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ユキアンのネタ倉庫 ハイスクールD×D

作者:ユキアン
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ハイスクールD×D 革新のリアン2



「堕天使と人間のハーフねぇ」

ハインリヒが隣にいるオレと同じ年齢の少女の説明を聞きながら、じっくりと目を覗き込む。恨み、妬み、恐怖、不信、悲しみがごちゃ混ぜになりすぎている。このままではまともな答えも出せないだろう。ただ、流される存在になる。

「というわけでして、リアン様の眷属にどうかと」

「なるほどね。理解はした。彼女はオレの方で預かろう。マリータ、すまないが少し世話をしてやってくれ」

「かしこまりました。姫島様、こちらへ」

マリータに連れられて姫島朱乃が部屋から出た途端、嫌悪感を丸出しにする。

「ハインリヒ、オレが何故、お前ではなくマリータを眷属にしたのかがわからないらしいな」

「それはどういうことでしょうか?」

「気に食わんな。バラキエルと姫島家へのホットラインを懐に持ってるんだろうが。それを出せと言っている。プレゼンテーションが下手なんだよ、お前は。商品の扱いも下手だしな。2流と言ったところだ。だから、マリータを評価しているんだよ。ホットラインを置いて下がれ」

「……失礼します」

ハインリヒが置いていったバラキエルと姫島家へのホットラインのコードを手に取り、バラキエルに通信魔術を繋げる。映像に映るバラキエルは覇気を失っている。何処か諦めているようにも思える。

「はじめましてだ、バラキエル。オレはリアン・グレモリー。アンタの娘を保護することになったのでな、挨拶ぐらいはしておいたほうが良いと思って連絡を入れた」

『……そうか。その、朱乃はどうしてる』

「まだ1週間しか経っていない上に環境が変わり続けているからな。酷く混乱している。しばらくは接触しようとするな。ある程度落ち着くまで時間がかかるからな」

『どれぐらいだ?』

「さあな?コレばかりは何とも言えない。まあ、眷属にする気はない。出来ればそちらに帰してやりたいからな」

『なに?だが私は』

「奥方のことは大変気の毒だった。甘く見ていたことも原因だろう。だが、娘は生きている。生きていればやり直すことだって出来る。やり直す気がないのなら、オレの好きにさせてもらうが?血筋は良いからな。それに成長すれば奥方に似て美しくもなろう。使い用はいくらでもある。意味、分かるよな?」

『そんなことは絶対にさせない!!』

バラキエルに怒気と共に覇気が戻る。それを見て満足して首を縦に振る。

「よろしい。その覇気を忘れるな。手のひらから零れ落ちたものを思うのは悪いことではない。だが、そればかりに気を向けて手のひらに残ったものを見失うな。お前にはまだ残っているのだからな」

『あ、ああ、分かった』

「落ち着いたら連絡をするし、場もセッティングする。だが、再び後ろばかり振り返っているようなら好きに使わせてもらう。取り戻そうとしても手遅れにして使うからな。脅しだと思うなら、そう思えばいい」

実際にバラキエルが再び不抜けるようなら容赦なく利用させてもらう。心の壊し方なんて拷問で慣れているからな。心情的にやりたくはないが、やった方がメリットが有るならやる。

「それから身辺整理をしておけ。放っておいたからこのようなことになったのだからな」

『分かった。シェムハザ達に相談する。朱乃には手を出すなよ』

「出さないよ。オレは疑い深いんでな、会ったばかりの者に気を許すなど考えられないし、出自が出自だ。面倒事のほうが多い。それに、アレは女ではなく子供だ。全く興味が無いな」

正直言って食指が全く動かん。これは精神年齢の問題だろう。あと、姫島が心身共にボロボロだから余計にだな。










全く、悪魔は馬鹿ばかりだ。力にしか目を向けない。呆れるしかないな。

「ハインリヒ、オレは言ったはずだよな。プレゼンが下手だと、商品の扱いも下手だと。何も分かっていなかったようだな。2度までは許す。下がれ」

「……失礼します」

ハインリヒが部屋から出ると同時にマリータが口を開く。

「あれは理解していませんね」

「だろうな。さて、イザイヤだったか。とりあえずは座れ。本人の口からもこれまでのこと、これからのことを聞きたい。長くなっても構わん。マリータ、茶と菓子を。お前も座ると良い」

