| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

東方仮面疾走

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

3.Nの疾走/もう一人の探偵にして整備士

「何よ、あれ」
 私はただ呆然と立っていることしかできなかった。
 怪物は咆哮をあげると地面に拳をたたきつけた。
「っ!?飛べ!」
 私は翔太郎の言葉に正気が戻った。飛び退くと先ほどまで私たちがいた場所はバン!と音を立て爆発し炎があがっていた。そのまま宙に浮き私は札と封魔針を取り出すもそこには既に怪人の姿はなく、未だ燃えている地面のみが残されていた。
「これでこの件の危険さがよく分かったろ?死にたくなけりゃ、ヤマから引きな」
「それは無理ね。何せ私は博麗の巫女なんだから!それに対する役割は果たすわ!」
 それにこれ以上、仕事をしないで参拝客を減らすのも問題だ。
「‥‥‥分かったよ、好きにしろ。なら、ここからは二手に分かれよう。確か、七時には魔理沙が車見せに来るからその頃に一旦家に戻ってくれ」
「いいけど、私早めに帰るわよ。配達に支障がでるし」
「配達?何の?」
「牛乳配達のアルバイト。朝四時頃から配達してんのよ」
「博麗の巫女もバイトをする時代、か」
 世も末だな、と言いたげな顔をする。泣くわよ。












