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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第五章 Over World
  人の願いは



導き出した結果。
紡がれたカケラ。

それが一つの形を織り成し、ここにそれを顕現させる。



「ふゥっ・・・」

「綺麗・・・・だな」

「ああ」


その光景を、ショウたちは黙って眺めていた。
背後にワルプルギスの夜が迫っているというのに、まるで観光でもしているかのようにその光景を眺める。



ビルの屋上には、据えられた一つのソファ。

そこから少し浮いて、暁美ほむらは眠っている。


その彼女を、梨花が下から、羽入が上から
それぞれが挟んで手をかざしている。


「出てきたのです」


ソファに座るまどかに、梨花が声をかける。
彼女は、ほむらが降りれば身体を抱える位置に座っていた。



万華鏡を光に変えれば、おそらくこんな光景が目にできるのだろう。

虹色ではない。
これは七色に留まらない。

そんな程度の可能性では、到底表せない無限の色彩。

中には暗い色もある。
だが、それを一つのアクセントとするほどに、他の色彩はより美しく輝いた。







カケラ空間で、ほむらは出来上がった巨大なカタチを見上げていた。
それの周りを歩き、見回す。


こっちからは巴マミが見える。
共に敵に向かい、勇敢に戦う姿が映されている。

こっちからは美樹さやかが見える。
涙を目に溜めながらも、その顔は絶望に染まることなく笑顔に輝いていた。

こっちからは佐倉杏子が見える。
つっけんどんな態度をしながらも、結局みんなの輪の中にいる。

こっちからは鹿目まどかが見える。
魔法少女の姿をして、弓を構えて微笑んでいる。

こっちからは自分自身が見えた。
その手は誰か四人の手を掴んでおり、一目でそれが誰の物かわかる。


そして



「できた・・・・」



見滝原中学の制服に身を包み

五人で並んで帰る放課後

皆が笑顔を花開かせて

嗚呼、それこそ暖かな時間がそこにあった。



そのカタチに、ほむらが手を伸ばし


掴み取る。









「来たぞ!!」

ソファを中心に、突風が吹いた。

その中に、翼刀は見る。



青い輝き
 黄色い輝き
   赤い輝き


そして、まどかの胸には桃色の輝きが

その輝きはまどかの胸に溶け、残りの三つは人の形を成していく。




「カケラよカケラ、紡ぎ給え!!」

「幾星霜の時の連なりを糧に、ここに最後のカケラを紡ぐ!!」


古手神社の巫女の祝詞が、その空間に響き渡り


目も明けられないほどの突風の中にはカタチが現出し



それは弾けるように粒子となって世界に溶けた。



「お・・・あ・・・・!!!」

「成功だ――――」



暖かな光

優しい突風


そして、皆が目を開けた時、そこには

ドォンッッ!!!


「な!?」

「に・・・・」


ショウたちの背後、彼女たちの正面から

ワルプルギスの夜が、そこに一撃を叩き込んだ。
煙を実体化させて触手のようにし、彼女らの出現場所にブチ込んだのだ。


だが、それが彼女たちを打ち倒すことはなく



「ハァッ!!」

土煙の中から銀白の光が射し、彼女らを護るように展開されたその翼がそれを押しのけて弾き返す――――!!




蒔風がなのはと共に到着し、その隣のショウが並ぶ。

その前には龍騎とセイバーが武器を構え

オーズとアンクが敵を睨み付け


最前線で、翼刀が拳を魔女に突き出し




蒔風のさらに後ろで、五人の魔法少女が笑っていた。

「行こう、ほむらちゃん!!」

「うんっ!!」



「キャァアハハハハハハハハハハ!!!!」


シュゾゥッッ!!と空気を抉り、ワルプルギスの背後から更に触手が伸びてくる。

それが一同の中心に叩き込まれ、爆発のような現象を引き起こした。
だが、彼らはそれを回避しており―――――



バフッ!!

