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艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~

作者:V・B
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第二十八話

 
前書き
どうも、最近は毎日2300から0100までしか執筆の時間がないです。週に二回が、週に一回に…………今週こそは週二回を目指します(目指すとは言ったが、達成させるとは言っておりません。) 

 

―自室―
 
「………あんにゃろう。」
 
俺がいつも通りの時間に目を覚ますと、ベッドで寝ていたはずの悠人の姿が無かった。
 
最初はトイレでも行ってんのかな、と思ったが、ちゃぶ台の上に置き手紙が置いてあった。
 
『走ってくる。』
 
これだけ書かれていた。恐らくだが、昨日の内に木曾辺りと約束でもしたのだろう。相変わらず人との距離を詰めるのが上手い奴だ。
 
さて、それとは裏腹に人との付き合い方が論外レベルの俺はというと、走りに行って悠人と鉢合わせになったらめんどくさいな、と思ったわけだ。
 
「つまるところ、食堂辺りにでも行って暇潰しでもしようかってことだ。」
 
誰に解説するわけでもなく、そう呟いた。
 
俺は悠人の置き手紙をごみ箱に捨てて、そのままクローゼットの前へ。
 
いつものセーラー服と半ズボン、帽子は迷ったが、今日は被って行こうかな。
 
「…………。」
 
そして、毎日のように悩むこれ。
 
眼帯だ。
 
「どーすっかなー…………木曾とのペアルックとか、木曾も嫌だろうし、第一、片目見えなくするとか、どんな苦行だよ。」
 
いや、木曾のことだから、「いいじゃねえかペアルック。オレとお前の仲だろ?」とか、「そうこなくっちゃな。こーゆーのもいいねぇ。」とか言いそうだ、というか言うな、まず間違いなく。
 
俺は眼帯をクローゼットの中に仕舞った。いつか着けることがあるのだろうか。

よし、準備完了。軽巡 木曾 二号艦 出発だ。
 
 
―食堂―
 
 
「とは言ったものの、流石に誰も居ねぇかな………。」
 
俺は二階に降りてきて、食堂に向かって歩いていた。
 
まぁ、間宮さん辺りと話でもするかな……今考えると、あの人すげぇよな。五、六十人は居ようかって数の艦娘の食事管理してるんだから。
 
そりゃあ羽黒さんも手伝いたくなるわけだ。
 
そんなことを考えていたら、目の前に食堂への入り口が。
 
「うぃーす………あれ?」
 
中に入ると、そこにはやはり間宮さんがいた。

そして、カウンター席に突っ伏している奴が一人。
 
「何やってんだ?春雨。」
 
いつものサイドテールに白い帽子。確かに春雨だ。
 
確か前に春雨と同室である時雨が、春雨はあまり朝に強くないとか言ってたのにな……珍しいこともあるもんだ。
 
「あ、二号さん……おはようございます………ふぁあ………。」
 
顔を上げてこちらを見てきたが、若干やつれていて、かなり眠そうだ。
 
「どうした、寝不足か?」
 
「はい………隣の部屋がうるさくって、一睡もしてないんですよ…………ふぁあ。」
 
どうやら一睡もしていないと言うのは本当らしい。かなり参っているようだ。
 
「全く、注意しに行ったらいいじゃねえかよ。確か、お前と時雨の隣の部屋って…………………。」
 
………………………………。
 
「夕立じゃねえか…………。」
 
あぁ、はい。さいですか。
 
ゆうべはおたのしみでしたか。
 
多分、春雨のことだろう、聞こえないように意識したら余計に耳を傾けちゃったんだろうな。純粋な娘だし。
 
「………俺はその件に関しては何も聞かないでおこう。ただ、一つだけ教えてくれ。」
 
俺は少し気になったことを聞いた。

「時雨は寝ていたのか?」
 
これに春雨は、机に再び突っ伏しながら答えた。
 
「はい……熟睡してました………。『大丈夫、雨はいつか止むさ。』って言ってました………。」
 
時雨よ。雨って文字には、何かルビがあるんじゃないかい?
 
