当に徐々にだが、確実に追い詰められていく蒔風とアリスを見て静かに目を閉じる。


「ある意味、俺が勝てたのはおれの実力とは言い切れない。俺はアーカイヴを手にして、お前らはできなかった。ただそれだけだ。それだけが、俺とおまえの勝因と敗因だよ」


だから、哀れだと思う。
あちらがもしアーカイヴを手に入れていたとすれば、自分はきっと打ち倒されていただろう。

そこにはきっと、自分の源も記されているだろうから。



「もうあきらめちゃえよ。お前らならこの世界じゃなくても生きていけるだろ?」

十三体がそろってマジュウへと変わり、二人を囲んで両腕を向ける。
その隙間から、セルトマンが静かに語る。


「俺はこの世界で「あいつ」を召喚して自分の完全性を試せればそれで満足なんだ。お前らを追っていこうとは思えない」

今こうして攻撃しているのも、アーカイヴ通りに事を進めているだけだ。
四人の完全をやられたことは、確かに思うところはある。

だがここまで追い詰めれば、もうその気持ちも晴れているのだ。
それよりも、目的達成を目前にした喜びのほうが勝っている。


「だからさ、別の世界でやり直せよ。翼人なら、どこの世界ももろ手を挙げて歓迎してくれるさ」

「断る」



アリスと背を合わせながら、蒔風が息を荒くしながらも断言した。

肩は上下し、血は流れ、筋肉は呻き、骨が軋む。
もう立ってすら居たくないほどの疲労と痛覚に襲われながら、しかし蒔風はまっすぐにセルトマンへとそう断言した。


即答だった。



考えずに答えたというものではない。
考える必要もない、というわけでもない。

しかし、蒔風は即座に言葉を口にしていた。

「ンなもんはとっくに考えてんだよ。とうの昔に答えは出てる」


中指を立て睨みつける。
その後ろでは、アリスがチラリとこちらを見てあっかんべーと意思を表している。

「そうかい」

パチっと、セルトマンがその答えに答えるかのように指を鳴らす。


それを合図にして、マジュウの一体がフワリと近寄ってきた。
まっすぐにだが、まるで幽霊の浮遊のように迫るマジュウ。

正面にいたアリスが手刀を左手で受け止め、握りつぶしながら右拳で胴体を完全に破壊する。
と、そのタイミングを見計らってか二体目が間をおかずにアリスへと攻撃していた。