 私はしばらく聞き込みをし、翔太郎の家へ戻った。
 成果は殆ど0だった。聞けたこととすれば殆ど私たちも知っているような噂程度。意味がないと判断し、今に至る。
「魔理沙ぁ~。来てる?」
「おーう。霊夢こっちなんだぜー」
 隣の車庫からの声だ。私は車庫へと向かった。
「よう、霊夢。どうなんだ?事件の方は?」
「手がかりは特になし。あとはあいつから詳しい話を聞くだけね。そう言えば魔理沙はどうしてここに?」
「ちょっと、こいつを見てもらいにな」
 そう言いながら後ろの車を親指でさした。
 倉庫の中に響いていた機械音が止み、車の方から一人女が出てきた。
「まりちゃ~ん。整備、終わったわよ~。といってもちょっと前に見たからチェック程度だけど」
「おう!サンキューなんだぜ!」
 「健全に公道で走って来たまえ、若者よ」とその女は言って愉快そうに笑っていた。魔理沙の場合、健全な交通ルールを破っているのだが。そういえば、
「あなたが、翔太郎と電話で話してたレイヴンってやつ?」
「お嬢ちゃんが博麗霊夢?魔理沙や紫からは聞いてるよ。探偵事務所の方は宛にならないかもしれなけど車のメンテ等をしたければ是非お姉さんとこに来てね。可愛い子ちゃんにはサービスするわよ♪」
 いろいろ細々とした工具などが錯乱としていた。そして、奥には魔理沙の青いBRZが鎮座していた。
「にしても、みんな好きなものね」
「つっても霊夢、お前ぐらいだぞ。そこまで冷めてるの。今でも忘れないぜ二年前の三年前のあの言葉」
 何か言っただろうか。全く記憶にない。
「んなもん忘れたって顔だな。ほんとお前ぐらいだよ。『タイヤ四つついてれば車よ』なんて言うの」
「事実でしょうが。だいたい私たちは飛べるんだから必要ないでしょうに」
 不必要なものはいらないわ。まあ、私も車は持ってるは持ってるけど、維持費がかかるの何の。そう言うのは全部紫に任せてるけど額は知ってる。
「んー。でも確かに、お嬢さんの言うとおりかもよ?」
「おい、それを認めてしまっていいのか整備士」
「ズバッと言っちゃえばその通りだからねぇ?もっとも、中には三輪なんかもあるから一階にも言えないけど。イギリス車のモーガンとか」
 おお、私と同意見の人がいるとは思わなかった。しかも整備士なのに。私が思うのもなんだがこれでいいのだろうか。整備士として。
「それに楽しみ目的ではなく、足としてを欲求しているのが現状なわけよ。知っている限りだと外の世界の日本や中国、イギリスなんかがそれだし。だからどのメーカーもEV車の開発に着手しているしね。もう宇宙的年齢おっさんな地球にも優しいってなわけよ。イギリスに行ってみれば?もうプリウスであふれていたわよん」
 だからこそ幻想入りしたんだ、と彼は語った。確かにそうだ。走る楽しさという存在が外の世界で薄れてきた証拠だろう。
「地球には優しくないし、騒音で迷惑だし、まず危険行為だ。分別のある大人のする事じゃないわね~。それはみんなわかっていることよ。それでも、止められないバカたちが我らのような走り屋なわけ」
「「バカで悪かったな」」
 声が重なった。一人は魔理沙だ。もう一人は入り口を見ると、翔太郎が帰ってきてた。
「おっ、大将。聞いてたの」
「まあ、な。確かに俺ら走り屋はどんなに速かろうと社会の脚光を浴びることは決してない。だとしても、サーキットを走ってるよりマイナー路線を突っ走る方が俺の性に合ってる」
「まったく、頑固者だね~」
 呆れたような声色でやれやれという風に肩をすくめる。
「それよりも、調べてもらいたいことがある」
「あ~、ちょっと無理かね~」
「はあ?何で、ってちょっと待った。なんだその横にあるFDは?何だ?その『紅魔RED MOONS』と言うステッカーは」
「ん?知っての通りフランちゃんのFDよ?」
「はあ!?どいうことだよ!今日は仕事ははってなかったろ!いつ入れたんだよ!」
「今日。二時間前ぐらい。仕上げは今日中」
 ドン!と思いっきり壁をたたく。
 だが、彼のように、どいうことだよっとツッコミたいのは私だった。確かにここまでの交友関係にはビビりものだったが。よりによって紅魔館連中とまでとは知らなかった。特にあの妹の方。私たちが異変を解決してからは大人しくなったもののまだ不安定だからだ。あんな狂気の塊と知人な時点でこの男の子とを過小評価していたと評価を改める。
「やってくれたなぁ!フランの奴!」
「何なんだぜ一体。うるさいなぁ」
「こいつがいないと、ドーパントの事件を追えねーんだよ」
 出た。ドーパント。
「前から気になってたけど、何なんだぜ?そのドーパントっての?」
 翔太郎は諦めたようにため息をつくや、パソコンをいじりだした。そしてある画像を見せてきた。USBメモリ?
「今、この幻想郷にはこんなのを売り撒いてる奴がいる。ガイアメモリっつって使った人間を超人にしちまう」
「超人?何の能力もない人間でもか?そんなのあるわけないんだぜ。そんなのがあるなら魔法使いはお払い箱だぜ」
「確かに普通に考えたら信じがたいけど‥‥」
「さっき、本物に襲われたろ?」 
 先ほどの化け物のことを思い出すと、あながち嘘っぱちじゃないと思ってしまう。
「‥‥‥つってもなぁ」
 そういい、翔太郎はレイヴンの方をジトッとした目で見た。そしてまたため息をつく。
「こいつこうなると点で動かないんだよ。飯も食わずにひたすら車と対面だからな」
「じゃあ、どうすんのよ?」
 待つしかないだろ?と呆れながら言われてしまった。確か、二時間前に持ってきたって言ってたわよね?マジで?
「そうだ、霊夢!今日うちチームの集まるんだよ。霊夢も来か?来るよな!じゃあ後で迎えに行くぜ!」
「だから、朝早いからあまり。あ、やっぱいいわ」
 もう目が『来させる』と語っている。顔には『断固拒否』と書いてある。断固拒否したいのは私の方だ。
「なんだ?博麗山に行くのか?」
「‥‥‥私は行きたくないんだけど魔理沙がね」
「‥‥‥俺も似たような経験があるぜ。チームの刺激になるからって」
「「ハア」」
 さっきのレイヴンのことしかり、本当翔太郎とは何かと話が合うかもしれないわ。苦労人と言う意味で。













「で、二人とも行くんだって?」
 霊夢も魔理沙も帰り、二人のみになった車庫でレイヴンはフランのFDを調整し、翔太郎は自身のS2000へ腰掛け事件の資料を再び読み直していた。
「ああ。こりゃ、一波乱あるな」
「‥‥‥‥やっぱり?」
「だろうよ。フランがFDを最後に見せてきたのだって先月だ。さらに向こうには咲夜だっている。とてもじゃないがわざわざ金かけて見せに来る意味がない。考えられることは咲夜じゃあ仕事が追いつかないってことだ。しかも、今日中で仕上げろだろ?ならそのまんまどっか攻めにいくってことだ。紅魔攻めにいくなら何時も通りでいいだろうし、だとしたら答えは後一つ。博麗山への挑戦だ」 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