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艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~

作者:V・B
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第三十四話

 
前書き
どうも、お久しぶりです。約一ヶ月ぶりです。この一ヶ月の間にも、毎日のように見てくださる方が居ました。その人たちや、待ってくれていたかもしれない人へ。

ただいま帰りました。 

 

「…………で、なんでこんなことになってるんですかねぇ?」
 
俺は今の店の状況に呆れていた。
 
天龍は半脱ぎ、時雨は爆笑、夕立は電話で拓海に愚直、春雨は酔い潰れていた。
 
「まぁ、普段鎮守府では気軽にお酒なんて飲めない訳なんですし、大はしゃぎも当然でしょう。」
 
「宴会ならまだしもな。オレはあくまで静かに飲む酒がいいんだけどな。」
 
と、俺と二人でカウンター席に座り、グラスに入った芋焼酎をグイッと飲み干す木曾。相変わらず酒に強い奴だ。
 
「これうめぇな。後で一本くれ。無論、提督のポケットマネーで。」
 
「…………飯の代金は心配するなってのはそーゆーことか。」
 
俺はそんな木曾の様子にもかなり呆れていた。いつものようにクールに振る舞ってるし、後ろの四人とは大違いだ。
 
しかし、おかしいなと思った。
 
いつもならそろそろ木曾の声が聞こえたような気がする所なのだが…………。
 
「どうしたよ千尋。もっと飲めよ。」
 
声の主は俺に酒を勧めてきていた。ありがたく受け取っておこう。
 
一口飲み、なかなかの辛さに驚いていた。あいつこんなのぐびぐび飲んでたのかよ。
 
前に歓迎会してもらったときの日本酒もなかなかだったし、大人になってからはチューハイでいいかなと思っている。つーか今、この年齢で酒を飲んでいることが本来なら違法な訳で。
 
「つーか明らかに未成年の奴らが堂々と他の客の前で飲んでていいのか…………。」
 
当然、突然来たから貸しきりなんてことはなく、俺達以外にも客はそれなりにいる。どうやらなかなかうまい具合に商売しているらしい。
 
「それは心配すんな。どうせここに来る連中なんてのはオレ達のこと知ってんだし。」
 
またさらっととんでもないことを言いやがったなこいつ。
 
「ええ。実はこう見えても一見さんお断りでね。この辺の漁業組合の人とか、艦娘のことを知っている人しか入れないのよ。」
 
…………成る程な。
 
「よーするに黒い話をするならここはかなり好都合と。」
 
前々から思っていたことだが、鎮守府のようなデカイ敷地を海のそばに建てているんだ。昔は絶対に地元漁師の反発があったはずだ。なのに、平然と建っている。
 
にも関わらず、俺達にはそんな施設があると言うことは知られていない、どころかこの様子だと、近隣住民にも知られてないんじゃないか?
 
なぜ?
 
…………お金で解決しちまったんだろうな。
 
んで、それ以来の『大人の関係』ができたと。
 
「だろうな。女将は元鎮守府関係者だし、回りは味方しかいない。外から見ればただの居酒屋だし。」
 
木曾もそれには気づいていたようで、こちらを見てニヤリと笑った。
 
「ふふっ。あまり子供が探りを入れないことですよ?大輝さんに限ってそんなことは無いだろうけど、幸いにも海のそばだし、沈めてもバレないと思うわよ?」
 
鳳翔さんは真っ黒だった。こんなんだから子供たちは大人になんかなりたくないと言うんだ。
 
「沈められる前に、取り合えず下着姿の天龍をなんとかしてね?」
 
俺は飲みかけてた芋焼酎を吹き出した。怖くて後ろを振り向けない。
 
「いーぞーてんりゅーう、ぬげぬげー!」
 
野次を飛ばすのは時雨。いつものように澄ました様子はどこにもない。酒は飲んでも飲まれるな、って言うことばを知らない訳では無いのだろうに。見事に笑い上戸になっていた。
 
「んでねぇ~?もう拓海くんが帰って一週間経っちゃうよぉ~。寂しいし、心細いし、切ないし。切なすぎて(自主規制)だよぉ~。」
 
こちらは夕立。さっきから拓海にひたすら電話を掛けていた。こいつは酒飲むと泣き上戸になるらしい。つーか俺と同いどしの女の子が公共の場でそんなこと言うな。
 
すると、俺のスマホが、ピロリーン、と鳴った。見ると、拓海からの連絡だった。
 

 
 
 
『なぁなぁ、僕の冬華が可愛すぎて(自主規制)なんだけど。』
 
 
 
 
 
