星河の覇皇
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第六十三部第三章 気付いている者といない者その三十一
「その娘が家に彼氏を連れて来たのですが」
「どういった方だったのでしょうか」
「いやいや、眼鏡をかけていて細くて」
外見はそうしたものだというのだ。
「そして気弱な感じでしたが真面目で娘を真剣に想っていて」
「そのことがわかるからですね」
「いいと思いました」
「娘さんはその方をですね」
「愛しています、何でも同じ漫画部の同級生で」
「そこで、ですか」
「面白いホラー漫画を描くとか」
モハマドは金に娘達のことを饒舌に話していく、そこに彼の機嫌のよさこのことに対する喜びがはっきりと出ていた。
「そのホラー漫画も読ませてもらいましたが」
「如何だったでしょうか」
「外見、彼の性格からは考えられませんでした」
そうだったというのだ。
「夜寝られないまでに」
「怖いものでしたか」
「才能があると思いました」
こうも言うのだった。
「やはりホラー漫画は怖くなければ」
「よくはないと」
「怖いものは徹底的に怖くです」
そうあってこそ、というのだ。
「醍醐味がありますので」
「ホラー漫画もですね」
「まろやかさは不要です」
モハマドは自身のその好みを話していくのだった。
「怖さをこれでもかと出さねば」
「よくはない」
「そう思いますので」
「よかったのですね」
「最後読み終わった後これならばと思いました」
「よい漫画だと」
「そして娘もです」
明らかに溺愛している彼女のことにも言及した。
「よい彼氏を見つけたと」
「真面目で才能ある漫画家に出会えたと」
「そうです、もっとも交際なので」
今の時点では、というのだ。
「まだこれからどうなるかわかりませんが」
「それでもですね」
「結婚するにしても」
「それは幾ら何でもお話が早いのでは」
金もここでは笑って返した。
「高校一年生では」
「それはそうですが」
「それでもですか」
「はい、彼ならばと」
「思われたのですね」
「そうでした」
こう話すのだった。
「いや、本当にまだこれからどうなるかわかりませんが」
「その方ならばですか」
「娘を任せられると思いましたし」
それに、というのだ。
「そして才能も」
「漫画家としての」
「大丈夫だと思いました」
「そこまでいいホラー漫画だったのですね」
「そうでした」
モハマドは金に遠慮なく太鼓判を見せる。
「トラウマになる程に」
「トラウマですか」
「はい、そこまでです」
怖かったというのだ。
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