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ユキアンのネタ倉庫 ハイスクールD×D

作者:ユキアン
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ハイスクールD×D 革新のリアン 1

 
前書き
ハイスクールD×Dを読んでいて、というかラノベ全般を読んでいて思うのが、もっと上層部が真面目に働いていたらもっとスマートに問題が片付いているんじゃないの?ですね。

ハイスクールD×Dでは四大魔王様、政治センスがなさすぎな気がして。普通、旧魔王派に監視位付けますよね?不満を持ってるのは分かってるんですから。なあなあで済ませた結果が禍の団行きですし、その後の対応もしてたのかな?資産の凍結とか、領地の没収とか。

あと、眷属だけが戦力って絶対に無駄ですよね。ある程度は魔術を使えた方が良いに決まっているのに。戦いは数だと昔から言いますから。

そんな不満な点を色々付いていきたいです。 

 




転生って信じるか?オレは信じるしかない。記憶を持ったまま生まれ変わっちまったからな。まあ、それは良いんだが、悪魔に転生ってどういうことよ?

グレモリー家の次男として産まれたオレなのだが、オレが次期当主らしい。赤ん坊のオレだが、周りが話していることを理解できるからな。何でもオレの兄は魔王らしい。その影響で家を継げないらしい。しかも大分年が離れているようだ。継承者争いなんてせずにすんでよかったよ。そんなことになったら一目散に逃げ出すぜ。

前世からして軍師・呪術師タイプのオレに戦闘なんて不可能だ。しかも、汚れ仕事専門の傭兵旅団所属のだ。真っ向勝負なんてやってられるか。まあ、生まれが卑しいからって理由だけで汚れ仕事専門に結成された騎士団だったんだけどな。上が喧嘩を売りすぎたせいで国が崩壊。巻き込まれるのを避けて傭兵になっちまっただけなんだがな。

今回は貴族の次期当主だから色々楽だわ。汚れ仕事に慣れたとは言え、騎士としての誇りを捨てたわけではなかったから辛いのなんのって。だから今回は楽でいいわ。

成長するに伴い行動範囲が伸び、追加の情報を得られた。ここは冥界で、他に人間界に天界があり、次元の狭間も存在し、種族は悪魔、天使、堕天使、妖怪、吸血鬼、ドラゴン、etcetc。大分入り乱れている上に種族ごとにも派閥があってかなり複雑なことになっている。一応相関図的な物を作ってみたけど、文字の大きさを2歳のオレの大きさに合わせて書いているのにA1サイズ2枚分に広がっている。これが子供のオレで集められる範囲でこれだとすると大分酷いことになっている。

前世の文字で書いてるから落書きにしか見えないだろうけど、相関図を見ながら頭を抱えているオレを使用人が生暖かい目で見守っているので復帰する。

とりあえず悪魔関係だけで纏めて考察を、纏め、いや待ってよ、嘘だろう。おいおいおいおい、待て待て待て待て。旧魔王派?力づくで現政権が成立?こんな特大の地雷が埋まってるのかよ!?仕事してるの兄上様!?

簡単な歴史書を見る限り、今の四大魔王様方の治世は結構経ってる。おい、なんでこんな不穏分子に対して対策を一切してないんだよ!!オレが旧魔王派の当事者だったら既に現政権を転覆させれたぞ!!全然楽に暮らせるようなものじゃないぞ!!お願いだからオレがある程度成長するまでは暴発してくれるなよ。

えっ、どうかしたのマリータ(側付きのメイド)?兄上様の同僚のオレと同い年の妹さんが遊びに来る?今それどころじゃないんだけど、付き合い上は必須か。ちょっと折りたたむのを手伝って。本はそのままでいいから。抱きまくら兼ベッドみたいになってるぬいぐるみはどうするかだって?それもそのままに決まってるだろうが。それを片付けたら殺風景な部屋になるだろうが。あとはトランプとお菓子とジュースを用意しておいて。遊ばせて満腹にでもさせればすぐに沈むだろう。考えがゲスい?それが大人のやり方というものだ。あっ、オレ子供だった。何処でそんな知識を手に入れたって?父上の書斎の一番左の棚の辞書の左から三番目の本から。中身が辞書じゃなくて小説で、うん?どうかしたの、マリータ。母上に報告に行ってくるって?別に普通じゃないのか?兄上の部屋にも似たようなものがあったが。





