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自殺行為

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第一章

                 自殺行為
 神奈川県立村山工業高校写真部は部の活動以上にあらゆる遊びに興じていた、それは肝試しや度胸試しというものだった。
 心霊スポットに行ってみたりヤクザ屋さんの事務所の前で記念撮影をしたりだ。そうしたやや命懸けなことに面白さを見出していた。
 その中心には部長の鈴木慎太郎がいた、小柄で痩せた眼鏡が似合う少年だ。髪の毛は黒で短くさせている。
 その彼がだ、部室で部員達にこんなことを言った。
「また面白いことしない?」
「面白いっていうと?」
「今度は何するんだ?」
「これまで心霊スポット巡りしたりヤクザ屋さんの事務所の前で記念撮影したりしてたけれど」
「今度は何するの?」
「面白いことにしても」
「東京ドーム行ってね」
 鈴木は部員達に答えた、まずはあの全世界の悪徳を集めた巨人の忌まわしい本拠地の名前を出したのだった。
「応援しない?」
「いや、それ普通じゃない」
「部長横浜ファンだけれどさ」
「巨人嫌いだしね」
「というか僕達も巨人嫌いだけれどね」
「ここいいるの大抵横浜ファンだよ」
 地元だからだ、例え成績が低迷していても。
「それで阪神応援するって普通だよ」
「別に面白くないじゃない」
「巨人応援しないならね」
「ネットやテレビでもいいじゃない」
「いや、三塁側で巨人の応援をするんだよ」
 鈴木は部員達に笑ってこう答えた。
「これがね」
「えっ、三塁側で巨人を!?」
「巨人を応援するのか!?」
「阪神の方で」
「あえて」
「そうしてみよう、面白そうだし」
 それならというのだ。
「スリルもあって」
「やばくないか?流石に」
「そうだよな」
 部員達は鈴木の提案にだ、流石にだった。
 引いた顔になってだ、お互いに顔を見合わせてそうして彼等の中で言い合った。
「危険過ぎるだろ」
「阪神ファンなんて理性ないので有名じゃないか」
「しかも巨人大嫌いだぞ」
 日本人なら誰でも知っていることだ。
「応援も熱狂的でな」
「そんな中で巨人応援したら」
「例え本拠地でなくてもな」
「自分達から戦場に行く様なものだぞ」
「死ぬんじゃね?そんなことしたら」
「流石にな」
 彼等は本気で心配していた。
「巨人グッズで身を包んで応援したりしたらな」
「巨人帽被って半被着てメガホン持ってやったら」
「殴られてまだましだろ」
「殺されるんじゃないか?」
「本当にな」
「それこそな」
「ああ、止めた方がいいだろ」
 幾ら何でもというのだ。
「甲子園じゃないだけましにしても」
「三塁側は阪神ファンで満員だぜ」
「止めた方がいいぜ」
「今回ばかりはな」
「いやいや、そこをあえてするのが面白いんじゃないか」
 鈴木は引きまくっている彼等に笑って返した。
「危ない場所に行くからこそ」
「本当にやるのか?」
「東京ドームの三塁側で巨人応援するのか」
「兎と虎の試合で」
 要するに巨人阪神戦である。
「マジでか」
「あえてやるのか」
「そうしてみよう、実際にどうなるのかを見る為にもね」
 鈴木だけがにこにことしていた。 
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