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実は丸わかり

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第三章

「あれっ、井上君どうしたの?」
「風邪?顔真っ赤よ」
「どうかしたの?」
「あっ、いや」
 そう言われてだ。徹は。
 その顔をさらに真っ赤にさせてだ。こう返すのだった。
「僕は特に何も」
「何もないの?」
「そうなの?」
「そうだよ。全然さ」
 こうだ。理絵を見ながら言うのだった。
「何ともないから」
「本当かしら」
「ひょっとして私達の脚見てるとか?」
「この体操服姿見て興奮してるの?」
 女の子達はここで誇らしげな笑顔になってだ。そのうえでだ。
 白い上着と赤の半ズボン姿、それにそれぞれの脚を徹の前に見せる。だが、だった。
 徹は彼女達の体操服姿には全く目をくれずだ。こんな言葉で返した。
「あっ、それはないから」
「ああ、やっぱりね」
「私達は全員アウトオブ眼中なのね」
「そういうことね」
「悪いけれど僕君達とは友達になりたいけれど」
 だがそれでもだというのだ。
「別にさ。彼女とかには一人もね」
「考えてないってのね」
「すっごい失礼なこと言うわね」
「そう言うなんて」
 女の子達はこうは言ってもだ。それでもだった。
 やれやれといった顔でだ。特に怒らなかった。
 だがからかいはした。徹にあらためて言ったのである。
「じゃああれ?他に誰かいるの?」
「そうなの?他に誰か気になる娘がいる」
「そうなの?」
「いや、別にないけれどさ」
 徹は言いながら女の子達の垣根の後ろにいる理絵を見ていた。今も。
 彼女をちらちらと、体操服姿の彼女を見ながらだ。こう言うのだった。
「まあ。何ていうかさ」
「何ていうかこう言うか」
「とにかく顔が真っ赤になったのは私達に原因はない」
「そういうことね」
「うん、悪いけれどね」 
 しかし徹の顔はまだ赤い。理絵を見ながら。
 その理絵も徹の視線に気付いている。それでだ。
 その場で気恥ずかしそうに立っている。その彼女をちらりと見てだ。
 女の子達は今度はこんなことを言ったのだった。
「それでもうすぐプールだけれど」
「どう?楽しみ?」
「プールとくれば水着よ」
「楽しみでしょ」
「えっ、水着って」
 女の子達の読み通りだった。彼女達の楽しげな言葉を聞いて。
 徹は顔をさらに赤くさせた。そしてどぎまぎとしながら述べた。
「あの、それは幾ら何でもさ」
「幾ら何でも?」
「どうしたの?」
「いや、何でもないけれど」
 あたふたと慌てふためきながら。徹は言う。
「ただ。そうだよね」
「まあ私達の水着姿見て何も思わないのよね」
「そうよね」
「うん、それはね」
 はっきりとだ。このことは答える徹だった。
「悪いけれどね」
「まあ。わかってるからいいけれどね」
「そのことはね」
 彼女達はここでもこう返す。 
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