兄上様の同僚のセラフォルー・レヴィアタン様の妹であるソーナ・シトリーとは予定通り手品とお菓子で満足させてぬいぐるみの海に沈めたことで仲良くはなった。なんだかんだでよく遊びに来るので手品のネタを準備するのに苦労している。このままではまずいと思い、他の者を用意しようとするのだが、冥界にはあまり娯楽と呼べるものが少ない。仕方ないので前世のボードゲームを自作して用意する。

何?似たようなものが人間界にある?というか豊富にある?よし、買いに行こう。まとめて買って手品の練習をせずに済むように。父上達に頼み、マリータに連れられて人間界に来た。う〜む、オレの前世はこの世界で言うところのWW2位の科学技術と魔術技術が色々と混ざっていたから、一概にどうとは言えないが結構発展してるんだな。そんなことを思いながらマリータに連れられて黄色い潜水艦の看板の店に入る。ガラスのショーケースにはトレーディングカードのシングル販売が行われているようだ。そちらには用がないのでお目当てのカード・ボードゲームコーナーに向かう。

小箱は直感で、大箱はじっくりと吟味する。中箱が一番判断に困るんだよな。悩んでいた所に店員さんから声をかけられる。

「僕、こういうゲームに興味がある?」

「うん、好きではあるよ」

「今、試遊会をやってるんだけど参加してみない?色んな人が集まって遊んでいるんだけど、どう?」

興味はあるんだが、大丈夫か?

「あ〜、マリータ?」

「旦那様と奥様が心配なさるかもしれませんが、1時間程度なら」

このやり取りに何かを感じ取ったのか、店員さんが少し離れてマリータと話す。マリータが上手く説明してくれたのか、店員さんに誘導されて試遊会が行われているフリースペースに向かう。試遊会を取り仕切っているオジさんに挨拶をして気になっていた中箱のゲームをやってみたいと言えば、参加者の一人が貸してくれたので何人かでプレイする。サイコロを振って出目によって自分の持っている物件からの上がりを手に入れて特定の物件を4つで購入することで勝者になれる。うむ、買いだな。

他にオススメのゲームを聞いてみればトランプのように複数のゲームが楽しめるカードを紹介された。とりあえず一番簡単なルールでプレイする。全員がカードを1枚持ち、合図と同時に表向ける。カードには複数のマークが描かれており、他の参加者のカードに自分の持っているカードと同じマークが一つだけ存在している。それを見つけて上に重ねるように押し付けるゲームだ。人数が多いほうが楽しめるな。これも買い。

さらにゲーム的には完成度が高いけど、何故そんな所に力を入れたのがよくわからない通称バナナ建築。建築会社の社長としてどんどん建物を立てるのだが、建設の際に手札を消費する。その手札は建築物の設計図と、コスト用のバナナカードの2種類である。そしてバナナカードに書かれているバナナは写真なのだが、全てが絵違いという何故そんな所に力を入れたのか分からないゲームだった。ゲームとしての完成度も高いので買い。

それからちょっと変わったカルタ。読み札も取り札も漫画の一コマのような絵がかかれており、吹き出しは空欄となっている。読み手がその一コマに適している言葉を読み上げて取るというカルタなのだ。持っていて損はないな。

時間が押しているために礼を告げると月に何回かやっているから時間のある時に遊びに来るといいと言われてチラシを貰った。皆、気の良い人達ばかりだった。再来週の集まりではオレと年の近い子も来るそうだ。ふむ、ソーナを誘ってみるか。







ボードゲームの試遊会に参加するようになって3年、そろそろ魔術に関しての勉強をするということで座学かなと思ったら、いきなり実践からだった。えっ、母上、どういうこと?魔力は感じられるけど、手に集めて、体内から押し出すようにって。いや、それぐらいは普通にできるけど、なんでそんなに褒めるの?えっ、あとは魔力を自在に扱えるようになりなさいって、それだけ?