要約させずにその場面ではどう思ったのかなどを詳しく聞きながら2時間ほどを過ごす。

「なるほどな、お前がバカなのがよく分かった」

「なっ!?」

「本当ですね。何故そんな結論に至ったのか分かりません」

「どういうことですか!!」

「イザイヤ、お前を家族とも言える同士が出会えたのは何故だ」

「それは主の思し召しで」

「あ〜、宗教感はどうでもいい。それで言うならお前の不幸も神の思し召しになるだろうが。思考の停止は一番最低な行為だ。常に自分という物を持っていろ。外から公平な目で説明してやるよ」

「公平な目?」

これだから宗教にどっぷりと漬かってる奴らは嫌いなんだよ。狂信まで行ってないのが救いだな。神のためなら何だって許されると勘違いしている馬鹿が多いからな。非人道的なこととかも平気でやりやがる。

「結論から言えば怒りの矛先がおかしいんだよ。ちょっとだけ痛いぞ」

右手の中指に滅びの魔力をうっすらと纏わせてデコピンを食らわせる。何かの術式を破った感触と共に素早く退避してマリータがイザイヤにゴミ箱をもたせる。次の瞬間、イザイヤが胃の中の物を吐き出し続ける。落ち着くまで待ってやり、再び説明に戻る。

「今なら何がおかしいのか分かるだろう?」

「はい。なんで聖剣に恨みが向かったのか分からないです。今は頭の中がすっきりとして、あの男、バルパー・ガリレイに対する恨みとか怒りで一杯です!!」

「まあ、これが大人のやり方だ。全員が全員じゃないが、大人は先が見えるようになって、時間がないと思えばどんな手でも使いたくなるんだよ。魔術による軽い暗示程度で良かったな。ガッチガチの説経による思考操作だと面倒だからな。今みたいにデコピン一発でどうにかなるような代物じゃないから。さて、話を戻すが、バルパーに復習したいのは分かった。だが、今のままでは確実に失敗する。資金も情報も権力も力も無い君には無理だ。無駄死にだな」

「ストレートですね」

「ここは変化球を投げる場面じゃないからな。だから全てストレートだ。簡単に強くなりたいなら、オレの眷属と成れ。悪魔に転生することになるが、色々とサポートしてやる。基本的な拘束はレーティングゲームと呼ばれる模擬戦のようなものへの参加と最低限のマナー、それから冥界語の習得程度だな。それを断るのなら」

「殺しますか?」

「なぜそんな面倒なことをしなければならないんだ?断るのならウチの馬鹿が面倒をかけた分の慰謝料を払って開放する。それと護衛を兼ねた監視をつける」

「護衛?」

「お前を連れてきたハインリヒが馬鹿をやらかすかもしれないからな。悪魔全体に言えることだが、無意識的に他種族を見下している。まあ、上級悪魔なんて言われているのは生まれから貴族か、成り上がりだ。元から上に立つ存在だからな、見下していなくても見下している状態なのがデフォルトだ。オレも何処かで見下しているんだろうな」

こういうことは自分ではわからないからな。元平民の成り上がり騎士から傭兵で貴族だからな。価値観なんかは結構庶民的ではあるが、見下していないとは言い切れない。

「さて、どうする?答えは一週間後に聞かせてもらう。聞きたいことがあるのなら何でも答えよう。まずはゆっくりとすると良い。マリータ、任せる」

「分かりました」

マリータに連れられてイザイヤ君が部屋から出た後、ソファーに体を預けて大きく溜息をつく。全く、反吐が出そうになるぜ。タバコと酒が欲しい。特に酒。一時でも嫌な現実を忘れさせてくれる命の水。蒸留酒が飲みたい。現実から逃避させてくれよ。ああ、もう、嫌な世の中だぜ。それでも多少はまともな世界にしてやりたいよ。









