| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦姫絶唱シンフォギアR

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
< 前ページ 目次
 

プロローグ
  ライブ会場の惨劇

 
前書き
二次小説バンザイ 

 
 昔から人助けが趣味だった。
 いや、趣味というかほぼ本能? とでも言うのだろうか、とにかく困ってる人や誰かの役に立ちたいと思うと勝手に体が動いていた。
 幼馴染からは呆れた声で「またなの?」と言われるのが常日頃だった。
 まぁ、俺は飽きもせず誰かを助けるためにがむしゃらに頑張っていた。
 だけど、世界はそんなに優しくないと、あの日知った。



☓☓☓



 プルルルーと携帯の繋がる音がした途端、俺は口早に相手へ不満の声を漏らした。

「未来、お前どこいんの? 会場空いちまうぞ」
『ごめん、いけなくなっちゃった』
「はぁ!?」

 周りの人が訝しげに見るほどの声量を出してしまい、俺はジッと見られる視線に平謝りしながら会話に戻る。

「お前が誘ったんだろ、えーとツヴァイ……ツヴァイ……」
『ツヴァイウィング! もう、ちゃんと貸したCD聴いたの?』

 すまん、机の上でホコリをかぶってるとは言えず曖昧な返事をする。
 ツヴァイウィング、今話題の二人の少女によるボーカルユニット。歌唱力と圧倒的なパフォーマンスで一躍有名になった……ってところまでは覚えているが、あいにくのところ、俺はそこまで歌に興味はない、皆無ではないが未夢ほど入れ込んではいない。
 今日だって関係者も合わせると十万人規模のライヴにも関わらず即日完売。未夢が手に入ったのも偶然だというのに、何故か俺と聴きに行くために二枚確保した片割れをくれた。
 出発するときの親のニヤついた顔が忘れられない、特にあの親父は何親指を立ててやがったんだよ。

『でもごめんね? 嫌なら帰っても――――』
「ここまで来て帰るのも馬鹿らしいだろ、一応聴いとく。つまんなければ帰ればいいだろ」

 申し訳無さそうな未来の声で怒るのも馬鹿らしくなった俺は、片手でひらひらとチケットを泳がす。
 まぁ、こんな機会でしか聴かないんだ、聴いといて損はないだろうが――――。

「俺って呪われてるかな」
『バカ言わないで、響が呪われてるわけないよ』

 そう言って電話を切った未来の言葉に安堵しつつ、俺こと【立花響】はゆっくりと会場に向けて歩き出した。



☓☓☓



 席について、一応用意しておいたサイリウム? とかいう光る棒を手に持ちつつ期待せずにライヴ開始まで待った。
 どうせ歌なんて、この時の俺はそんな失礼なことも考えていた。
 けれどライヴが始まり、ステージ上に彼女たちが駆け出し、歌った瞬間世界が変わった。

「「「「「―――――――ッッッ!!!!」」」」」
「あっ……」

 観客の歓声とステージ上で歌う彼女たちの声が合わさった瞬間、ブワッと体中から何かが噴き出すような感覚に襲われる。
 クラクラと光と歌声に魅了され、いつの間にか俺は立ち上がりながら必死にサイリウムを振って周りの観客と同じように歓声を送っていた。

「あぁ、コレが……これが【歌】なんだ……」

 自然と溢れた言葉とともに、涙が止まらなかった。
 短い人生でこれだけ泣いたことはあんまりないと言える。それほど、俺はツヴァイウィングの曲に酔いしれていた。
 そして曲が終わり、赤髪の少女が太陽のような笑みを浮かべながら手を振っていた。
 隣の青髪の少女は恥ずかしそうに、それでも嬉しそうに手を振りながら歓声を受け止めていた。

『みんなーっ!! まだまだいくぞー!!』

 うわぁ――――ッ!! と歓声が上がり、曲のイントロが流れた瞬間爆発音が響いた。

『なっ!?』

 会場全体が揺れ、悲鳴が所々からあがる。
 濛々と立ち込める煙の中、ナニカが飛び出し最前列にいた人たちに覆いかぶさった。
 誰かが震える声で、それの名を叫んだ。

「ノイズだぁ――――ッ!!」

 ノイズ、13年前の国連総会にて認定された特異災害の名称。
 形状もバラバラ、一部には兵器に似た外見を持つ個体もいると言われている。
 ただノイズには共通する目的があった。

