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NARUTO~サイドストーリー~

作者:月下美人
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SIDE:A
  第十七話


 無事に一か月間のサバイバル修行を終え、五体満足で帰宅した俺に待ち受けていたのは、オカンの雷だった。


 修行中、影分身によるアリバイ作りで不在を誤魔化そうとしたわけだが、クーちゃんが居ないことを怪訝に感じたらしい。いつも俺にべったりなのに一か月も不在にしているのはおかしいと。


 どんな堅牢な城でも小指ほどの穴から瓦解する。俺の完璧なアリバイ作りという名の城も、クーちゃんという小さな穴を責められ呆気なく落とされたのだった。このハルト、一生の不覚である。


 事情を知るであろう父さんは問い詰められると簡単にゲロりやがった。忍びたる者情報の重要性をその身で知っているはずなのに、簡単に敵に明け渡したのだ。もしこの世界に火影不信任決議案があれば間違いなく決議されるであろう事案である。


 そういう経緯を経て母さんに暴露された俺は『母さんに内緒にしていた』、『死の森でサバイバルという無謀な修行内容について』『十分な安全の確保を怠った』と三つの理由で折檻された。母さんに内緒にしていた件はその通りなので何も言えないが、二つ目と三つ目の理由については反論の余地がある。目的が目的だったし、そのくらい危険な場所でないと修行にならない。十分な安全確保もクーちゃんという保険を掛けていたから、これ以上ない保険だろ。


 まあ、そんな俺の言い分なんて激おこ状態――通称"赤いハバネロ"モードと化した母さんには焼け石に水だけど。カップヌードルのCMに是非、赤いハバネロ星人というキャッチコピーで起用してほしいくらいの激昂っぷりだもの。


 触らぬ神がなんとやら。ハザードシンボルが付いた危険物の前で、火遊びをするほど命捨ててはいない。


「先程から上の空じゃが、何を考えているんじゃ?」


 先日の修羅場を回想していた俺にクーちゃんが声を掛けてきた。見れば九尾の妖狐だけでなく可愛い妹の汐音や、愛しの婚約者であるヒナタまでこちらを見ていた。


「ん? いや、今日はなにして過ごそうかなって」


「主のことじゃから、どうせ今日も寝て過ごすのでないか?」


 大半の授業で俺が取る行動を指摘するクーちゃん。いや、その時になってみないと分からないから。まあなんだかんだその通りなんだけど。


「だ、ダメだよハルトくん。授業はちゃんと受けないと」


「気持ちはわかるけど、お兄ちゃん寝てばかりだと成績に関わるってばさ」


 俺の授業態度が不満――不安? 心配? なのかヒナタが眉をハの字にしてこっちを見上げてきた。無意識のうちに俺の保護欲を刺激してくる婚約者の隣で汐音も苦笑を浮かべている。


 俺は幼少時代からの自主勉強から、汐音はそんな兄とクーちゃんでの英才教育を受けているため、我らうずまき兄妹はアカデミーで学ぶ内容をすでに修めている。俺からしてみれば高校生が今更小学一年生の授業を学ぶようなものだ。


 当然、授業――特に座学は暇で仕方ない。その結果、くしくも奈良家のシカマルくんと同じ行動を取ってしまうのだ。


 つまり、昼寝である。


「でも成績云々はあまり気にしてないしな。元々中間あたりを狙ってるし」


 元々六歳で入学する予定の俺が二年遅れでアカデミーの門をくぐった理由の一つが、アカデミー生の護衛だ。木の葉には秘伝忍術を扱う家系を多く、中には血継限界の血を引く名家の子もいる。そんな子たちが誘拐されないとは言い切れないため、すでに上忍レベルの実力を持つ俺が密かに護衛しているのだ。五年前にヒナタが誘拐されたのを契機に里のセキュリティレベルを上げたとはいえ、他里の人間が紛れ込んでいないとは言いきれないし。


 そういう理由もあり注目を浴びないように実技、座学ともにほどほどに加減をしている。成績をコントロールするのって意外と難しいんだよな。


 と、いうことで、その辺りの理由は父さんや母さんには説明済みだから、たとえ加減を誤って下位辺りになっても注意で済む。


「じゃあ汐音もヒナタも授業がんばれよ」


「うん。ハルトくんも」


「じゃあお兄ちゃんまた後でね~」


 アカデミーについた俺たちはそれぞれのクラスに別れた。一年では男女共同のクラスだが二年から男女別に分かれる決まりだ。くノ一はくノ一ならではの役割があるし、思春期に入る頃だからクラスを別々に分けるようだ。


