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とある3年4組の卑怯者

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5 二日目

 
前書き
 リリィの歓迎会で皆はイギリスの遊びをする事になる。だが、藤木は遊んでいる間も、遊んで帰る時もリリィに対するヤキモチで詰め寄るみぎわと口論した事を気にしていたのであった!! 

 
 リリィはヒデじいの車で家へ送って貰っていた。あの藤木という男子があれだけ自分を好きだという気持ちが本物だという事を改めて理解していた。リリィは同行していた花輪に質問する。
「花輪クン、あのみぎわさんって眼鏡の人って花輪クンが好きなの?」
「え?ああ、そうさ・・・」
「あの人凄い怖かったわ・・・」
「え?ああ、気持ちは解るよ・・・」
 花輪も何度かみぎわの猛アタックに悩まされている身だった。
「私、藤木君に今日、私を庇ってくれた事でお礼しようと思ってるの」
「ああ、その方が藤木クンも喜ぶと思うよ」
「そうよね」
 リリィは自宅で車から降ろして貰い、帰宅した。
「只今」
「お帰り」
 母が出迎える。
「歓迎会、楽しかった?」
「ええ。色々皆と楽しめたわ。それでお願いなんだけど、私が会った人を明日呼びたいんだけど、いいかしら?」
「ええ、いいわよ。ケーキも用意しておくわね」
「ありがとう」
 リリィは自分の部屋に入る。そして貰った日から遺していたラブレターをもう一度見る。
(この手紙、あの藤木君がくれたもの・・・。そのお返し、ちゃんとしておかないと・・・)

 藤木は帰宅後、自室の部屋で今日の事で気にしていた。両親は今日も仕事で遅くなるので今日は出前だ。
(僕のあんなみっともない姿を見せてリリィは変に思ったんだろうな・・・。そうなると僕はみぎわと同じ、ただ暑苦しいだけだと思われるだろうな・・・)
 藤木はリリィが花輪に心酔していき、自分が疎まれる事を恐れた。もしかしたら自分に話し掛けてくれなくなるかもしれないとも思った。

 翌日、藤木は登校中だった。昨日の事を未だに気に病みながら。その時・・・。
「あ、藤木君、おはよう!」
 リリィだった。
「あ、リリィ・・・。おはよう」
 リリィは笑顔だった。
「藤木君、元気ないね、気分が悪いの?」
「あ、いや・・・そんなことないよ!」
 リリィは昨日自分がムキになってみぎわに突っかかった事を気にしていなさそうだった。
「そう、ならよかった。あの、昨日は私のこと守ってくれてありがとう。藤木君は私のことそれだけ大切にしてくれていたのね」
「え・・・?あ、うん、でも僕もただ熱くなっちゃっただけさ」
「そんなことないわよ。みぎわさんって人結構ヤキモチ焼きなのね」
「みぎわは花輪クンが好きでたまらないだけさ。他の女の子が花輪クンと仲良くしているのが気に食わないんだよ」
「そうなんだ。今日、藤木君に昨日のお礼がしたいの。是非私の家に来て!」
「いいのかい!?」
「もちろんよ。ダメな理由ないもん」
「あ、ありがとう・・・」
 藤木は気分が盛り上がった。
(よかった!リリィに嫌われたわけじゃなかったんだ!)
 藤木は嬉しくなった。さらに彼にとってはさらに嬉しいことにリリィと共に登校することになった。藤木には朝からこの上ない幸運な日だった。

 リリィは二日目も色々な女子と談笑していた。イギリスの話とかをしていた。
(今日もリリィは人気だな。僕も転校すればあんな風に人気者になれるのかな・・・?)
「藤木君」
 永沢が不意に話しかけてきた。
「君、もしかして自分もリリィみたいに転校すれば人気者になれると思ってるんじゃないのかい?」
「い、いや、そんな事ないさ!!」
 永沢はいつもの如く、藤木の心の中を見抜いた。藤木は慌てて誤魔化した。
「ま、そうだろうね、君は転校先でもすぐ卑怯な事しそうだしね。人気者になれるわけないもんね」
 相変わらず藤木には辛辣な永沢であった。しかし、藤木にはこの上ない楽しみが待っていた。何しろ放課後にはあのリリィの家に招待されて二人だけの時間が楽しめるのだから。

 なおこの日は体育の授業があった。男子は走り幅跳びをやっており、藤木はリリィにいいところをみせてやろうと考えた。そして走り出す。
(よおし!)
 藤木は思い切り飛ぼうとした。しかし着地においてズッコケてしまい、みっともない姿を見せる結果になってしまった。多くのクラスメイトが笑いを誤魔化そうと必死になっていた。リリィも笑っていた。
(ああ、なんでこんなにツイてないんだろう・・・)
 毎度の事であるが、本当に自分は運の悪い男だと思う藤木であった。そして体育の授業が終わり、藤木は永沢と話しながら教室へと戻る。
「藤木君、君、カッコつけようとしなかったかい?」 
「い、いや、そんな事ないさ!」
 藤木はいつもの如く永沢の推察に否定する。
「まあ、そうだろうね。卑怯な君がカッコよく決められるわけないよね。それで君に惚れる女子なんて要るわけないだろうね」
「う・・・」
「永沢君、そこまで言わなくたっていいじゃない」
「え?」
 リリィが話に入って来た。
「空回りする事って誰にだってあるんじゃないの?私にだって上手く行かなかった事ってあるわ」
「ふん、君は藤木君が卑怯者だって事を知らないからそんな事いえるんだ。今にも藤木君がどんな奴か解るさ」
 永沢はさっさと離れてしまった。
「藤木君」
「え?」
 藤木はリリィによばれでドキッとした。
「ごめんね、さっき笑っちゃって」
「い、いや、全然気にしてないさ」
(永沢君から僕の事庇ってくれたし、もういいのさ・・・)
 藤木は心の中でリリィに感謝していた。
「永沢君が行ってた事も全然気にしてないからね」
「う、うん」
(そうだよな、後でリリィの家に行けるんだもんな!!)
 藤木は放課後の事に心を膨らませるのであった。

 給食の時間となった。給食当番が給食を取りに行く。藤木やリリィは待っていた。
「日本じゃ必ず給食っていうのを食べることになってるのね」
「どういう事だい?」
「イギリスでは食堂(カフェテリア)って所でその給食を食べる人もいれば、家からご飯を持って来て食べる人もいるのよ。給食当番ていう教室にご飯持って来る人はいなかったわ」
「へえ。リリィはどっちだったんだい?」
「日によってはママがご飯を用意してくれたり、友達と給食を食べる事にしてたわ」
「へえ、日本よりちょっと自由だね」
「それに、食べるのも皆が揃ってから食べ始めるんじゃなくて自由に食べていいのよ」
 藤木はイギリスの学校と日本の学校の違いを少し学ぶことができたのであった。 
 

 
後書き
次回:「貝殻(たからもの)
 藤木は放課後、掃除当番である事を思い出し、リリィに待ってくれと頼むが、リリィは掃除の手伝いをしてくれることになる。その後、リリィの家に連れて行かれた藤木は・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
  
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