 ――――人類を皆殺すという目的だ。

 ノイズは触れたモノを炭化させる転換能力があり、触れた人間は漏れなく炭化し死に至る。
 対処法は二つ、同体積の人間を襲わせ炭化消滅させる。もう一つは一定時間逃げて自壊するまで待つというものだ。
 ノイズが人類を滅ぼせていないのは後者の特性があることであり、万が一メリットが無ければ通常兵器が効かないノイズに対して、人類は為す術もなく滅ぼされていたことだろう。
 しかし、ノイズの発生は極稀であり、数年に何度か、人的被害も最小限に抑えられるというのが常だった。
 けれどこの日やってきたノイズの数は異常の一言に尽きるだろう。
 まるでこの場にいる人間を食い尽くさんと言わんばかりに襲い掛かってくるノイズに一人、また一人と炭化させられている。

「あっ……ッ!!!」

 足が動いたのは偶然、手を伸ばしたのも偶然、そして……手を掴み引き寄せた女の子を救えたのも偶然であった。

「あ、あぁっ……やだ、やだぁ」
「しっかりしろ!! 足は動くな!? いいから逃げろ!!」

 強引に女の子の背を押し、走らせると俺は逃げる人並みに逆らって最前列へと急いだ。
 人助けをしてる状態でなかったが、体が勝手に動いた。
 後から思うに恐怖で思考回路が狂っていたとしか思えない。

「うらぁあああああああああっ!!」

 放置してあったバッグをつかむとノイズに向かって投げる。
 すると複数のノイズが槍のような形をしながら俺を殺すべく飛んできた。
 ゆっくりと動く視界、俺は体勢をわざと崩し下り階段を利用してスライディングで避ける。
 そのまま足を止めている人や逃げる際に突き飛ばされて怪我をした人たちを救護しながらがむしゃらに動いていた。
 気づくと会場内は誰もいない……いや、二人だけ残っていた。

「――――ッ!!」
「う、た……?」

 体力を使い果たし、へたり込む俺はステージ上で槍と剣を手に持って戦うツヴァイウィングの姿を見た。
 服装はステージ上で見たドレス姿ではなく、戦闘服というのだろうか体のラインがくっきりと見える服を着ながら、ノイズと戦っていた。

「なっ!?」

 驚くべきことにツヴァイウィングの二人は、手に持った武器、いいやそれどころか素手でノイズを破砕していた。
 今までの通説どころか、どの国だってノイズに対抗する兵器を作っていないはずなのに何故? そんな疑問を持っていた俺だったが、足場が急速にひび割れステージ上に落下する。

「がっ!? ごふっ!」

 勢い良く叩きつけられ、軽く吐血しながら地面に転がる。
 痛みで目の前がチカチカと光り、何度も暗転するがノイズから逃げないという単純な思考からすぐに立ち上がろうとする。
 だが、右足に鈍い痛みを感じて蹲る。
 どうやら落ちた衝撃で打ち身になったか、折れたかの二択だろう。
 するとノイズたちが一斉に、俺に向かって走り出してくる。

「ひっ……」

 触れたら死ぬ、その恐怖心が俺の心を覆い尽くす。
 後ろに下がろうとするが、落ちてきた観客席の残骸で逃げ場が無かった。
 ここで、死ぬのか……そう諦めかけていたその時だった。槍が向かってくるノイズたちを横一閃に切り裂き消滅させる。

「駆け出せッ!!」

 赤髪の少女に言われた短い言葉、だがその短い言葉が逆に俺を急かさせた。
 最後の力を振り絞り、痛む右足を引きずりながら懸命に走る。
 奥歯をきつく噛み締め、無力な自分を呪う。

「ぐぅうううっ!!」
「奏ぇッ!!」

 苦悶の声と泣き出しそうな声で嫌でもわかる。
 奏と呼ばれた少女が俺を守るために無理をしている。ちらりと振り返ると槍を眼前で高速回転させながら飛んでくるノイズたちや攻撃を全て防いでいた。
 悔しかった、何も出来ずにただ守られているという事実が悔しかった。
 だけどここから一秒でも早く抜け出すことが俺にとっても彼女たちにと――――。