 本来ならクーちゃんは俺の使い魔だから男子クラスにいるべきだが、汐音やヒナタが心配なため女子クラスに居てもらっている。ないとは思うが、もし俺の知らないところで二人がイジメにでもあったらと思うと心配で心配で……。


 クーちゃんに目を光らせてもらっていれば馬鹿な真似をする娘もいないだろう。


「うぃーっす。おはよう諸君」


 雑な挨拶をしながら扉を開ける。教室には気心が知れた野郎どもがいくつかのグループを組んで雑談していた。


 自分に割り振られた席に鞄を置いて、グループの一つに混ざりに行くと、俺の姿に気が付いた一人が手を上げた。


「ようハルト」


「おー、なんの話してんの?」


 シカマルの席にはいつものメンバーであるチョウジ、シノ、キバが集まっている。男女別にクラスが分かれてから大体このメンバーで集まるようになった。昼休みになるとこのメンバーにイノ、ヒナタ、汐音、クーちゃんが加わり大所帯となるのが通例だ。


「午後にあるサバイバル演習だよ」


「サバイバル……。あー、そういえばあったな」


 バリバリとポテチを食いながらのチョウジの言葉にげんなりする。修行中の本体に変わり授業を受けていた影分身の情報によると、今日の午後にワンツーマンでのサバイバル演習があるようだ。すっかり忘れてたわ。


 しばらくサバイバルはいいかなと思ったけど、アカデミーの演習だから俺のように森で一夜明かすようなことはないだろう。となると、授業内容より誰がパートナーになるかが懸念材料だ。実力を隠さないといけないから、色々と気を回す必要がありそう。


 確か今回は女子との合同演習だっけ。汐音やヒナタとか気心知れてる人ならいいけど、面倒っぽいなぁ。


「イノたちと一緒とかめんどくせぇ。帰りてぇわ……」


「まあまあシカマル、そう言わないで頑張ろうよ」


 早くもやる気を無くし机に突っ伏すシカマルをチョウジが元気づける。普段から食べ物のことしか頭にないチョウジにしては珍しく意欲を見せている。


 俺と同じく意外に思ったのかシノが尋ねた。


「意外だなチョウジ。お前がそこまでやる気を見せるとは。なぜならお前は実技関係の授業を苦手としているからだ」


「だな。どうしたんだよお前? 食い物のことしか頭にないお前がそんなこと言うなんて……なんか悪い物でも食ったか?」


 顔を上げたシカマルが胡乱気にチョウジを眺める。無心にポテチを食べていた彼は手を止めると、カッと目を見開いて言った。


「昨日父ちゃんに言われたんだ。今日の演習で上位に入ったら焼肉に連れていってくれるって! 焼肉のためならボクは悪魔に魂を売ってでも上位に食い込んでみせるよ!」


 唾を飛ばす勢いでそう捲し立てる秋道家のチョウジくんに、奈良家の長男は苦笑した。


「あー、納得。食い物が絡んだこいつのことだから、本当に上位入賞かもな。しかも焼肉となると奇跡を起こすかもしれないぞ」


「一笑に出来ないところがチョウジの凄いところだな」


 俺の言葉に頷いて同意を示すシノ。忍犬の赤丸を頭に乗せたキバは勝気な笑みを浮かべた。


「へっ、チョウジが上位になれるなら俺は優勝ものだな! なぁ赤丸!」


「わんわん!」


 主人の言葉に元気に吠える赤丸。ワンちゃんは今日も元気そうでなによりです。


「お前ら席に着けー! 授業を始めるぞ~!」


 担任のイルカ先生の言葉に各々の席に戻る。


 合同演習か。どうするかなぁ。





   †               †               †





 昼休みを告げるチャイムが鳴ると、午前の授業が終わる。イルカ先生が教材を片手に教室を出ていくのを見届けた俺はその場で大きく伸びをした。


 暗号の授業でずっと椅子に座りっぱなしだったからお尻が痛い。教室の机や椅子はすべて木製のため、長時間座っているとお尻にすごい負担が掛かるのだ。そのため生徒たちは自宅から座布団など敷物を持参するのだが、生憎マイ座布団は洗濯のため臨時帰省中。そのため今日一日は我慢を強いられる破目となった。


