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ソードアートオンライン VIRUS

作者:暗黒少年
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デュエルと勝敗

 
前書き
いいタイトル名が浮かばない・・・・・ 

 
 今、七十五層《コリニア》のコロッセウムのようなドームの控え室の椅子に座って目をつぶっている。この世界に来る前も、道場同士での試合の前はこうして目をつぶって集中したものだ。目をつぶっているとドアから数人入ってくる。入ってきたのはユキとアスナとキリトのようだ。

「よう、ゲツガ。今日の試合頑張れよ」

「ああ。頑張るしかないな」

「ねえ、ユキ。どうしたのゲツガ君?今日は口数が少ないような……」

「私もわからないの。朝からここに来るまであんまり話してくれなかったし……」

「ゲツガはな、本当に集中したいときはこうやって朝からずっと精神統一みたいなことをするんだ。話しかけてもほとんど喋らない」

「そうなんだ。じゃあ、あんまり邪魔しちゃいけないね。キリト君、行こ」

「そうだな」

 そう言ってキリトとアスナは控え室から出て行った。ユキは残って隣の椅子に座ってくる。

「ゲツガ君。集中してるのに、悪いと思ってるけど聞いてくれる?」

「いいぞ」

 ただ一言、そう言ってからユキの話を聞く。

「私ね……この世界に来るまでは、自分を好きになれなかったの。親の敷いたレールの上をずっと歩かされて、好きでもない男と許婚にされたり、嫌なことしかなかったの……だからこの世界から出たくないって思ってた」

 一度口を閉じてから、しばらく黙った後また話し始める。

「だけどね、この世界から出たいって思ったの。どうしてか分かる?」

「分からない」

 そう言うとユキは頭を肩に預けてから言った。

「ゲツガ君に会ったからだよ。この世界で初めて恋をして、結婚までした。でもね、私ゲツガ君のこともっと知りたいし、私のことももっと教えたい。だから、この世界じゃなくて現実世界のほうで会いたいの。こんなこと思うのは変と思う?」

「いいや、いいんじゃないか。俺も現実世界に帰ったらユキに会ってみたいし、話してもみたい。もしかしたら、この世界じゃ見つからないほかの一面も見られるかもしれないからな」

 そう言って椅子から立ち上がる。肩越しでユキのほうを見て言った。

「だけど、まだまだ先の話だ。まずはこの試合を勝って、家でまたたくさん話をしよう。俺のことを聞かせたいし、ユキのことも知りたい」

「うん、頑張ってね!」

「ああ」

 そして、コロッセウムの闘技場入り口に向かった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 入り口を出ると昨日と変わらず、席は満席で大きな声が闘技場内を響いていた。真ん中には赤い甲冑を着た、神聖剣のユニークスキルを持つヒースクリフがいた。

「やあ、遅いご登場だね」

「少し話をしてたんだよ。それと精神統一」

「そうか。それじゃあ、観客も待ちわびてることだし、始めるとしようか」

 そう言ってヒースクリフはデュエルの申請をしてきた。初撃決着モードを選択してから受託する。そして、俺とヒースクリフの間にタイマーが現れる。背中から愛剣を抜剣して逆手持ちに構える。ヒースクリフも盾と剣を構える。時間が経つ度に自分の感覚が研ぎ澄まされていると感じる。ようやくタイマーがゼロになりデュエルが始まった。

 まずはヒースクリフが盾を前にして突っ込んでくる。それを両手剣を振り、盾を弾き飛ばすが、ヒースクリフは攻撃が来ると予測していたのか後ろに飛んでいたため、受け流されてあまりダメージは食らわなかった。

「やっぱ馬鹿げているな、そのユニークスキル。ぜんぜんダメージ食らわねえし」

「そうかな?君の方こそ、その重さの攻撃を片手で出せる君の筋力値のほうが馬鹿げていると思うんだが」

 そう言った後、もう一度ヒースクリフは突っ込んでくる。今度は攻撃せずに防ごうとしたら、盾を下から突き上げてくる。両手剣はそのせいで上に弾かれて、体が無防備になる。そこにヒースクリフは攻撃してこようとする。しかし、それは俺の計算どうり。何も持ってない手で剣の腹を上からつかみ、地面に叩きつける。ヒースクリフの剣は俺の体を狙っていた軌道は、叩きつけられたことにより地面に叩きつけられたことに驚く。その時に逆手に持った両手剣をヒースクリフに向けて叩きおろす。

「セイヤァアア!!」

 しかし、それを盾でガードするとそのまま素早く、盾で殴ってくる。それを掠りながらも避け、剣から手を離して後方に飛ぶ。

「さっきのはいいと思ったんだけどな」

「さっきのは私も危ないと思ったよ。君のもう一つの攻撃方法を甘く見ていた」

「それなら出し惜しみせずに攻撃して来いよ!」

「そうさせていただこう!!」

 そして、今度はヒースクリフが動く前にヒースクリフの立っている場所を落下点にしてジャンプする。しかし、ジャンプは跳ねると違って高速移動が出来ないのでやすやすと避けられてしまう。そこに、ヒースクリフは攻撃をしてくるがギリギリでかわしてから攻撃に移る。それを避けてから、今度はこっちから攻撃をする。それを避けられてから同じようなことを繰り返した。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 何時間経ったろう。いや、神経を研ぎ澄ましているため、体感時間と実際に経っている時間がかなり違うだろう。ヒースクリフとの打ち合いを何度も繰り返すうちに、剣の動きと盾の動きが少しずつだが、わかるようになってきた。そのお陰で、ダメージは掠ることもほとんどなくなり、避け続けることが可能になった。そして、自分の攻撃もギアが上がったように攻撃速度が上がったような気がした。