しかも、この春雨の様子だと止んでねぇし。
 
雷付きの豪雨だよ。
 
「……………くー、くー。」
 
そんなことを考えていたら、春雨は寝てしまったらしい。流石に眠気が恥ずかしさに勝ったらしい。
 
「あーあー………今日も訓練あんのになぁ……。」
 
さて、どうしようかと春雨を見ていたら。

「あ、春雨ちゃん寝ちゃった?」
 
カウンターの向こうから間宮さんが話しかけてきた。どうやらゆで卵を大量に作っているらしい。(卵大好きな俺としては夢のような光景だ。)
 
「あ、はい。どうしようか迷ってて。」
 
「ま、そこで寝かしといてあげなさいな。机で寝るなんて、学校以来なんじゃない?」
 
確かに、俺も授業中とか爆睡してたけどさ、あんまり机で寝るのは好きじゃない。
 
「うーん、机で寝ると後々キツいですからね………身体バッキバキになりますよ?」
 
すると間宮さんは、
 
「もう、艦娘なんだから直ぐに直るわよ。二号君も経験あるでしょ?」
 
笑いながらこう言った。

「………。」
 
確かにそれもそうだ。俺たちの身体は異常なほど回復早いからな……なかなか直らないのは、深海棲艦からの攻撃でできたケガくらいだ。
 
ま、それもドッグに入りゃあ直るからな。治るんじゃない。直るんだ。
 
「それじゃ、今日これから暇なんで、それ剥くの手伝いますよ。」
 
俺は手持ちぶさたになったので、間宮さんが話ながら剥いていたゆで卵を指差す。
 
「あら、ありがとうね。」
 
そう言うと間宮さんは、でっかいボウルに入っているゆで卵を渡してきた。改めて見ると凄い量だ。百じゃ済まなさそうだ。
 
「うし、頑張るかね。」
 
俺は気合いを入れて一個目の卵を手に取った。
 
……………それなりに熱かった。
 
 

―二時間後―
 
 

「えっと…………何してるんだ?お前。」
 
だいたい〇七〇〇位だろうか、最初の客である木曾と悠人が入ってきた。やはり走る約束をしていたらしい。悠人は完全に疲れきって、引きずられながらの登場だ。
 
「いやぁ、流れでさ。」
 
俺は、帽子を三角巾に替えて、カウンターの中で間宮さんと羽黒さんとで飯の準備をしている。
 
あれから、そこそこのスピードでゆで卵を剥き終わった所で、なんか楽しくなってきてしまった。そこに羽黒さんも来ちゃったから、本当に流れで本気で手伝い始めちゃった。
 
「なんか春雨も寝てるし………。」
 
春雨はあれからずっとカウンター席で寝ていた。寝顔はしっかりこの目に焼き付けておいた。
 
「あー、隣の部屋がうるさくって寝れなかったらしい。そっとしといてやってくれ。」
 
俺は味噌汁の鍋の火加減を調節していた。うむ、なかなかいい感じだ。
 
「ふぅん、まぁいいや。とりあえず、いつもの頼むわ。こいつにもな。」
 
木曾はそう言うと、悠人を引きずって机に向かっていった。
 
さてと、木曾が毎朝食ってんのは、朝定食だったな。
 
俺はまず目の前の味噌汁をお椀に注ぐ。こんな大きな鍋から注ぐのは中学の時の給食以来だな、と思った。
 
注ぎ終ると、間宮さんが鮭の切り身と白飯、漬物を乗せたお盆を二つ俺の手もとに置いてきた。後はこれにゆで卵と海苔を付けて…………。
 
「おまたせー、朝定食二つー。」
 
「お、流石に一人増えると速いな。」
 
木曾はカウンター席で座っていて、春雨の寝顔をニヤニヤ見ながら待っていた。いつもより速いらしく、少し驚いていた。
 
「二つ持てるか?」
 
「余裕だ。ありがとな。」
 
木曾はそう言うと、お盆を二つ持って、悠人が座っている席に歩いていった。
 
さて、これを後提督込みで五十六回か。
 
…………バイトとか始めたらこんな感じなんだろうか、と思いながら、俺は再び味噌汁の鍋の蓋を開けた。


 
―図書館―
 
 
 
「お疲れ様でした。大変だったでしょう?」
 
あの後、次々と来る客に軽く翻弄されたり笑われたり感心されたりしながら、〇八〇〇頃には仕事を終えた。間宮さんからお礼に、『間宮あいす引換券』なるものと、羽黒さんから、『伊良湖最中引換券』なるものを貰った。いつかこっそり使ってみよう。
 