 母さんの手作り弁当を手にした俺は皆に声を掛ける。


「いつもの場所で昼にしようか」


「おう。じゃあ行くか」


 シカマルが弁当を片手に立ち上がると他のメンバーも次々と席を立った。


「おっ昼! おっ昼!」


「うっし! じゃあ行くか、競争だ赤丸!」


「わん!」


「……賛成だ。腹が減っては戦は出来ないと昔の忍びが言っていた」


 いつもの男子メンバーが向かう先は屋上。


 アカデミーでは昼休みになると大体の生徒が教室、屋上、中庭で昼食を食べる。そのため、屋上のベストポジションを確保するのは時間との勝負だ。


【廊下を走るべからず】という張り紙を無視して廊下を疾走する。屋上にたどり着くと、そこには既に何組かの生徒たちがエリアを陣取っていた。


 一瞬出遅れたかと思ったが、女子たちがすでに場所を取っておいてくれていた。二つ並ぶベンチに汐音とクーちゃん、ヒナタ、いのがそれぞれの弁当を持参して腰掛けている。俺たちも近くの適当な段差などに腰掛けた。


 アカデミーの屋上はそこそこ広く、長椅子もいくつか設置されている。日当たりも良いため俺たちはいつもこここで昼食を摂っているのだ。


「――いただきます」


 食材に感謝の念を込めた祈りの言葉を捧げ、手を合わせて深く頭を下げる。サバイバル修行を経てすっかり習慣ついてしまった一連の行動にシカマルたちが声を潜めて話し合う。


「おい、ハルトのやつどうしたんだよ?」


「なんかすごく深々と頭下げてるね……もぐもぐ」


「……食材に感謝する姿勢はいいことだ。だが、以前はあそこまでではなかったと記憶している」


 シカマル、チョウジ、シノの声にヒナタとイノの声が加わった。


「う、うん。なんかちょっと様子が変、だよね……」


「でもこういうハルトもいい感じよね~!」


 ヒナタに変って言われてちょっとショック……。そういえばここでは食事の前の祈りというか、食材に対する感謝の言葉ってないんだよね。


 そしていのさんがナチュラルに俺を持ち上げてくる。好意を寄せてくれているのは分かるけど、告白されたわけじゃないから拒絶しにくいんだよね。うーん、男としては好かれるのは嬉しいけど……辛いぜ。


 巾着袋から取り出したお弁当はチョウジのそれと比べると一回り小さいが二十センチ四方の二段重ね弁当だ。結構なサイズです。


 育ち盛りな上、修行などで体力とエネルギーを消費するからこれくらい食べないと体が持たないのだ。毎日作ってくれる母さんには感謝感激である。


「チョウジほどじゃないけど、ハルトもよく食べるわよねー」


「チョウジほどじゃないがな。よく毎日その量食べきれるな」


 盛り盛り一段目の弁当箱を消費している俺を見ていのとシカマルが言う。俺の一回りデカい弁当をペロッと平げた上で「まだ食べたりないかな~?」というモンスターには到底敵いませんよ。


「燃費が悪いんだよこの体。毎日このくらい食べないとぶっ倒れるからな」


「あー。確かにお兄ちゃんの修行風景とか見てるとそれも納得だってばさ」


 何度かガイ師匠の元で修行をする光景を目にしている汐音が頷く。ガイ師匠の基本方針は体をイジメにイジメてイジメ抜き、常に己の限界に挑戦し続けるというもの。信じる者は救われる、限界など気合と根性でどうにでもなるという現代スポーツ学に真っ向から唾を吐きかけるような精神論の元、行われる修行は着実に俺の血肉になっていた。


「あの、ハルト君。無理だけはしないでね……?」


 ガイ師匠との修行はさすがに見たことないヒナタが心配気な表情で温かい言葉を送ってくれた。恋人にいらぬ心配をかけるわけにはいかない俺は根拠のない自信で持って笑顔で親指を立てて見せた。


 師匠のようにキランッと爽やかな歯を見せて笑うと、顔を赤くしたヒナタはあたふたした様子で手元のポーチから何かを取り出した。


「え、えっと、その、ハルト君よく食べるから、お昼ご飯だけじゃ足りないかなって思って、その、これ……っ!」


 受け取って!と心の声とともに突き出したのは黄色い巾着袋。大きさといい、今の言葉からしてどうやらお弁当が入っているようだが――って、えっ? ヒナタの手作り弁当!?