マリータに治療の指示を出してハインリヒが連れてきた眷属候補を退出させる。このままでは死んでしまうだろうからな。それからハインリヒの処分だな。

「はぁ、ハインリヒ、お前にはがっかりだ。何も分かっていない。二度とオレに面を見せるな。下がれ」

だが、ハインリヒは下がろうとしない。

「オレは下がれと言った。それすらも出来ないのか」

「……私の何がいけないと言うのですか!!これほど有能な者を用意しているのに!!」

「ハインリヒ、それはお前の評価だ。オレは有能だと見ていない。根本から間違っているんだよ。プレゼンが下手だと言ったよな」

「ええ」

「オレの趣味は知っているな?」

「古臭いゲームだということは」

「その時点で間違っている。例えばだが、今オレの手元にあるこのカードゲーム、キャッチョコだが、発売されたのは2年ほど前だ。他にもこのカードは昨年、大学の教授が研究の一環で生み出したものだ。お前の趣味の携帯ゲームは3年前のものだったな」

オレに趣味がバレていることにハインリヒが目を大きく見開く。

「何処が古臭い?お前の先入観で物の真実を図れていない。正しく物を見れていない者の提案を飲む馬鹿はいない。そして古臭いと言うのはマイナス評価になりえない。古臭いとは伝統とほぼ同意義であり、それを受け取った側の感性によって変わるからだ。本題に戻ろう。趣味の時点でこれだけの考えの差が開いている。それなのになぜ眷属にしようと考える者が一致していると考えられる?」

「ですが、イザイヤは眷属にしたではないですか」

「そうだな。お前が裏でイザイヤを襲おうと画策していたからな。保護するために眷属にした」

「……馬鹿な、知っているはずが」

「お前は眷属にしか目を向けていないからな。愚かな。オレの手足はもっと長い。が、それを知ってしまい、オレの御眼鏡に適わなかったお前には」

言い切る前にオレの手足の一人がハインリヒの首を180度曲げて殺した。

「ご苦労。死体の処理も任せる」

無言のまま首を縦に振り、目の前の者がハインリヒの死体と共に消える。やはり、日本の忍者と呼ばれる者たちは優秀だな。日本人の気質の誠実には誠実を持って返すという面と、主のために全てを差し出せる献身性。それらを持ちあわせた上で裏の仕事が出来る。実に素晴らしい。手足として十分以上に働いてくれている。

さて、ゴミの処理は済んだ。一先ず、ハインリヒが連れてきた眷属候補の様子を確認しに行こう。結構ボロボロだったけど、まあ、生きてるだろう。傭兵団の連中ならあの程度はいつものことだからな。気合さえ充実してれば生き残れるだろう。そう言えばあいつ、気合は充実してたっけ?ええっと、資料資料。

おぅ、ハインリヒの奴、なんでこう能力が高くて環境が最悪な奴を見つけてこれるんだ?姫島の時とは違って調査資料がかなり詳しくなっているし、努力の方向性がとことん噛み合わないやつだな。とりあえず急がなければ。あんな環境で気合が充実しているわけがない。死んでいたら悪魔の駒で蘇生させてやらないと。

母の実家であるバアル家の滅びの魔力の扱いに慣れたオレは、悪魔の駒の悪魔への転生機能の部分のラインに滅びの魔力を纏わせて転生機能を封じ込めてある。おかげで気軽に蘇生アイテムとして利用できる。今は更に繊細なコントロールを身に着けようとしている。出来れば黒歌と白音とイザイヤを転生悪魔から元の種族に戻してやれるようにしたいからな。