掴まれた右腕がひねられ、地面を転がるアリス。
だが倒れながらも足を振り上げ、地面に背中が落ちるより先にアリスの蹴りがマジュウの顔面に叩き込まれていた。


ボロボロと崩れるマジュウ。

同時、今度は蒔風のほうに一体が迫る。
だが即座に振られた手刀が顎から頭蓋を砕いて、マジュウの一体を消し去った。


嬲っていくかのように、二体連続で片方に差し向けるともう片方に二体連続。
それを続けていくセルトマン。

まるで、彼らが音を上げる上げるのを待つかのように。



「くっ、そろそろきついですね・・・・ッ!!」

「はは、はっはは・・・あぁ・・・全くそうだな」

「ど、どうしたんですか?」

「いやなに・・・つらい顔しててもしょうがないから・・・っと!!」

「せめて笑おうと?」

「ああ、それに・・・グ・・・・ぉら!!最初はこんなんだったなぁ・・・って」

「・・・・・」

蒔風の言葉に、アリスが口を閉ざす。
そこに口をはさむのは、なんだがためらわれてしまったのだ。


「最初はさ、俺とあんただけだったもんなぁ。ま、あんたは送り出してくれただけで手出ししなかったけど」

「むぐ・・・・」

「いや、それはいいんだ~。おかげで楽しかったし」

「そう、ですか」

「ああ。みんながいて、蓋も外れたから、忘れてた。俺は一人で頑張ってたんだ。一人でも頑張れたんだ」

それが裏目に出たこともあった。
必要以上に大怪我を負い、必要以上に命を張った。


「諦めればどんなに楽だったか。嫌になったことなんてたくさんあった。ゲートくぐった後の空白時間なんて、愚痴と弱音の連続さ~」

逃げ出そうと思えばいくらでもできた。

たとえ無責任だと言われようとも、そうすることはできたのだ。
そもそも、「奴」が現れたのは蒔風のせいではない。ただ、彼が適任だっただけだ。

それを拒否したところで、蒔風に非があるなどと、いうことができる人間はいない。



「諦めろ?もういいだろうって?」

拳に力が籠められる。

「できるかよ、そんなこと―――――!!」

マジュウの顔面に向け、一撃が入る。
だが、頬に命中したその一撃を、そいつは耐えきって拳を押し戻してきた。

「グボッ・・・!!!」

「舜!!」

振るわれたマジュウの腕が蒔風の腹にめり込み、嗚咽とともに胃液と血が混ざった液体が口からこぼれ出る。
ビチャリ、と不快な音がしてだがそれが地面に落ちる。

気色悪いそれを隠すように踏みつけ、蒔風が一歩踏み込んでマジュウの頭を掴んで捻り砕く。


ドサリと倒れて消えるマジュウだが、蒔風はそこで一息をついてしまった。
その一瞬の空白を埋めるように、二体目のマジュウの一撃が、蒔風の後頭部を直撃する。

大きく横から回り込むように振られた腕。
ビリビリと振動する頭と首元に耐えながら、その腕を掴んで一本背負いで投げて倒す。

地面に落ちた程度ではマジュウが砕けることはなく、真上の蒔風へと向けられた腕に仄かな光が蓄積されて


「危ない!!」

蒔風をマジュウから引き離し、それを受けようとするアリス。
だが至近距離からの光撃はアリスの張ったバリアを砕き、続いて放たれた光撃で上半身から火花を散らしてアリスが地面を転がる。

「チクショ・・・!!」

ゲホッ!と倒れるアリス。
倒れたマジュウの頭を踏みつぶし、膝を着いてアリスを抱えようとする蒔風だが、屈みこんだ上半身がすぐに上がった。

蒔風に向かっていたマジュウにアリスが向かった。
それがまるで「ルール違反だ」と言わんがごとく、周囲を囲むマジュウたちの腕に、仄かな光が灯されていたのだ。


即座に察する蒔風。

復活した十三体目も加わり、一斉に放たれる光線。
ビー!という安直な効果音を鳴らしながら放たれたそれは、蒔風の上半身をとらえて手持ち花火のような小爆発を起こした。

ボバシュッッ!!という白い煙と炎が噴き出し、蒔風がアリスの隣に倒れる。


その様子を見て、セルトマンがマジュウの間に立って再度告げる。


「もう無理だろう、蒔風舜。お前に一切の落ち度はなかった」

「・・・・ぉ」

「俺の作り出した完全を四体も消滅させ、数々のサーヴァントを撃破し、アルカンシェルをはじめとする脅威に立ち向かった」

セルトマンの言葉には、賞賛以外の意味を持っていなかった。
ただ純粋に、相手への敬意と尊敬をこめた言葉だった。

「アーカイヴを手にし、その通りに動かないといけないとはいえその俺を相手にしてこれだけたたかったんだ。それだけで十分にすごい」

「だから・・・」

「・・・もうあきらめろよ。お前はおれには勝てない」

「諦め・・・ろ?」

「この先、何が起こってもこの戦いの結末はお前も俺も消滅することで終わる。でも、俺はその瞬間に脱することが可能だ。つまり、お前だけ消えちまうんだ」

「・・・・・・・」


「その時、俺がどんな状態かはわからない。でも、きっとまともではないはずだ。俺だって痛いのは嫌だ。このまま諦めてくれれば、俺たちはどっちも生き残る。無駄な傷もこれ以上負わない」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「なあ、わかるだろ?これ以上は無意味なんだ」