 両手剣と体術を混ぜて戦い、剣は剣で盾は素手で対応する。その攻撃の手をやめることなく、連続でヒースクリフに攻撃していく。だんだんと攻撃していくうちにヒースクリフは攻撃速度には追いついているものの一撃一撃が重いのでだんだんと反応が遅くなってくる。
そして、ヒースクリフにようやく大きな隙が出来た。その時キリトのデュエルのときのことを思い出す。

 あの時もこういう感じだった様な気がする。攻撃をやめることが出来ないので、もう一つ追加に死角からの蹴りを繰り出す。そしてヒースクリフに攻撃があたりそうになる瞬間、時間が止まったように体が動かなくなる。しかし、ヒースクリフだけは違った。盾がコマ送りのように動き、自分の両手剣の前に来る。そして時間が動き出しそのまま、剣をガードされて攻撃されそうになるが、死角からの蹴りで攻撃をキャンセルさせようとするが、もう一度時間が止まる。今度はヒースクリフの体が少しだけ動いて蹴りの軌道を外れた。

 そして、時間が動きだした瞬間、蹴りが空を切りそのままヒースクリフが攻撃をしてくる。避けようと思ったが蹴りを入れたせいで動きが遅れる。そのせいで攻撃を食らってデュエルが終了した。勝利したはずのヒースクリフの表情は勝った喜びではなく、キリトとのデュエルにも浮かべていたどこか焦った表情だった。ヒースクリフは素早く後ろを向いて、闘技場から出て行った。それを見送った後、仰向けに倒れ、空を見上げる。

「あーあ、勝とうって決めたのに負けちまったな」

 呟いた後、しばらくその状態でいたがお開きになったならここにいる意味もないだろうと思って闘技場から退場した。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 闘技場を出た後、ユキがすぐに抱きついてきた。その時にヒースクリフに最後に斬られた部分が痛み出す。

「痛ってー!!ちょ、ユキ。痛い、痛い!!つうかなんで今頃痛みが出てくるんだよ!?アドレナリンのせいですか!?」

 今頃痛みが出て、変なことを叫んでしまう。しかし、もしかしたら痛みがなくなる方法があるんじゃないか?ということを思い出す。

 グリームアイズのときは回復せずに帰ったため、痛みがあった。そして次の日には痛みがなくなっていた。つまり、この痛みは体力回復によって無くなるのではないかと思い素早くポーションを取り出して、口に含む。徐々に回復していくごとに痛みが薄れていくのを感じる。その途中に胸に顔を当てていたユキは頬を膨らましてから睨んでくる。

「勝つって言ったじゃない。……嘘吐き」

「ごめん、やっぱ最強って言われている奴には勝てなかったよ」

「……そんなすぐに謝られちゃ、怒るに怒れないじゃない」

「怒られるのは嫌なもんでね」

「負けちゃったのか……なら、ゲツガ君はKobのメンバーになるってことだよね?」

「そうだな。約束は守らないといけないからな」

「それじゃあ、今日は帰ったらゲツガ君の入団記念に二人だけで祝おうよ。どうせ、制服なんて、メールに添付されて送られてくるから」

「何か、メールで服を渡すって適当だな……。まあ、取りに行かなくていいからいっか。じゃあ帰るか、ユキ」

「うん。負けたから一個だけ言うこと聞いてもらおうかなー」

「……恥ずかしいこと以外だったらいいぞ」

「じゃあねー……私のこと、先輩を慕う感じに言ってみて」

「なんだ。そんなことか……わかりました、ユキ先輩。これからともに頑張って攻略しましょう」

「……ぷっ……ぷはははははは!!」

 ユキはそれを聞くと笑い出した。

「ゲツガ君がそんなのやっぱり似合わないよ!やっぱりゲツガ君は敬語を使わないほうがいいかな」

「笑うとかひでえな……まあ、俺は敬語なんて滅多に使わないし、自分でも使ったような記憶はないからな」

「そうだよねー。じゃあ、帰ろうか」

「そうだな」

 そう言って歩こうとするとユキはコートの袖を握ってくる。

「ゲツガ君……手……握って帰ってもいい?」

「いいぞ、って言うか勝手に握ってきても良かったんだぞ?」

「でもなんか、恥ずかしくて……」

「キスするよりはぜんぜんだろ?」

「ゲツガ君は少し、恋愛に対して羞恥心をもったほうがいいと思うよ!」

 そう言ってユキは、俺の手を握る。そして、他愛のない会話をしながら自分たちの家へと帰っていった。 
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