「マリータ、彼の様子は?」

「2分前に死亡確認です」

「全く、ハインリヒの馬鹿が。コストは、ルークで足りないだと?仕方ない、変異のビショップを使う」

ケースから変異のビショップを取り出して死んでいる彼の胸元に置く。駒が身体の中に沈んでいき、再び生命の鼓動が宿る。

「治療は任せる。しばらくは体を癒やすことを優先させろ」

「かしこまりました」

「それにしても、女装癖があるとはな。別にオレが狙われない限りは良いけどさ」

「本当に似合っておられますしね。それにしても女装に関して理解があるとは思っていませんでしたが」

昔、任務のために際どい格好の踊り子に扮した事があるなんて言えるか。変に人気が出たことは忘れるんだ。

「セラフォルー様の趣味に巻き込まれただろう?」

「可愛かったですね、リアン様。ソーナ様にもせがまれて嫌々付き合ったら泣き落としも食らってノリノリで遊んでたのは」

アレはガキの頃だからノーカンだ。ソーナの黒歴史でもあるから話に上がることはほぼ無いから。

「この話はここまでだ。オレは姫島のところに行ってくる」

「豆ですね」

「情緒が不安定すぎるからな。自虐タイプじゃない分だけ楽だよ。自虐タイプは治療と依存が紙一重だからな。はっきり言って苦手だ」

「リアン様の性格ならそうでしょうね。一方的に寄り掛かるのはするのもされるのもお嫌いでしょうね」

「そういうこと。まあ、多少支えてやる程度はするさ」

バラキエルとの約束もあるからな。踏み込む前の下準備はそろそろ終えても良いぐらいには落ち着いてはいるんだけどな。カウンセリングは専門外なんだけどな。こればっかりは始めたオレが最後まで関わらなければ見捨てられたと思って二度と誰にも心を開かなくなる。

「面倒だとは思わないさ。ある程度は気持ちはわかるからな」

信頼していた父親に裏切られたように感じているのだろう。オレも信じていた国に裏切られたから、裏切られる気持ちはわかる。バラキエルに関しては本当に運が悪かったとしか言えないがな。いや、現実を甘く見すぎていたと言ったほうが良いか。まあ、全ては過去の話だ。








「13です」

「15にゃ」

「21」

「21!?えっ、ってことは24」

「コヨーテ」

マリータの宣言と共にカードを全員が見えるように置く。

「16。くっ、普通に引っかかった」

イザイヤが悔しそうにしている。馬鹿め。ハッタリを使わないと泥沼になるのがこのゲームだ。次のゲームに移ろうとした所でドアがノックされる。

「なんだ」

「リアン様。サイラオーグ様がお越しです」

「通せ」

扉を開けて入ってきたのは従兄弟であるサイラオーグ・バアルだ。つい最近になるまでバアルとして認められていなかった男だ。ゆえに付き合いは短い。だが、わかりやすい男で、気持ちのいい男だ。成り上がりというのも評価できる。だが、こいつの夢はオレが粉々に砕くことになる。こいつに魔王の座はやれん。こいつは魔王の座を力の象徴としか見ていない。そんな甘いものじゃないんだよ、上の座はな。覚悟がないものがその座に着いている所為で今に繋がっているのだ。

「お前が急に訪れるとは何かあったのか?」

額の前にカードを掲げてゲームに入る。

「巫山戯ているのか?」

「そういうゲームだ。遊びの中のひらめきこそがオレの武器だ。で、なんのようだ。見ての通り眷属との交流を深めているのだが」

「……手合わせを願いたいのだが」

「いいぞ。そんでもって、参った。はい、終了。お帰りはあちらだぜ。遊ぶのなら座ってけ」

「巫山戯るな!!」

「巫山戯てなんかいないさ。手合わせを了承して、すぐに降参した。手合わせは成立しているな」

「そんなのは屁理屈だろう」

「じゃあ、オレが何故こんなことをしたのか説明してやる。理由は3つある。1つ、手合わせにオレのメリットがない。2つ、先程も言ったが眷属との交流を深めている。こちらのほうが大事だ。一番大きな理由の3つ、面倒くさい!!」

「……それで巫山戯ていないと言えるのか!!」

「だってなぁ〜、もう終わっているし」

そういった次の瞬間、サイラオーグが倒れる。

「気持ち悪くて吐きそうだろ?足は攣ったように動かないだろうし、腕はどんどん力が入らなくなっている。熱いのか寒いのかも分からない。面倒くさいってのは後始末が面倒って意味でな。端からお前に勝ち目がないから言ってやってるんだよ。ああ、気合とかでどうにかなるものじゃないから頑張るだけ無駄だ」

全身から脂汗を流すだけで耐えることしか出来ないのか目だけをこちらに向けてくる。

「自分が何をされたか分かるまでは再戦は無しだ。来ても同じ目に合わせるだけだ。力だけでオレに勝てると思うな。努力だけではどうにもならないことはこの世に確かに存在している。お前がバアル家の滅びの魔力が使えないようにな」

