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東方仮面疾走

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2.Nの疾走/ドーパント?

 俺は黒井翔太郎。私立探偵だ。この幻想郷には、小さな幸せも、大きな不幸も、常に風が運んでくる。今回の依頼者、都村麻里奈の依頼はまさに、舞い込んだ一陣の風だった」
「何、一人でカッコつけてるよの」
 独り言を呟いて端から見て恥ずかしい奴に見えるから、取りあえずお祓い棒で頭を叩いておいた。
「ってぇ!?って、おま、霊夢!」
 ヒシヒシと苛々しているということが感じてとれた。だが、明らかに自分より年下の女の子を怒鳴り散らすなどはしないようで、深呼吸をし自分を落ち着かさせていた。
「………何でついてきてるのかな?」
「あんたのこと、間近で審査しようと思ったのよ。で、何か分かったの?」
「ああ、どうやら仕事がクビになったのに原因があるようだ。…………ああ!ちょ、何で上から目線な訳!?」
「権利者だからよ」
 そういい、男、翔太郎に権利証を見せびらかすようにヒラヒラと見せつける。
「ああ!……こいつがいると、俺のハードボイルドが乱れるっ!」
 私がそれに気づいたのは、翔太郎をからかって遊んでいたときだった。そして、翔太郎も私に続いて気づいた。私たちの真上を鴉天狗の射命丸文が通ったということと、その先に黒い煙が立ち上っていることに。
「何かあったのかしら?」
「行ってみっか。もしかしたら、今回のことと何か繋がりがあるかもしれねぇ」
 翔太郎は自らの車に駆け寄り私の方を向き自分の車を親指で指した。
「お言葉に甘えるわよ」
「乗った乗った」 
 私を乗ったことを確認すると、翔太郎はキーを回す。
 すると、車からあの低く唸るようなエンジン音が鳴る。
「霊夢、車に乗った経験は?」
「ないわけないでしょ?むしろ今の幻想郷で持ってない方が不便だわ」
 今の幻想郷は、幾らか道路などが設置され紫曰わく、昭和と江戸が混ざり合った景観になってるらしい。
「なら、安心だが。舌かまないように気をつけろよ」
 ブォォォン!とエキゾースト音を鳴らし、発進させる。はっきり言って、凄まじく速かった。いったいどんな改造してるのよ。と問いたいくらいに。だが、何よりも丁寧な運転だった。形容するならばまるで風だった。だが、揺りかごに乗っているかのように楽だった。スピードを出していないのかと?錯覚を覚えるが窓を見ると、景色が刻々と変わっていた。スピードメーターを見ると、200㎞/sへさしかかっていた。曲がるときもアクセルを抜いているのか疑わしい。
「あんた、どう見てもこれ普通じゃないわよ」
「どういう意味でだ」
「あんたの運転もS2000もよ。車はよくわかんないけど、古い奴でしょこれ。それにしては馬力が出過ぎよ。それに、あんたアクセル抜いてるの?」
「こいつは技術世界一のホンダが手に掛けたF型エンジン。しかもS2000の為だけに作られたF20Cだからな。
それをちょちょいっと弄ったからな。他も手入れてるし四、五百馬力は出るはずだ。運転の方を言うならこれが普通だ」
 嘘こけ、と言いかけた口を開けれ果てて開けなかった。現に、文をすでにバックミラーに写している。もう少しすれば消えてしまうだろう。
「…………それにしても、車ってそんなに楽しいの?」
「……どうして?」
「にやけるわよ」
 どんな事態にも心揺れない精神はどこ行ったのよ。
「こればっかりは、な。まだやめられないぜ」
 そう言うと、シフトチェンジしさらにアクセルを踏み込んだ。