セルトマンの言葉の通り――――もしこのまま挑めば、セルトマンの勝利は確実だ。蒔風はこの世界から消えることになるだろう。

だがもしここで手を引けば・・・・この世界は消える。
だが、蒔風は生き残るだろう。セルトマンも、自らの目的を達成できる。

いわば、両者win-winの関係といえる。
セルトマンも、大丈夫とはいえこれ以上の負傷は嫌だという。


誰も文句は言わないだろう。

誰も彼を恨まないだろう。

誰が言ったところで、彼に届くことはないだろう。



「だから、諦めろと?」

「そうだ」


「諦めろ・・・諦めろ、ね」

力のない言葉。
意思の乗らない言葉。



その脱力を、セルトマンは諦めたな――――と、思っていた。



生える草を握る。
うつ伏せの身体が、持ち上がっていく。

言葉が虚ろになるのは当然だ。
その言葉の通りにするつもりなど、この男にはありはしないのだから。


上半身が起こっていく。
掌で地面を押しのけ、肘がガクガクと揺れる。

肘が落ちるが、今度は肘を支えに起き上がっていく。


そうしてついに足の裏が地面に触れ、左右に揺れて地面を踏み直しながら立ち上がる。



「諦めろ・・・か。いままで何度、そうしようと思ってきたか」

軽く笑う。
そうだ。俺は今までもそうしたかったことがいくらでもあった。

かつては「蓋」があったために表には出なかったが、閉じられた内面でそれは蓄積されていた。


逃げ出したかった。
なんで腹に穴が開いてまで、戦わなきゃならないのか。

諦めたかった。
なんで腕が切り落とされてまで、腕を伸ばして救わなきゃならないのか。

目を背けたかった。
なんで消えるとわかっているのに、そんな手段をとってまで戦うのか。

放り投げたかった。
死ぬのが怖くて戦いたくないのに、なんでまたそんなところにいかなぎゃならないのか。



世界に入ると、そんなことを考える暇もなかった。
だから戦えた。「蓋」もあったし、問題はなかった。

一旦始まれば、自分は止まらない。そういう人間だ。
だが、その始まりの一歩の前には、いくらでも嫌がった。





「でもな、諦めたことはなかった」

結局、自分は戻ってしまう。


「そうだよな、逃げようと思えば、いつだって逃げられたんだ」

でも、最終的には逃げなかった。
口でどういおうと、戻ってくる。


なぜか、と問われれば、その時はその時に合わせた答えが出てくるだろう。

仲間がいたから怖くなかった。
支えてくれる友がいたから大丈夫だった。
「蓋」が外れても、立ち向かうだけの決意を得られた。

じゃあ、今は?



仲間もいない
友は遠く
今更決意も何もない




「諦められるなら、とっくのとうに諦めている」

世界から異端だとされ
摂理を脱し、理を脱し
お前は一人で勝ち続けろと言われた、あの時



そうだ。
あの時は逃げなかったんだ。


先の見えない、その場の勢いだったかもしれないけれど


自分は間違いなく、あの時諦めなかった。
倒れていく友の姿を見て、諦めずに未知の脅威に立ち向かった。


思えば、あの時も絶体絶命だった。



だったら、今も




「諦めるなんて、できるかよ」

風が

「絶対に、そんなことはできるかよ!!!」

吹いた。



「この境遇に嘆き、悲しみ、苦しんで」

叫びに呼応するかのように


それでも、俺は諦めなかったんだ!!!」

風は巻き上がり


「最後まであきらめるなとは、俺はほかの奴には言わないさ」

強く、強く吹き荒れる


「だけど、その最初の決意だけは絶対に諦めない」

風はやがて疾風となり


「諦めることができるのなら、俺はあの時に諦めている!!」

旋風となり


「負けがわかったから逃げ出すなんて、そんなことは俺にはできない」

強風となる


「もしそんなことが可能なら、最初から逃げていた!!それをあの時しなかった瞬間、そんな道はおれの目の前から消えていたんだ!!!」

そして、風は運ぶ


「倒すなら倒せ。殺すなら殺せ。消し去るのならやってみろ。だがな、その最後の一瞬が、俺の命を突き落とすその瞬間まで。俺は絶対にここから逃げ出さない!!!」

指を立て、足元を指す。
まるでそこに道があるかのように、まっすぐ青年は敵を睨みつけた。



とはいえ

「そうか・・・・」

目を閉じ、その三文字の言葉を咀嚼するようにつぶやく。
そして、彼もまた目的のためにそれを実行する。


「ならば・・・仕方ないな」

「ああ。俺たちには、前に進むしか道は残されていない」

セルトマンが前に出る。
距離にして、蒔風の前方15メートル程。

さらにマジュウたちが下がり、囲む円が大きくなった。
その中心にセルトマンと蒔風が立つように、まるで見届け人であるかのように、十三体のマジュウが彼らを眺めていた。



セルトマンの腕に、魔力が蓄積されていく。
今の蒔風には、それを受けるだけの体力も、弾くだけのパワーもない。回避をすれば、そのまま倒れて終いだろう。

つまり、放たれればそれは確実な死を意味する。

だが、逃げない。
ここで最後だとしても、彼の足は前へと進む。


一歩。
だが、ガクつく足ではそれすら困難。

それでも、もう一歩。

前に進む。
それが俺だといわんばかりに、進む。


これが人間の強さ。
諦めず、前に進む魂。

それが良くも悪くも、人類という種をこの域にまで高めて来た。

片や完全
片や翼人

両者ともそれを知っているからこそ、もはや相手に退けとは言わない。



「行く・・・ぞ・・・ぉぉぉおおおお!!」

「死ねぇッッ!!!」

蒔風の、絞り出すような雄叫び。
セルトマンの、突き刺すような宣告。


足を引き摺る蒔風に、セルトマンの魔力弾が発射される。

回転しながら迫るその砲弾じみた大きさの魔力弾が、蒔風のもとへと。



それが近づくにつれ、スローモーションに見えてくる。
死の直前の猶予か。

だが、たとえその時間が与えられても、蒔風の足は先ほどと行動を変えようとしない。

その背に、アリスが手を伸ばす。
届くはずのないその手は、必死になって届け届けと伸ばされる。


そして――――――

ゴドォンッッ!!