「このお弁当、ヒナタが作ったのか?」


「な、なんだとぉぉぉぉぉ!?」


 突然シャウトする犬塚家の長男。その叫び声に周囲の視線が集まった。


 うるせえバカ犬っ、とアホの尻を蹴飛ばしてヒナタに視線を向けると、顔を赤くした彼女は縮こまるようにしながらもハッキリと言った。


「う、うん。その、お母様に教わりながらだけど。ハルト君に食べてもらえたらって思って……」


「マジか! ぉぉおっ、すごい嬉しい!」


 あのヒナタの手作り弁当! それも初手作り! やべぇ、嬉しさのあまり胃と腸が過労になるくらい活動してくれてるのがわかるわ。もうお腹すき始めたもの。


「あの……ハルトくん、よく食べるし、足りないかも」


「いやいや、腹七分だったから丁度いい量だよ。むしろナイスだ」


 差し出してくれたお弁当は標準的なサイズの弁当箱。一般的な男の子が食べる量だ。


 ヒナタが作ってきてくれたお弁当は、から揚げにウインナー、卵焼き、サラダというメニュー。空腹時には確かに足りないかもしれないが今の俺には丁度良いサイズだ。


 ありがたく手を合わせた俺はマイチョップスティックを手に嬉々として手作り弁当を食べていく。


「ん! 美味いっ! このから揚げ冷めてるのにすごく美味いな。なにか工夫してるの?」


「えっと、から揚げは二度揚げしてるの。それと、隠し味で生姜を少し」


「そっかー。この卵焼きも美味いな。しかも俺好みの甘い卵焼きだし」


「ハルトくんは卵焼きは甘めが好きって、以前クシナさんから聞いて。よかった……」


 卵焼きは甘すぎない程よい甘さでまさに俺が好きな味付けだ。うちの母さんはしっかりうずまき家の味を伝えているようです。ものの数分でペロッと平らげ、両手を合わせてご馳走様を口にする。


 ヒナタは嬉しそうに相好を崩し、空になった弁当箱を受け取った。


「お粗末様でした。あの、もしよかったら、また作ってもいい?」


 あなたは天使ですか? そんなのもちろんオッケーに決まってるだろ!


「是非! いやぁ、今から楽しみだなぁ。お腹すかせておかないと」


「ふふ、うんと美味しいの作るね」


 まさに天使のような微笑みを浮かべるヒナタに「楽しみにしてる」と笑顔で頷く。


 そんなやり取りとしていると、いちゃラブ空気を感じ取った皆さんが詰め寄ってきた。ヒナタと俺を取り囲むようにして口々に言葉を叩きつけてくる。


「お前ら、いつからそんなに仲良くなったんだ?」


「前々から怪しいと思ってたけど、もしかして付き合ってるの?」


「ヒナタとハルトか……似合いのカップルだな。何故ならハルトは小さな英雄と名高い四代目火影の息子、そしてヒナタは名家の息女だからな」


「……ハ、ハハ、ハルト? い、一体いつからヒナタと!?」


「――」


 ちなみにシカマル、チョウジ、シノ、いのの順だ。なお、キバはショックのあまり言葉もない模様。口から魂のようなものが出ている、そんmな幻影を見た気がした。キバがヒナタに気があるのは見ていてまる分かりだったからな、同じ男としてその気持ちは察することができる。だが同情はせんよ? 友達であり婚約者というアドバンテージがあるとはいえ恋敵に違いないからな。


 チラッとヒナタの方を見ると彼女も困ったような表情で俺に視線を向けてきた。顔が真っ赤なのはご愛嬌というものだろう。


 婚約者云々含めヒナタと交際していることは周囲には秘密にしてある。というのも、ヒナタが恥ずかしがり屋なため彼女たってのお願いで周囲には伏せているのだ。知っているのは家族であるうちの両親に汐音とクーちゃん。日向家の者たちのみ。


 どうする? と視線で問いかけると、顔を赤らめたヒナタは覚悟を決めた表情でコクッと小さく頷いた。


「う、うん。その、実は……。ハ、ハルトくんと、け……けけ、けっ――結婚を前提にお付き合いしてるの!」


「って、そっち!?」


「え、えっ?」


 交際のことを暴露すると思ったらまさか婚約のことをぶっちゃけるとは思わなかったです。度胸があるのかないのか……。


 何か変なことを言っただろうかと、おろおろするヒナタ。いや、貴女が良いんなら別にいいけど。


『……』

 
 しんと静まり返る屋上。思い思いに昼食を楽しんでいた他の人たちの視線も集めていた。


 そして――。


『なんだってぇぇぇ!?』


 この日、一番の声が青い空に響き渡った。

 
 

 
後書き

 アンケート結果が出ました。ご協力ありがとうございます。
 アンケートの結果、九喇嘛といのが参戦となりました。詳しくはつぶやきをご覧ください。
 
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