死んでしまえ。お前も冬華も。
 
俺はそういった文面を送り付けて、スマホをポケットに仕舞った。
 
さて、このとき俺は見てはいなかったが、天龍は下着姿になって、他の客の前に立っていたらしい。
 
「さぁーて、残り二枚だぜー?この先まで見てぇってやつは叫びやがれ!」
 
「いいぞー!」
 
「もっとやれー!」
 
「ちくわ大明神」
 
「よっ、色女!」
 
「たーまやー!」

おい待て、明らかにおかしいのが混ざってたぞ。
 
俺は心の中でそう呟いた。なんとなく、口に出したら殺される気がした。
 
「んー、やっぱだめー!」
 
さて、盛り上がってる天龍は焦らす焦らす。できればそのまま服を着て貰いたいものなのだが。
 
「頑張れー!」
 
「応援してるぜー!」
 
オジサンたちはそうは行かないようで。つーか鳳翔さん止めろよ。
 
そして、酔っ払いと言うのはかくも恐ろしいものであるわけで。
 
 
 
 
 
「だって…………オレの裸を見せるのは二号だけって決めてんだよ!」
 
 
 
 

とんでもない発言を平気でしてくれる。
 
 
 
 
 
俺は思わず手に持ってたグラスを落としてしまった。幸いにもグラスは割れなかっく、中身も少なかったから被害は少ないが、それどころではない。
 
「ほほぅ?てんりゅー、なかなか聞き捨てならないセリフだねぇ?ボクにも教えてくれよぉーう。」
 
酔っ払いと言うのは以下略。いつもなら止めてくれる時雨も使い物にならない。回りではオッサン達がヒューヒュー言ってる。
 
しかし、次の瞬間、俺達は静かにならざるを得なかった。
 
 
 
 
 
 
「…………どーゆーこった?なぁ、千尋ォ。」
 
 
 
 
 
 
隣の木曾さんが、それはもう恐ろしい位ドスを効かせた声を出したわけで。ほろ酔い気分も一発で消し飛んだ。
 
天龍と時雨は気にせず爆笑してたが。後で覚えとけよテメェら。
 
「なぁ、千尋。お前、天龍とそんな関係だったのか?あぁ?」
 
木曾はこちらを睨んだまま、唸るように言った。あ、こいつもすっかり酔ってたんだ。いつもなら爆笑してるところだ。気付くのが遅かった。
 
しかし、やはり以下略。
 

 
 
 
「オレの裸を見たくせに、他の女に手ェ出そうたぁいい度胸じゃねぇかよ。あぁ?」
 
 
 
 
 
 
 
 
何を口走るか分かったもんじゃない。(第十七、八話参照)
 
 
 
 
 
 
 
「あぁん?テメェら、もうそんな仲なのかよ!?」
 
下着姿で驚く天龍。頼むから服を着てくれ。
 
「酷いよ二号。ボクというものがありながら………………。」
 
頼むから時雨は場を掻き回さないでくれ。余計に話がこんがらがる。
 
「もう!拓海くんは冬華と学校、どっちが大事なの!?」
 
テメェはいい加減にしやがれ。つーか拓海もいい加減諭せ。
 
「くー………………くー………………。」
 
こんなに回りが五月蠅いのに、春雨はずっと眠っていた。いやまぁ、あまり見せたい状況では無いからいいっちやぁいいけどさ。常識人がもう一人欲しかった。
 
つーかそもそも、酔ってるとはいえ、木曾がこんなことを言い出すとは思わなかった。
 
お陰でこっちの胃はズタボロだけどな!
 
…………泣きたい。つーか泣くぞ?
 
「えーっと…………取り合えず、飲む?」
 
俺は木曾を落ち着かせようと、俺がチェイサーとして飲んでた水が入ったグラスを渡した。
 
「……………………おう。」
 
グラスを受けとり、一気に飲み干した木曾。これで多少は落ち着いてくれるはず……………………。
 
少し間。
 
すると、木曾の顔がみるみるうちに赤くなっていった。え、俺水渡したよね?
 
すると、カウンターの向こうから鳳翔さんが慌てた様子で叫んだ。
 
「ちょっと、千尋くん!?それってスピリタスが入ってたグラスよ!?」
 
「なんでんなもんがここにあるんだよ!!」
 
スピリタスとは、世界で一番度数の強い酒。そのアルコール度数は驚異の九十六パーセント。味とかあるのだろうか。
 
しかし、そう考えると木曾はグラス半分のスピリタスをイッキ飲みしたのか……………………下手したら急性アル中でお陀仏だぞ?
 
(よい子の大人と未成年は絶対に真似しないようにね?今回は木曾が潰れてるから僕からお知らせさせてもらおう。 bay 提督)
 
………………………………無視しよう。何を無視するのかはわからないけども。それどころじゃねぇし。
 
取り合えず、木曾の行動に注意しねぇと……………と考えた俺は鳳翔さんに向けていた視線を木曾に戻した。
 
 
 
 
 
 
 
 
下着姿の木曾がそこにいた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ぶちっ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「テメェらいい加減にしやがれええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その叫び声は、遠くの鎮守府まで聴こえたそうな。
 
 
 
 
 

 
後書き
読んでくれてありがとうございます。今回はある意味リハビリみたいな感覚で書きました。なかなか忙しかったけど、内容はしっかり作って来ました(それでも相変わらずのこのクオリティ)。
それでは、また次回。 
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