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英雄伝説~灰の軌跡~

作者:sorano
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第24話

~パンダグリュエル・パーティーホール~



「な――――」

「「!!」」

「あんた達は……!」

「バ、バリアハートの時の……!?」

リィン達の登場にオリヴァルト皇子は絶句し、セリーヌとエマは目を見開き、サラ教官とアリサは驚きの声を上げてリィン達を見つめた。

「ほええええ~っ!?メンフィル軍の竜騎士軍団の団長どころか、”姫君の中の姫君(プリンセスオブプリンセス)”や”蒼黒の薔薇”まで特務部隊の隊員なの~!?」

「しかも”剣帝”に加えて”魔弓将”までいるね。」

「なるほど………プリネ皇女殿下達の所在について後で私達も知る事になるというレーヴェ様のお言葉は”こういう意味”だったのですか………」

特務部隊の中にサフィナやプリネ、ツーヤがいる事を確認したミリアムは信じられない表情で声を上げ、フィーは真剣な表情でレーヴェとエヴリーヌを見つめて呟き、シャロンは静かな表情で呟いた。

「リィン!?それにエリゼお嬢さんまで……!本当にお前さん達もさっきの”殲滅天使”の話で出て来た”特務部隊”の一員なのか!?」

「うふふ、エリゼお姉さんはともかく”総大将”のリィンお兄さんをただの兵隊扱いするのは間違っていると思うわよ?」

「そ、”総大将”って……!」

驚きの表情でリィンやエリゼを見つめて声を上げたトヴァルの疑問に答えたレンの答えを聞いたエリオットは信じられない表情でリィンを見つめた。

「クスクス、まずは自己紹介をしてもらえるかしら、リィンお兄さん。」

「わかりました。――――改めて名乗らせてもらう。”特務部隊”所属リィン・シュバルツァー特務准将。若輩の身ではあるけど、”特務部隊”の”総大将”を務める事になった。もし貴方達が”特務部隊”の指揮下に入るのであれば、仲間として歓迎する。」

レンに促されたリィンは自己紹介をし

「なっ!?じゅ、”准将”だって!?」

「クレア大尉どころか、”少佐”であるナイトハルト教官の軍位よりも上の地位だな……」

「はい……”特務准将”ですから実際には佐官クラスだと思いますが、それでも私やナイトハルト少佐よりも遥かに上の軍位です。」

「彼の余りにも早い出世は恐らく今回の戦争による手柄なのだろうな……」

リィンの自己紹介を聞いたマキアスは驚き、真剣な表情で呟いたラウラの言葉に頷いたクレア大尉は信じられない表情でリィンを見つめ、アルゼイド子爵は静かな表情で呟いてリィンを見つめていた。



「……レン君、何故リィン君が”特務部隊”の”総大将”を務める事になったのだい?見た所他にも”総大将”を務める事ができる人物が何人かいるようだが………」

「うふふ、色々な理由はあるけど一番の理由は今回の両帝国の戦争で、エレボニアに対して優しさと厳しさを見せたリィンお兄さんだからこそ、エレボニアの内戦を終結させる”特務部隊”の総大将として相応しいのよ。」

「『リィンさんが今回の戦争で、エレボニアに対して優しさと厳しさを見せた』……ですか?」

「”優しさ”は恐らく故郷が襲撃され、父親が重傷を負わされたにも関わらず両親の為に今回の戦争を和解へと導いた事やユーシスを助命した事で、”厳しさ”はアルバレア公と”総参謀”を殺害した件かしら?」

オリヴァルト皇子の質問に小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの答えを聞いたエマは不思議そうな表情をし、セリーヌは真剣な表情で自身の推測を口にした。

「正解♪そこに”厳しさ”に付け加える形になるけど………実はオーロックス砦を制圧した時にユミルを襲撃した張本人である猟兵達がいたのよ。」

「何ですって!?」

「ユミルを襲撃した猟兵―――”北の猟兵”か……!」

レンの説明を聞いたサラ教官とトヴァルはそれぞれ血相を変え

「ええ、その”北の猟兵”よ。戦闘終了後に勝ち目がないと悟ってオーロックス砦に隠れていた”北の猟兵”達が降伏を申し出てね……で、リフィアお姉様がリィンお兄さんをその場に呼んでリィンお兄さんにユミルを襲撃した張本人である”北の猟兵”達の処遇を任せたんだけど………何とリィンお兄さんはエリゼお姉さんと一緒にその場で降伏した”北の猟兵”達を一人残らず”皆殺し”にしたのよ♪」