「マリータ!!冥界の本屋に行くぞ!!」

「どのような本をお求めでしょうか?」

「種類の多い、専門書なんかも手に入るデカイ本屋だ」

「かしこまりました」

マリータと共に1週間ほど冥界一の本屋を捜索したが、魔術書などが見つからなかった。垂れ流しの魔力を強引に属性変換なんかをして操作するだけ。悪魔には馬鹿しかいないのか!?やばい、市井の教育状況とかめちゃくちゃ気になってきた。教科書類を見てみれば人間界の物と変わらない。文字が冥界語なだけでな。

駄目だ。酷すぎる。下克上をするしかない。衰退する一方じゃないかよ。純粋悪魔とその配下だけが戦力とか。しかも魔術の研究が盛んに行われているわけでもなく、血による特殊魔術がメインとか。こんなんじゃあもう一度大戦が起これば滅ぼされる。頭の固い老害どもは全部排除しないと。

とりあえず魔術書は自作しよう。前世の分をこっちに合うように変換して初級以下の魔術書も、それこそ入門編の魔術書から作らないと。

「ああ、もう、オレがなんでこんなことを」

実験を繰り返して適応化を施して効率を図った上で簡易性も上げる。連日連夜の実験と調整にマリータも突き合わせて心身共にボロボロになりながら入門編を書き終えて初級編の作成に取り掛かる。マリータは限界で倒れているが、オレは莫大な魔力を惜しげもなくつぎ込んで肉体を強化して疲労を誤魔化している。正直言って子供の身体にかなりの負担をかけてしまっているが、このツケはできるだけ早めに払っておこなければ危険だ。






歳の離れた弟のリアンがおかしな行動を取っていると両親に相談されて、久しぶりにリアンの部屋に入れば、床に側付きのメイドであるマリータが倒れており、リアンも机に突っ伏している。慌てて二人を部屋から担ぎ出させ、医師に診察させた所、過労だと診断された。二人共全く起きる気配がないので改めて部屋を確認する。

慌てていたためにちゃんと部屋を見ていなかったのだが、部屋中紙だらけで見たこともない魔法陣が描かれている物や、魔術の手引書と思われるものもある。共通しているのは魔術関連であるということだ。

「グレイフィア、どう思う?」

「豹変したのが魔術の使い方を教えてからですし、魔術に魅入られたのでしょうか?」

「それにしては、明らかに入門のような、いや、なんだこれは?」

「どうかしましたか?」

「全く新しい概念の魔術理論が書かれている。しかも既存の物より効率が良い。まるで何百年と改良が続けられたような整然さが見られる。そんなことはありえない。これがあれば、市井の底上げになる!!直接的な戦闘は無理だろうけど、補助には使える。いや、そんなことはどうでもいい。リアンがコレを書き上げたのか?」

昔から利発的な弟だとは思っていたが、今は恐ろしさすら感じる。たった50枚ほどの紙でこれだ。他にも何かがある可能性が高い。

「グレイフィア、口の固い者だけを集めて部屋をひっくり返す!!何が隠れているかわからないぞ!!」

急ぎ口の固い者をかき集めて部屋の捜索を始める。見つかったのは何度も実証を繰り返したのか、まとめられた資料に記載されているものよりも複雑な術式に関する資料が多く発見された。丸められた紙には、簡易化していく過程での失敗作が書かれている。これらは全て複写して時系列順に纏める。

