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レーヴァティン

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第二十二話 東の島その四

「林檎や蜂蜜からも作る」
「そうだよな、けれど東だとな」
「米か」
「芋からも造るぜ」
「薩摩芋だな」
「わかるか、そっちは焼酎っていうんだよ」
「そして主な酒は何といってもか」
「ああ、米の酒だよ」
 こちらだというのだ。
「皆楽しく飲んでるで」
「濁った方も澄んだ方もか」
「おっ、兄さんわかってるんだな」
「酒のことも知っている」
 確かにとだ、英雄は船乗りに極めて落ち着いた顔で述べた。
「好きだからな」
「そうか、けれどまだ米の酒は飲んでないだろ」
「こちらではな」
 異邦人であることは話が複雑になると思いここで隠したままだった、言ってもよかったが今はその複雑になることを避けたのだ。
「まだな」
「それじゃあ実際に見たことはないな」
「飲んだこともな」
「じゃあな、是非な」
「飲んでみることか」
「どっちも美味いからな」
 濁った方も澄んだ方もというのだ。
「楽しみなよ」
「是非そうさせてもらう」
「酒も美味いし女もな」
「いいか」
「これで戦がないとな」
 船乗りはこのことは苦笑いで言うばかりだった。
「いいんだがな」
「戦は多いか」
「しかも激しいぜ、けれど俺達に直接被害はないぜ」
「田畑や人には手出しをしないか」
「町にも出来る限りな」
 手出しはしないというのだ。
「特にな」
「それはいいな」
「ああ、領主さん達も後で自分の領地と民になるからな」
 そうした土地の奪い合いだからだというのだ。
「手出しはしないんだよ、それどころか戦になったら俺達はな」
「見物だな」
「そうそう、安全な場所にまで逃げてな」 
 そのうえでというのだ。
「弁当を食いながらな」
「戦見物か」
「応援もしてな」
「それはいいことだな」
「だから俺達には直接被害はないんだよ」
 それは大丈夫だというのだ。
「本当にな、ただな」
「戦自体がだな」
「あるとどうしてもな」
「厄介だな」
「商売も出来なくなるし安全な場所に逃げないといけないのは確かだからな」
「巻き込まれるからな」
「そうだよ、誰か島を一つにしてな」
 そうしてというのだ。
「泰平にして欲しいな」
「それが願いか」
「その通りだよ、魔物も厄介だし巨人も出て」
「そうしたことを解決してだな」
「何とかならないかね」
 船乗りのぼやきは深刻なものだった、戦もそうだが他のことでも何かとあることがよくわかるぼやきだった。
「そう思って止まないぜ」
「西の島も東の島も同じだな」
「戦に魔物に巨人にな」
「そうしたことがなくなって欲しいか」
「どれか一つでもそうなれば文句はないさ」
 それこそというのだ。 
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