さて、これを正しく受け取れないようならサイラオーグは使えない人材だ。まあ、期待はしないでおくさ。滅びの魔力を指先に集めて額を小突いて意識を刈り取る。

「サイラオーグはお帰りだ。丁重に送ってやれ」

使用人にサイラオーグをバアル家へ送り返すように指示を出す。

「一体何をしたのにゃ?」

黒歌がオレがサイラオーグに何をしたのかを質問してくる。

「ああ、簡単に言えば呪いだな。人差し指の呪い、ガンドって奴だ。術式は簡単だし、素人が使えば風邪をひく程度の呪いだ。さっきのは複数の病気に同時にかけただけ。知ってれば簡単に防げる。アレンジすれば物理衝撃も加えられるけどな」

滅びの魔力は使っているのがすぐにバレる欠点があるからな、純粋な魔力そのものに呪詛を乗せて撃ち出すガンドは便利の一言に尽きる。

「まあ、あの程度で魔王を目指すなんて甘いな」

現役の超越者と呼ばれている魔王がガンドで苦しんでいた事実からは目をそらしておく。

「簡単だから覚えておくか?3日もあれば軽い風邪ぐらいなら引かせられるぞ。ちょっと特訓すれば見えなくなるしな」

とりあえず眷属には仕込んでおいて損はないはずだ。マリータも使えるしな。ちなみにサイラオーグにガンドを打ち込んだのはマリータだ。派手に動いて視線を誘導し、こっそり打ち込ませて効き目が回る時間を稼ぐ。完璧なコンビネーションだ。








「ほうほう、これが『停止結界の邪眼』ね。しょっぱい能力だな」

滅びの魔力を使うまでもなく、日頃から展開している呪術遮断結界で無力化出来ている時点で怖くもなんともないな。強力だって言うから期待していたんだがな。マリータは停止結界の邪眼の範囲内の物を調べている。

「なんで二人共動けるんですか!?」

「うん?常に防御魔術を展開しているからな。全く効かんな。強力だって言うから期待していたが、これなら簡単に防げる。あと、資料に停止結界の邪眼のコントロールが出来ずに暴発させるとなっているが、原因も特定できたから説明してやる」

マリータに説明用の道具を取りに行ってもらい、その間に眼の前に居る眷属のギャスパー・ヴラディの改造計画を立てる。とりあえず、暴発だけは押さえてやらないとな。それが済んでからは、最低限の護身術を叩き込んでやるか。あとは、こいつの希望次第だな。

そこまで考えた所でマリータが頼んだ物を持ってきてくれた。

「それじゃあ、暴発の原因をこの銅線と豆電球と電池で説明してやる。豆電球が光っている時が発動している状態な。電池が発動させるのに必要な体力云々、銅線が術式ラインだな。でだ、お前の暴発はこの回路そのもの、簡単に言えばスイッチがないんだ。だからびっくりしただけで電池から離してある銅線がくっついて電気が流れて暴発する。それを此処にスイッチを付けてやり、スイッチの切替の条件を口頭分にでもしておけば暴発することはない」

と言うより基本中の基本だと思うんだけどな、暴発対策の。実践では無詠唱は基本中の基本だけど。大規模な物は除くけど。呪術系の大規模な物は下準備とか詠唱とかが死ぬほど面倒だけど効果は抜群だからな。疫病を流行らせたり、水を腐らせたり、作物を毒化させたり。呪術返しだけは気をつけないと酷い目にあうから余計に手順が増えるんだよな。

「どういう方式でスイッチを作る?強引にオレが外側から作ってやってもいいし、地道に作り上げるのもいいし、方法はいくつかあるな。このまま何もしないというのなら存在そのものを封印する必要があるが」

「ひいぃぃ!?そんなのいやですぅ〜」

「ならスイッチは作る方向でいいな。時間をかけるのとかけないのはどっちが良い?」

「えっと、その違いは?」

「予算云々だったり、痛かったり、しんどかったりの差だな。オススメは強引にスイッチを取り付ける方法。このガラス玉を飲み込めば終了。まあ、ちょっと大きめだから飲み込むのが大変なのが欠点だ」

暴走していると報告書で読んだ時点で用意しておいたビー玉よりも若干大きなガラス玉を見せる。前世では幼少期に粉末状の物を複数回に渡り飲ませて魔術の暴発を防ぐスイッチを作り出すための物だ。大人になると一気飲みじゃないと効かないのが欠点なんだが、普通は幼少期から飲ませるために欠点にならないはずなんだけどな。稀にだが、幼少期に使った魔道具の量が少なかったりするのが原因で大人になってからスイッチが壊れて取り付けるために使われる程度だ。