そんな資料の中から一際変わった物が見つかった。

一定の規則性を持った子供の落書き。そう見えるが矢印から何かの相関図と見て取れるA1が2枚分の紙が見つかった。

「何だと思う?忌憚無く意見を出して欲しい」

「何らかの相関図でしょうか?紙自体の劣化から2、3年前の物かと。ですが、所々にインクが新しい部分もあります」

「おそらくですが、この部分は数字だと思われます。同じような物が多く見られますから。日本語の漢数字に近い気がします」

他にも色々な意見が出たが、これが何なのかまでは分からなかった。ただ、僕の直感がこれを危険なものだと警鐘を鳴らし続けている。念のためにこちらも複写させておく。これ以上は何も出てこないだろう。

結局その日はリアンもマリータも起きてこなかったために話は聞けなかったが、アジュカに資料を精査してもらう必要性があったので良かったとも言える。アジュカには既に連絡を入れてあったので深夜だが複写した資料を持ち込んで精査を依頼した。部屋を借りて仮眠を取り、翌日、徹夜で資料を確認したアジュカに途中経過を聞いた。

「はっきり言おう。簡易化前の初期段階の術式の完成度は異常の一言だ。こっちの入門の手引と思われる資料と読み比べ、そして正しく理解できるのなら誰もが魔術を扱えたのだろうな」

「扱えた?」

「順を追って説明しよう。まずは時系列順に並べられた資料だが、順番が間違っていた。まずは複雑化し、簡易化され、また複雑化し最終的に手引書の物となる」

「何故そんなことになるんだい?簡易化を求めていたはずだ。それが複雑化するのはおかしいんじゃないかい?」

「そうだな。普通ならそうだ、だから分からなくなる。前半部の術式では一切魔術は使えないことがな」

「どういうことだい?」

「前半部は、おそらくだが起点になった術式が効率化し過ぎで拡張性がなくなっていたのだろう。そこに付け足して複雑化することで拡張し、それを簡易化と共に効力なども下げていったのだろう」

「それはまだ分かる。だが、何故もう一度複雑化するのかが分からない」

「言ったはずだ。前半部の術式では何も起こらない。だが、この2度目の複雑化後からの術式は発動する。この違いが何か分かるか?」

「前半部が不良品、な訳がないか」

「最初はそう思ったのだがな初級編の方を読んで理解出来た。簡単なことだ。前半部の術式は悪魔が使う魔力とは全く別の魔力で作動するんだよ。初級編の方には大気中に存在する魔力をマナと名付けてるがな。入門には悪魔の魔力で作動する術式、初級からはマナで作動する術式、おそらく中級以降は合一させる術式だろうな。いや、どちらかと言えば触媒を利用する形か。結論を言おう、こいつを作ったのは天才なんかじゃない。一流ではあろうが、知っていたことを応用させただけだ。つまり、何故こんな完成度の高いにも関わらず魔王でも知らないような術式を知っているか、それが問題だ」

「……そうか」

「相関図の方もおおよその予想はついたぞ」

「そちらは何だったんだい?」

「種族に関する相関図。大きな括りではあるが、間違いではないだろう。一般的に公開されている知識から言えばかなり丁寧に調べられているのだろうな」

「そうか、もっとものすごいことが書かれているのかと思っていたんだけど、僕の勘も当てにならないね」

「……なるほどな。サーゼクスはそう思えたか。あの術式を書いた者がこれを書いたのだろう?何を思ったのか、興味が無いといえるのか?」

「それ、は、どういう?」

「この相関図のこの部分、一番記述が多い部分、これが悪魔を示す部分だが、よく見ると似たような部分があるだろう?」

「まさか、旧魔王派!?」

「だろうな。新しく記入されているのは此処が一番多い。どういう手段かは分からないが集中的に調べている。危機感を持っているとも言える。何を考えたか大体の意図は読み取れた。サーゼクスより政治センスがあるぞ。確かリアンと言ったか?」

「さすがに誰が書いたのか分かるか。そうだけど、リアンが何を見たのか分かるのかい?」

「少し考えれば分かるだろう?リアンは旧魔王派を排除された後のことを考えているのだろうな。現時点でも残っている旧家の2割強が旧魔王派だ。これら全てを排除して、それからの悪魔勢力の立て直し。そのための促成栽培用の術式。最悪、下克上まで考えてるんだろうな。そん時は下手な芝居でもして魔王の座を明け渡すさ。上手くやるだろうよ。やる気の無い奴らがやるより、能力が無い奴らがやるよりな」