「!!」

「み、”皆殺し”って……!」

「しかも降伏した人達を殺すなんて………」

「…………そなた達が降伏した猟兵達を殺害した理由はユミルの件に対する”報復”か……?」

レンの答えを聞いたサラ教官は目を見開き、トワは信じられない表情をし、ジョルジュは不安そうな表情でリィンを見つめ、アルゼイド子爵は真剣な表情でリィンとエリゼを見つめて訊ねた。



「はい。金の為に郷を襲い……父さん達を傷つけておきながら、自身の命の危機に陥ると命乞いまでした身勝手さはユミル領主の子供として………父さんと母さんの子供として、絶対に許せませんでしたからアルバレア公が雇っていた”北の猟兵”達は一人残らずこの手で斬りました。」

「私達が処刑した”北の猟兵”の中にはユミル襲撃に関わっていない者達もいましたが、彼らと同じ穴の狢であるその者達も同罪ですからその者達も一人残らず処刑しました。」

「………ッ!」

「サラ…………」

「……………」

リィンとエリゼがアルバレア公爵が雇った”北の猟兵”達を皆殺しにした理由を知ったサラ教官は唇を噛みしめて顔を俯かせて身体を震わせ、その様子に気づいたフィーとトヴァルは辛そうな表情をした。

「うふふ、故郷や両親が傷つけられたにも関わらず、故郷や両親を傷つけたアルバレア公爵の次男の命は奪わずにレン達メンフィルに助命した上敵国であるエレボニアとの戦争を和解という形で導いた一方、”報復”としてユミル襲撃に関わった関係者達を殺したリィンお兄さんはまさにエレボニアに対して優しさと厳しさを備えているから、エレボニアの内戦を終結させる部隊の”総大将”として相応しいでしょう?内戦を終結させる為には時には寛大な心遣いを、時には非情な決断が必要なのだから。」

「それは……………」

レンの正論に反論できないラウラは複雑そうな表情をし

「それとリィンお兄さんは”Ⅶ組のメンバー兼リーダーとしての候補”にも挙がっていたのだから、まさに”Ⅶ組”を指揮下に置く”特務部隊”の総大将として相応しいでしょう?」

「ええっ!?」

「彼がオレ達Ⅶ組―――それもリーダーとしての候補に………」

「……………」

驚愕の事実を知ったエリオットは驚き、ガイウスは目を丸くしてリィンを見つめ、エマは複雑そうな表情で黙り込んでいた。



「そ、そう言えばさっきレン皇女殿下はリィンさ――いえ、リィン特務准将の出自についてオリヴァルト殿下と教官も知っているって仰っていましたけど、もしかして彼の出自を知っていた理由は……!」

「…………ええ、リィン特務准将は”Ⅶ組”のメンバー兼リーダー候補だったからⅦ組の担当教官であるあたしにも当然彼の詳しい情報が回っていたのよ………」

「まあ、色々と複雑な理由があってリィン君のⅦ組―――トールズ士官学院への留学の話は結局白紙になってしまったんだけどね………本当なら君達には絶対に知って欲しくなかったんだよ………」

「やっぱり殿下達がリィン特務准将の事について知っていたのは、”Ⅶ組”に関係していたからだったんですね………」

「もし、本当に貴方もトールズ士官学院に入学できていたら私達のクラスメイトになって、私達と一緒にエレボニアでの様々な出来事に関わっていたのね………」

「…………………」

「お兄様………」

ある事を思い出したマキアスに視線を向けられたサラ教官とオリヴァルト皇子はそれぞれ重々しい様子を纏って答え、複雑そうな表情をしたトワとアリサに視線を向けられたリィンは目を伏せて黙り込み、その様子をセレーネは心配そうな表情で見つめ、Ⅶ組の関係者達はトワ達のようにそれぞれ複雑そうな表情で黙り込んでリィンを見つめていた。

