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夢幻水滸伝

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第十七話 淡路合戦その十

「船を動かすことについてもあちらは瀬戸内の海賊達だ」
「瀬戸内は色々ややこしい海だね」
「この世界でも迷宮だ」
 瀬戸内の海、そこはというにだ。
「潮流が多く季節によって変わり小島も多く嵐もあれば小舟も多い、しかもこの世界では怪物まで出る」
「鮫もいてね」
「まさに迷宮だ、伊勢や紀伊、堺の海なぞだ」
 それこそというのだ。
「平和なものだ」
「あっちと比べればね」
「あの海は世界屈指の難所だ」
「そこでいつも船に乗ってるからには」
「船の扱いも海での戦もだ」
「無茶苦茶慣れてるね」
「船も小さい、小さい分小回りも利く」
 吉川は四国の軍勢のこのことも話した。
「そうした利点がある」
「利点があったらそれを使って勝つね」
「そうしてくる、だからだ」
「囲むってなってもね」
「そうそう囲ませてくれはしない」
「それじゃあだね」
「囲むことを目指す、しかし敵の動き次第ではだ」
 吉川の目が光った、人魚の目は真珠とまで言われるまでに美しいが今の彼の目は海の猟犬のものだった。
「変えていく」
「臨機応変にだね」
「そうだ」
 その通りという返事だった。
「戦術を変えていく、そしてだ」
「そして?」
「我々は海だけで戦う訳ではない」
「翼人だね」
「この者達も使う、翼人はだ」
 彼等の場合はというと。
「こちらの方が多い」
「そうだね、兵の数が多い分ね」
「この利点も活かす」
「こっちも利点を生かしてだね」
「戦う、だから既に物見を多く出していた」
 船だけでなく彼等もというのだ。
「そして敵の状況も見ていたがな」
「相手は翼人少ないね」
「人の数だけな、しかも四国の軍勢は水軍については海賊だけあってだ」
「人魚や魚人が多いね」
「織田は家鴨人だしな」
「水鳥だね」
「獺や海豹人も多い」
 海豹と書いてアザラシと読む、漢字の妙と言うべきか。
「海での戦は出来るが空はどうか」
「だからその空からだね」
「攻める」 
「そういうことだね」
「ではだ」
「ああ、動くんだね」
「そうする」
 こう言って実際にだ、吉川は軍勢を動かした。船の動き自体はそつなく聯絡も取れていた。
 その船の動きを見守りつつだ、彼はまた玲子に話した。 
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