「これ以外だとどうなるんですか?」

「ええっと、背中に入れ墨を入れるのと、外部から強制的に魔力を操作してもらって慣れる方法、地道にスイッチを作る方法。ここまでがやってやれる方法で、これ以上はなぁ、ヤバイから止めておけ」

ショッカーも真っ青な大改造手術がまだマシだろう。絶対に人に馴れない魔獣を強制的に騎獣にするための手術だからな。

「入れ墨は、あれだ、ヤの付く自由業の奴が彫ってるようなのを背中一面に入れることになる。外部から強制的に魔力を操作して慣れる方法は、不快感が激しいぞ。好き勝手にされるという意味だからな。最後のは時間がかかる。2年は見る必要がある」

基本的にはこの魔道具で研究は発展してないんだよ。と言うか、残りの方法は知識として知っているだけだから選んでほしくない。

「とりあえず、何も対処しないというのだけは無しだ。どれかを選んでやってもらう。オススメは最初にも言ったがこいつを飲み込む方法だな。ちょっと苦しいだろうが、一番楽だ」

悩んだ末に10分ほどの格闘の末にギャスパーはなんとか魔道具を飲み込んだ。動作の確認は簡単だ。オレの手足の一人がギャスパーの後ろで膨らませた紙袋を叩き割って大きな音を出す。

「よし、魔道具は正常に作動しているな。今度は自分の意志で使ってみようとしてみろ」

嫌そうな顔をしながら、それでも発動させようとして発動しないことに戸惑っている。

「じゃあ、スイッチを入れるぞ。スイッチを入れる時のキーワードは『起動(ブラスト)』切る時は『停止(オフ)』だ。日常的に使うことがない『起動(ブラスト)』だけはいざという時のために覚えておく程度でいい。『停止(オフ)』は分かりやすいだろう?さあ、やってみな」

「は、はい。『起動(ブラスト)』」

キーワードを告げてから、少し力んで停止結界の邪眼が発動する。

「そのままでスイッチを切れ」

「『停止(オフ)』」

力のラインが切られて停止結界の邪眼の発動が止まる。問題はないな。

「よし、機能に問題はない。違和感は?」

「えっと、今までとは止まり方が違うからちょっとだけ。けど、問題ないと思います」

「スイッチの効きが甘いと思ったらすぐに言え。調整ぐらいなら簡単に済ませてやれる。あと、コミュ障をどうにかするためにレクには強制参加な」

「な、何をするつもりなんですか!?」

「アナログゲーム、つまりはボードゲームやカードゲームだな。携帯ゲーム機なんかの一人で楽しむ物ではなく、他人とわいわいやったり、駆け引き、場外戦が必要になってくるゲームだ」

「……後ろの方が想像がつかないんですけど」

「そうか?簡単に言えばポーカーフェイスの逆とか、ちょっとした発言からの心理戦とかだな。露骨にやりすぎると顰蹙を買うことになるが、適度に場に合わせた場外戦をやるんだよ。協力プレイのゲームなんかもあるけどな」

「はぁ?」

「まっ、想像しにくいのは分かるよ。とりあえず、お試しでやってみればいい。軽いものから重いものまで色々あるからな。軽いのは子供でも大人でも楽しめるし、重いのは大人にこそオススメだったりする。まあ、ブラックジョークがキツイゲームも多いがな。ホームパーティーを開いて近隣住民を高血圧なんかにして心臓発作で殺すゲームとか」

「ブラックにも程があり過ぎますよぉ〜!!」

「じゃあ、積み木で城を作って王様と将軍を配置してハンマーで物理的に破壊し合うゲームとか、ぼくのかんがえたさいきょうのうちゅうせんで他のプレイヤーのうちゅうせんと戦うゲームとか、歴史学者達が手柄の独り占めのために他の歴史学者チームを突き落とすゲームとか、クトゥルフの邪神を呼び出して他のプレイヤーのSAN値を直葬するゲームとか」

「ヒィィ!?どれも酷すぎですぅ!?もうちょっと穏やかなのはないんですか!?」

「穏やか?プレイヤー全員でゾンビから逃げながらアイテムを揃えて脱出するゲームとか、カードに書かれたアクシデントを手札のアイテムで華麗に切り抜けてそれを他のプレイヤーに評価してもらうゲームとか、テロリストと爆弾処理班に分かれて爆弾を解体するゲームとか」

