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実は丸わかり

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第四章

「まあとにかく。わかってるから」
「皆ね。だから安心してね」
「応援はしてあげてるからね」
「応援って」
 まだだ。徹は言う。
「僕別に応援される様なことしてないよ」
「まあまあ。わかってるからね」
「私達あんた嫌いじゃないし」
「本当に頑張りなさいよ」
「しっかりとね」
 女の子達は徹の方、背が高いその肩を少し背伸びして叩いてそのうえで彼に言う。
 だが当人は何とか事実を隠そうとしている。そうしてだった。
 その場を去る。だが女の子達はその背中を見てにこにことしている。そしてだ。
 理絵にもだ。こう言うのだった。
「それでどうなのよ」
「あんたはどうするのよ」
「彼、もうあんた一筋よ」
「浮気とかは絶対にしないわよ」 
 徹のそうしたところもだ。女の子達は理絵に話す。
「それにね。性格もいいわよね」
「そうそう。純情でねえ」
「子供っぽいけれどね」
「そこがかえって可愛いし」
「外見もそんなに悪くないわよね」
「背も高いし」
 小柄な理絵を見ての言葉だ。
「顔もいい感じだし」
「結構得点高いわよ」
「成績もそこそこだし」
「いいんじゃないの?」
「私。今まで何も言ってないけれど」
 困惑しきった顔でだ。理絵はここで口を開いた。ようやく。
「それで何で皆言うのよ」
「じゃあ嫌?井上君のこと」
「嫌なら嫌ってはっきり言ったら?本人に」
「そうしたら?」
「けれど嫌って言ったら」
 どうなるかと。これまた困惑した顔で言う理絵だった。
「やっぱり」
「まあ。あれだけ一途だと反動がねえ」
「怖いでしょうね、その時は」
「理絵自身には何もしないでしょうけれどね」
「それでもね。何するかわからないわね」
「最悪の場合は」
 どうなるかとだ。女の子の一人が思わせぶりな笑みで言ったところでだ。理絵は。
 その困惑しきった顔でだ。こう言った。
「わかってるわよ。だからどうしても言えなくて」
「ストーキング許してたのね」
「毎日の」
「言えないじゃない、あんなに私のこと好きなのに」
 はっきりとだ。理絵もわかっていたのだ。本人もだ。
「入学して少し経ってからずっとだから」
「毎日毎日ね」
「ある意味凄いよね」
「神レベルよね」
「神様かどうかはわからないけれど」
 それでもだとだ。理絵はまた言う。
「あそこまで私のこと好きだから」
「で、どうするのよあんたは」
「今彼氏いないけれど」
「っていうか生きている時間イコール彼氏いない暦だけれど」
 実は理絵もそうした経験はない。小学校の頃はブスと言われたこともある。これは子供の頃なら誰でも言われることだがそれでも言われたことがあるのは事実だ。
 それに彼氏がいないことがだ。何よりも大きかった。経験がないのだ。
「この場合どうしたらいいのよ」
「だから。井上君のことどうなのよ」
「好き?嫌い?」
「肝心なのはそこよ」
「彼のことどうなの?」
「ううんとね」
 困り果てた顔になった。困惑とはまた違う。理絵は彼女達と更衣室に向かいながらだ。そのうえでこう彼女達に対してその顔で言ったのである。 
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