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カチューシャEVERYDAY

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第一章

                 カチューシャEVERYDAY
 僕は夏が大好きになった。今までは暑いだけだと思っていて四季の中で一番嫌いな季節だった、けれどそれが変わった。
 周りのその僕にこう言ってくる。
「御前変わったな」
「去年は夏はいつもぶすっとしてたのにな」
「もうずっとにこにこしてるじゃないか」
「何でそう変わったんだよ」
「だってあれじゃない」
 僕はその笑顔で答える。そうしながら今いるクラスの窓際にいる彼女を見た。
 黒い髪を奇麗に切り揃えている。丸い大きな目に微笑んだ口元、そして白く奇麗な肌。スタイルもかなりのものだ。
 しかもその黒い髪には白いカチューシャがある、そのカチューシャが窓から差し込んでくる夏の日差しに映えてだった。
 きらきらと輝いて見える、その輝きは窓の向こうに見える青と白の空にも全く負けていなかった。
 彼女と彼女がしているカチューシャを見て僕は周りに答えた。
「あの娘がいるから」
「ああ、あの娘か」
「御前あの娘と付き合ってるからな」
 二年に入って一緒のクラスになって暫くして。同じ厚生委員として仕事をしているうちに付き合う様になった。あの娘がいるからだった。
 僕は夏も好きになった、あの娘は夏になると春とはまた違った奇麗さを見せてくれる、それで夏もになっていた。
「いや、いいね」
「何かな、女の子一人でそこまで変わるんだな」
「まるで別人じゃないか」
「カチューシャが凄い似合ってるんだよ」
 夏は特にそうだった。
「いや、だからね」
「カチューシャが好きなのかよ。それともあの娘がかよ」
「あの娘がカチューシャをしているからだよ」
 僕はこう答えた。
「だからだよ。今日も下校も一緒で」
「登下校いつも一緒だよな」
「つまりデートって訳か」
「そうだよ。今日もデートだよ」
 自分でもにこにこしていることがわかる、そのうえでの言葉だった。
「ちょっと行って来るよ」
「やれやれ。本当に変わったな」
「っていうかあんな可愛い娘彼女に出来て羨ましいぜ」
「幸せの絶頂ってやつか?」
「青春か」
「そうそう、青春だよ」
 僕は今それを確かに実感していた。僕とあの娘は青春の真っ只中で二人で楽しく過ごしている。幸せの中にあった。
 そのことを実感しながらまた言った。
「いいよ。彼女ってね」
「前は暗かったのに一変したしな」
「ったく、本当に変わったよ」
「もっと変わるよ。じゃあ今日もね」
 デートを楽しむつもりで実際にこの日もデートをした、場所は学校の帰り道の砂浜。白い砂浜を青い海と空を見ながら二人で歩く。
 二人横に並んでその砂浜を制服姿で歩きながら僕は彼女に言った。
「何かこうして一緒にいるだけでね」
「どうかしたの?」
「いや、凄く嬉しいんだよね」
 顔を赤らめさせて俯いての言葉を出した。
「君と一緒にいられて」
「何か大袈裟ね」
「大袈裟かな」
「そう思うけれど。だって私達ってね」
「普通に付き合ってるだけだっていうんだよね」
「普通の高校生のね」
 カップルだというのだ。
「それだけじゃない」
「いや、けれどさ」
 彼女を見る。その向こうには白い陽射しを反射させて青い中に銀色のものも輝かせている海がある。その海を見ていると夏を感じずにいられない。 
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