「まだ、酷いですぅ」

「じゃあ豆を育てて売るゲームとか、バンジージャンプをするゲームとか、庭園を作るゲームとか、ピラミッドを作るゲームとか、日本庭園を作るゲームとか、街道を作るゲームとか」

その後も軽いものを中心にゲームを紹介していく。2週間後のレクにはギャスパーの好みのゲームを中心に遊ぶか。









姫島朱乃が落ち着いたと判断したオレは、半年ぶりに屋敷に招くことにした。世間話から始め、ある程度の緊張感を徐々に出していけばバラキエルとのことで呼ばれたのを察したのだろう。では、本題に入ろう。

「まずはオレの思っていることから話しておこう。オレはまた姫島がバラキエルと一緒に暮らして欲しいと考えている。それを受け入れられないというのも分かる」

「だったら、何故お招きに?あの人への報告なら適当にでっち上げればいいではないですか」

「オレは家族は共にある方が良いと思っているからな。今のお前達親娘はお互いにこれ以上傷つきたくないと逃げているようにしか見えないからな」

「私は逃げてなどいない!!あんな人と一緒に居るなんて絶対に無理よ!!」

激情してあれこれと口に出していく中で、どうしてもあの一言、いや、二言が出ない。その時点で答えは出ているんだよ、姫島。

「母親の一大事に何もできなかったバラキエルを恨んでいるのか?」

「当たり前でしょう!!」

「では、殺したいほど憎んでいるか?一言もそんなことを言っていないが」

その言葉に今までの激情が嘘のように止まる。本人も気づいていなかったようだ。オレは懐からボイスレコーダーを取り出して先程激情していた時の言葉を再び流す。

「あれだけ激情していても、『殺したい』とも『憎んでいる』とも言っていない。喜怒哀楽には、特に哀と怒には本音が乗りやすい。つまりはそういうことだ。母親を助けてくれなかったことを恨んではいても、それでも憎しみまではいっていないし、殺したいとも思っていない。ただ、認めたくなくて我儘を言っている子供だ」

「そ、そんなことは、そんな、ことは」

「あとな、バラキエルの奴、グリゴリから離れた。いつでもお前を、家族を受け入れて、今度こそ守り通すために。今は、人間界のグレモリー領地に移り住んで在宅プログラマーとして四苦八苦してるよ」

在宅で出来る仕事はないかと聞かれた時は答えに窮したが確実にプログラマーとしての仕事に慣れてきている以上、間違いではなかったようだ。需要はこれからも伸び続けるだろうからな。今は大きな仕事は出来ないだろうが、5年もすれば問題もないだろう。

「バラキエルが今住んでいる家の住所だ。恨んでいるなら恨んでいると言えばいい。憎んでいるなら憎んでいると言えばいい。殺したいと思っているなら、殺せばいい。今のバラキエルはそれら全てを受け入れるさ」

男は肝が据わるまでに時間が掛かるが、肝が座れば女よりも覚悟がある。女は逆に肝が据わるまでは一瞬だが、簡単に折れる。まあ、折れた後の立ち上がりが早いのも多いが、姫島は遅い方に属しているからな。

「好きにすると良い。これからも援助は続けていくから生活を心配する必要はない。自分の心が指し示すままであればいい」

これは本音だ。誰もが自分の心が指し示すままでずっと居られれば、それは誰もが満たされているってことだ。だけどな、世の中の幸せの絶対値って奴は存在していて、増やせても微々たるもので、幸せを奪い合うのが知的生命体なんだよ。そんでもって汚い大人ほど幸せを奪うのが得意なんだよ。目の前の姫島が奪われたように、前世のオレたちがそうであったように。

今世のオレは奪われる側を少しでも減らそうとそう思っているんだが、その分、自分の幸せを取りこぼしている。苦労ばっかり背負い込んでいるが、前世の騎士としての矜持って奴の所為だ。困っている奴が居ると、つい助けてやりたくなる。困ったもんだぜ。




 
 

 
後書き
今回もボードゲームなどのタイトルはできるだけ伏せてあります。
ゲーム名が隠れてないのが2つほどありますが気にしない方向で。

次回、ヒロイン確定。 
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