現魔王(やる気の無い奴ら)旧魔王派(能力が無い奴ら)がやるよりもか。子供にすら心配されている、いや、頼りにならないと思われているか。情けなくて首を吊りたくなるよ。








「移動フェイズ、3、5、5、6、カウンターが一個進んで平地、森、森、森でリソースを3回復させて挑戦。戦闘で2成功が条件。共闘はする?」

「しますよ。よっと、3、3、3、4の1成功っと」

「よっ、1、4、6でクリティカル分が3の2成功。よって達成っと。経験値が1入って、お宝は寝込みを襲うっと、1点ダメージっと」

「順調ですね。私の番ですね。移動フェイズ6、6、6!?」

「ちょっ、バカ!!なんて目を出してやがる」

「仕方ないでしょう!!カウンターが3つ進んでアクションが2回。1回目、街が燃える。2回目、出目が最も低いキャラのリソースが0」

「マリータ、意地でもデカイ目を出せ。ソーナ、1を出せよ。ほっ、って2!?」

「リアン様がそんな調子でどうするんですか。4ですね」

「すみません、また6です」

「と言うわけで、オレの回復したばかりのリソースが全部失われるっと」

その後もゲームは続き、ソーナが使っていたグラディエーターが骨付き肉で体力が全快だったのにいきなり丸呑みで死んで、見事ドラゴンに全滅させられてしまった。

「あ〜、今日は駄目だな。まあ、こんな日もあるか」

「ゲーム自体の完成度も高くて面白いのですが、リアルすぎてドラゴンに勝てませんね」

「試遊会のメンバーでもドラゴンを狩ったことがある奴が一人もいないものな。まあ、追い詰めるまでは結構行くんだけどな」

遊んでいたボードゲームを片付けながら感想を言い合う。

「それにしてもこのメタルフィギュアを見てると悪魔の駒が安物に見えるな」

「それはそうですけど、量産品と、いえ、悪魔の駒も量産品でしたね」

「そういうこと」

消灯部を卒業して貰った悪魔のコマが入ったケースを指先で回転させながら遊ぶ。既に3個使ってしまったのでバランスが悪いために落としてしまう。

「はぁ、貴重な物で遊ばない」

ソーナに溜息を付かれて拾われる。

「ぶっちゃけると、オレはこいつが気に食わない。気に食わないが利用できるから使っているのが現状だ」

「リアン?」

最初は面倒くさい相手だと思っていた。恥ずかしがっている幼女の相手はおっさんには難しかったからな。だけど、今は信頼できる同族の友人だと思っている。共に上が魔王で苦労している点なんかもな。

「ソーナのことは信用も信頼もしている。だからこそ、オレの7年の成果を見せよう」

マリータに持ってこさせたのは昔からある相関図の最新バージョンと旧魔王派、現魔王府の動き、そこから導き出される未来予想図。状況は7年前より悪化している。暫くの間、ソーナが資料に目を通すだけの静かな時間が流れる。だが、その空気はどんどん硬くなる。

「……これは、リアンが?」

「そう。小遣いから色々人間界の方で増やして独自のコネなんかも作って新鮮さはともかく精度はお墨付きだ。はっきり言おう、今の四大魔王様にも旧魔王派にも任せておけば衰退する一方だ。だから、オレは王を目指す。その過程で犠牲を生んででも、9のために1を犠牲にしてでも。その1に兄上達が含まれたとしても」