「がふっ……」

 胸に鋭い痛みと背中から叩きつけられる衝撃、力なく倒れる前に信じられないようなものを見た顔をした奏の顔が妙にはっきりと見えた。

「オイ! ――な! オ――」

 誰かが駆け寄って、必死に呼びかけるのがわかる。
 だが大声なのに聞こえづらい。
 いや、体が死のうとしてるのだと理解するには一秒もかからなかった。
 真っ赤に染まった服と心臓付近から感じる痛み、そして流れ出る血潮で全てを悟った。
 おそらく、奏が使っていた武器か防具の一部が破壊されて、俺に運悪く突き刺さったのだと思う。
 逃げずにのうのうと取り残された俺のせいなのに、抱き起こして必死に呼びかける奏の声には非難の色はなく、ただ心配することしか感じられない。
 ぼやける視界でなんとか奏の方を見ると、何故か泣きそうな、それでいて嬉しそうな顔を俺に見せた後、目を閉じて微笑み武器を取った。

「いつか――――ぽにして―――。今日は、こんなに沢山の連中が聴いてくれる――――おきのを、くれてやる」

 ゆっくりと歩き出した奏の後ろ姿がひどく儚げに見えた。
 俺は動かない体を叱咤して、ベシャリと血を吐きながらズリズリと地面を這いずって奏の後ろ姿を追う。

「ふざ――――けんな―――」

 フツフツと体の中が燃えるように熱い。
 力を失っていたはずなのに、もう動けないはずなのに、俺の体は前に進む。
 血反吐を吐きつつ、ついに立ち上がった俺は叫んだ。

「アアアアァアアァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッッ!!!!!!」
「!? 何してるんだよ! 死にたいのかッ!」

 槍を天高く掲げていた奏が、驚きこちら側に振り向く。
 俺は気にせず、胸に浮かんだ言葉を口にする。

「―――」

 胸の奥でナニカが鼓動しているように感じた。

「何を……まさか、止めろッ!! 【ソレ】を歌うな!」

 血相を変えてこちらに走ってくる奏の姿を見ながら、俺は妙に安心するこの歌を聞き惚れていた。
 なんでだろうか、昔、遠い遠い遠い昔、誰かと歌っていたような気がする。
 胸に思い浮かぶ歌詞の最後の一節を歌い終えるとき、奏の言葉が聞こえた。

「生きるのを諦めるなッ!」
「――――……あぁ」

 次の瞬間、俺を中心に光が辺り一面を覆った。



☓☓☓



【ライブ会場を襲った惨劇!?】
 某日、国民的ボーカルユニット『ツヴァイウィング』のライヴ中に起こった過去最大級のノイズ災害は行方不明者・死者一万二千八百六十三人となった。これは観測史上最も多い死者数だが、大きな要因は将棋倒しによる圧死や避難者同士の諍いによるものも多く、ノイズ対策が不十分だったと運営側を批判する声が上がっている。
 『ツヴァイウィング』の天羽奏、風鳴翼も重傷を負ったが命に別状はないものの、逃げる最中に大怪我を負った天羽奏は歌手を引退、『ツヴァイウィング』は解散となり多くの人々から惜しまれる声が聞かれた。風鳴翼は歌手を引退せず、歌い続けると公言し、慰問ライブをするなど怪我を物ともしない気丈さは多くの人々から賞賛された。
 今後、政府は被害にあった家族、親類の保護に全力を注ぐとともにアフターケアなども充実させていくと発表。ただ未確認ではあるがノイズと戦っていた者がいるという情報は完全に否定した。ただ会場で起こった謎の発光現象の後にノイズが消滅していることから、政府がなんらかの対抗策を使ったのではないかと予想する声が上がっている。
 そして小さなヒーローもいたという情報もある。男の子がノイズに臆することなく、逃げていく人々を助けてたという情報も入っている、彼が助けた者には大企業のご令嬢もおり『彼がいなければ死んでいた』とのコメントも頂いている。しかし彼は逃げ遅れ、重傷を負ったがリハビリをして命に別状はないらしい。
 今後も情報が入り次第、記事にするつもりである。
 
 

 
後書き
好き勝手やる、着いてこられる奴だけ着いてこいッ!! 
< 前ページ 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