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提督はBarにいる。

作者:ごません
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秋を先取り!鮭レシピ特集・その2

 カウンターの隅でウォッカをロックで煽っていた彼女は、静かに酒を楽しんでいたのを邪魔されて、大層ご立腹のようだ。

「まぁまぁ、そんなに怒るなよガンちゃん」

「ガンちゃん言うなっ!私は偉大なるソヴィエトの戦艦ガングートだぞ!?」

 真っ赤になってギャーギャー喚いているのはロシア海軍初の艦娘であるガングートだ。ロシア絡みの艦娘でいうと響ことヴェールヌイもいるが、アレはロシアから提供されたデータを基に調整された艤装を使っているだけで、純粋なロシア産の艦娘とは言えないが、このガングートに関しては100%ロシア産。この間の大規模作戦が千島列島とかあの辺だったお陰か、素となる艦魂(ふなだま)が見つかったらしい。そしてロシアでも量産の目処が立ったお陰で、運用法などを学ばせる為に日本海軍の有力な鎮守府に試験運用の名目で譲渡されているってワケだ。そして他のロシア人のご他聞に漏れず飲兵衛だった彼女がウチに馴染めないハズもなく、1ヶ月も経たない内に『ガンちゃん』のニックネームが浸透・定着した。

「はいはい。それで?どうしたんだガンちゃん」

「だからガンちゃんと呼ぶなと……まぁいい、酒を飲む時というのは誰にも邪魔されず、自由で、なんというかこう……救われてなくちゃいけないんだ」

 おい、どっかで聞いた事あんぞこの台詞。

「孤独で静かな世界に浸り、その豊かさを享受するのが酒の正しい飲み方だ。そうだろう?」

 お前はどこのゴローちゃんだよ、ったく。

「そうでしょうか?作戦が終わった後に皆でワイワイ飲むお酒の方が私は好きですが……」

 ガングートの意見に真っ向から反論するのは神威。

「そっ、それは特別な祝いの席の話だ!普段は静かに飲むのが常識。そうだろう!?」

 そう言って俺に縋るような眼差しを送ってくるガングート。

「そう言われてもなぁ……酒の楽しみ方なんざ人それぞれだろうに」

 騒がしく飲みたい奴もいれば、静かに自分の世界に浸りたい奴もいる。人は一人ずつ違うんだから当然の事だろうに。

「頭が固すぎんだよお前は。……ほれ、これでも食って機嫌直せ」

「わ、賄賂のつもりか?」

「違ぇよ、『鮭のステーキ・マスタードチーズソース』だ。ウチの店のせいで機嫌悪くなったんだから、サービスだよ」

 神威にも同じ物を出してやる。俺も食いたいからもう一切れ焼くとするか。


《鮭のステーキ・マスタードチーズソース》※分量2人前

・鮭の切り身:2切れ

・酒:少々

・塩:少々

・黒胡椒:少々

・薄力粉:大さじ2位

・オリーブオイル:大さじ1

・粒マスタード:大さじ1

・牛乳:180cc

・バター:大さじ1

・ピザ用チーズ:ひとつかみ



 さて、作っていこう。まずは鮭の切り身に塩、黒胡椒、それと臭み消しの酒を振り、暫く置いて馴染ませておく。

 鮭を休ませている間にソースを作るぞ。小鍋にバターを溶かし、マスタードを弱火で炒める。強火で炒めると催涙ガスにも使われる位強烈な刺激物が発生するから注意しろよ?さっと炒めたら薄力粉を大さじ1位入れて全体と絡めるように炒める。

 薄力粉が馴染んだら木へらでかき混ぜつつ牛乳を少しずつ加えていく。全て入ったら少し温め、チーズをドサッと入れて焦がさないようにかき混ぜつつよく溶かし、少しとろみが付くまで煮る。塩、胡椒の類いが入ってないが、チーズの塩気とマスタードの辛味で十分な味が付いている。味見をしてみて物足りなかったら、各々の舌に合わせて調整してくれ。

 さぁ、鮭を焼いていくぞ。残してあった薄力粉を鮭にまぶし、余分な粉を落とすためにはたく。フライパンにオリーブオイルを熱して、鮭を両面こんがりと焼いていく。


「そういえば、日本のサーモンは随分と色が薄いな」

 俺が鮭を焼いている間、鮭のステーキをつついていたガングートが口を開いた。

「そりゃそうだガンちゃん、日本で言う鮭ってのは、他の国で言うチャムサーモンの事だからな」

「何だ、そうなのか?あとガンちゃん言うな」

「提督、サーモンって日本の鮭の事ではないのですか?」

「あぁ、そもそも種類が違うのさ」





 日本でよく食べられている鮭。こいつはサケ科の魚で、仲間にはニジマスやサクラマス、サツキマス、カラフトマスなんかがいる。マスもサケの親戚だ。んでもって昔は鮭もマスも全部纏めて『マス』と読んでたんだが、その中でも一番でかくて海に降る奴を選り分けて『サケ』と呼ぶようになった。正確には和名で『シロサケ』という。

