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行方不明

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第三章

 彼の両親も姉もだ、直希に困り果てている顔でこう言うのだった。
「それがなんだ」
「私達も知らないの」
「急にいなくなって」
「それでね」
「今は何処にいるのか」
「全然わからないの」
「ご家族でもですか」 
 その話を聞いてだ、直希は途方に暮れた顔になって言った。
「あいつが今何処にいるかわからないんですね」
「生きているのか死んでいるのか」
「全然わからないの」
「ちょっと行って来るって言ってそれからなの」
「もう何処にもいなくて」
「連絡も取れなくて」
「完全に行方不明なの」
 そうした状況だというのだ、そしてだ。
 直希は匠の行方を彼の家族からも聞くことが出来なかった、完全な消息不明だと言われた。勿論大学の教授達も彼の高校までの友人達もだ。
 誰も彼の行方を知らなかった、それで直希は心配しきった顔になって彼の家族に言った。
「これとんでもないことですから」
「うん、だからね」
「私達も考えてるの」
 匠の両親が直希に話した。
「捜索願い出そうか」
「そうね」
「急にいなくなって」
「全く連絡が取れないから」
「悪い奴等にどうされるかわからないから」
「本当に」
「それがいいと思います」
 直希も真剣に匠の両親に話した。
「とにかく何処にいるかわからないんですから」
「何もなかったらいいが」
「何処かで無事なら」
「生きていて欲しい」
「元気であったら」
 匠の両親は親だけあって彼のことを心から心配していた、それは彼の姉も同じだった。
 彼女は直希にだ、こう言った。
「尋ね人に出してネットでもね」
「情報を集めますか」
「私ブログやツイッターをやっているから」
 そうしたものを使ってというのだ。
「そうしてね」
「情報を集めて」
「あの子を探すわ」
「そうした方がいいですね」
 直希は匠の姉にも応えた、そしてだった。
 彼等は必死にだ、家族を探しだした。それは直希も同じでだ。
 何とかだ、匠を探していたが彼の行方はようとして知れなかった、二週間経ち一ヶ月二ヶ月三ヶ月となってだ。
 遂に半年を越えた、それが一年になろうとしてだ。
 直希は大学でだ、友人達に昼食の時に匠のことを言った。
「あいつがいなくなって」
「もう一年か」
「一年になるな」
「急に蒸発して」
「もうそれだけになるな」
「何処に行ったんだ」
 一年間探した、しかし何の情報も得られなかったのでこう言ったのだ。
「それで」
「ああ、本当にな」
「何処にいるんだあいつ」
「死んだとか思いたくないけれどな」
「ここまで何処にいるかわからないと」
「心配で仕方ないな」
「生きていて欲しい」
 切実な顔でだ、直希は言った。 
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