「……レン君、リィン君を”Ⅶ組”を直接指揮下に置く”特務部隊”の”総大将”にした理由の一つはもしかして私への嫌がらせも含まれているのかい?」

「うふふ、さすがにそれは勘ぐり過ぎよ。―――まあ、レンから言わせてもらえばリィンお兄さんがⅦ組―――トールズ士官学院に留学しなかったのは正解だったと思うわよ?何せ、トールズ士官学院に入学していたらリィンお兄さんはここまで出世しなかっただろうしねぇ?」

「それは………」

「レン、さすがに言い過ぎよ。」

「………ッ!」

「まあ、トールズ士官学院に入学してボク達と仲良くなったら、今回の戦争で出世する機会も無かった上ボク達と敵対するかもしれない事に悩んでいたかもしれないしね~。」

「ミリアムちゃん!時と場合を考えて発言して下さい!」

オリヴァルト皇子の疑問に対して小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの答えを聞いたジョルジュが複雑そうな表情で答えを濁している中プリネがレンに注意し、Ⅶ組を侮辱したレンをサラ教官は唇を噛みしめて睨み、静かな表情で呟いたミリアムにクレア大尉は声を上げて注意した。



「ハハ……実際その通りだから、反論できないね……――――リィン君、エレボニア皇家の一員として、今回の両帝国の戦争を和解へと導いた事……心から感謝している。本当にありがとう。」

「……恐縮です。ですが俺はエレボニア帝国の為ではなく、両親の為に今回の戦争を和解という形で終結させただけですから、殿下が俺に感謝する必要はございません。」

オリヴァルト皇子に感謝の言葉を述べられたリィンは謙遜した様子で答えた。

「それでも私達は感謝しているよ。君のお陰でエレボニアが滅ぶ事は避けられたのだからね………まあ、それはそれとして。今回の戦争の和解という形で終結したお陰で私と君は義理の兄弟になるのだから、改めてよろしくお願いするよ、我が妹の未来の夫にして私の未来の弟君♪」

「そ、それは………」

「そ、そう言えばリィンさんは将来アルフィン皇女殿下の伴侶になる事が和解条約で決まっていましたね……」

「しかも”6人の婚約者”付きでね。」

いつもの調子に戻って自分に話しかけたオリヴァルト皇子の言葉にリィンは表情を引き攣らせて答えを濁し、その場にいる多くの者達が冷や汗をかいて脱力している中リィンがアルフィン皇女の結婚相手である事を思い出したエマは困った表情をし、セリーヌは呆れた表情でリィンを見つめた。

「…………」

「ア、アハハ………」

「クク、中々面白い性格をしている皇子だな。」

「え、ええ。噂以上の豪胆な性格をされている方ですね……」

「やれやれ……」

「やっぱ、オリビエはオリビエだね。こんな状況でもそんなふざけた態度をしているんだから。」

「エ、エヴリーヌさん。」

一方エリゼはジト目でリィンを見つめ、セレーネは苦笑し、笑いを噛み殺しているフォルデの感想にステラは冷や汗をかいて必死に言葉を探して答え、レーヴェと共に呆れているエヴリーヌの言葉を聞いたツーヤは冷や汗をかいた。



「うふふ、言い忘れていたけどリィンお兄さんは今回の戦争の手柄のお陰で、メンフィル帝国からリィンお兄さん個人に対してある”称号”を与えられたのよ?」

「レ、レン皇女殿下、わざわざその件まで言わなくてもいいと思われるのですが……」

「”称号”、ですか……?」

「……まさか。彼もエステル君の時のように”ロード”の称号を与えられたのかい?」

レンの説明にリィンが冷や汗をかいて指摘している中ジョルジュは不思議そうな表情で首を傾げ、ある事に気づいたオリヴァルト皇子は驚きの表情でレンに訊ねた。

「大正解♪――――”灰の君主(グレイロード)”の称号をメンフィル帝国はリィンお兄さんに授けたわ♪」

「な――――本当にリィン特務准将殿は”ロード”の称号まで授けられたのですか!?」

オリヴァルト皇子の疑問に答えたレンの答えを聞いたラウラは信じられない表情で声を上げ

「えっと……その”ロード”ってどういう意味なのかしら?ラウラは随分驚いているようだけど………」

「―――”ロード”とは爵位を持つ方の称号の一種であり”主”または”支配者”を意味する言葉でもあります。その事から、上流階級では”ロード”の称号を持つ方は王族同然の存在として扱われています。」