 霊夢を乗せた翔太郎のS2000はある一台の車を追い抜いた。
「排気くさい」
 車の主は、チッ!と舌打ちをしその場を後にした。









「何よ、これ」
 現場に着いてみると、見事に店が燃えていた。周りを見ると人里の自衛団たちが消火をしたり、後始末に追われていた。
 それらを無視し現場を観察していると看板の文字の一部が落ちていて『染』『風』とあった。『風』の文字だけは装飾が施されていた。翔太郎もそれを見つけ自らのソフト帽を取り、書いてある文字を見せてきた。
「『和服屋 風階』。戸上が昔勤めていた所の名前だ」
 私に説明し終えたところで後ろから声が聞こえてきた。
「ああ!翔太郎!?またお前首ツッコミにきたのか!」
「もこたん!悪いけど、付き添いにはちょっとな。慧音いる?」
 白いシャツに赤いもんぺを着た彼女は藤原妹紅。迷いの竹林で案内役をし、そこでタケノコをとり生活をしていると聞く。
 それにしても、この男の人脈には驚かされる。一介の探偵が魔理沙や妹紅、話し方的に慧音とも知り合いみたいだし。さらに今は妹紅と若干言い争い気味になっている。
 やはり、うるさかったのだろう。二人とも慧音の頭突きを喰らって悶絶していた。
「全く、犬と猿かお前等は。それと翔太郎。ちょっと来てくれ」
 さっき、翔太郎が調べていた場所だ。よくよく見れば瓦礫の山だった。
「慧音。すまないな」
「相変わらず鼻がいいな。それよりも見てくれ。あそこだ」
 そう言いながら、目線で場所を示す。既に鎮火はすんでいるが、ぼろぼろだった。そんな中を踏み込んでいき着火点までたどり着いた。
「ここが、基本が店で出すものを作り、また原案を考える場所らしい。見ろ。入り口付近から裏までのこの距離を。そしてここには店主は関係者以外は入れなかったて言うし、裏と言っても本当に裏口に近い訳じゃないから火矢を打ってどうこうできる問題じゃない。それこそ盗人まがいに押し入ったわけでもない。となると、だ」
 これで三件目だ、と慧音は頭を抱えて嘆いていた。
 翔太郎は崩れていた断面の写真を撮っていた。
「ドーパント、か」
 私はその言葉に疑問を隠せなかった。ドーパント、聞いたこともない言葉だった。
「十中八九な。先週から数えて似た事件が三件目。ま、ここまで派手ではなかったがな」
 そう言いながら、慧音は翔太郎に封筒を渡していた。おそらく、事件の資料だろう。
「何か分かったら連絡を頼む」
 肩を叩き、再び現場を指揮に戻っていった。









 事件現場を後にした私たちは人気のない落ち着ける場所に来ていた。
「ふーん。………どれも戸上が勤めていた所の支店か。………やれやれ。人探しのはずが、ドーパントに突き当たっちまうとはなぁ」
「ドーパントって何よ?」
 しかし、翔太郎から答えがは返ってくることはなかった。すでに自分の世界に入ってしまっているのだろう。
 私はお祓い棒を袖から出し、ひっぱたいた。
「これはまた、俺たちの出番って────風向きかな?っつて!?」
 そして、首を絞める追加コンボを繰り出す。
「カッコつけてないで早く説明しなさい!ドーパントっていったい何なのよ!」
「いつつつつ!暴力反対!(ピリリピリリ)レイヴンか?」
 レイヴン?誰かは分からないが。通信機のようなもので連絡を取っていた。首絞められてるのに器用ね。
「送った資料読んだか?」
『読んだ読んだ。またやっかいな事件(ヤマ)拾ってきて。大将。おたく呪われてんじゃないの?』
「お前がそれ言うか。まあいいや。お前にドーパントの能力を調べて……………やっぱいいわ」
『急にどったの?因みにお姉さんが調べたところドーパントの能力は』

「『Flareだ!(よ)』」


 そういう翔太郎と私の目の前には岩、いや溶岩を纏い陽炎を立ち上らせている怪人が目の前にいた。
 
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