轟音、着弾。
爆発とともに、白い煙と強風が巻き起こる。

その風が、煙を運んでマジュウたちの足元をくすぐる。



そしてその爆風の勢いに押されて―――――蒔風の身体が揺れて倒れる。


「なに?」

煙の隙間から見える蒔風に、セルトマンが疑問の声を上げる。
外す距離ではなかったはずだ。アリスが防いだか――――いや、彼女もすでに限界だった。



では




では、蒔風の傍らに立つ、あのシルエットは何者だ?




------------------------------------------------------------


誰かが、身体を支えている。
前に倒れそうになる身体を、誰かの腕が胸元に当てられている。

傍らに立つその男は、勇ましい声で語りかける。


「どうした、蒔風君」

「――――あ・・・・・・」

「こんなところで終わる、君ではないだろう」

「ああ・・・・」

その腕を掴み、蒔風が立つ。

「そう・・・ですね」



そして、男のベルトが回転した。
嵐のような旋風とともに、煙が回転して徐々に晴れていく。

「大丈夫だ。皆も来ている」


瞬間、彼らの周囲から声がした。
同時に爆発音。

数は十三。
猛々しいエンジンの音とともに、男たちの声が飛び交っていった。



「サイクロンアタック!!」

「ハリケーン、ダッシュ!!」

「マシンガンアーム!!」

「クルーザーアタック!!」

「ジャングラーショック!!」

「カブトロー、サンダーッ!!」

「ライダーブレイク!!」

「スーパァーライダァー、ブレイク!!」

「ヘルダイバーレーザー!!」

「―――――!!!」

「Zブリンガーアタァック!!」

「ジェイストライク!!」

「アクロバットバーンッッ!!!」


蒔風の周囲で、連続的に起こる、攻撃による爆発音。
見回していると、次々に上がる爆発の煙。

うろたえるセルトマン。
いったい何事かと、爆発ごとにその方向を見回していた。


そして、ついに十三体の魔物が同時に爆発し、蒔風たちを覆っていた爆炎を完全に吹き飛ばした。



「いけるか、蒔風君!!」

「ああ・・・本郷さん!!!」

「な・・・・にぃ・・・・!!!」


セルトマンの額を、冷や汗が流れる。

こいつらは知らない。
こいつらは何だ。

アーカイヴにない存在が、なぜ俺の目の前に存在する!!!


「貴様ら・・・何者だ!!!」

セルトマンは知らない。
主要人物のステータスしか見ず、警戒していなかった彼は、直接的に登場しない仮面ライダーの存在を知る由もないのだ―――――!!!



「仮面ライダー一号!!!」

「仮面ライダー二号!!」

「仮面ライダー――――V3ァ!!」

「ライダーマン!!」

「Xライダー!!」

「アーマ、ゾォーン!!!」

「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ。悪を倒せと俺を呼ぶ――――俺は正義の戦士、仮面ライダーストロンガー!!」

「スカイライダー!!」

「仮面ライダー、スーパー1!!」

「仮面ライダー、ZX!!」

「―――シン!!」

「仮面ライダーZO!!」

「仮面ライダー、J!!」

「俺は太陽の子!!仮面ライダーBlack!RX!!」




風が吹く。
彼らを運んで、やってきた。




天秤が傾く。
蒔風の皿に、彼らが乗りかかった。





この世界は、まだ終わらない。






to be continued
 
 

 
後書き

仮面ライダー、集結。
第一章で結合していなかった彼らが、今ここに!!!

この中では、あの後昭和ライダーズは時系列踏んでるってことでお願いします。
RXにZXまで出てるし、もうこの際シンもZOもJもみんな来ちゃえよ!!数合うし!!みたいな。

マジュウ撃破シーンのイメージとしては、蒔風とセルトマンをカメラがグルグルしてる感じ。
爆発・・・というよりは攻撃音とともに煙が上がって、最後にドーン。

あの時のライダーの攻撃はほとんどがバイクでの攻撃です(ライダーマン除く)
アマゾンとかZXはライダーマシンでの攻撃がなかったので・・・・捏造しました!!許してください。


さて、駆け付けた仮面ライダー。
彼らは勝因となりうるのか?



蒔風
「次回。はたして、俺たちはセルトマンを攻略できるのか・・・・」

ではまた次回
 
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