「なっ!?王族同然の存在として扱われているだって!?」

アリサの疑問に答えたシャロンの説明を聞いたマキアスはそれぞれ驚きの表情で声を上げた。



「おいおい……って事はメンフィルから”ロード”の称号を貰っているエステルも上流階級の中では相当上の存在だったのかよ………」

「正直信じたくはないけどそうなのでしょうね………ったく、よくあの娘は”ロード”の称号をあんなぞんざいに扱えるわよね……」

「?トヴァルさんと教官は他にも”ロード”という称号を持つ人と知り合いなのか?」

「二人が言っている人は多分遊撃士でありながら、貴族でもある”ブレイサーロード”の事だと思うよ~?」

「ええっ!?”ブレイサーロード”って言ったら……!」

「遊撃士にして自らの実力で貴族の爵位を手に入れたある意味反則的な存在にして、平民にとっては”六銃士”クラスに見られている権力者すら逆らう事ができない無敵の英雄だね。」

それぞれ疲れた表情で溜息を吐いているトヴァルとサラ教官の様子が気になったガイウスの疑問に答えたミリアムの答えを聞いたトワは驚き、フィーは真剣な表情で呟いた。

「凄いな…………自らの実力で貴族になったなんて………」

「”血統主義”のエレボニア帝国では考えられない事だね…………」

「”ブレイサーロード”と”ブレイサーロード”と同じように貴族の爵位を持っている”黄金の百合”にはボク達……というか”貴族派”と”革新派”の両方にとってとんでもなく厄介な存在だったんだよね~……何せ二人はメンフィルの後ろ盾があるから下手に手を出したら、メンフィルと敵対する事になるし。あの人達がいる間は”革新派”、”貴族派”共に煮え湯を飲まされたみたいだよ?あの人達は”市民を護る為”に平気でボク達の事情に突っ込んできて、邪魔したし。」

「お願いしますから、そういう事は言わないでください、ミリアムちゃん………」

「ハハ、彼女達のエレボニアでの活躍は私の耳にも届いていたが、”革新派”どころか”貴族派”にまで煮え湯を飲ませるなんてね。」

「父君の名声も考えると、まさに”英雄一家”ですな。」

ガイウスは驚き、ジョルジュは複雑そうな表情で呟き、ミリアムの言葉を聞いたその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中クレア大尉が疲れた表情で指摘し、オリヴァルト皇子とアルゼイド子爵は苦笑していた。



「――で?リィンに”ロード”の称号が与えられた事はわかったけど、”グレイロード”ってどういう意味よ。」

「セ、セリーヌ。」

「”グレイ”は”灰色”を意味する言葉ですが………」

セリーヌの疑問にエマは冷や汗をかき、クレア大尉は考え込みながら呟いた。

「その名の通りよ。グレイ―――”灰色”は白と黒が混ざった色。白と黒―――つまり今回の戦争で”優しさ”を示す”光”と”厳しさ”を示す”闇”、両方の側面を併せ持つ”ロード”であるリィンお兄さんに授ける称号としてピッタリでしょう?」

「それは…………」

レンの指摘にオリヴァルト皇子は複雑そうな表情をし

「それと確かユミルで”蒼の深淵”はリィンお兄さんが動かす事ができる”騎神”は”灰の騎神”と呼ばれている事を教えたそうね?その件も考えるとリィンお兄さんにつける称号に”灰色”は欠かせないでしょう♪」

「そういや、そんな事も言っていたな……」

「姉さんはユミルでリィンさんが起動できる”騎神”の情報まで教えたのですか………」

「ったく、自分が”導く”訳でもない癖に何でそんな情報まで与えたのかしら、ヴィータは。」

レンの説明を聞いたトヴァルは考え込み、エマは驚き、セリーヌは呆れた表情で呟いた。



「え、え~と………俺自身は今の軍位や称号は正直、分不相応だと思っているから正直気にしないでくれるとありがたいんだが………」

その時リィンは疲れた表情で自身の意志をアリサ達に伝えたが

「クスクス、今回の両帝国間の戦争を早期に和解という形で終結させた事でメンフィルとエレボニア、両方にとっての”英雄”さんが今の地位を”分不相応”だなんて、嫌味にしか聞こえないわよ、リィンお兄さ―――いえ、ロード=リィン♪」

