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後ろに立つと

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第二章

 この時彼はカードゲーム大会の決勝まで来ていた、観客達は決勝まで勝ち進んだ半ズボン姿の彼を見て言うのだった。
「呉瑠後だぜ」
「今回も決勝まで来たな」
「今回勝てば五連覇か」
「前人未到のl記録になるぜ」
「他にもあらゆる大会で勝ってるしな」
「今回もぶっちぎりで勝ってるしな」
「決勝もそうなるだろうな」
 こう口々に話すのだった。
「呉瑠後は無敵だぜ」
「優勝は間違いないな」
「相手も完全に気圧されてるしな」
 見れば実際にそうなっていた、相手は普通の小学生だったから余計にだった。呉瑠後を見ただけでそうなっていた。
 勝負がいよいよはじまろうとしていた、だが。
 ここで呉瑠後はいつも通りだった、急に。
 後ろにいた誰かの方に機械的に振り向いて右の拳で殴った、そのうえで言った。
「俺の後ろに立つな」
「おお、出たぞ」
「呉瑠後の後ろに立つなだ」
「いつもながら凄いな」
「ああして後ろにいた奴誰でも殴るからな」
「それも絶対にな」
 この時もそうだったというのだ、誰もが呉瑠呉後のこの癖に驚いた。
 そのうえで勝負がはじまったが呉瑠後は全く勝てない、それで負け続ける中で彼は思わずこう言ったのだった。
「おかしい、勝てない」
「それは当然だろ」
「そうならない筈がないだろ」 
 観客達はその彼に突っ込みを入れた。
「勝てない筈だよ」
「今のあんたはな」
「それこそ誰にも勝てないよ」
 こう言うのだった、そしてその訳も彼に言った。
「あんた勝負はじまる前に霊殴ったぜ」
「自分の守護霊な」
「守護霊さんその場でのびてるからな」
 見れば彼そっくりの顔をしたスーツ姿の老人が仰向けで無言で倒れている、身体が透けていて右手に葉巻を持ったうえで目を開けて無表情でだ。
「ご先祖さんじゃないのか?」
「自分の守護霊気絶させて勝てる筈ないだろ」
「負けるのも当たり前だよ」
「折角五連覇出来たのにな」
「そうか」
 呉瑠後は彼等の言葉に静かに頷いた、そして惨敗して静かに会場を後にした。意識を取り直した守護霊に横からしきりに頭を殴られ身体を蹴られつつ。
 とかく彼の癖はいいことになっていなかった、とにかくいつもトラブルの種になっていた。それで担任の先生も彼に言った。
「その癖どうにかならないか?」
「ならない」
 先生にも無表情で答える。
「俺の習性だ」
「癖だからか」
「どうにもならない」 
 先生の前でも鉛筆を煙草を持つ様にして持ちつつポーズを取っている。
「どうしてもな」
「そうか」
「そうだ」
 最早会話にすらなっていなかった。
「そういうことだ」
「それで誰か納得すると思うか」
「してもらう」
 やはり会話になっていない。
「是非な」
「そうか、わからないと言っておく」
 わかった、ではなかった。先生も。 
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