「行くよ!!」

「「おう!!」」

まどかたち魔法少女が、その触手の上を走り、ワルプルギスの夜へと疾走して行った。





走りながらまどかが弓を構え、マミの砲台が展開されていく。
砲弾が一斉に発射され、矢が一瞬で無数に増殖、一気にワルプルギスの全身を殴打した。


連続爆発にワルプルギスの身体が激震し、さらに増殖した触手が彼女たちに伸びる。





「させるかァ!!」


その触手を、一本残らずさやかが斬り裂く。
まるで斬撃の球体であるかのように剣を展開したさやかが、目にも見えない連斬で突っ込んでいった。


触手の上に着地し、さらにその先を進むさやか。
向かってくる触手を切り落とし、二人の援護射撃を受けて爆進する。


しかし



「う、ヒャァッ!!?」


下から迫ってきた触手が絡まり、彼女を逆さまにつるし上げた。
そのさやかに向かって、黒い使い魔が襲い掛かり―――――


「あぶなっかしいっての!!」


それは、杏子の槍によって吹き飛ばされた。
さやかの足を掴む触手も断ち切られ、そのさやかを抱えて杏子が跳ぶ。


「無茶すんなっての」

「う、うっさい!ってか抱っこっすんな!!」


そう言いながら、互いに背を合わせて戦う二人。
その刃が使い魔を屠り、二人のもとにマミとまどかが着地する。


「アハハハハハハハハ!!!!」


そこに向けてワルプルギスが触手を向け、その先端からエネルギー砲が発せられようとしていた。


それに気づき、彼女たちが身構え


「その必要はないわ」


その先端のエネルギーが、ひとつ残らず誘爆されて吹き飛んだ。


「ギャハ!?」


なぜそうなったもわからないワルプルギス。
そんな彼女たちの前に、暁美ほむらが着地する。


「行くわよ!!みんな!!」


その一声。
それによって彼女たちが一斉に突撃し、それぞれの一撃をワルプルギスに見舞っていく。


「ティロ・フィナーレ!!」

「ハァッ!!」

「墳ッッ!!」

「ほむらちゃん!!」

「ええ!!」

そして最後に、この一撃を。



まどかと共に弓を引き、一緒に放つ、この一撃!!

「シューティング、スター!!」

ズッ、ドンッッッ!!!


大気を貫通し、音を破裂させ、本来は無数に放たれるその攻撃を、ただ一つの夜に込め撃ち放つ。


その一撃にワルプルギスの身体が大きく揺れ、今までになく大きく後退して行く――――



「負けられないな!!俺たちも!!」

「はい!!」

「映司!!これ使え!!」

アンクから託される、六枚のメダル。

それを手にし、王の器たるライダーは、赤龍の騎士たるライダーと共に空を舞い


《サバイブ》

《タカ!クジャク!!コンドル!!!》

「「破ぁァァアアアあ!!!!」」


眼前に現れる、黒い塊の使い魔群。
それに向かって、欠片たりとも臆することなく彼らは向かう。



《FINAL VENT》

「行くぞォォォっシャぁぁああああ!!!!」


ドラグランザーに跨った龍騎サバイブはその軍勢に突っ込んでいく。
その焔は漆黒を焼き尽くし、次なる一撃へと道を託し



キキキ キキキ キキキン!!!

《スーパータカ!カマキリ!ライオン!シャチ!サイ!プテラ!コブラ!――――》

「喰らえ!!!」

《ギ ガ ス キ ャ ン!!!》


タジャドルコンボのタジャスピナーから、計六枚のメダルのエネルギーが発せられる。

そのエネルギーは連なって発射され、ワルプルギスの夜へとまるでゲートのように展開された。


「ハッ!!」

超越されしタカを越え

「ウォオっ!!」

クワガタを越え

「おォアッ!!」

ライオンを越え

「フッっっ!!」

シャチを越え

「フンァッ!!」

サイを越え

「セァッ!!」

プテラを越え

「ヤァアア!!」

コブラを越え

そしてそれらを一つに束ね、さらに無限を越えた一撃を!!!


《スキャニングチャージ!!!》


そのエネルギーを両脚に込め、放たれた矢に向けて最後の一撃を!!!


「セイヤァぁアアアアアアアアッッ!!!」

バキンッッ!!!


