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シベリアンハイキング

作者:和泉書房
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第一章 カラケレイト
  増える荷物

顔なしの狼を追って、ようやく道が道らしくなってきた。馬の足取りも、やや軽くなる。行先に視線をやれば、道の両端に建てられた石柱が徐々に大きくなってくる。北側でも同じく進入禁止の表示として、二つの石柱は赤いロープで結ばれていた。その手前まで来たところである。顔なしの狼の足がピタリと止まり、その場にコロりと倒れた。暫く様子を伺っても、全く動かない。怪訝に思ったユスフは馬から降りて狼に近寄る。胸のところに人差し指と中指を当て脈を伺った。数十秒から一分、二分、触り続けたが鼓動が戻る気配が全くが無い。完全に死んでいる。もっとも、今までのあれが本当に生きていたのかと言われると、それも又怪しいのだが・・。それでもユスフの胸中に一抹の喪失感が覆ったのは事実であった。一先ず世話になったという意味で、道の脇に穴でも掘って亡骸を埋めようと考えた。
「連れていけ。身は朽ちたがまだ役には立つ。霧を吐き、牙を立て、毛を触る者に健やかな夢を見せん。」
何処からか、そんな言葉がその時聞こえてきた様な気がした。が、はっきりとそれがこの顔無しの亡骸からの声であると、ユスフは確信したのであった。閃きか天啓か、とにかく根拠は無いがそれは確固たる確信であった。赤いロープをくぐり、広がる冬の草原を馬に乗って歩いて行く。野生の世界を抜け、人の世に戻ったという実感、そこからの少しの安堵がユスフの中に芽生えた。 
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