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とある3年4組の卑怯者

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38 書店

 
前書き
 今回からのエピソードはアニメ「ちびまる子ちゃん」2期340話「走れ藤木!」の巻を観て上級生に絡まれる展開にしようと考えました。 

 
 とある日、リリィは家で紀行番組を見ていた。その番組はある女優が広島の厳島神社や世羅高原農場、錦帯橋などの観光スポットを巡ってリポートしていた。
「広島いいわね。行ってみたいわ」
「そうだなあ、でも遠いな」
 リリィの父が言った。
清水(ここ)から広島までどのくらいかかるのかな?」
「そうね、新幹線を使って、4時間以上かかるわね」
 リリィの母が言った。
「そうか、簡単に行けないわね」
「でも、余裕ができたらいつか行ってみようか」
「うん、ありがとう、パパ」
 リリィはいつか広島を探訪してみたいと思った。

 翌日リリィは花輪に広島へ行ったことがあるか聞いてみた。
「花輪クン、花輪クンは広島に行ったことある?」
「広島?ああ、もちろんさ。PapaとMamaが日本に戻ってきた時、一度行ったことがあるよ、Baby」
「へえ、色んな観光場所(スポット)があるわよね?」
「Of course.厳島神社に広島城を見たけど、やっぱりあそこは平和を思い出す街でもあるのさ」
「平和を?」
「ああ、原爆domeっていう場所があってね、あそこはもう戦争の恐ろしさを伝えてくれる場所なのさ」
「そう・・・」
 リリィは原爆ドームの事を知り、切なく悲壮に思った。
「でも、それ以外にもお好み焼きはとても美味しいし、広島の人に愛されている野球teamもあるから、行ってみるに越したことはないさ」
「そうね、私昨日受像機(テレビ)で広島の旅番組を観て行きたくなっちゃったの」
「そういうことか、Baby」
「ありがとう、花輪クン」
 リリィは自分の席に戻った。その時、藤木は花輪と仲良く話すリリィを羨ましそうに見ていた。
「藤木君、君リリィが花輪クンと喋っていて羨ましいんだろ?」
 永沢が急に聞いてきた。
「あ、いや、その・・・」
「え?私はただ広島について話してたのよ」
「広島?なんで急に・・・」
「昨日受像機(テレビ)見てたら広島のこと紹介していて行ってみたくなったのよ」
「ああ、そうだったんだね」
 藤木は理由が分かって安心した。
「まったく、君って本当に嫉妬深いんだな・・・」
「う・・・」
 藤木は永沢に反論できなかった。
 
 リリィは帰りがけに書店によろうとしていた。そうしたら、『広島まちめぐり』という題名の本を見つけた。
(うわあ、欲しいなあ)
 リリィは定価を確認した。720円とあった。
(買えるかなあ?)
 リリィは不安になって家に帰ることにした。貯金箱や財布の中の金額を数えてみると、1570円あった。
(やった、買える!)
 リリィはお金を持って書店に向かった。その時、野口と遭遇した。
「おーや、リリィさん・・・」
「野口さん」
「どこ行くのかな・・・?」
「本屋さんよ、買いたい本があってね」
「へえ・・・、私も今行ってきたところだよ・・・、クックック・・・」
 野口は買った本をリリィに見せた。
「『月刊お笑い』・・・。お笑いって確か落語とか漫談とかいうので人を笑わせる芸の事よね?」
「その通りだよ、私これ毎月買ってるんだ・・・」
「へえ、私も見てみたいわね・・・」
「テレビでもよくやるよ・・・。是非見るといいよ・・・。クックック・・・」
 そう言って野口はリリィと別れた。リリィは油を売ってしまったと思い、走った。