そんで今、俺は何とか眠気から回復した春雨と図書館でドイツ語の勉強を始めていた。あの日から、毎日のように午前中にやっている。
 
「おう、ありがとうな。本当にあの二人には頭が上がらないわ。」
 
間宮さんと羽黒さんは、「お陰でいつもよりだいぶ楽ができた。」とお礼を言われた。たまに手伝いに入ろうかな。
 
「そう言えば、結局ふ……じゃねぇや、夕立と拓海は来なかったな。」
 
そう、今日は夕立と拓海は、結局最後まで食堂に現れなかった。
 
「夕立ちゃんも拓海さんも、毎日必ず朝御飯食べないんですよね…………理由は判明しましたけど。」
 
そう言うと、春雨は顔を赤くして下を向いた。
 
これは吹雪に聞いた話なのだが、前までは拓海は今、俺が使っている部屋の隣の部屋を使っていたらしい。
 
だから、純情な春雨には分からなかったと。
 
「ま、んなことは置いといて、今日もやるぞー。」
 
「は、はい!」
 
俺はそう言うと、手もとの参考書を開いた。春雨は教えたことをすぐに吸収してくれるから、なかなか先の方まで進んでいる。
 
今日はドイツ語の前置詞だ。これがなかなか曲者なんだ。こっちも説明頑張らないとな。
 

―一時間後―
 

「んで、zwischen(ツビッシェン)つまてのは『~のあいだって』って意味でな、これを合わせた九個を覚えとけば便利がいいぞ。」
 
俺はそう言いながら、春雨の方を見た。春雨はしっかりノートに書き残していた。
 
「ういじゃ、このページのこの問題を解いてみな。十分後に答え合わせな。俺は少し、調べ物してくる。」
 
俺はそう言うと、席を立った。春雨は、「分かりました。」と言って、再びノートに向き直った。
 
俺は本棚から目当ての本を取り出して、ページをめくっていた。ふと、俺はそこから一生懸命にシャーペンを走らせている春雨を見た。
 
しかし、本当に春雨はいい娘だな。素直で真面目で優しい。
 
こんな娘を嫁に持った人は幸せだな、とか思った。
 
 
 
 
『あーでも、千尋はこれからの半年で恋人ができそうだな。』
 
『俺の見立てでは、春雨って娘かな。』
 
『まず間違いなくお前に惚れてるよな。』
 
『いや、だって春雨ちゃんのお前を見る目が完全に恋する乙女だもん。あの様子じゃあ本人も気付いてないみたいだけどさ………やっぱりお前も気付いてなかったか。』
 
『木曾さんからきいたんだけどさ、お前と春雨ちゃんって、木曾さんの昔の話を探ってんだろ?それで成り行きで摩耶さんと対決するとか言うことも。』
 
『でもさ、どうせお前のことなんだから、春雨ちゃんを誘った訳じゃないんだろ?』
 
『それって、好きな男の子と一緒にいたいっていう恋心の表れじゃね?』
 
 
 
 

「~っ!」
 
俺は昨日の悠人の台詞を思い出して、思わず棚に頭をぶつけた。
 
「に、二号さん!?大丈夫ですか!?」
 
なかなか大きな音がしたのか、驚いた様子でこちらを見る春雨。
 
「い、いや。何でもない。大丈夫だ。」
 
俺はそう言うと、落としてしまった本を拾っていく。
 
…………落ち着け、俺。どうせ悠人のからかいおちょくり、戯言だ。春雨が俺のことを好いているなんて確証はないし、俺は春雨のことが女の子として好きって訳では…………。
 

 
 

 
本当に?
 
 
 
 
 
 
俺は、春雨のことをどう思ってるんだ?
 
 
 
 
 
 
「どうしたんですか二号さん?顔赤いですよ?」
 
急に耳元で、春雨の声が聞こえた。
 
「のわぁあああああああああああああああ!?」
 
俺は思わず大声を出してしまった。
 
「え、二号さん!?どうしたんですか!?さっきからおかしいですよ!?」
 
春雨は俺を驚いた表情で見ていた。
 
「あ、あぁ。あまり調子良くないっぽいわ。悪いけど、今日はお開きでいいか?少し休んで来るわ。」
 
俺はそう言うと、立ち上がった。
 
「わ、分かりました。それじゃ、また昼からの訓練で!」
 
そう言うと、春雨は笑顔を見せてくれた。
 
「お、おう。じゃあな。」
 
俺はそう言うと、下を向きながら図書館から出ていった。
 
……………思えば、ここが一つのターニングポイントだったな。
  
 

 
後書き
読んでくれてありがとうございます。最近本当に艦これ要素が艦娘の名前位しか無くて申し訳ないです。でも、今の内にほのぼのしとかないと、このあとどんどんシリアスになっていくものでして……今の状況をドラゴ〇ボールで例えると、天下〇武道会前ってところです。〇ムチャが狼牙風〇拳とか言ってた時代ですよ。どうでもいいですね。
それでは、また次回。 
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