レンは小悪魔な笑みを浮かべてリィンに指摘し、リィンをからかっているレンの様子にその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「う”っ!お願いしますから、俺の事をその呼び方で呼ぶのは勘弁してください、レン皇女殿下………」

「………私を引き取った件といい、マスターの思考はますます理解できません。」

「ハア……全くこの娘は。父上達に育てられたのに、何故あんな性格になったのでしょうね………」

「フフ、ですがレン皇女殿下の仰っている事も強ち間違ってはいませんね。」

一方レンの指摘に唸り声をあげた後疲れた表情で答えたリィンの様子を見たアルティナはジト目で呟き、リィンをからかっているレンの様子に呆れているサフィナにセシリアは苦笑しながら指摘した。


「クスクス……それじゃあ、次は”副将”の出番よ、フォルデお兄さん、ステラお姉さん。」

「御意。という訳でステラ、まずはお前から自己紹介な。俺は基本オマケで”副将”としての主な仕事はお前に任せるつもりだしな。」

レンに促されたフォルデは答えた後ステラに先に自己紹介するように促し、フォルデのステラに向けた発言を聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ

「先輩も”副将”に命じられているのですから、ちゃんと”副将”としての仕事をして下さいよ、先輩……」

リィンは疲れた表情でフォルデに指摘した。

「フフ…………――――メンフィル帝国軍所属”特務部隊”の”副将”を務める事になったステラ・ディアメル特務大佐と申します。以後お見知りおきを。」

一方その様子を苦笑しながら見守っていたステラはアリサ達を見回して自己紹介をした。

「!?」

「”ディアメル”だって………?まさかとは思うが君は”ディアメル伯爵家”の関係者なのかい?」

ステラの自己紹介を聞いたマキアスは血相を変え、オリヴァルト皇子は眉を顰めた後驚きの表情でステラを見つめた。



「”ディアメル伯爵家”……?オリヴァルト皇子が知っているって事はもしかしてエレボニアの貴族?」

「うむ………――――”ディアメル伯爵家”。”四大名門”に次ぐエレボニアの名門貴族の一角だ。」

「ええっ!?し、”四大名門”に次ぐエレボニアの名門貴族!?」

オリヴァルト皇子の言葉を聞いて首を傾げているフィーの疑問に答えたラウラの答えを聞いたエリオットは驚き

「へ~、なるほどね~。そう言えば”ディアメル伯爵家”の末娘がメンフィルに亡命した可能性があるって推測されていたけど、ホントにメンフィルに亡命していたんだ~。」

「ミリアムちゃんはステラ特務大佐の事について、何か知っているのですか?」

興味ありげな様子でステラを見つめて呟いたミリアムの言葉を聞いたエマはミリアムに訊ねた。

「うん。”ディアメル伯爵家”も”貴族派”で、しかも”貴族派”の中でも”四大名門”に次ぐ有力貴族だから、当然”情報局”も”ディアメル伯爵家”の家族構成とかも詳しく調べたんだけどね~。3年前に末娘であるステラ・ディアメルが行方不明になっていたんだ~。」

「ゆ、”行方不明”って………!」

「?何故その”ステラ・ディアメル”という人物が行方不明になったのに、メンフィル帝国に亡命したとミリアム達は推測していたんだ?」

ミリアムの説明を聞いたアリサは信じられない表情をし、ある事が気になったガイウスは自身の疑問を口にした。



「………ステラ嬢の足取りを追って行った所、彼女の足取りはリベール王国の”ロレント市”から出た所で消えた為、ステラ嬢はロレントの郊外にあるメンフィル帝国の大使館を訪問し、異世界にあるメンフィル帝国の本国に亡命したと推測されていたのです。」

「そういや、リベール王国にある各国の大使館の中でも、唯一メンフィルの大使館だけは王都(グランセル)じゃなく、リベール王国の中でも辺境であるロレント地方にあったな………」

