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動く瘤

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第一章

                  動く瘤
 プロレスラーの池山敦は人気者だ。プロレスの試合だけではなくテレビのバラエティ番組等でも引っ張りだこだ。
 その彼にだ。知り合いのテレビ局のプロデューサーがこんなことを言ってきた。
「グルメ番組ですか」
「うん、それもワイルドなね」
 プロデューサーは笑顔で池山に話す。二人は今喫茶店、イタリア調の内装の店の中でコーヒーを飲みながら話をしていた。
「そうした料理の番組をね」
「食べてですか」
「ずばりアフリカ料理」
「アフリカ?」
「そう、アフリカだよ」
 プロデューサーは右手の人差し指を立たせてぶん、と振ってから言い切った。
「アフリカの現地の人達が食べる素材であちらの料理を作ってね」
「それで食べるんですか、俺が」
「そうだよ。どうかな」
「ううん。アフリカっていいますと」  
 池山はプロデューサーの話を聞いてだ。その太い、ブリッジで鍛えた首を捻り逞しい、ベンチプレスは一五〇を上げる逞しい腕を組んで言った。尚彼の身長は二メートルある。
「あれですか?南アフリカですか?」
「ああ、ヨハネスブルグだね」
「凄い治安らしいですね」
「みたいだね。モヒカンがバイクに乗って暴れていそうな」
 実際にそうした国や町もある。
「凄い町らしいね」
「そこの料理ですか?」
「あっ、また別だよ」
「南アフリカ料理じゃないんですか」
「もっとね。サバンナとかジャングルとか」
 プロデューサーが言うのは大自然だった。
「そうした場所の料理なんだ」
「そうしたところの素材を使って」
「勿論保護されている動物は駄目だよ」
 このプロデューサーは良識派だった。そうした動物達は最初から除外していた。
「けれどね」
「それでもなんだ」
「そう。鳥に獣に」
「他には?」
「アフリカの野菜とか魚とかね」
 そうしたものが挙げられていく。
「魚もね」
「魚ですか」
「うん、池山君魚好きだよね」
「ええ、まあ」
 その通りだとだ。池山も答える。実際に彼は魚、特に刺身が好きだ。
「好きですよ」
「だからね。そうしたものを作って食べるからね」
「現地で、ですか?」
「それもいいね。じゃあそういうことでね」
「わかりました。それじゃあ」
 池山はプロデューサーの言葉に頷いた。そうしてだった。
 彼はテレビ局のスタッフ、プロデューサー達と共にアフリカのザイールに入った。そしてそこで本場のアフリカ料理を食べた。
 実際に食べてみてだ。彼はプロデューサーにこう言った。キャンプにしているテントの中で二人で話したのである。
「何ていいますかね」
「口に合わない?」
「どうですかね。俺達、今の日本人からしますと」
「調味料とかがね」
「お塩位ですからね」
「そうだね。ここはサバンナだしね」
 川が傍にあるだ。彼等は今そこにいるのだ。
「あまりそういうのはね」
「醤油がないのは仕方ないにしても」
 これがないのは当然だった。ここはアフリカだ。
 だがそれでもだとだ。彼は言うのだった。
「香辛料も少ないですね」
「まあそうだね」
「本当に自然そのままの食事ですね」
「それが醍醐味だしな」
 アフリカの大自然の料理だというのだ。その中でプロデューサーは楽しげに藁ってそのうえで彼に言ってきた。 
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