その一撃によって、矢はさらに押し込まれる。
それは衝撃に砕けるものの、ワルプルギスの胸元に確かな亀裂を刻み込む。







そして――――――



「行 く ぞ」

神剣を携えし、鉄翼刀が飛翔する。




刃を翼上に展開し、一気にワルプルギスの元へと突っ込む翼刀。
その胸元に一撃を叩き込み、その亀裂をさらに開いていく。



「唯子ォォォォオオオオオオオオオ!!!!」








一方、内部の唯子は迫りくる絶望の闇を蹴散らし続けていた。
まるで我らの盟主は渡さんと言わんばかりに、それはいつまでも離れない。


「もうだめだよ・・・私はお姉ちゃんを思い出せた。それだけでもういいよ!!」

背後では少女が泣いている。
だが、唯子はそれをやめようとしない。


拳で砕き
足で踏み潰し
包まれようとも、震撃で吹き飛ばし

どんな絶望をも、確実に消し去っていく。



「なんで・・・いつまでも終わらないのに!!こんな絶望の底で、どうしてそんなに戦えるの!?」

少女は一度、絶望の底に落ちた。
その恐怖はいまだ変わらない。

だが

「そんなの、決まってるでしょ!!!」






翼刀の目の前で、ワルプルギスの亀裂がだんだんと修復されていく。
相手のエネルギーはそれだけに膨大だ。

なんといっても、数百、数千世代の、絶望の底に落ちた少女たちの怨念が相手なのだ。

しかし

「だから、なんだ!!!」





一切の空きもなく突っ込んでくるそれを唯子は吹き飛ばしながら答える。

「絶望の底は、確かに怖いよ!?でも!!」




塞がれつつある亀裂に向かい、翼刀が叫ぶ。

「立ち向かうことが恐ろしいほどの絶望なら、何度でもあった!!だけど!!」




内と外

まったく位置の違う場所にいて

すぐ近くにいる二人は、揃えてそれを、声高々に叫ぶ




「「絶望にどん底があったって!人の願いは――――天井知らずだ!!!」」





「世界が終わる絶望感?」

「今までのすべて、何もかも失う恐怖?」



「「そんなもの・・・・俺/私たちだけで、十分だ!!!」」



「力を貸して!!――――翼刀!!!」

「今行くぞ!!唯子!!」




直後、ワルプルギスの夜とぶつかる翼刀を仰ぎ見る位置で、三つの光が天を衝く!!!



「「対なる天剣!!」」

「輝く聖剣!!!」


「「「神剣、今代の担い手に、今一時の力を与えん!!!」」」

ドゥッッ!!!



十五の天帝
八の魔天
一なる勝利の剣

その剣全てが上空に射出され、翼刀の元へと降り注ぐ!!



「おおぉォォォオォオオオおオオオオオオ!!!!」


ゴッ!ザッッシュッ!ドンドンドンドンドン!!!ズガガガッオォッッ!!!

翼刀はそれを掴み取り、一刀一撃を叩き込み、計二十三の斬撃を叩き込む。


掴まれ、一太刀を浴びせた両の天剣は、翼刀を中心に円を描くように宙に浮き、最後の一本に光をつなぐ。


それを受けてさらに輝く

最後に掴むは、約束されし勝利の聖剣―――――!!!


「届けぇぇええええッッ!!!!」

ゴ・・・・ォうっっ!!


「エクス・・・カリバァァァアアアッッ!!!!」





そして、唯子が光に包まれる。
向かってくる漆黒の絶望を、足元から吹き出すその光が焼き尽くす。

それを以ってしてはなる、唯子の渾身の一撃。

不動の極み、動の所作より放たれん―――――


「真パニッシャァ!!!パンチッッ!!!」

ゴッ!!ゴンッッ!!!



それはその空間の天を突き、ガラスを砕いたかのように天井が砕けた。

光に包まれ、次第に見えなくなる視界。
その向こうに、唯子は見る。


ああ、あれこそ


少女の求めた、日常の風景。
村人も、神父も、友達も、少女自身も


皆がつつまれ、笑っている――――


「ありがとう。お姉ちゃん―――――」








ズッドォッッ!!!

ワルプルギスの身体を、黄金の剣閃が貫いていく。
その光の中を抜けて行き、無数の刃を殻のようにして身を護る者が飛び出してきた。


「大丈夫か?」

「うん・・・・」


翼刀の抱える唯子の身体は、弱り切っていて痩せていた。
だが、翼刀を掴む力は、確かに力強かった。


「泣いてるのか?」

「大丈夫だよ・・・・翼刀」

「ん?」




「ありがとう」

「どういたしまして」





翼刀が唯子を抱きしめ、ビルの屋上に着地する。
剣は各々の主の元へと帰還し、その手に収められていく。


二人の背後では


ワルプルギスの夜が、静かに回転を始めていた。




to be continued
 
 

 
後書き

イメージBGM

前話の続きで
「Anything Goes!"Ballad"」か~ら~の~「Anything Goes!」

爽快感&疾走感オンリーで選択


“だが、それが彼女たちを打ち倒すことはなく”あたりで曲の移行できればいいかなぁ、と






唯子救出!!

いない人がいますが、それは一応考えてです。
SLBブッぱなしたら疲れちゃうしね!!




唯子
「うわ~身体・・・・ヨロヨロ~・・・・」

翼刀
「唯子やせすぎだろ!?大丈夫かよ!!」

ショウ
「治癒してやれ」



蒔風
「次回。ワルプルギスの舞台に幕は下りない――――」

ではまた次回
 
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