「なっ、本気で言っているのですか!?」

「本気だよ。自分の種族が、衰退し滅んでいく姿なんてオレは見たくない」

「だからと言って、家族までも犠牲にするというのですか!!それでは誰も着いて来ません!!」

「着いてくる必要はない。犠牲となったものを足場として、その他全てをオレが引き上げる!!」

「そんな独りよがりで振り回される者の気持ちを理解しないでどうするんですか!!」

「そんなことを気にしている余裕が無い位に追い詰められてるんだよ!!その事に気づいている者すらどれだけいるかも分からないんだぞ!!」

「それでも対話を忘れて力で推し進めようとするのは間違っています!!」

「コレ以上遅れれば、それこそ取り返しがつかなくなる!!間に合ったとしても、そのために3の犠牲が出るのなら意味なんてない!!」

「リアンの言う1の犠牲すらも救う手立てはあるはずです!!」

「ない!!ソーナは心を、善性を信じすぎている!!下の者にそれを求めるのは良い。だがな、上の者はそんなものを捨て去らなければ何も出来なくなる!!今の魔王様それが出来ない!!だからこんなことになっている!!」

ソーナにみせた資料を叩く。そこには旧家の3割弱が旧魔王派として脱税や人体実験などの違法行為を行いながら外部と手を組んで戦力を増強している証拠だ。この件は既に兄上に報告したが、その後、動いた様子はない。

「家の数だけで言えば3割弱だがな、領地の人口で見れば3割強。それだけの下級が巻き込まれる可能性があるんだぞ!!」

「犠牲を前提にするなんて絶対に間違っています!!」

「ゲームじゃないんだ、犠牲を前提になんてしたくないに決まってるだろうが!!だけどよ、駄目なんだよ。何もかもが足りない!!環境も時間も人材も力さえも足りない!!考えたんだよ、出来る限り、考えつく限り、賭けになるようなことまで!!でもな、もう被害は出ているんだ!!」

考えに考えた。前世のように汚い仕事をしたりすることも考えた。だけど、それでも

「分かるか、ソーナ、このオレの絶望が!!どうすることも、出来ないんだよ。今も、苦しんで、犠牲になっている奴らが、この瞬間にもいるんだ。腐っている奴らはいくらでもいて、今のオレの力じゃ何も出来ない。兄上から一定期間の間だけ、それも局所的な権限を与えられて、ようやく二人だけを、救うなんて言えない程度に悪化させずに済んだだけなんだよ」

悪魔の都合で人生を滅茶苦茶にされた猫趙の姉妹。姉の方は杜撰な捜査の所為で一時とは言えはぐれ認定され、妹の方は転生悪魔ですらないと言うのに周囲から姉の罪を被せられて私刑にされそうになって。

オレが兄上に妹の方を任された時点で、既に深い心の傷を負ってしまったのが見て取れた。兄上は妹の方を眷属にして守ってやれと言いたかったのだろう。その上から目線で守ってやるというのが耐えられずに捜査権を強引にもぎ取り、姉の主であった悪魔の屋敷を徹底的に捜査すれば簡単に犯罪の証拠が転がり出てくる。その中には拉致してきた人間を拷問して遊ぶための地下牢などもあり、まだ生きている少年がいた。生きているだけで心が死んでいた少年をオレは首を絞めて安らかに眠らせた。

その後も屋敷の使用人が自分たちの犯罪行為を曝露されるぐらいならと襲い掛かってきたのをマリータと共に殲滅し、罪を更に上乗せして、姉の方のはぐれ認定も解除させて、賠償金もふんだくって、それを姉妹に渡した。コレだけの額があれば一生を遊んで暮らせる。そう思っていた。

だが現実は厳しいものだった。一度疑いをかけられた以上、姉妹は敵視されていた。それこそ、オレが姉妹の戸籍なんかを改竄するために目を離していた隙に襲われていた。その襲撃者は杜撰な捜査をしていたために解雇された者が中心となっていた。駆けつけた時には既に遅く、妹の方が息を引き取ったばかりだった。

こんなことは言うべきではないはずなのに。後を追わせてやっても良かった。怒りと呪いを撒き散らせてやっても良かった。なのに、オレはそれを選べなかった。姉妹が過去の自分達に重なって見えてしまったから。だから渡してしまった、悪魔の駒を。悪魔へと転生する妹を見て、自分勝手さに胃の中の物を全て戻し、胃液だけになっても戻し続けた。転生したばかりで体調が優れないはずの妹にまで心配されるぐらいに。

