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歌集「春雪花」

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 小夜更けて

  風音に惑ふ

   わびしさに

 君そ想いて

   名を呼びにける



 真夜中に差し掛かろうと言う頃…風が強くなり始め、それが泣いているように聞こえる…。

 私はそんな風音を聞きながら…溜め息をつく…。

 会えないまま…彼とはこのまま疎遠になるのかもしれない…いや、我が儘でも今一度会いに行けないだろうか…。

 あれこれと考えても詮ないこと…そう思い、一人部屋の中で、彼の名前を囁く…。



 もの思ふ

  闇夜の深き

    梅雨空に

 君こそ見えね

    ねやの虚しき



 物思いに耽り、ふと空を仰ぐ…。

 梅雨の夜空には月も星もなく…深い闇だけが世界を染め上げていた…。

 ただでさえ寂しいというのに、ここへ彼がくることなぞないと解りきったことを思い…一人切りの部屋を顧みて、本当に虚しくなってしまった…。




 
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