一方、外国でのサケ科の魚の分け方は『トラウト』と『サーモン』ってのがある。『トラウト』は一生河や湖で暮らす種類、『サーモン』ってのは鮭と同様に海に出る種類の事をいう。これが厄介の元でな。欧米とのやり取りが多くなって来た時に、『サーモン=鮭』『トラウト=マス』と設定したまでは良かったんだが……実は、分類学的にはサクラマスもサツキマスもカラフトマスもサーモンの分類なんで、ニジマスだけトラウトなんだよなぁ実は。そして世界的に知られたサーモンってのはシロサケではなくシルバーサーモン等の全く別のサケ科の魚だ。味が違うのも当たり前だよなぁ?

そしてスーパーの鮮魚コーナーで見かける『トラウトサーモン』。さっきの説明読んでもらうと解ると思うが、意味がわからん単語になっている。それもそのはず、トラウトサーモンってのは商品名で、実態は品種改良されたニジマスを海で養殖した代物。要するにニジマスだ。でも分類学的にはサーモン。……な?意味わからんだろ?w

「ま、世界的に呼んでるサーモンと日本の鮭は別物だって覚えとけばどうにかなる」

 ついでに言うと、鮭と紅鮭と銀鮭もそれぞれ別の魚だからな?勘違いすんなよ。




「う~……頭が痛くなって来たぞ、今夜はそろそろ寝る事にする」

「毎度~。お大事にな」

 鮭の小難しい話を聞いて頭から煙を噴き出しそうだったガンちゃんだったが、フラフラしながらも自室へと引き上げていった。ありゃ長門と同じ脳筋タイプだな、間違いねぇ。

「提督……出来たらその、鮭ではなくサーモンも食べて見たいのですが」

 おずおずと申し出てきた神威。食べた事のないサーモンに興味が湧いたか?まぁそういう好奇心は大事にした方がいいからな。

「あぁ、あるよスモークサーモンと刺身とどっちがいい?」

「出来たらスモークサーモンで、何かお料理を作って頂きたいのですが」

「あいよ、他に要望は?」

「出来たらボリュームのある物を……」

 意外と食うな、神威。やはりその身体を維持するには大量の食糧が要るのか……謎だ。まぁいい、最近は暑いしな。ここは1つスモークサーモンを使った冷製パスタといこうじゃないか。


《ひんやりと!スモークサーモンとホタテの冷製パスタ》※分量4人前

・パスタ(カッペリーニ推奨):200g

・スモークサーモン:100g

・ホタテ(刺身用):8枚

・ニンニク:2片

・鷹の爪:1本

・オリーブオイル:適量

・水:150~200cc

・めんつゆ:大さじ2

・塩:少々

・黒胡椒:少々

・小ねぎ:お好みで

・レモン汁:お好みで



 さて、作っていこう。まずはメインのスモークサーモンから。ホタテと一緒に小さく賽の目に切っておく。

 お次はソース作り。基本はペペロンチーノ風の味付けだ。ニンニクはみじん切り、鷹の爪は種を取って輪切りにする。フライパンにオリーブオイルを引いて温め、ニンニクと鷹の爪を香りが出てくるまで弱火で炒める。

 ニンニクの香りが立ってきたら火を止め、水を加える。この時、跳ねる可能性があるので注意。よく混ぜたらボウルに移し、氷水を張ったボウルに重ねて冷却。

 ソースのベースが冷えたら、切っておいたスモークサーモンとホタテを加えて混ぜ、めんつゆも加える。味見をして、塩気が足りなければ塩と胡椒で調節。但し、スモークサーモンの塩気を勘定に入れるのを忘れずに。ソースはこれで出来上がりなので、冷蔵庫に入れて冷やしておく。

 パスタを茹でていくぞ。今回は冷製パスタなので普通のパスタと多少茹で方が変わる。水の量は100gに対して1リットルと変わらないが、1%の塩分濃度よりも濃くなるように塩を入れて茹でる。パスタを引き締める為にな。そして袋に書いてある茹で時間よりも1分長く茹でて、お湯を切り、氷水で締める。そしてこれも冷製パスタを作る時のコツだが、氷水で締めたらガーゼ等で包んでしっかりと水気を絞る事。こうする事で
パスタが水っぽくならず、しっかりと味が付くぞ。

 冷やしておいたスモークサーモンのソースに水気を切ったパスタを加えて和える。しっかりと絡んだら皿に盛り付け、仕上げにお好みでレモン汁とオリーブオイル、刻んだ小ねぎを散らして完成だ。
 
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