「ええ……エステル達の話によるとメンフィルの大使館がある場所に異世界とゼムリア大陸が繋がる転移門とやらがあるから、メンフィルはその転移門を管理する為にロレントに大使館を作ったとの事よ。」

「なるほどね………要するにメンフィルは世界同士を繋ぐ転移門を独占する為に、ロレントに大使館を作ったのね。」

クレア大尉の説明を聞いてある事に気づいたトヴァルの説明に続くようにサラは答え、トヴァルとサラ教官の話を聞いてある事を察したセリーヌは目を細めてレンを見つめた。

「うふふ、最初にゼムリア大陸に繋がる転移門を見つけたのはメンフィルなのだから当然の権利でしょう?――――話を戻すけど、ステラお姉さんはそっちの情報通り、元エレボニア貴族である”ディアメル伯爵家”の令嬢で、3年前にロレントにあるメンフィル大使館を訪れてパパにメンフィルへの亡命とメンフィル軍への入隊の嘆願をしたのよ。で、その結果ステラお姉さんは色々な審査を受けて亡命の嘆願を受理してもらった後、本国にあるメンフィルの帝都―――ミルスにて訓練兵として色々な事を学んだ後リフィアお姉様の親衛隊に配属されて、今に至るって訳♪」

「ええっ!?く、訓練兵からいきなり皇族―――それもメンフィル帝国の跡継ぎであられるリフィア皇女殿下の親衛隊に配属されたんですか!?」

「そんな普通に考えたらありえない抜擢がされたのだから、彼女は相当優秀なんだろうね………」

「ハハ………やっぱりリウイ陛下も彼女の事を知っていたのか………ちなみにリウイ陛下―――いや、メンフィル帝国は何故ステラ嬢の事についてエレボニア帝国に何も教えてくれなかったんだい?彼女はエレボニアの貴族―――それも”四大名門”に次ぐ名門貴族の令嬢なのだから、せめて行方不明になっていた彼女の事について教えて欲しかったのだが………」

レンの説明を聞いたトワは驚き、ジョルジュは複雑そうな表情でステラを見つめ、オリヴァルト皇子は疲れた表情で呟いた後レンに訊ねた。



「メンフィルは”全ての種族の共存”―――つまりは”光”と”闇”、両陣営の共存を謳っているから、その関係で何らかの理由で祖国にいられなくなった”訳あり”の人達もメンフィルに亡命する事は割とよくある事なのよ。で、その亡命してきた”訳あり”の人達も”メンフィルの民”になるのだからメンフィルは”国として”当然その人達を守る義務が発生するのだから、貴族の令嬢でありながら祖国や家族を捨ててまで亡命する程の”訳あり”の人物の一人であるステラお姉さんの事をエレボニアに教えてあげる訳がないでしょう?もし、エレボニアにステラお姉さんの事を教えちゃったら、ステラお姉さんの実家がステラお姉さんを連れ戻す為に全てを捨ててまで、メンフィルに亡命して新たな生活を送っているステラお姉さんの人生を滅茶苦茶にするかもしれなかったのだし。」

「それは……………」

「……何故そなたは名門貴族の令嬢と言う平民達や下級貴族達と比べれば恵まれている立場でありながら、故郷や家族を捨て、メンフィル帝国に亡命したのだ?」

レンの正論に反論できないオリヴァルト皇子が複雑そうな表情で答えを濁している中アルゼイド子爵は静かな表情でステラに訊ねた。

「”恵まれている”……ですか。確かに平民や下級貴族の方達からすれば、私の実家や”四大名門”のような上級貴族の生活は恵まれているように見えるしょうね。――――その代償に多くの者達が”名門貴族”という自負によって、人が持つべき大切な心を忘れ、欲深い存在へとなっている事も知らずに。」

「それは一体どういう事なんですか……?」

「………………」

アルゼイド子爵の問いかけに対して答えたステラの答えが気になったジョルジュは不安そうな表情でステラに訊ね、ステラの答えを聞いて心当たりを思い出したマキアスは複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「……これ以上は私達”特務部隊”の仲間でもない今の貴方方に話すつもりはありません。―――ただ、これだけは言っておきます。私は祖国や家族を捨てた事に未練はありません。今の私はメンフィル帝国の騎士の一人であり、私の忠誠は当然メンフィル皇家である”マーシルン家”に捧げています。」