「力が欲しいんだよ、多くを動かせるだけの権力と暴力が」

「リアン」

「ソーナ、お前の言っていることは正しいさ。正しいけど、それが絶対に達せれるわけでもない。オレのは夢も希望もないかもしれない。だが、現実的な物だ。どちらが正しいかなんて陳腐なものはない」

サイコロを回転させるように投げる。

「全てはサイコロと一緒だ。結果が全てだ。過程も大事だと言う奴が居るが、それは間違いだ。その過程もその時点での結果でしかない。過程によって結果が出ているのだし、結果があるから過程がある。何処までを見るかでそれが過程なのか結果なのかが違うだけだ。ソーナ、お前はお前の信じた道を進めばいい。オレはオレの信じた道を進む。アレだけ熱く語ったが、オレと同じ道を歩んでくれなんて言うつもりはない。ただ、オレが進む道はこんな道だって知っていて欲しかっただけだ」

サイコロの回転が止まる。出目は4。そのまましばらく無言が続き、しばらくしてソーナがサイコロを拾い上げて回転させるように投げる。

「私にはリアンが何を思い、何を決断したのかを全て理解することは出来ません。私達の意見は永久に平行線だと思います。お互いにぶつかりあうこともありましょう。ですが、向かう方向だけは同じだと信じています。私は私の道を行きます。貴方をこちらに引き込むつもりもありません。ですから競争です。何方がより遠くまで行けるか、勝負です」

サイコロの回転が止まる。出目は3。真逆の出目が出るか。ソーナは夢想を追う正道を、オレは現実を追う邪道を。ある意味で相応しい出目だ。










ソーナが帰った後の自室で、オレはマリータに膝枕をされながらソファーに寝転がっていた。

「よかったんですか、リアン様?リアン様ならソーナ様を納得させれるはずですが」

「良いんだよ、マリータ。夢を追うことは悪いことじゃない。夢を追って現実とすり合わせないのが問題なんだ」

「そういうことじゃなくて、お好きでしたのでしょう?」

マリータの言葉に胸が痛む。

「そうだな、ソーナのことは好きだ。だから、汚したくなかった。オレが進む道は血と汚泥に汚れた道だ。邪道ってのはそういう道なんだ。脅迫、買収、暗殺、粛清。正道じゃ扱ってはならない手段も扱える。無論、下手をこくような三流はすぐに破滅する道だがな」

その点、オレは慣れている。嫌というほどに。まあ、最後は破滅したから三流だな。足を洗って二流、最後まで生き抜ければ一流だ。

「では、黒歌様と白音様はどうされるのでしょうか?」

「表向きの行事にだけ参加させる。これから眷属になるやつも同じだ。例外はお前だけだ、マリータ。我が女王よ」

今世において最も信頼を置くマリータにオレは変異の女王の駒を受け取って貰った。これから先にオレがすることを全て明かした上で。その上でマリータは私を楽しませ続けてくれるならと受け取ってくれた。

「光栄です、リアン様」

「いずれは手元に眷属とは違う裏の直属部隊が欲しいな。宛がさっぱり無いけど」

「ですね。おそらくですが、悪魔で探すことが間違いだと思われます。それに表側でも協力者を得ないことには」

「表側には少しだけだが宛がある。そっちは任せて欲しい。マリータには当分、裏側で苦労を掛けると思う」

「その分、楽しませて頂けるのでしょう?」

「最終的には歴史の教科書に載るさ。悪名かもしれないがな」

「それはそれで楽しいでしょうね」

「ああ、そうだな。一括りにされるより、個人の名を歴史に刻み込む。楽しいことだよ。それが派手な行いによってなら尚良」

オレは裏方ばっかだったけどな。今世の立ち位置なら両方を兼任するのが一番だ。

「5年で足場を完全に固める」

「承知しました」



 
 

 
後書き
作中のボード・カードゲームは実在のものなので名前を伏せてあります。 
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