 書店に到着した。リリィは『広島まちめぐり』の置いてあるところに向かおうとしたが、置いてなかった。いや、そこに見知らぬ女子二人がその本を立ち読みしていたのだった。見た感じ上級生のようだった。
「ねえねえ、ここ面白いじゃん」
「うわ、行きてー!」
(あ、どうしよう・・・。読み終わるまで待とうかな・・・?)
 その時、後ろから誰かがリリィの名前を呼んだ。
「あら、リリィさん」
 リリィは振り向いた。笹山だった。
「笹山さん」
「どうしたの?」
「実は買いたい雑誌があるんだけど、あの人達に読まれているの」
 リリィは指さした。
「読み終わるのを待ちたいけど時間が勿体なくて・・・」
「そうなの・・・、頼んでみるわ」
「ありがとう」
 笹山はリリィと共に二人組の女子の前に向かい、話しかける。
「あの、すみません」
「あ、何だよ?」
 片方の女子が返事した。
「あの、その本私の友達が買いたいのですが、いいですか?」
「あ、うるせえな!」
 もう片方の女子がイラついて言い返した。女子にしては非常に口が悪かった。
「理子たちが読んでからにしろよ!」
 先に応答した女子は自分の名前を一人称にして言った。リリィも自分から頼もうとする。
「でも、私その本欲しいんです。あなたたちが買うなら諦めますけど」
「あ!?読み終わるまで待てっつってんだろーが!!」
 自分を理子と言った女性が怒鳴った。
「た、立ち読みするってことは買わないんですか?」
「るせえな、気持ち悪い顔して話しかけんじゃねーよ!!」
 リリィは自分の顔を気持ち悪い顔と言われてショックを受けた。
「どうしてそんな酷い事言うんですか!リリィさんはお父さんがイギリス人で外国人っぽい顔しているだけです!」
 笹山が傷ついたリリィを庇って抗言した。
「あ、なら日本語読めんのか!?イギリス人なら英語の本読んでろ!」
 その時、口論でうるさく思ったのか、書店の店主が現れた。
「いったいどうしたんだい?」
 笹山が慌てて答える。
「わ、私の友達が買いたい本をこの人たちが読んでいて買うのか聞いても答えてくれなくて・・・」
「あ?!被害者面しやがって!!」
「で、君たちはその本を買うのかい?」
「い、いいえ・・・」
「じゃあ、その子に本を譲っておくれ。こっちも商売だからね」
「ちぇっ、覚えてろっ!」
 二人組の女子たちは本を投げるようにリリィに渡して店を出ていった。
「笹山さん、ごめんなさい。私の事に巻き込んで」
「いいのよ、大事なクラスメイトだもん」
「う、うん・・・」
 リリィは『広島まちめぐり』の本を買い、笹山は月刊の漫画雑誌を買って書店を出た。
「リリィさん、広島に興味あるの?」
「うん、昨日受像機(テレビ)で広島の紹介してる番組見て興味持ったの」
「ふうん、図書館にもあると思うけど」
「それでもいいけど、一々返さなきゃいけないから、家でゆっくり読みたくて」
「そうね、その気持ちわかるわ。私は漫画の雑誌は図書館にないから買わなきゃいけないの」
「マンガね、面白そう」
「ふふ、なら私が読み終わったらリリィさんにも貸してあげるわ」
「いいの?ありがとう・・・」
 その時、二人の前に先ほどの女子が立ちふさがった。が一人だけだった。
「おい、さっきはよくも邪魔してくれたな!」
 リリィと笹山は後退りして、振り返って逃げようとした。しかし、反対側からもう片方の女子に待ち伏せされていたようで二人は挟み撃ちにされてしまった。
「なあ、茉友、買ってんだったら、立ち読みすることなく、ゆっくり読めるぜ」
「だな、今すぐよこせよ。でないとこの道は通さねえぞ」
 リリィはどうすればいいかわからなかった。せっかく買ったのにすぐ手放すなんて買った意味がないし、同じものがいつ入荷するかするかわからず、仮に入手可能になってももう一冊買える余裕もない。
「リリィさん、背中をくっつけて」
「え?」
 リリィは笹山の言うとおりにした。背中を付けた途端、笹山はリリィが買った雑誌の入った紙袋を取り、自分が買った雑誌の入った紙袋と共に背中に挟んだ。
「んだあ、そんとこに隠したって意味ねえぞ!」
「わかったわ。あげるから許して」
「え?ちょっと笹山さん・・・!!」
「悪いけどもう諦めて!」
「へえ、意外と素直に聞いたな」
 二人の女子は感心した。笹山が紙袋を差し出す。茉友と呼ばれた女子が奪うように受け取る。その時だった。
「リリィさん、走って!」
「え!?」
 笹山はリリィの手を取り、走り出した。 
 

 
後書き
次回:「追行(ストーキング)
 なんとか目当ての雑誌を手に入れたリリィだが、その後も学校の内外問わず上級生に付きまとわれる。藤木は落ち着かないリリィを心配し・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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