「ハハ………頭で理解はしていても、正面からハッキリとそんな事を言われるなんて、結構グサッとくるね……」

「エレボニア皇族のオリヴァルト殿下の前で堂々とエレボニアを捨てた事に未練がない事や、忠誠はメンフィル皇家に捧げている事を言うなんて、とんでもなく肝が座ったお嬢さんだな………」

「……………」

ステラの答えを聞いたオリヴァルト皇子とトヴァルは疲れた表情で溜息を吐き、マキアスは複雑そうな表情でステラを見つめていた。



「ちなみにステラお姉さんはリィンお兄さん同様、今回の戦争で手柄をあげたから、褒美としてステラお姉さんをメンフィル帝国の貴族にしてあげる事になってね………将来はステラお姉さんの希望通り元エレボニア帝国の領地であるケルディック地方の領主に任命される事が内定しているわ。」

「ええっ!?ケ、ケルディックの!?」

「しかも”元エレボニア帝国の領地であるケルディックの領主になる事が彼女の希望”との事だが……何故貴女は元エレボニア帝国の領主になる事を希望したんだ?」

レンの説明を聞いたアリサが驚いている中ガイウスは不思議そうな表情で首を傾げてステラに問いかけた。

「例え実家と縁を切っても、私が貴族の家に生まれた娘である事は事実ですから”貴族の義務(ノブレスオブリージュ)”までは捨ててはいません。そして私がメンフィル帝国に亡命するまで生きて来れたのは民達が治めてくれた税でしたから、貴族の家に生まれた娘として……民達から受けた恩に報いる為に元エレボニアの民達が豊かで平和な生活を送れるようにしてあげたいと思い、希望しました。」

「”貴族の義務(ノブレスオブリージュ)”……ユーシスがいつも口にしている言葉だね。」

「ええ………若輩でありながら皇族の親衛隊に抜擢される程優秀かつ実家や故郷を捨ててもなお、エレボニアの民達を大切にする心を持つステラ様が他国に亡命した事は、エレボニアとしても痛い話でしょうね……」

「シャロンッ!」

「ハハ、実際その通りだから、反論できないね…………」

「殿下………」

ステラの答えを聞いて静かな表情で呟いたフィーの言葉に頷いたシャロンの話を聞いたアリサは声を上げてシャロンを睨み、疲れた表情で肩を落としている様子のオリヴァルト皇子をアルゼイド子爵は心配そうな表情で見つめていた。



「そんじゃ次は俺の番か。――――俺の名はフォルデ。フォルデ・ヴィント特務大佐だ。ステラと同じく特務部隊の”副将”を務める事になった。もしお前達が俺達の指揮下に入るんだったら、メンフィル軍の指揮下だからと言ってリィン達もそうだが、俺も細かい事やどうでもいい事に対して五月蠅く言うつもりはないから、お互い気楽にいこうぜ。」

ステラの自己紹介が一通り終わった事を悟ったフォルデは自己紹介をし、フォルデの自己紹介の仕方にその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて脱力した。

「フフ、フォルデ先輩らしい自己紹介ですね。」

「お願いしますから、自己紹介くらいまともにして下さいよ、先輩……」

「ハア……リィンとステラの成長を考えるとまさに”反面教師”ね……」

我に返ったステラは苦笑し、リィンは疲れた表情で指摘し、セシリアは呆れた表情で溜息を吐いた。

「”先輩”………?フォルデ特務大佐はリィン特務准将とステラ特務大佐とどういう関係なんだ?」

一方ある事が気になったガイウスは不思議そうな表情でリィン達に訊ねた。

「メンフィル軍は訓練兵を指導する方法として、まずグループごとに指導する担当教官が存在して、更にそのグループ内で二人一組のペアを組ませて、ベアごとに既に一人前の軍人として務めているメンフィル帝国軍の人達が指導する事になっているのよ。で、フォルデお兄さんは訓練兵時代ペアになったリィンお兄さんとステラお姉さんを直接指導する”先輩”として二人を指導していたのよ。」

「メンフィル軍の新兵にはそのような訓練方法があるのですか………」

「なるほどね………指導する人数を絞れば、指導する内容も濃密にできる上現役の軍人からも指導内容を自分のものにする為の”コツ”とかも直接教えて貰えるから、合理的な指導方法ね。」

レンの説明を聞いたクレア大尉とサラはそれぞれ真剣な表情で考え込んでいた。



「ま、俺の場合後輩たちが二人とも優秀なお陰で、他の連中と違って楽ができたけどな♪」

親しみのある笑顔を浮かべて答えたフォルデの答えを聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて脱力し

(………何だかどこかの誰かさんを思い浮かべるような性格をしているようだね、フォルデ特務大佐は……)

(うん………(クロウ君………))

寂し気な笑みを浮かべているジョルジュの小声の指摘にトワは辛そうな表情でクロウの顔を思い浮かべて頷いた。

「うふふ、ちなみにフォルデお兄さんも今回の戦争で手柄をあげたのだけど………何とその手柄はアルフィン皇女の捕縛よ♪」

「何だと!?」

「そなたがアルフィン皇女殿下を………」

小悪魔な笑みを浮かべて答えたレンの説明を聞いたアリサ達がそれぞれ血相を変えている中トヴァルは驚きの声を上げ、アルゼイド子爵は真剣な表情でフォルデを見つめた。



「やれやれ………別に俺は皇女さんを傷つけていない所か、指一本も触れてねぇんだから、そんな大人数で睨まないでくれますかね。」

アリサ達に注目されたフォルデは疲れた表情で答え

「”指一本も触れてない”って言っているけど、一体どうやってアルフィン皇女を捕縛したの~?」

「ミリアムちゃん!」

ミリアムのフォルデに対する疑問を聞いたクレア大尉は声を上げた。

「ん?そんなに難しくない事だぜ。味方に手強い連中を始末してもらった後、貴族連合軍の兵達の中に紛れ込んでいた俺が残った貴族連合軍の兵を始末してアルフィン皇女に武器を突き付けて、投降を促しただけさ。」

「貴族連合軍の兵達の中に紛れ込んでいたって………」

「うふふ、エレボニアとの戦争を決定した後メンフィルはエレボニアに多くの諜報兵達を投入して、その諜報兵達に貴族連合軍の兵達を暗殺してもらった後メンフィル軍の兵達がその暗殺された兵達と入れ替わっていたのよ♪」

フォルデの説明の中に出て来たある言葉が気になって不安そうな表情をしているエリオットにレンが説明した。

「ええっ!?」

「なるほど……エレボニア帝国に戦争を仕掛けて日が浅いにも関わらず、メンフィル帝国が皇女殿下を含めた”アルノール皇家”の方々の居場所を掴めたのは、貴族連合軍に自国の兵達を紛れ込ませて貴族連合軍内部での情報収集を行わせていたからでしょうね。」

「そんな古臭い諜報活動の仕方、まさに”獅子戦役”みたいな遥か昔にされていた諜報活動じゃない……」

「メンフィル帝国軍の諜報部隊に暗殺された貴族連合軍の兵達の数はどれだけいるのかしらね………」

レンの説明を聞いたアリサは驚き、シャロンは納得した様子で呟き、セリーヌは呆れた表情で溜息を吐き、エマは辛そうな表情で呟いた。

「ちなみにフォルデお兄さんもステラお姉さん同様、メンフィル帝国の貴族―――”男爵”になる事が内定していて、治める領地はオーロックス地方だから、特に”アルゼイド家”の人達は今の内にリィンお兄さんもそうだけど、ステラお姉さんやフォルデお兄さんとも仲良くなった方がいいと思うわよ♪将来クロイツェン州の大半を統括する立場であるリィンお兄さんは当然として、レグラム地方に比較的近いケルディック地方やオーロックス地方の領主達であるステラお姉さんやフォルデお兄さんとも仲良くなっておいた方が、後々のレグラムの為になるでしょう?」

「それは……………」

「ラウラ………」

「…………………」

レンの指摘に複雑そうな表情で答えを濁している様子のラウラをフィーは心配そうな表情で見つめ、アルゼイド子爵は目を伏せて黙り込んでいた。




 
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